Latest Japanese Reviews

体外受精(IVF)に用いる成長ホルモン剤

2 years 5 months ago
体外受精(IVF)に用いる成長ホルモン剤 レビューの論点 体外受精を受ける女性に追加治療として成長ホルモンを投与する場合と、投与しない場合とを比較したエビデンスを検討した。 背景 体外受精を行う月経周期では、卵巣を刺激してより多くの卵子を成熟させるために、ゴナドトロピン療法を行う必要がある。理論的には、成長ホルモンを追加で使用することで、ゴナドトロピン療法の効果を高められる可能性がある。体外受精を受ける女性を対象にして、成長ホルモンを使用した場合と使用しない場合を比較して、利益とリスクを評価した。体外受精(IVF)治療において「低反応者(poor responder)」は、通常、卵巣予備能が低い比較的高齢の女性や、過去の体外受精(IVF)治療で最大量の刺激薬を投与したにもかかわらず採卵数が5個に満たなかった女性をさす。卵巣予備能が良好で、刺激後の卵巣反応が良好(採卵数が5個以上)である比較的若い女性は、「正常反応者」と考えられる。 研究の特徴 1,352人の女性を対象とした16件のランダム化比較試験が確認された。ランダム化比較試験では、対象者は無作為に2群に分けられる。今回は、一方の群は体外受精と成長ホルモンの投与を受け、もう一方の群は体外受精のみを受けた。エビデンスは2020年11月11日現在のものである。 主な結果 「正常反応者」では、追加で成長ホルモンを使用した場合、出生率...

病状が不良な入院患者を認識し、管理するためのチェックリストと専門チーム

2 years 5 months ago
病状が不良な入院患者を認識し、管理するためのチェックリストと専門チーム 本レビューの目的は何か 臨床のスタッフは、病状が悪化した成人の入院患者が支援を必要としていることを迅速に認識する必要がある。そのための方法の1つとして、病棟で働く医師や看護師は、バイタルサイン(血圧や脈拍など)のチェックリストを使って、患者の状態が悪化している兆候を認識することができる。また、これらのチェックリストは、迅速な評価と治療のために、医師や看護師の専門チームに患者を紹介する際にも使用される。チェックリストの使用と専門家チームへの紹介が、これらの資源を持たない病棟と比較して、死亡数、集中治療室(ICU)への予定外の入室/再入室、入院期間、および心停止/呼吸停止の数を減少させるかどうかを検証するために、本レビューを実施した。 要点 医師や看護師が、病状が悪化する患者を早期に認識し、管理のために専門家チームに紹介するためのチェックリストは、死亡数、予定外の集中治療室(ICU)への入室数、入院期間、院内での心停止の数において、ほとんど、あるいは全く差がない可能性があるというエビデンスが見つかった。 レビュー結果から分かったこと このコクランレビューでは、医師や看護師が病院内で病状が悪化している患者を認識し、専門チームに紹介するための病院内チェックリストの効果に関する研究から分かったことを紹介する。急性期病棟...

肺炎の予防と治療のためのビタミンC補給

2 years 5 months ago
肺炎の予防と治療のためのビタミンC補給 レビューの論点 成人と小児において、肺炎の予防および治療を目的としたビタミンC補給の役割を、補給しない場合と比較する。 背景 肺炎は、ウイルス、細菌、真菌により引き起こされる胸部感染症である。ビタミンCは免疫系に関与するため、その補給は小児および成人で肺炎の予防と治療に重要となり得る。肺炎の予防と治療におけるビタミンCの役割を評価した。 検索期間 2020年3月4日までの文献を検索した。 研究の特徴 5つの研究と2件の進行中の研究を対象とした。5件の研究には計2,655人が参加し、1つの高所得国(米国)および2つの低中所得国(バングラデシュ、パキスタン)で実施された。3件の研究は病院、1件は学校、1件は軍事訓練センターで行われた。3件の研究に5歳未満の小児が含まれ、1件に学齢期の子供が、1件に成人の参加者が含まれていた。2件の研究が肺炎予防におけるビタミンC補給の効果を、3件の研究は肺炎治療におけるビタミンC補給の効果を評価した。ビタミンCの用量は、125 mg、200 mg、1 g、および2 gであった。 研究の資金源 2件の研究が製薬会社からの資金提供を受けていた。3件の研究は資金提供元について報告されていなかった。 主な結果 肺炎予防のためのビタミンCについて、肺炎の割合(発生率)、一般的な肺炎の頻度(有病率)、肺炎による死亡数(死亡...

急性くも膜下出血患者の血圧を変化させる様々な治療法の評価

2 years 5 months ago
急性くも膜下出血患者の血圧を変化させる様々な治療法の評価 背景 くも膜下出血は、脳の周囲の空間に出血して起こる脳卒中の一種で、毎年、人口10万人あたり9人が発症している。くも膜下出血の死亡率(死亡)は30%から45%で、生存者の20%は日常生活動作に援助が必要な状態になる。現在、短期的な治療としては、血圧を変化させて、高血圧を誘発する(つまり血圧を上げる)か、血圧を下げるかのいずれかが考えられるが、急性くも膜下出血の人における血圧変化の有益性と有害性については不明である。 レビューの論点 本レビューでは、急性くも膜下出血患者の血圧を変化させることの有益性と有害性を検討した。 検索日 科学的なデータベースを使用して、開始から2020年9月までの期間で検索を行った。 研究の特性 急性くも膜下出血患者の血圧変化を評価したランダム化比較試験(2つ以上の治療群のいずれかに無作為に分けられる試験)が3件見つかった。61人が参加した2件のランダム化比較試験では、高血圧の誘発をプラセボ(偽治療)または無治療と比較した。224人が参加した1件のランダム化比較試験では、血圧の低下とプラセボ(偽治療)を比較した。試験の逐次解析を用いて、重要な治療効果を検討するために必要な研究参加者数(情報量)を推定した。試験の逐次解析では、すべての治療効果について情報が不足していた。すべての試験はバイアスのリスクが高...

小児における呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症重症化予防のためのパリビズマブの使用

2 years 5 months ago
小児における呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症重症化予防のためのパリビズマブの使用 レビューの論点 小児の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)重症化予防のためのパリビズマブの効果(利益と有害性)は何か? 背景 RSV(訳注:日本ではRSウイルスと表記されることが多い)は、主に生後1年以内の小児における急性呼吸器感染症の主な原因であり、年間3,310万件の感染があり、その90.6%が低・中所得国で発生していると推定されている。これらの感染症は、鼻水、発熱、咳、息切れ、喘鳴、哺乳困難などの症状を呈する。特に生後2か月未満の乳児では、入院や集中治療室への入院、死亡に至ることもあり、全世界の5歳未満の小児における入院率は人口10万人あたり1,970人、死亡者数は年間59,600人と推定される。また、喘鳴の再発や慢性的な肺疾患など、長期的な合併症を引き起こす可能性もある。 シナジスの製品名で販売されているパリビズマブは、重症化するリスクの高い小児において、1か月ごとに最大5回まで筋肉注射を行い、重症化を予防する薬剤である。 検索日 エビデンスは2021年10月14日までのものである。 研究の特徴 3,343人の参加者を含む5件の研究を組み込んだ。どの研究も、早産や心臓・肺の病気など、基礎疾患によりRSVに感染した場合に有害な結果(評価項目)をもたらすリスクの高い子どもたちを含む、少数の参加者を...

成人がん患者にみられる化学療法による悪心・嘔吐の予防には、どのような薬剤の組み合わせがよいか

2 years 5 months ago
成人がん患者にみられる化学療法による悪心・嘔吐の予防には、どのような薬剤の組み合わせがよいか 化学療法による悪心・嘔吐の負担とその予防に役立つものは何か 化学療法は、成人がん患者の約70~80%に対して悪心(吐き気、嘔気)と嘔吐を誘発する(CINV)。化学療法の種類によって、高度催吐性化学療法(高度の吐き気を催すもの)と中等度催吐性化学療法(中等度の吐き気を催すもの)がある。複数の薬剤の組み合わせにより、高度および中等度催吐性化学療法を受けている成人のCINVに対して高い有用性が示されている。 本レビューの目的 ネットワークメタアナリシスを用いて、高度または中等度の催吐性化学療法を受けている患者のCINV予防のためのさまざまな薬剤の組み合わせの有益性と有害性を比較し、治療の順位を明らかにすることを目的とした。ネットワークメタアナリシスとは、すでに発表された試験で報告された異なる治療法を比較するために使用される手法であり、これには元の各試験にそのような比較が記載されていない場合も含まれる。 レビューの対象とした試験 検索対象として選択した医学データベースと試験登録を2021年2月まで検索した。臨床でよく使用されている高度または中等度催吐性化学療法を受けるあらゆる種類のがんの成人患者を対象に、CINVの予防を目的として複数の薬剤の組み合わせを比較した研究を対象とした。特に、化学療法後...

脳卒中回復のための選択的セロトニン再取り込み阻害薬

2 years 5 months ago
脳卒中回復のための選択的セロトニン再取り込み阻害薬 レビューの論点 選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)が脳卒中の回復に与える影響は? 背景 脳卒中は身体障害の主な原因の一つである。脳卒中による障害には、トイレや洗濯、歩行などの日常生活に支障をきたすものがある。時には障害が重く、基本的な動作を行うために他人に頼るようになることもある(これを「依存」という)。以前、SSRI(脳内の化学物質のレベルを変化させることで作用する、通常、気分障害の治療に用いられる薬剤の一種)が脳卒中後の回復を改善するかどうかを調べることを目的としたコクラン・レビューはの更新版を発表した。 2019年の更新以降、2つの大規模な研究が完了しているため、このレビューのさらなる更新を行う必要がある。バイアスを回避するための厳密な方法(例えば、脳卒中患者が実薬とプラセボのどちらを投与されたかを評価者が知っているなど)を用いた、質の高い試験のみを主な分析対象とした。これらの研究を「バイアスリスクが低い」研究と呼んでいる。 また、SSRIの他の効果、例えば、腕や脚の脱力感の重症度の改善、気分、不安、認知、生活の質の改善、出血や発作などの副作用の有無などについても調べた。 研究の特性 合計で76件の研究が見つかり、脳卒中後1年以内の脳卒中患者13,029人を対象とした。参加者は幅広い年齢層であった。約半数の研究では...

高齢者の大腿骨頸部骨折からの回復を支援するには、様々な専門分野(多職種)の混合チームが最適か?

2 years 5 months ago
高齢者の大腿骨頸部骨折からの回復を支援するには、様々な専門分野(多職種)の混合チームが最適か? 要点 - 老年病の医師やその他の医療専門家が率いる様々な専門性を持つチーム(多職種リハビリテーションチーム)が提供するケアは、通常のケアと比較して、より多くの大腿骨頸部骨折による入院高齢者の回復に貢献する可能性がある。 - 退院後の多職種によるリハビリテーションが通常のケアよりも優れているかどうかは、十分なエビデンスがないためわからない。 - 今後の研究は、人々が早期に退院して地域で支援を受けられるように、様々な専門家が集まって構成される多職種チームが提供する最善の治療法を特定することを目的に行なうべきである。 大腿骨頸部骨折の治療法にはどのようなものがあるか? 高齢者において、大腿骨頸部骨折はよくおこるが、重大な損傷である。大腿骨頸部骨折をした人の約3分の1は、怪我をしてから1年以内に死亡する。大腿骨頸部骨折をした人は、その他の状態により回復が遅くなる場合もある。多くの人が、骨折前の運動能力や自立した生活を取り戻すことができず、その後、介護施設での入所生活が必要になることもある。 通常、大腿骨頸部骨折の治療は、手術後に、運動機能や入浴・着替えなどの日常生活の基本的な機能を回復させるための治療が病棟で行われる。これには、院内の他の部署の人も関わることがある。しかし、大腿骨頸部骨折の人は...

分層黄斑円孔に対する手術の有効性

2 years 5 months ago
分層黄斑円孔に対する手術の有効性 なぜこの問題が重要なのか? 分層黄斑円孔とは、網膜の中心の黄斑と呼ばれるところに小さな欠損ができて膜が薄くなったものである。網膜は目の奥で光を感知する層で、黄斑はものを細かく見分けるのに欠かせない。分層黄斑円孔では、手術により視力の低下を防げる(または視力を改善できる)とする向きもあるが、今のところコンセンサスは得られていない。本レビューの対象となったのは、分層黄斑円孔の患者の視力を手術により改善できるか判断するために行われた公表済みの研究である。 どのようにエビデンスを特定し、評価したか? まず、ランダム化比較試験(患者を2つかそれ以上の治療グループのいずれかに無作為に割り付けて行う臨床研究)を検索した。なぜなら、治療の効果について最も確かなエビデンスが得られるのは、こうした研究だからである。その後、結果を比較し、各研究から得られるエビデンスを要約する計画だった。そして最後に、研究方法、規模、またさまざまな研究の結果がどの程度似ているかなどの要因に基づいて、エビデンスの信頼性を評価することを目指した。 レビューの結果 検索の結果、見つかったのは、分層黄斑円孔と診断された合計36人の患者を含む研究1件だった。この研究では、手術を受けずに経過を観察した人に比べて、手術を受けた人は6か月後に視力が改善する可能性があることが示された。とはいえ、研究のデ...

医療に関する意思決定を行う人に対する意思決定コーチング

2 years 5 months ago
医療に関する意思決定を行う人に対する意思決定コーチング 背景 治療(例:手術)やスクリーニング(例:健康上の問題があるかどうかを知るための検査)において、人々がより良く意思決定に関われるよう支援を行うニーズがある。人々が、その選択肢に関連する最良のエビデンスを知り、問題点を医療従事者と共有することができれば、質の高い意思決定ができる。 意思決定コーチング(対象者の自発的な意思決定を促すコミュニケーション手法)は、人々が健康上の意思決定を行うための準備を支援する。意思決定コーチングは、トレーニングを受けた、または意思決定コーチングの手順書を使用している医療従事者(看護師、医師、薬剤師、ソーシャルワーカー、ピア・ヘルスワーカーなどの健康支援者など)によって行われる。 本レビューは、意思決定コーチングが、人々が医療上の意思決定を行うための準備として役立つかどうかを検討した。 何をしたのか? 本レビューは、7カ国の意思決定支援者、医療従事者、教師、研究者からなるチームで実施した。 自分自身や家族のための治療やスクリーニングに関する医療上の意思決定を行うための準備として、意思決定コーチングを人々(大人と子ども)に検証した研究を検索した。 意思決定コーチングを受ける人が、無作為に介入グループに割り付けられた(例:コンピュータを使って誰がどのグループに入るかを決める)研究を本レビューの対象とし...

多面的介入による認知症と認知機能低下の予防

2 years 5 months ago
多面的介入による認知症と認知機能低下の予防 レビューの論点 認知症の2つ以上のリスク因子を対象とした介入によって、認知機能の低下と認知症を予防できるのか? 背景 認知症とは、記憶力や他の思考力(認知機能)が低下し、完全に自立した日常生活ができなくなる状態である。その原因は、脳のさまざまな問題にあるが、そのほとんどは加齢とともに増加する。認知症のリスクは、年齢が上がるにつれて誰もが増加するが、誰もが同じようにリスクを抱えているわけではない。 認知症の可能性を高めるいくつかの危険因子が確認されている。中年期の高血圧、糖尿病、喫煙、多量の飲酒、運動不足などである。これらのリスク因子に対処することで、認知機能の低下や認知症を予防し、または、少なくともその発症を遅らせることができるかもしれない。認知症は複雑な状態であり、さまざまなリスク因子があるため、1つのリスク因子だけを対象とするのはあまり効果的ではないかもしれない。このレビューでは、少なくとも2つのリスク因子を改善させることを目的とした介入(多面的介入)を検討した。 研究の特性 2021年4月28日までに出版されたもので、認知症ではない人を多面的介入群と通常のヘルスケア(例:一般的な健康アドバイス)を受ける群に無作為に割り付け、後に認知症になった人の数を調べたり、または認知機能を測定して、2つの群を比較した研究を検索した。その結果、9...

冠動脈疾患に対する運動を中心としたリハビリテーション

2 years 5 months ago
冠動脈疾患に対する運動を中心としたリハビリテーション 背景 冠動脈疾患(CHD)は、世界で主な死因の一つである。しかし、冠動脈疾患による死亡率の減少にともない、冠動脈疾患を抱えながら生活する人が増えており、その兆候(狭心症や運動時の息切れ、疲労など)を管理したり、心臓発作などをこの先に起こさないためにサポートをする必要がある。運動を中心とした心臓リハビリテーション(運動のみ、または心理的なサポートや患者教育と運動との組み合わせ)は、冠動脈疾患をもつ人たちの健康状態(死亡率など)と各評価項目(入院の有無など)を改善する目的でおこなわれる。 研究の特徴 冠動脈疾患をもつ全年代を対象とし、運動をしない場合と比べた運動を中心としたリハビリテーションの効果についてのランダム化比較試験(参加者が2つ以上の治療グループのうちのいずれか1つに無作為にわけられる試験)を検索した。2020年9月現在のエビデンスである。 主な結果 この更新版では、22件の研究(7,795人の参加者)を追加で採用した。合計で23,430人の冠動脈疾患をもつ人々を含む85件の研究をまとめたデータとなり、その参加者は過去に心臓発作を起こしたことがあったり、心臓バイパス手術や血管形成術(狭くなったり詰まったりした動脈や静脈を広げる手術)を受けていた人が多かった。運動のみの介入をおこなった研究は38件(45%)で、運動と他の介...

子宮内人工授精(精子を直接子宮に入れる方法)で妊娠を希望する女性に最も効果的な薬は何か。

2 years 5 months ago
子宮内人工授精(精子を直接子宮に入れる方法)で妊娠を希望する女性に最も効果的な薬は何か。 要点 - 不妊治療薬とは、女性が妊娠するために使われる一連のホルモンや薬をさす。このレビューでは、広く使用されている2つの不妊治療薬(ゴナドトロピンと抗エストロゲン薬)を比較した結果、ゴナドトロピンの方がおそらく出生数を増加させることが示された。 - 他の不妊治療薬の有効性の比較については、出生率と多胎妊娠(2人以上の赤ちゃんを妊娠すること)の両方において、信頼できるエビデンスがほとんど得られなかった。 - エビデンスを向上させるために、今後の子宮内人工授精の研究では、不妊治療薬とプラセボ(偽薬)を比較する必要がある。また、抗エストロゲン剤とアロマターゼ阻害剤(これも広く使用されている不妊治療薬である)を比較した研究も必要である。 不妊症とは? 不妊症とは、1年以上の間、避妊せずに定期的に性交を続けても妊娠していない状態をさす。自然妊娠しやすさは年齢とともに低下するため、医師は女性の年齢によって治療方針を変えることがある。35歳以上の女性であれば、6ヶ月が経った時点で不妊症として治療を行う医療機関もある。 不妊症の治療はどのように行われるか? 不妊症の治療は、その原因によって異なる。このレビューでは、さまざまな不妊治療薬を併用した子宮内人工授精に焦点を当てた。不妊治療薬は、排卵を促すホルモン...

不妊症女性のクロミフェン抵抗性多嚢胞性卵巣症候群に対する超音波ガイド下経腟的卵巣開孔術

2 years 5 months ago
不妊症女性のクロミフェン抵抗性多嚢胞性卵巣症候群に対する超音波ガイド下経腟的卵巣開孔術 レビューの論点 クロミフェン抵抗性の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)女性に、排卵誘発の為に超音波ガイド下経腟的卵巣開孔術を行うことが有益かどうか調べた。 背景 クロミフェンクエン酸塩はPCOS(生殖年齢の女性によく見られるホルモン異常)の女性に対し、排卵誘発(卵巣から卵子を放出させること)の第一選択薬の一つとして使用される。しかし、15~40%のPCOS女性はクロミフェン投与後も排卵しない(クロミフェン抵抗性という)。超音波ガイド下経腟的卵巣開孔術(腟内に挿入した超音波プローブの画像を参照して卵巣に穴をあけること)は、クロミフェン抵抗性PCOS女性に対して、優良な卵胞の放出(排卵)を補助するために行われる。また、クロミフェン抵抗性PCOS女性に対する排卵誘発の方法として、ゴナドトロピン(注射用ホルモン薬)が使用されることもある。 腹腔鏡(骨盤内に向かって小さな傷をつくり、細いカメラで卵巣を観察する)による卵巣開孔と比較して、超音波ガイド下経腟的卵巣開孔術は手術合併症のリスクを低減する可能性が示唆されている。しかしながら、超音波ガイド下経腟的卵巣開孔術についての研究のほとんどは、質的限界がある。選択基準を満たす研究は見つからなかった。超音波ガイド下経腟的卵巣開孔術の安全性と有効性はいまだに不明であ...

新生児・小児の院内肺炎に対する抗菌薬の投与

2 years 5 months ago
新生児・小児の院内肺炎に対する抗菌薬の投与 レビューの論点 新生児や小児の院内肺炎の治療において、より安全で効果的な抗菌薬レジメン(薬の種類、投与量、投与期間などの治療計画)はどれか。 背景 院内肺炎とは、入院中(入院後48時間以上経過した時期)に発生した感染症による片肺または両肺の組織の炎症である。世界的に見ても、小児の院内感染で最も多い感染症の一つであり、高い死亡率を伴う。小児の院内肺炎についての理解は、ほとんどが成人を対象とした研究から得られたものである。知る限りにおいて、本研究は、新生児および小児の院内肺炎におけるさまざまな抗菌薬レジメンの有益性と有害性を評価したメタアナリシスを含む初めてのレビューである。 検索期間 エビデンスは2021年2月現在のものである。 研究の特性 院内肺炎を発症した子ども84人を異なる抗菌薬レジメンにランダムに割り付けた4件の試験を対象とした。3件の試験は、米国、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、南アフリカで行われた多施設共同試験である。南アフリカの試験には、マレーシアの1施設が含まれていた。対象となった4件の試験は、それぞれ異なる抗菌薬レジメンを比較したもので、セフェピムとセフタジジム、リネゾリドとバンコマイシン、メロペネムとセフォタキシム、セフトビプロールとセファロスポリンであった。 研究の資金源 3件の試験は製薬会社(ゼネカ製薬, ファーマシア...

子どもの定期予防接種に対する親の考え方や行動に影響を与える要因は何か?

2 years 6 months ago
子どもの定期予防接種に対する親の考え方や行動に影響を与える要因は何か? レビューの目的 この質的エビデンスの統合の目的は、子どもの定期的な予防接種に関する親の考え方と行動に影響を与える要因を探ることである。そのために、親の考え方、経験、行動に関する質的研究を検索し、分析した。 このエビデンスの統合は、子どもの予防接種を改善する戦略の効果を評価する他のコクランレビューを補完するものである。 要点 親の予防接種に対する考え方や習慣には、個人の認識、社会的関係、親の生活環境など、多くの要因が影響する。親が子どもの予防接種について決断するとき、ワクチンについてどう思うかだけでなく、自分がどういう人間で、何に価値を置き、誰と行動を共にしているのかを伝えていることが多い。 このエビデンスの統合で検討したこと 子どもの予防接種は、重篤な病気や死亡を防ぐ最も効果的な方法の一つである。しかし、世界中で、多くの子どもたちが推奨されるすべての予防接種を受けていないのが現状である。これにはいくつかの理由が考えられる。ワクチンが手に入らなかったり、親が予防接種サービスにアクセスできない場合もある。親によっては、利用可能な予防接種や予防接種サービスを受け入れない場合もある。 子どもの予防接種に関する親の考え方や行動に何が影響しているのか、また、なぜ子どもへの予防接種を受け入れない親がいるのかについての理解は...

DPP-4(ジペプチルペプチダーゼ-4)阻害薬、GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)受容体作動薬、およびSGLT-2(ナトリウム-グルコース供役輸送担体-2)阻害薬の心血管病を持つ患者に対する効果

2 years 6 months ago
DPP-4(ジペプチルペプチダーゼ-4)阻害薬、GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)受容体作動薬、およびSGLT-2(ナトリウム-グルコース供役輸送担体-2)阻害薬の心血管病を持つ患者に対する効果 要点 - GLP-1RA(グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬)とSGLT2i(ナトリウムーグルコース共役輸送担体-2阻害薬)(新規糖尿病治療薬の2つ)は、糖尿病と心血管病(心臓と血管の病気)を併せ持つ患者の心血管病による死亡、およびあらゆる原因による死亡のリスクを低下させる可能性がある。 - SGLT2i薬は心不全による入院リスクを軽減し、GLP-1RA薬は致命的および非致命的な脳卒中の発症を低下させる可能性がある。 - これらの薬が、糖尿病でない人の心血管の健康にも良い影響を与えるのか、あるいは糖尿病患者に見られる効果は、これらの薬の血糖値コントロール効果だけによるものなのかについては、さらなる研究が必要である。 心血管病とは何か? 心血管病とは、心臓と血管に影響を及ぼす病気の総称である。世界的に主要な死因の一つとなっている。血液中の脂肪成分は血管内に停滞して血管を詰まらせ、心臓が血液を正常に送り出せなくなる心不全、脳卒中や心筋梗塞などの問題を引き起こす可能性がある。運動不足や太っている、あるいは高血圧や高コレステロール、糖尿病の人は、心血管病のリスクがある。 新しいタイプの糖尿病治...

脳卒中後のリハビリテーションに費やす時間と活動指標への効果

2 years 6 months ago
脳卒中後のリハビリテーションに費やす時間と活動指標への効果 レビューの論点 リハビリテーションに費やす時間が長いほど活動が向上するのか?何が重要か?重要なのは、リハビリテーションに費やす総時間なのか、それともリハビリテーションの提供方法(スケジュール)なのか。それは例えば、1週間あたりのリハビリテーションの時間なのか?あるいは、リハビリテーションの頻度なのか? 背景 脳卒中のリハビリテーションは、脳卒中を患った人が回復し、活動を取り戻すのを助けるものである。国によって、受けるべき治療の量に関するガイドラインが異なる。イギリスでは、それぞれの適切な療法を毎日45分以上行うことが推奨されていいる。カナダのガイドラインでは、1週間に5日、3時間の課題別トレーニングといったより多くの時間が推奨されている。これまでの研究では、リハビリテーションに費やす総時間またはスケジュールの効果において、どちらか一方のアプローチを支持する明確なエビデンスは見つかっていない。イギリスで推奨されている45分という時間は、異なる種類のリハビリテーションと、同じ種類のリハビリテーションの異なる量を比較した研究結果に基づいているが、これは同じ研究ではない。そのため、今回のレビューでは、同じ種類の脳卒中リハビリテーションの異なる量のみを比較する。 研究の特性 21件の研究を対象とし、1,412人の脳卒中患者を対象と...

COVID-19の治療に抗生物質は有効か、また望ましくない効果を引き起こすか?

2 years 6 months ago
COVID-19の治療に抗生物質は有効か、また望ましくない効果を引き起こすか? 要点 - 抗生物質のアジスロマイシンは、COVID-19の有効な治療法ではない。 - アジスロマイシン以外の抗生物質がCOVID-19の治療に有効かどうかは、十分な研究がないため、わからない。 - COVID-19に対する抗生物質を調査している進行中の試験が19件見つかった。その結果、結論が変わるようであれば、今後、このレビューを更新する。 抗生物質とは何か? 抗生物質は、細菌による感染症を治療するための安価で一般的な薬である。しかし、最近の実験室内の研究で、一部の抗生物質がCOVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を含むいくつかのウイルスの繁殖を遅らせることがわかった。実験室での試験では、抗生物質の一つであるアジスロマイシンがウイルスの活動や炎症を抑えることができたため、COVID-19の治療薬の候補として研究されている。COVID-19に抗生物質を投与する前には、十分な証拠が必要である。なぜなら、抗生物質の過剰使用や誤用は、感染症の原因となる生物が変化することで抗生物質が効かなくなる「薬剤耐性」を引き起こす可能性があるからである。 何を知りたかったのか? このレビューでは、COVID-19患者において、抗生物質が死亡、重症度、感染期間を減少させるかどうか、QOL(生活の質)に影響を与...

脳卒中を発症した人に対する抗凝固薬による早期治療

2 years 6 months ago
脳卒中を発症した人に対する抗凝固薬による早期治療 レビューの論点 脳卒中を発症してすぐに抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を投与された人が、改善したかどうか、出血の問題があったのかどうかを調べた。 背景 毎年、世界中で何百万人もの人が脳卒中を発症している。脳卒中の大多数は、血栓が脳に至る血管を詰まらせる場合に生じる。脳への血液供給が制限されたり遮断されたりすると、脳の細胞が機能を果たさなくなる。その結果、脳に永続的な損傷を引き起こし、障害が残ったり、場合によっては死に至ることもある。脳卒中によるダメージは、腕や足の機能低下、言語や視覚の障害などを引き起こす可能性がある。脳卒中は時に致命的だが、多くの場合、生存者は発症前にできていたことができなくなる。脳卒中は一般的な病気であり、そのダメージは甚大であるため、研究者は、脳卒中が起こった後、すぐに血栓を取り除く方法を見つけようとしている。その方法の一つとして、抗凝固薬という血液をサラサラにする薬がある。もし、患者が抗凝固薬によく反応すれば、脳卒中の悪い影響を避けられるかもしれない。抗凝固薬の最大の問題点は、出血を起こした場合、患者が非常に深刻な状態に陥る可能性があることである。 検索期間 エビデンスは2021年8月までのものである。 研究の特性 最良の答えを見つけるために、抗凝固薬を他の薬物、有効成分を含まない偽薬(プラセボ)、または...
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7 hours 22 minutes ago
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