Latest Japanese Reviews

手洗いやマスクの着用などの物理的な対策は、呼吸器系ウイルスの拡散を止めたり、遅らせたりするか?

1 month 4 weeks ago
手洗いやマスクの着用などの物理的な対策は、呼吸器系ウイルスの拡散を止めたり、遅らせたりするか? 要点 マスクやN95/P2呼吸器の着用が、呼吸器系ウイルスの感染拡大の抑制に役立つかどうかは、評価した研究に基づく範囲では不明である。 手指衛生プログラムは、呼吸器系ウイルスの感染拡大を抑制するのに有効かもしれない。 呼吸器系ウイルスはどのようにして広がるのか? 呼吸器系ウイルスは、鼻、喉、肺といった気道の細胞に感染するウイルスである。これらの感染症は深刻な問題を引き起こし、正常な呼吸に影響を与える。インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの原因となる。 呼吸器系ウイルスに感染した人は、咳やくしゃみをした時にウイルス粒子を空気中に拡散させる。空気中のウイルス粒子やウイルスが付着した表面に触れると、他の人が感染する。呼吸器系ウイルスは、小規模な集団内における流行から、地域や国での流行(エピデミック)、世界的な流行(パンデミック)にいたるまで、急速に広がる可能性がある。 呼吸器系ウイルスが人々の間で広がるのを防ぐための物理的な対策としては、以下のようなものがある。 - こまめに手を洗う、 - 目、鼻、口に触れない、 - くしゃみや咳をする時は、口と鼻を肘で覆う、 - ものの表面を消毒液で拭く、 - マスク、目の保護具、手袋、保護ガウ...

川崎病に対する免疫グロブリン療法

2 months ago
川崎病に対する免疫グロブリン療法 要点 川崎病の小児において、高用量の免疫グロブリンを点滴で投与する治療法(経静脈的免疫グロブリン療法:IVIG)は: ・アスピリンや中用量または低用量のIVIGと比較して、冠動脈病変形成リスクを減少させる可能性が高い。 ・ 明確な安全性に関する懸念は見られない。 ・アスピリンと比較して、発熱期間を短縮する可能性は高いが、追加治療の必要性についてはほとんど差が認められない。 ・中用量または低用量のIVIGと比較して、発熱の持続期間および追加治療の必要性を減少させる可能性がある。 なぜこの問題が重要なのか? 川崎病は、血管が炎症を起こして腫れる病気である。症状としては、高熱(発熱)に加え、唇の荒れ、イチゴ舌(腫れぼったい赤い舌)、目の充血、発疹、手足の発赤、および腫れ、皮膚の剥がれ、首のリンパ節の腫れなどが見られ、幼児に多く発生する。心臓に血液を供給する血管(冠動脈)の腫れや炎症は、この病気の最も重篤な合併症であり、冠動脈病変を引き起こす原因となる。冠動脈病変は、後天性の心臓病として、時には死亡につながることもある。しかし、迅速な診断と治療により、これらの合併症を防ぐことが可能である。川崎病の治療には、主に免疫グロブリンとアスピリンの静脈内投与が行われる。患者の治療には、これらの薬剤、投与量、および投与時間(レジメン)がさまざまに組み合わせて用いられ...

ホルモン剤による避妊をしていない人と比較した、ホルモン剤による避妊をしている人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった時に血栓を発症する確率

2 months 2 weeks ago
ホルモン剤による避妊をしていない人と比較した、ホルモン剤による避妊をしている人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった時に血栓を発症する確率 論点 COVID-19になった人の、心臓発作や脳卒中を含む血栓の発生やその他の重篤な結果に対するホルモン剤による避妊法の影響に関するエビデンスを検討した。エストロゲンとプロゲスチンの両方を含む避妊薬を服用している人と、ホルモン剤を使用しない避妊をしている人、プロゲスチンだけを含む避妊薬を服用している人を比較検討したいと考えた。該当する研究は5件しか見つからなかった。 背景 ホルモン剤による避妊、特にエストロゲンを含む避妊薬の使用は、足や肺に血栓ができる可能性を高めたり、脳卒中になる可能性を高めたりすることがある。また、COVID-19の発症により、足や肺に血栓ができることも確認されている。ホルモン剤による避妊をしている人がCOVID-19になった場合、血栓ができる可能性が高いかどうかはわかっていない。ホルモン剤による避妊をしている人がCOVID-19陽性になった場合、避妊薬の使用を止めるべきか、違う避妊法に切り替えるべきかを知ることができるよう、さらなる研究が必要である。 研究の特性 2022年3月までに発表された研究を対象とした。避妊をした人(特に、ホルモン配合剤のようにエストロゲンを含む避妊薬を使用した人)における、避妊...

生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ

4 months ago
生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ レビューの論点 不妊治療のうち生殖補助医療(ART)を受けている女性において、採卵の一環として行われる卵胞フラッシュの安全性と有効性を評価しようとした。 背景 自然に妊娠するのが困難なカップルは、妊娠するための介入(治療)を受けることを選択するかもしれない。これらの介入は、生殖補助医療(ART)と呼ばれる。ARTのひとつに体外受精(IVF)がある。体外受精では、ホルモン剤を用いて卵巣を刺激し、それぞれの卵巣にある卵胞の中で卵を複数発育させる。この卵巣刺激に続き、これらの卵を採取するために、超音波ガイド下で卵胞内に針を挿入する。卵胞内を吸うだけでその内容物を回収する吸引法の代わりに、吸引後に卵胞内をフラッシュすることで、卵の回収率があがり、その結果、妊娠・出産の可能性が高くなるのではないかという提案がなされてきた。この方法は、卵胞フラッシュと呼ばれる。 研究の特性 合計1,643人の女性が、卵胞吸引単独群または卵胞吸引後フラッシュ群に無作為に割り付けられた15件の研究を対象とした。この2 つの手法に差があるかを見るため、主要な結果として出生率 (女性1000人あたり生まれた赤ちゃんの数)および流産率 ( 女性1000人あたりの流産数) について調査した。この分野で2021年7月に利用可能なすべての関連した研究を同定するため、包括的な検索を...

介護施設における肺炎予防のための口腔ケア

4 months 1 week ago
介護施設における肺炎予防のための口腔ケア 介護施設関連肺炎(NHAP)とは何か? 介護施設関連肺炎(NHAP)とは、長期療養施設や介護施設の入居者に発生する肺の細菌感染症を指す。 NHAPを防ぐ対策として、どのようなものがあるか? 口腔内(口の中)の衛生状態が悪いと、感染症にかかりやすくなる可能性がある。専門的な口腔ケアとは、歯と歯ぐきのブラッシング、義歯の清掃、洗口液の使用、そして歯科医師による訪問診療などを組み合わせたものである。これに対して日常的な口腔ケアは、自分で行うケア、または口腔衛生に関する特別な教育を受けていない介護施設の職員が行うケアである。 何を調べたかったのか? 口腔ケアによってNHAPが減少するかどうかを明らかにしたいと考えた。また、介護施設やその他の長期療養施設の入居者の死亡数(肺炎やその他の原因によるもの)が口腔ケアによって減少するかどうかについても調査を行った。 何を行ったのか? 介護施設入居者の口腔ケアに関するランダム化比較試験(RCT)について、科学文献データベースおよび登録されている研究の検索を行った。ランダム化比較試験(RCT)は、参加者が各治療群に無作為に割り振られるため、最も信頼できる科学的エビデンスが得られると考えられている。研究結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 何が見つかった...

湿疹や食物アレルギーを予防するためのスキンケア介入

4 months 1 week ago
湿疹や食物アレルギーを予防するためのスキンケア介入 乳児の肌の保湿は、湿疹や食物アレルギーの予防になるか? 要点 生後1年間、保湿剤を肌に塗るなどのスキンケア治療は、湿疹の発生を予防するものではない。むしろ、食物アレルギーの可能性や皮膚感染症の可能性を高めると考えられる。このレビューでは、湿疹と食物アレルギーの予防についてのみ検討している。湿疹を治すには、やはりスキンケア治療が重要である。 アレルギーとは何か? 免疫反応とは、体が有害と思われる物質を認識し、防御する仕組みのことである。アレルギーとは、通常は無害である特定の食物や物質(アレルゲン)に対して、体の免疫系が反応することである。アレルギーは体のさまざまな部位に影響を及ぼし、その影響は軽度なものから重篤なものまである。 食物アレルギーと湿疹 湿疹は、皮膚の乾燥やかゆみ、ひび割れなどを引き起こす一般的な皮膚疾患である。湿疹は子どもに多く、それも1歳の誕生日前に発症することが少なくなく、長く続くこともある。 食べ物に対するアレルギーは、口の中のかゆみ、盛り上がったかゆみのある赤い発疹、顔の腫れ、胃の症状や呼吸困難などを引き起こすことがある。通常、食べ物を食べてから2時間以内に起こる。 食物アレルギーがある人は、喘息、花粉症、湿疹など、他のアレルギー疾患も持っていることが多い。 このコクランレビューを行った理由 乳児の湿疹や食物...

スミス・レムリ・オピッツ症候群に対するスタチン療法

4 months 1 week ago
スミス・レムリ・オピッツ症候群に対するスタチン療法 レビューの論点 スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)の患者に対して、スタチンを用いた治療単独またはコレステロール療法との併用は、コレステロール療法単独と比較して、より良い結果(生存率、生活の質、神経行動異常の頻度または重症度、成長パラメータまたはバイオマーカーレベルの変化など)をもたらすか、また有害作用の発生リスクはどの程度あるのか? 背景 スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)は遺伝性の奇形症候群であり、コレステロールが体内で生成されず、7-デヒドロコレステロール(7-DHC)や8-デヒドロコレステロール(8-DHC)などの、通常であればコレステロールに変換されるいくつかの毒性分子が蓄積されることで発症する。つまり、SLOSでは正常な身体的成長が妨げられ、さまざまな程度の知的障害や発達遅延(あるいはその両方)および行動異常(例えば、興奮性、攻撃性、不安性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、衝動性、睡眠障害など)を示す可能性がある。また、SLOSはさまざまな身体的異常や障害を引き起こす可能性があることも特徴的である。現在のところSLOSの治療法はないが、SLOS患者の診療においては、コレステロールの補充療法が一般的な対処法とされている。これは、この疾患の現在の生化学的知見のみに基づくものである。しかし、実験室や独立した個...

境界性パーソナリティ障害をもつ人に対する薬物療法の利益とリスクは何か?

4 months 1 week ago
境界性パーソナリティ障害をもつ人に対する薬物療法の利益とリスクは何か? 要点 このレビューは、2010年に発表された同テーマのレビューを更新したものである。このレビューにはその後追加された18件の研究が含まれているが、結論は同じままである。境界性パーソナリティ障害(BDP)に対する薬物療法の利益とリスクはおそらくないが、そのエビデンスは不明確である。 薬物療法の効果をプラセボと比較する、より良い大規模な研究が必要である。そのような研究は、男性、青年、そして追加の精神疾患の診断を受けた人々にも焦点を当てるべきである。 BPD(境界性パーソナリティ障害)とは? BPDは、他者との関わり方や、自己の理解の仕方に影響を与える。正確な原因は不明であるが、遺伝的要因と環境要因(成長期にストレスやトラウマとなるようなライフイベントなど)が組み合わさって生じると考えられている。成人の約2%、青少年の約3%が罹患している。 BPDの症状は、4つのカテゴリーに分類される。 気分の不安定さ:BPDをもつ人は、激しい感情を経験し、それが急激に変化して、コントロールすることが困難になることがある。また、空虚で見捨てられたと感じることも多い。 認知の歪み(乱れた思考パターン):BPDをもつ人は、しばしば混乱した考えを持つことがある(例えば、自分はひどい人間だと思うかもしれない)。また、妄想的な考えやストレス...

未成熟な蚊の生息する水環境にどのような恒久的または一時的な変化をもたらすと、マラリアの人への感染の減少に、より効果的か?

4 months 2 weeks ago
未成熟な蚊の生息する水環境にどのような恒久的または一時的な変化をもたらすと、マラリアの人への感染の減少に、より効果的か? なぜマラリアの人への感染を減らすことが重要なのか? マラリアは、主にアフリカやアジアに住む人々の間で、公衆衛生上、非常に大きな影響を及ぼしている。マラリアを減少させるための対策は長年にわたって研究されてきた。人を刺してマラリアに感染させることができるのはメスの蚊の成虫であるため、対策のほとんどは、未成熟な蚊(幼虫やサナギ)の数を減らして、成虫になるのを防ぐことに重点を置いている。 未成熟な蚊の生息環境の恒久的または一時的な変化とは? 未成熟な蚊が生息する水環境は、恒久的な変化(改変)や一時的な変化(処置)によって攪乱できる。恒久的な変化の例としては、排水路を設置する、整地する、側溝を埋め戻すなどが挙げられる。一時的な変化の例としては、川の流量を変える、水路の底をさらう、草を刈る、植物で水面を覆うなどが挙げられる。これらの介入は、単独で、あるいは殺虫剤の定期的な散布(幼虫駆除)など他の標準的な処理と併せて行うことができる。 何を調べたかったのか? 未成熟な蚊の生息環境にどのような恒久的または一時的変化を与えると、人のマラリア感染数の減少(臨床面の結果)と未成熟な蚊や成虫の個体数の減少(昆虫学的結果)につながるか明らかにすることを試みた。 何を行ったのか? 未成熟...

予定外の入院をしている高齢者に対する運動

4 months 2 weeks ago
予定外の入院をしている高齢者に対する運動 要点 予定外の入院中の高齢者向けの運動療法には利点がある場合もあるが、それは定かではない。運動による介入は、おそらく害を及ぼすことはない。高齢者が入院しているときに転倒のリスクを増加させることはなかった。 何が問題なのか? 高齢者は、予定外の入院をした後、普段の日常生活を送ることができなくなることがよくある。その理由のひとつは、入院中は健康なときに家で過ごすよりも非活動的になってしまうからである。また、入院中に活動的でないことは、混乱するリスクの増加、移動の困難、退院時の生活の質の低下など、他の問題の原因となることもある。 何を知りたかったのか? 入院中の高齢者の運動を支援することで、退院時の回復を促し、退院後普段の日常生活を送る能力が向上するか? 何を行ったのか? 運動プログラムを通常のケア(偽の介入の有無にかかわらず)と比較した研究を医療データベースで検索した。通常のケアとは、研究調査に参加していない患者に通常行われる治療である。2件の研究では、通常のケアに加えて偽の介入を行った。偽の介入は、患者の回復に影響を与えるためではなく、研究に信頼性を持たせるために実施された。 何が分かったか? 7,511人が参加した24件の研究が見つかり、参加者の58%が女性であった。研究参加者の平均年齢は73歳から88歳であった。ヨーロッパで実施された研...

避妊用インプラントや子宮内避妊具は、産後数日以内に挿入したほうがよいのか、4~6週間待ったほうがよいのか?

5 months ago
避妊用インプラントや子宮内避妊具は、産後数日以内に挿入したほうがよいのか、4~6週間待ったほうがよいのか? この要約で「人」という言葉を使うときは、現在妊娠する能力のある個人を意味する。 要点 - 避妊用インプラントや子宮内避妊具(IUD)の挿入を4~6週間待つ(遅延挿入)よりも、出産後数日以内に挿入する(即時挿入、入院中)方が、挿入される人の数が増える。 - 挿入のタイミングは、産後6か月または12か月にこれらの避妊法を使用する人の数にほとんど差をもたらさない。 - IUDの自然排出は、即時挿入した人の方が多いようである。 - インプラントやIUDの即時挿入と遅延挿入の両方における意図しない妊娠の割合については、さらなる研究が必要である。 避妊用インプラントや子宮内避妊具とは何か? 避妊用インプラント(訳者注:2022年12月現在、日本では未承認)と子宮内避妊器具(IUD)は、出産後すぐに使用できる可逆的で安全な、非常に有効な避妊方法である。インプラントは上腕部に、IUDは子宮に、医師や看護師が挿入する。これらの避妊法を行う人は、インプラントかIUDのどちらかを使用する。 妊娠と妊娠の間隔が適度に空いていることは、妊娠中の人と新生児の両方の健康にとって望ましい。通常、避妊のための処置は産後最初の健診(通常、産後6週間前後)で行われる。しかし、この受診前に性行為をしたり、受診しな...

授乳中の母親への支援

5 months ago
授乳中の母親への支援 レビューの論点 世界保健機関(WHO)は、生後6か月までは母乳のみで育て、少なくとも2歳までは母乳育児を重要な食生活の一部として継続することを推奨している。母乳育児は、乳幼児と母親の短期的・長期的な健康に良いことが分かっている。母乳で育てられた赤ちゃんは、肺や腸の感染症になりにくい。太り過ぎや糖尿病になる可能性も低くなる。また、母親は糖尿病になりにくく、乳癌や卵巣癌にもなりにくいと言われている。いくつかの問題に直面した結果、希望していたよりも早く母乳育児を止めてしまう母親は多いかもしれない。良いケアと支援は、女性が困難を乗り越え、母乳育児を続けられるように自信をつけるのに役立つかもしれない。 このレビューでは、母乳育児中の母親に対して組織的な支援を提供することが、標準的な出産ケアと比較して、母親の母乳育児の継続を助けるかどうかを検討した。助産師、看護師、医師などの医療専門家、あるいはコミュニティ・ヘルス・ワーカーやボランティアなどの訓練を受けた一般市民からの支援に関心があった。 重要性 母乳育児のためにどのような支援ができるかを知ることで、母親がどこに住んでいても、望む限り母乳育児を続けることができるよう手助けすることができる。母乳育児を早期にやめると、母親は失望し、落ち込み、長期にわたる苦痛を味わい、自分自身と乳児の健康にも問題が生じる可能性がある。支援は...

中枢性睡眠時無呼吸症候群がある人に対する非侵襲的換気法

5 months ago
中枢性睡眠時無呼吸症候群がある人に対する非侵襲的換気法 検討した内容 このレビューでは、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)がある人に対する非侵襲的換気(換気を補助する人工呼吸のこと、以下、NIV)の効果を、他の治療法や異なるタイプのNIVと比較検討した。CSAとは、睡眠中に脳が筋肉に空気を取り込むように指示を出せないため、呼吸が定期的に停止する疾患である。CSAは、男性や慢性心疾患がある人に多く発症する。CSAの人は、夜中によく目が覚め、日中はとても眠くなり、普段のように運動ができなくなる。睡眠時無呼吸症候群は、心臓発作や脳卒中など、他の疾患や死亡のリスクを高める可能性もある。 NIVでは、機械を使って呼吸を助ける。NIV療法では、フェイスマスクや鼻マスクを使用して、肺に空気を送り込み、呼吸努力の必要性を軽減させる。NIV療法にはいくつかのタイプがあり、呼吸を補助する方法が異なる。以下にいくつか例をあげる。 • CPAP(Continuous Positive Airway Pressure、シーパップ):吸気と呼気で連続的に肺に空気を送り込む。 • 二重陽圧(BiPAP、バイパップ):吸気時に呼気時よりも多く肺に空気を送り込む。 • ASV(Adaptive Servo Ventilation):主に呼吸が止まった時に肺に空気を送り込む。 非侵襲的な換気により、空気が肺に入りや...

変形性関節症に対する抗うつ薬

5 months ago
変形性関節症に対する抗うつ薬 背景 変形性関節症は、軟骨が減少し、関節の間が狭くなることを特徴とする関節の病気である。その結果、痛み、変形、障害などが生じることがある。 抗うつ薬は、中枢神経系の神経経路を調節することにより、痛みに影響を与えると考えられている。 変形性膝関節症および股関節症の痛みに対する抗うつ薬の臨床的有用性と有害性を評価することを目的とした。 研究の特徴 このレビューは2021年1月現在のものである。抗うつ薬とプラセボ(ダミー治療)および非ステロイド性抗炎症薬(痛みを和らげ、炎症を抑えるために広く使用されている)を比較した2,122人の参加者による9件の臨床試験を対象とした。参加者の多くは女性(70%)で、平均年齢は54.4歳から65.9歳であった。7件の試験は変形性膝関節症のみを検討したものである。また、2件には変形性股関節症がある人も含まれていた。すべての試験で、非ステロイド性抗炎症薬の併用または非併用で、抗うつ薬とプラセボが比較された。 主な結果 プラセボと比較して、抗うつ剤はわずかな利益をもたらす結果となった。 痛み 抗うつ剤を投与した場合、プラセボと比較して0点から10点の範囲の値を示すスケールでさらに0.59点の痛みが軽減された。 - プラセボ群では、1.73点の痛みの減少がみられた。 - 抗うつ剤投与群では、2.32点の痛みの軽減がみられた。 レス...

ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か?

5 months ago
ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か? ドライアイとは何か? ドライアイとは、涙が目を十分に潤すことができないときに起こる、よく見られる症状である。さまざまな理由により、涙の量が不十分になったり不安定になったりする。例えば、涙の分泌量が減少したり、涙の質が悪くなったりする場合に、ドライアイになることがある。涙の量が不安定になることで、目の表面に炎症が起きたり、傷がついたりする。ドライアイの症状は不快であり、しばしばチクチクする、あるいは焼け付くような痛みを感じたり、時には視界がぼやけることもある。 ドライアイの治療方法は? ドライアイには、多くの治療法がある。涙の水層が相対的に不足しているために起こるドライアイに対しては、人工涙液、分泌刺激薬、血清点眼、涙点プラグ(涙の出口に栓をする)などの治療法がある。涙の油層の分泌が阻害されたドライアイに対する治療法としては、抗菌薬、温湿布、あるいは副腎皮質ホルモンやシクロスポリンAなどの抗炎症薬を使用する方法がある。副腎皮質ステロイドの点眼薬は、炎症を抑え、短期間に症状を緩和することを目的に使用されるが、長期的な使用により、眼圧の上昇あるいは白内障が発生することが懸念されている。 何を調査したのか? 副腎皮質ステロイド点眼薬が、単独使用、または他の薬との併用により、ドライアイの症状や、ドライアイの診断あるい...

炎症の検査は、医師が呼吸器感染症に抗生物質を使うかどうかの判断に役立つのか?

5 months 1 week ago
炎症の検査は、医師が呼吸器感染症に抗生物質を使うかどうかの判断に役立つのか? 要点 1.呼吸器感染症の症状で受診した患者に対して、診察時に医師がC反応性蛋白(CRP)の迅速検査(ポイントオブケア検査)を行うと、患者の回復に影響を与えることなく、抗生物質の処方をする患者の数をおそらく減らすことができる。 2.プロカルシトニンのポイントオブケア検査が、抗生物質の使用や患者の回復に影響を与えるかどうかはわからない。 3.今後は、小児、免疫系の疾患を持つ人、併存疾患(現在かかっている別の疾患)を持つ80歳以上の人に焦点を当てた研究を行う必要がある。抗生物質処方の指針となる、プロカルシトニンや新しいバイオマーカーを評価する研究が推奨される。 ポイントオブケア検査とは何か? ポイントオブケア検査では、診察時に数滴の血液を採取するだけで、3~20分以内に結果が出る。そのため、採血した血液を検査室に運ぶ必要がなく、診察の際に結果をすぐに治療法の選択に役立てることができる。炎症に反応して体内で作られる血液中のさまざまな物質を検出することができるポイントオブケア検査がある。このような物質をバイオマーカーと呼ぶ。 炎症とバイオマーカーとは何か? 炎症とは、細菌やウイルス感染などの傷害に対する反応である。体は、炎症に反応して自然に物質を作り出すが、それは血液中で検出され、バイオマーカーと呼ばれている。バ...

乗り物酔いの予防および治療のための抗ヒスタミン薬

5 months 1 week ago
乗り物酔いの予防および治療のための抗ヒスタミン薬 本レビューの目的は何か? 乗り物酔いは、船酔い、車酔いなどとも呼ばれ、一連の症状(通常は吐き気と嘔吐)を伴う。これらの症状は、現実の動き(例えば、車の運転や船に乗っているとき)、または仮想の動き(例えば、仮想現実シミュレーション)や動く視覚環境(例えば、動いている電車の窓から外を見ているとき)にさらされたときの動きの錯覚に反応して、無意識的に体が動くことによって引き起こされる。抗ヒスタミン薬は、乗り物酔いの予防または治療のために一般的に用いられてきた薬の一つである。この研究の目的は、抗ヒスタミン薬が乗り物酔いに有効であるかどうかを調査することである。 要点 乗り物酔いを起こしやすい成人において、抗ヒスタミン薬は、プラセボ(偽の薬)と比較して、自然に発生する動きのある状況下(船や飛行機など)で、乗り物酔いを起こすリスクを低減する可能性があることがわかった。また、プラセボと比較した場合、抗ヒスタミン薬は眠気を起こしやすいことがわかった。なお、既に起こってしまった乗り物酔いの治療に抗ヒスタミン薬が有効かどうかを調査した研究はなく、18歳未満の小児等に対する影響についてはほとんど情報がなかった。その他、調査を行ったすべての知見について、他の薬を使用した場合や薬を使用しない処置を行った場合と比較した抗ヒスタミン薬の真の効果、他の副作用の有無...

変形性股関節症または変形性膝関節症に対する運動療法と並行して行う追加の治療

5 months 1 week ago
変形性股関節症または変形性膝関節症に対する運動療法と並行して行う追加の治療 本レビューの目的 変形性関節症は、股関節や膝関節によくみられる慢性の変性疾患であり、痛みを生じ、歩行などの日常生活に支障をきたす。陸上での運動療法とは、水中ではなく陸上で行われる運動療法のことで、治療の第一選択とされる。このレビューの目的は、陸上での運動療法に別の治療を追加することによって、変形性股関節症または膝関節症を抱える人の痛みや身体機能、生活の質(QOL)、患者自身が思う全体的な変化、レントゲン上の所見が改善するかどうかを明らかにすることにある。追加の治療には、徒手療法(身体の上に軽く手をあてるもの)、心理療法、食事療法、物理療法(患部を温めたり、冷やしたり、神経を刺激したり、超音波やレーザーをあてるものなど)や鍼治療などがある。陸上での運動療法に別の治療を追加した場合と、1)陸上での運動療法に偽の治療を加えた場合を比べた研究、もしくは 2)陸上での運動療法のみを比べた研究をレビューの対象とした。 検索日 このシステマティックレビューは2021年6月10日現在のものである。 わかったこと ランダム化比較試験 62件(24か国、6,508人の参加者、ほとんどが女性)が見つかった。平均年齢は52~83歳、症状の継続期間は9か月から12年であった。変形性膝関節症の人を対象とした研究が59件、変形性股関節...

集団的リーダーシップは医療従事者の行動、患者の健康、および職員の幸福度を向上させるか?

5 months 2 weeks ago
集団的リーダーシップは医療従事者の行動、患者の健康、および職員の幸福度を向上させるか? 要点 集団的リーダーシップには、複数の医療従事者が観点や知識を共有することが含まれる。利用可能なエビデンスからは、集団的リーダーシップにより、医療従事者の行動、患者の健康、または職員の幸福度に大きな違いをもたらされるかどうかについての確信性は得られなかった。また、研究の結果に対する信頼性は、「中等度」から「非常に低い」であり、研究の質が低く、数も少なかったために大きく制限されていた。 何を調べたかったのか? 本レビューの目的は、集権的で階層的なリーダーシップとは対照的な、集団的リーダーシップの経験が、医療従事者としての専門的な行動、患者の医療、職員の幸福度を向上させるかどうかを調査することである。そのために、集団的リーダーシップと集権的リーダーシップを比較した研究について検索が行われた。 何を行ったのか? 医療従事者間での共同意思決定と意思疎通を特徴とする集団的リーダーシップの介入に関連したすべての研究について検索し、解析を行った。 何が見つかったのか? 合計955人の参加者を対象とした、3件の研究が見つかった。これらの研究は、カナダ、イラン、米国の病院で実施されていた。集団的リーダーシップの介入は、リーダーシップを改善し(合計955人の参加者を対象とした3件の研究より)、加えてチームワークを...

早発卵巣不全の女性には、どのホルモン療法がより効果的か?

5 months 3 weeks ago
早発卵巣不全の女性には、どのホルモン療法がより効果的か? 要点 さまざまなホルモン療法を比較検討した研究は、3つの異なる内容で実施されたものが3件しか見つからなかった。 これらの小規模な研究のデータに基づいた結果、明確な結論を出すことはできなかった。 早発卵巣不全の女性が健康な妊娠をする可能性を高めるために、最適なホルモン療法を調べることを目的とした、適切に実施され、十分に大規模な試験が必要である。 早発卵巣不全とは何か? 卵巣は、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなどのホルモンに反応し、またこれらのホルモンを生成する性腺であり、左右に一対ある。骨、心臓、生殖に関する健康にとって、重要な役割を担っている。早発卵巣不全は、卵巣が正常なホルモンを分泌できなくなる状態で、女性の約1%が罹患する。その結果、骨折や心臓病、不妊症のリスクが高まる。16歳までに初経(初潮)を迎えなかったり、40歳までに6ヶ月以上月経(生理)が来なかったりすると、早発卵巣不全と診断されることがある。また、卵巣の働きに関係する各種ホルモンの値に異常があるかどうかを確認するために、血液検査が必要になる。 早発卵巣不全はどのように治療するのか? 早発卵巣不全は、一般的に、正常に働いている卵巣から分泌されるホルモンを模倣したホルモンを用いたホルモン療法で治療される。治療の目的は、骨、心臓、血管および生殖機能へ...
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16 hours 24 minutes ago
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