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人工授精のためにタイミングを合わせるさまざまな方法は、女性が妊娠・出産するのにどのくらい効果があるか?

1 day 19 hours ago
要点

- 排卵と人工授精のタイミングを合わせる方法について、どの方法がより安全なのか、より効果があるのかを知るには、十分なエビデンスがない。
- また、卵胞の発育を観察したり排卵を誘発したりする方法についても、その結果が不確実で、小規模な1件の研究から得られたものでしかないため、どの方法が優れているかどうかは不明である。
- 今後の研究では、より良い研究手法を用い、生児出産や妊娠継続の観点から治療がうまくいったかどうかを判断するべきである。

不妊症とは?

不妊症とは通常、避妊をしない定期的な性交を12ヵ月間、または35歳以上の女性では6ヵ月間続けても妊娠に至らない場合に診断される。不妊症は、子どもがほしいと望んでいるカップルのおよそ10%で見られる。

不妊症はどのように治療するのか?

不妊症のカップルに対する治療の選択肢はさまざまで、不妊症の原因、カップルの年齢、子どもを望んでからの期間、その他の要因によって異なる。

人工授精は、不妊症に対する一つの治療方法である。これは、女性の月経周期のうち、できるだけ排卵に近い時期に精子を子宮内に直接注入する治療法である。

人工授精をする時期は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を注射する(訳者注:この注射によって排卵が促される)か、尿または血液中の黄体形成ホルモン(LH)サージを検出する(訳者注:LHサージがおこると自然に排卵がおこる)ことによって計画されることが多い。その他の方法も使われる。しかし、健康な児が生まれる可能性や、初期段階を越えて妊娠が継続する可能性が最も高いタイミングの合わせ方がどれなのかは、まだ明らかになっていない。

知りたかったこと

さまざまなタイミングの合わせ方のうち、生児を出産するのに最も効果的な方法はどれかを調べたかった。

実施したこと

不妊症のカップルを対象に、人工授精におけるさまざまなタイミングの合わせ方を比べた研究を探した。研究結果を比較・要約し、研究方法や研究規模などに基づくエビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

6,603組のカップルを対象とした42件の研究が見つかった。主に、計1,917組のカップルが参加した7件の研究のみから得たエビデンスを使った。他の35件の研究は、研究手法が不適切であったり、結果を分析するのに十分な情報が得られなかったりした。

主な結果

- 3件の研究では、hCGの注射から人工授精を行うまでの時間を比べていた。異なる時間間隔の比較結果を分析した:注射から人工授精までの時間を、0~33時間、34~40時間、34~40時間、40時間以上に分けて比べた。これらの群間で、妊娠継続率や生児出生率に差があるという明確なエビデンスは示されなかった。

- 1件の研究では、人工授精のタイミングを決める方法として、hCGの注射とLHサージの検出を比べた。これらの群間で、生児出生率や妊娠継続率に差があるかどうかは分からなかった。

- 別の1件の研究では、2種類の排卵誘発剤(遺伝子組換えhCGと尿由来hCG)を比べた。これらの群間で、生児出生率や妊娠継続率に差があるかどうかは分からなかった。

- 1件の研究では、標準的なhCGの注射に加えて、卵巣を刺激して卵子をより多く育てるFSHの注射をすることで、hCGの注射だけと比べて妊娠の可能性が上がるかどうか調べられた。hCGの注射にFSHの注射を加える群と比べて、hCGの注射だけの群では、生児出産率や妊娠継続率が低い可能性が示された。しかし、この結果に対する信頼性は低く、この結果を確認するためにはより大規模な研究が必要である。

エビデンスの限界は何か?

すべての比較について、エビデンスの信頼性は低い。なぜなら、最も重要な評価項目(生児出産または妊娠継続)について明確な結果を出すには、対象とした女性の数が少なすぎるからである。

本エビデンスはいつのものか?

エビデンスは、2023年10月現在のものである。

Adesina M, Cantineau AEP, Showell MG, Vail A, Wilkinson J

若年性特発性関節炎に対する腫瘍壊死因子阻害薬の利益とリスクは何か?

1 day 19 hours ago
主要メッセージ

• プラセボと比較した場合、腫瘍壊死因子阻害薬(TNFi)は、若年性特発性関節炎(JIA)がある若年者に対して全体的に高い有効性を示すかもしれないが、関節機能、痛み、疾患のコントロール、有害性に対する影響は不明である。

• メトトレキサートと呼ばれる薬と比較した場合のTNFiの利益と有害性については不明である。

• 若年性特発性関節炎におけるTNFiの利益と有害性を理解するためには、より質の高い研究が必要である。

若年性特発性関節炎とは何か?

若年性特発性関節炎(JIA)は、若年者の関節に痛みや腫れを引き起こし、関節が正常に機能しなくなる病気である。原因不明の炎症が長期続くことで発症し、関節だけでなく、目など体の他の部位にも影響を与えることがある。この病気は、16歳未満に発症し、症状が日常生活に影響を与えることがある。

若年性特発性関節炎はどのように治療されるのか?

JIAの治療法:

• 理学療法:関節の機能を改善するための特別な運動;

• 薬物療法:ステロイド薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、メトトレキサートやTNFiのような免疫反応を抑える薬、炎症の原因を標的とする薬などが含まれる。通常、弱い薬から始め、必要に応じてより強い治療薬に移行していく。

なぜJIAにTNFiを使用するのか?

TNFiは、関節炎の従来の治療薬で十分な効果が得られない場合、または副作用などで使用が困難な場合に使用される。TNFiは免疫系を標的として作用し、疾患のコントロールに役立つ。

知りたかったこと

TNFiが、若年性特発性関節炎がある人に対して有効性が高くかつ安全であるかどうかを、プラセボ(試験薬と見た目が同じであるが、活性成分を含まない偽薬)、NSAIDs、従来の関節炎の治療薬、または他のTNFiと比較して確かめたかった。

実施したこと

TNFiをプラセボ、関節炎の治療薬、または他のTNFiと比較した研究を検索した。研究結果を比較および要約し、研究方法や規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

合計678人のJIAがある人を対象とした9件の研究を特定した。参加者の年齢は、8歳から15歳で、80%が女性であった。平均罹病期間(病気にかかっている期間)は、0.8年から6.7年であった。対象とした研究は複数の国で実施され、研究期間は12週間から54週間であった。7件の研究では、TNFiをプラセボと比較し、残り2件の研究では、TNFiとメトトレキサートが比較されていた。TNFiをNSAIDs、またはメトトレキサート以外の薬と比較した研究はなかった。

主な結果

試験開始16週間後、プラセボ治療群の14%、TNFi治療群の34%が、若年性特発性関節炎の治療効果を示した。

試験開始16週間後、痛みの強さは、0~100までのスケール(0は痛みなし、数値が低いほど痛みが軽度であることを示す)で評価され、プラセボ治療群で33ポイント、TNFi治療群では11ポイントであった。

関節機能の状態は、0~3までのスケール(0は正常機能、スコアが低いほど機能が正常であることを示す)で評価され、プラセボ治療群は1ポイント、TNFi治療群では0.84ポイントであった。

試験開始16週間後、参加者の疾患活動性の全般的評価は、0~100までのスケール(数値が低いほど疾患活動性が低いことを示す)で評価され、プラセボ治療群で34ポイント、TNFi治療群では23ポイントであった。

有害事象による治療中止は、プラセボ治療群の1%、TNFi治療群の3%で発生した。

プラセボ治療群の6%、TNFi治療群の7%が重篤な有害事象を報告した。

残念ながら、最大16週間までの寛解状態(一定の基準を満たすレベルの症状改善)の達成に対するTNFiの効果について報告した研究はなかった。

このレビューで得られたエビデンスの限界は何か?

利用可能な研究の数が限られていること、また研究参加者がどの治療を受けているかを認識していた可能性があり、結果に影響を与えた可能性があることから、エビデンスに対する信頼性は非常に低い。

このエビデンスはどれくらい最新のものか?

エビデンスは2024年2月28日時点のものである。

Cagnotto G, Juhl CB, Ahlström F, Wikström F, Bruschettini M, Petersson I, Dreyer L, Compagno M

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の治療に筋力トレーニングは役に立つか?

1 day 19 hours ago
主なメッセージ

- 膝蓋腱炎(膝蓋腱を含む膝前面の痛み)の治療に筋力トレーニングを行うことのエビデンスは非常に不確かであり、確実な結論を出すことは難しい。

- アスリートにとって、筋力トレーニングが治療なしと比べて痛みを軽減させるかどうかは非常に不確かである。筋力トレーニングをしても、何も治療しない場合と比較して運動機能には全くもしくはほとんど差がなく、グルココルチコイド注射(抗炎症薬)と比較しても運動機能や痛みには全くもしくはほとんど差がないかもしれない。

- これらのトレーニングが手術よりも痛みの軽減や運動機能の改善において優れているかどうかは不明である。アスリートは、筋力トレーニングと手術で同様の治療効果を得て、同様にスポーツ復帰ができていた。

膝蓋腱炎とは?

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の人は通常、膝の前面にある腱(筋肉と骨をつないでいる繊維)の痛みや押したときの圧痛がある。この症状は、ジャンプや急に止まる動作、キック、ランニングを繰り返すような運動をしている人に影響を与えることが多い。膝蓋腱炎はアスリートでも、アスリートでなくとも障害を引き起こす可能性があるが、競技のパフォーマンスや選手生命に特に大きな影響を与える。

膝蓋腱炎の治療法は?

膝蓋腱炎の主な治療法のひとつは運動、特に筋力トレーニングである。他には、抗炎症薬(グルココルチコイド注射など)や、場合によっては手術がある。その他の治療法としては、多血小板血漿注射(血液中の濃縮成分を膝に注入する療法)、超音波療法(音波を利用して痛みを軽減し、治癒をサポートする療法)、レーザー療法(集束した光を利用して痛みや腫れを軽減し、治癒を早める療法)、衝撃波療法(高エネルギーの音波を利用して治癒を促し、痛みを軽減する)などが行われている。

何を行ったのか?

膝蓋腱炎の患者を対象に、筋力トレーニングと他の治療法(治療なし、抗炎症薬(グルココルチコイド注射など)、手術など)を比較した研究を検索した。痛み、運動機能、治療効果、生活の質、スポーツ復帰、望ましくない影響に関するデータを収集し、その結果の信頼性を評価した。

わかったこと

1989年から2022年の間に発表され、英語で報告された7件の研究が見つかった。ノルウェーの研究が2件、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、ポーランド、アメリカの研究が各1件であった。

主な結果

痛み (0~100の間で測定、数値が低いほど痛みが少ないことを意味する)治療終了時

筋力トレーニングが治療なしに比べて痛みを軽減するかどうかは、非常に不確かである。

- 筋力トレーニング群の人の痛みは27点であった。

- 治療なし群の人の痛みは62点であった。

筋力トレーニングはグルココルチコイド注射と比較しても痛みには全くもしくはほとんど差がないかもしれない。

- 筋力トレーニング群の人の痛みは24点であった。

- グルココルチコイド注射群の人の痛みは18点であった。

筋力トレーニングが手術に比べて痛みを軽減するかどうかは、非常に不確かである。

- 筋力トレーニング群の人の痛みは13点であった。

- 手術群の人の痛みは17点であった。

運動機能 (0~100の間で測定、数値が低いほど運動機能が良いことを意味する)治療終了時

筋力トレーニングは治療なしと比較しても運動機能には全くもしくはほとんど差がないかもしれない。

- 筋力トレーニング群の人の膝の運動機能は72点であった。

- 治療なし群の人の膝の運動機能は65点であった。

筋力トレーニングはグルココルチコイド注射と比較しても運動機能には全くもしくはほとんど差がないかもしれない。

- 筋力トレーニング群の人の膝の運動機能は76点であった。

- グルココルチコイド注射群の人の膝の運動機能は82点であった。

筋力トレーニングが手術に比べて運動機能を改善するかどうかは、非常に不確かである。

- 筋力トレーニング群の人の膝の運動機能は52点であった。

- 手術群の人の膝の運動機能は45点であった。

治療効果 (-5~+5の間で測定、+5が最大の改善を意味する)治療終了時

筋力トレーニングは手術と比較しても治療効果には全くもしくはほとんど差がないかもしれない。

- 筋力トレーニング群の人の治療効果は+1.7点であった。

- 手術群の人の治療効果は+0.2点であった。

スポーツ復帰する割合 12か月後

筋力トレーニングは手術と比較してもスポーツ復帰する割合には全くもしくはほとんど差がないかもしれない。

- 100人中85人が筋力トレーニング後にスポーツ復帰した。

- 100人中86人が手術後にスポーツ復帰した。

エビデンスの限界は何か?

アスリートに対する筋力トレーニングの治療効果は不明である。対象者の数が少なく、質の異なる研究がいくつかあった。すべての研究はアスリートのみを対象としていたため、この結果はアスリート以外の人には当てはまらないかもしれない。治療による望ましくない影響を報告した研究はなかった。

エビデンスの更新状況

エビデンスは、2023年9月5日現在のものである。

Lopes AD, Rizzo RRN, Hespanhol L, Costa LOP, Kamper SJ

筋炎(炎症性筋疾患)の人に対して、特異的な生物学的経路を標的とした治療薬の利益と有害性は何か?

1 day 19 hours ago
要点

確固としたエビデンスがないため、特発性炎症性筋疾患(特発性炎症性ミオパチー、IIMs)の人におけるリツキシマブ、アバタセプト、補体阻害薬の利益とリスクは不明である。

アバタセプトによる治療はプラセボと比較して、国際筋炎評価・臨床研究グループ(IMACS)の改善定義(DOI)で評価される特発性炎症性筋疾患の活動性を改善させるかもしれない。

異なる病型の特発性炎症性筋疾患において、標的治療薬が有効かどうかを確かめるには、大規模な研究が必要である。特発性炎症性筋疾患は希少であるため、国際的に協力し複数の施設で研究(多施設共同研究)を行うことが望ましい。

背景

特発性炎症性筋疾患は、免疫系が筋肉を攻撃する疾患群である。筋肉の障害(炎症)を特徴とし、筋力低下が進行していく。皮膚筋炎(DM)など一部の特発性炎症性筋疾患の病型では、非常に特異的な皮膚症状(皮疹)を伴う。従来、皮膚症状が認められない場合、この病気は多発性筋炎(PM)と呼ばれていたが、現在では、特発性炎症性筋疾患にはさまざまな病型があり、治療に対する反応も異なることが分かっている。本レビューでは、免疫抑制薬に反応しないと考えられている「封入体筋炎」は対象外とした。

特発性炎症性筋疾患は、免疫系の過剰な働きを抑える「免疫抑制」薬と、免疫系の(異常な)反応を変化(正常化)させる「免疫調節」薬で治療される。これらの治療の目的は、免疫系が筋肉を攻撃するのを阻止することである。特発性炎症性筋疾患の治療には、免疫系の特定の分子や細胞を標的とする治療薬もあれば、標的としない(広範囲に作用する)治療薬もある。本レビューでは、最初の治療薬グループ(標的治療薬)を評価した。

知りたかったこと

特発性炎症性筋疾患における標的治療薬の利益と有害性を明らかにしたかった。特に、リツキシマブ、アバタセプト、および補体阻害薬による治療に関心があった。

実施したこと

特発性炎症性筋疾患の人における標的治療薬を評価したすべての研究を検索した。特発性炎症性筋疾患の人が、2つ以上の治療群にランダムに割り当てられていた研究のみを対象とした。

研究結果を比較および要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

治療が効果的かどうかを評価するには、さまざまな方法がある。特発性炎症性筋疾患の人にとって重要と考えられる特定の評価項目を探した。最も重視したアウトカムは、スコア上においての障害度または機能の改善と筋力の改善(スコアが15%以上改善した場合)の2つである。その他の評価項目は、国際的に合意された異なる評価指標の組み合わせによる改善達成スコア、すなわち国際筋炎評価・臨床研究グループ(IMACS)の改善定義(DOI)によるスコアおよび総合改善スコア(TIS)の使用による改善達成への評価、ステロイドの総投与量、重篤な有害事象、治療効果が不十分または有害事象により治療を中断した人の数などである。

わかったこと

830人の特発性炎症性筋疾患がある人を対象とした16件の研究を特定した。最大規模の研究は200人を対象に行われ、最小規模の研究は13人を対象に行われていた。全ての研究は、米国(14件)またはヨーロッパ(10件)、あるいは両地域で実施されていた;6件の研究では、他の地域も含まれていた。15件の研究は製薬会社から資金提供を受けており、残り1件の研究では薬剤提供を受けていた。研究期間は8週間から52週間であった。

1件の研究で、200人の参加者を対象にリツキシマブによる治療を評価していた。この試験では、試験開始後8週目で、参加者全員がリツキシマブを使用したため、8週目時点での結果を分析対象としていた。この評価期間は、事前に設定していた期間(リツキシマブが効果を示すと想定される期間)よりも短い期間である - 通常、治療効果が現れるとされる期間、6か月以上、最低3か月以上の結果を探していた。このような短期間の研究から得られた結果では、結果の信頼性に確信が持てない要因となる。リツキシマブが、IMACS DOIで評価される全体的な疾患改善に及ぼす効果、治療効果が不十分または有害事象による治療中断に与える影響についてのエビデンスは、非常に不確実である。他の評価に関しては、8週目時点では利用できなかった。

アバタセプトについては、168人の参加者を含む2件の研究を対象とした。アバタセプトは、IMACS DOIで評価される特発性炎症性筋疾患の活動性を改善させるかもしれないが、このエビデンスに対する信頼性は非常に低い。アバタセプトは、筋力、障害度、重篤な有害事象、または治療中断には、ほとんど影響を与えない可能性がある。

補体阻害薬(エクリズマブとジルコプラン)については、プラセボと比較した2件の研究(合計40人の参加者を対象)を特定した。使用したステロイドの総量について報告した研究はなかったが、他のアウトカムについては、補体阻害薬は特発性炎症性筋疾患にほとんど影響を与えない可能性がある。

エビデンスの限界は何か?

特発性炎症性筋疾患に対する標的治療薬が効果的であったかどうかを確かめるには、十分な情報がなかった。標的治療薬が有効かどうかを確かめるには、さらなる研究が必要である。

本エビデンスの更新状況

本要約は、2023年2月3日までに入手可能なエビデンスに基づいている。

Raaphorst J, Gullick NJ, Shokraneh F, Brassington R, Min M, Ali SS, Gordon PA

成人の不安障害の検出におけるベック不安評価尺度 (BAI)の精度は?

1 day 19 hours ago
要点

現在、成人の不安障害をスクリーニングするためのより短い質問票があり、ベック不安評価尺度 (BAI)を使用する前に検討する価値があるかもしれない。現在のところ、成人の不安障害の検出にBAIを用いるべきかどうかは、以下の理由のために不明である:

  • 解析に含まれた研究の数が少なかった;

  • 研究の質が限られていた;

  • ほとんどの研究は、さまざまな併存疾患を持つ、さまざまな専門的臨床現場に属する人々を対象としていた。

なぜ不安障害の早期発見が重要なのか?
不安障害は一般的な疾患であるが、治療の恩恵を受けそうな人でも発見されないことが多い。このため、不安のスクリーニングを勧める専門家もいる。他の専門家は、スクリーニングを支持しない。なぜなら、不安障害がないにもかかわらず誤って不安障害と判定したり(「偽陽性」として知られる)、不安障害のある人を見逃したり(「偽陰性」として知られる)する可能性があるからである。偽陽性の結果は、それを最も必要とする人々からリソースを奪い、不必要な心配、さらなる検査や治療を受けさせてしまう可能性がある。一方、偽陰性の結果は、治療を遅らせる可能性がある。「あらゆる不安障害」(AAD)という用語は、さまざまな精神衛生状態をカバーしている。これには、特に全般性不安障害(GAD)やパニック障害が含まれる。

ベック不安評価尺度とは何か? ベック不安評価尺度(Beck Anxiety Inventory:BAI)は質問紙である。もともとは不安の重症度を測定するために開発されたものだが、スクリーニング研究にも使われている。人々は21個の質問にそれぞれ0点から3点までの尺度で答える。すべての質問に答えた後、得点を合計して0点から63点までの合計点を出す。合計スコアがある値(いわゆるカットオフ値)以上であれば、不安障害の可能性が高い。BAIでは、カットオフ値として16点がよく使われる。BAIを使用することで、シンプルかつ迅速な結果を得ることができる。BAIスコアが高い人は、さらなる評価のための診察を促されることがある。

知りたかったこと BAIで成人が不安障害かどうかをどの程度見分けることができるかを調べたかった。

実施したこと
不安の検出にBAIを用いた研究を検索した。そして、これらの研究の結果を統合した。

わかったこと
このレビューでは、AADの検出におけるBAIに関する情報をもつ10件の研究(われわれの最も重要な分析)、GADに関する情報をもつ8件の研究、PDに関する4件の研究の結果が含まれた。全体として、14件の研究、6,232人の参加者がこのレビューに含まれた。9件の研究は多様な専門的臨床現場で、2件の研究は非臨床現場で、3件の研究は専門的臨床現場と非臨床現場の両方で実施されていた。 - その結果を総合すると、AADと診断された270人を含む1,000人のグループにBAIを実施した場合、
- BAIでAAD陽性と判定された241人のうち、95人はAADであると誤認されている(偽陽性)
- BAIでAAD陰性と判定された759人のうち、124人はAADではないと誤認されている(偽陰性)。

エビデンスの限界
研究は非常に多岐にわたり、1種類の分析につき数件の研究しかなく、研究の質も限られていた。また、研究対象者の中には、BAIを実施する前から不安を抱えていた人や、その情報が得られなかった人もいた。そのため、スクリーニングを受けるべき集団を代表していない人を研究参加者として含む研究もある。

結果が意味すること
研究データが限られているため、BAIがスクリーニング検査として優れているかどうかはわからない。この結果は主に、多様な専門的臨床現場におけるBAIの使用を反映している。しかし、BAIが特定の人々や特定の環境においてより効果的であるかどうかは、まだ十分に理解されていない。現在、不安障害のスクリーニングのために開発されたより短い質問票があるので、まずそれを検討する価値があるかもしれない。

エビデンスの更新状況
本エビデンスは2024年7月12日現在のものである。

Eck S, Dümmler D, Aktürk Z, Korman M, Dawson S, Schneider A, Hapfelmeier A, Linde K, Fomenko A

変形性膝関節症の治療における人工膝関節置換術は、非外科的治療と比べてどのような利益と害があるか?

1 day 19 hours ago
主なメッセージ
  • 軽度から重度の変形性膝関節症患者において人工膝関節全置換術後に非外科的治療プログラムを行った場合、非外科的治療プログラムのみと比べて、以下のことがわかった。 ・実際に意味があると感じられるレベルのわずかな痛みの軽減を感じる可能性がある。 ・実際に意味があると感じられないレベルのわずかな身体機能の改善の可能性がある。 ・追加手術の必要性がわずかに減少する可能性がある。健康関連QOL(生活の質)については、治療群の間で実益をもたらすような差はないと思われる。

  • 人工膝関節全置換術後の非外科的治療プログラムが、非外科的治療プログラムのみと比べて、重篤な副作用や副作用による治療中止のリスクに及ぼす影響は非常に不確実である。

  • 変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術と非外科的治療を比べる今後の研究が必要である。それらの研究では、治療による利益とリスク、患者満足度を調べる必要がある。

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、膝関節とその周辺に影響を及ぼす、よくある進行性の疾患である。変形性関節症は、痛み、こわばり、運動能力の低下を引き起こし、軽度、中等度、重度の場合がある。これらの症状は、世界中で何百万人もの人々のQOL(生活の質)に影響を及ぼしている。

変形性膝関節症はどのように治療するのか?

中等度から重度の変形性膝関節症の治療には、非外科的治療と人工膝関節置換術がある。非外科的治療は、教育、運動、理学療法、減量、薬物療法、関節注射などが一般的である。

変形性膝関節症が進行すると、人工膝関節置換術が必要になる人もいる。人工膝関節置換術では、外科医は膝関節の表面(脛骨、大腿骨、ときには膝蓋骨も)を金属、プラスチック、セラミック製の人工物に置き換える。また、関節がスムーズに動くように、脛骨と大腿骨の間にプラスチックのスペーサーを入れる。

変形性膝関節症には多くの治療法があり、誰にとっても最良といえる治療法が一つだけあるわけではない。変形性膝関節症の患者が治療法を理解するためには、非外科的治療と人工膝関節置換術の潜在的な利点とリスクに関するわかりやすく信頼できる情報が必要であり、それによって個人の価値観、目標、生活様式に最も適した治療を選択できるようになる。

知りたかったこと

中等度から重度の変形性膝関節症の成人に対して、どの治療(人工膝関節置換術、非外科的治療、プラセボ(薬効のない薬を投与する)、シャム治療(みせかけの手術をする等))が最も効果的かを調べたかった。

また、人工膝関節置換術、非外科的治療、プラセボ、またはシャム治療を行った成人に、それぞれで副作用があったかどうかも調べたかった。

実施したこと

中等度から重度の変形性膝関節症患者を対象に、人工膝関節置換術と非外科的治療、プラセボ、シャム治療と比べた過去15年間の研究を検索した。研究結果を要約して比較し、研究の方法や規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

軽度から重度の変形性関節症の成人100人を対象とした研究が1件だけ見つかった。この研究では、人工膝関節全置換術後に12週間の非外科的治療プログラムを行った場合と、同じ12週間の非外科的治療プログラムのみを行った場合を比較した。人工膝関節全置換術後に非外科的治療プログラムを行ったグループでは、50人中32人が女性(64%)で、平均年齢は66歳であった。非外科的治療プログラムのみを行ったグループでは、50人中30人が女性(60%)で、平均年齢は66歳であった。

主な結果

この研究では、人工膝関節全置換術後に12週間の非外科的治療プログラムを行った場合と、同じ12週間の非外科的治療プログラムのみを行った場合を比べて、以下のことがわかった。

  • ・1年後に実際に意味があると感じられるレベルで痛みが減る可能性がある。

  • ・1年後に身体機能は改善するかもしれないが、その改善は実際に意味があるとは感じられないレベルかもしれない。

  • ・膝の追加手術(膝の再置換術または追加の手術、および膝の初回手術)の必要性が減る可能性がある。

  • ・1年後の健康関連QOL(生活の質)において、治療群の間で実際に意味があると感じられるような差はない可能性がある。

治療結果に対する患者満足度に関するエビデンスはなかった。

人工膝関節全置換術後に12週間の非外科的治療プログラムを行った場合、同じ12週間の非外科的治療プログラムのみを行った場合と比べて、1年後の重篤な副作用のリスクや副作用による治療中止のリスクに対する影響については、非常に不確実である。

エビデンスの限界

エビデンスに対する信頼度は中等度から非常に低い。その理由は、見つかった研究が2011年から2013年に行われた小規模な研究の1つだけだったこと、医師がどのように人工膝関節置換術を行う人を決めたかが不明確であったこと、対象者の一部は中等度から重度の変形性関節症ではなく軽度であったこと、前週に激しい痛みがあった人が研究から除外されていたことであり、これらがレビューの結果に影響を与えた可能性がある。さらに、対象者は自分が受けた治療を知っており、それが結果に影響を与えた可能性がある。

このレビューの更新状況

エビデンスは2025年1月現在のものである。

Pacheco-Brousseau L, Abdelrazeq S, Kelly SE, Pardo Pardo J, Dervin G, Stacey D, Wells GA

COVID-19を診断するための迅速抗原検査の精度は?

1 week 5 days ago
要点

- 迅速抗原検査は、感染の徴候や症状がない人に使用した場合は、症状がある人に使用した場合と比較して、それほど正確ではない。この後者のグループでは、COVID-19が確認された人と接触したことがある人の方が成績が良い。 しかしながら、エビデンスは決定的なものではない。

- 迅速抗原検査の精度は、異なるメーカーの異なる迅速抗原検査によって異なる。市販されている多くの検査法にはエビデンスが不足しており、無症状の人のCOVID-19を診断するためのWHOの基準を満たしているものはない。

- 症状のない人をスクリーニングすることでCOVID-19の蔓延を抑えられるかどうか、特に学校や家庭など医療以外の環境でのCOVID-19の蔓延を抑えられるかどうかについては、さらなるエビデンスが必要である。

COVID-19の迅速抗原検査とは何か?

これらの検査は、症状のある人もない人も、COVID-19感染を確認または除外するために行われる。これらにはいくつかの利点がある:

- 持ち運び可能:自宅や医療機関以外の場所など、どこでも使用できる;

- 検査室ベースの検査よりも使いやすい:必要な機器は最小限である;

- 安価:標準的な臨床検査よりも安価である;

- 専門家を必要としない:誰でも使用でき、専門的なオペレーターやセッティングを必要としない。

- 迅速な結果:ほとんどすぐに結果が出る。

このレビューでは、迅速抗原検査(「ラテラルフロー検査」とも呼ばれる)に焦点を当てた。これらの検査では、鼻や喉から採取した検体を用いてウイルス上のタンパク質を検出する。妊娠検査薬に似ており、使い捨てのプラスチック製カセットに入っている。

なぜこの問題が重要なのか?

COVID-19の症状がない人は、感染しているかどうかを確認する簡単で信頼できる方法が必要である。これは、他の人、特にリスクの高い人へのウイルス感染を防ぐのに役立つ。COVID-19は通常、RT-PCRと呼ばれる臨床検査で確認されるが、この検査には専門機器が必要で、結果が出るまでに少なくとも24時間かかることが多い。

迅速抗原検査によって、たとえ症状がなくても、より多くの人が迅速に検査を受けることが可能になる。しかし、誤った結果を避けるためには、その正確さと正しい使い方を理解することが重要である。

知りたかったこと

市販されている医療従事者の訪問(臨床現場ですぐに行われる)時の迅速抗原検査が、症状のない人のCOVID-19感染を確実に診断するのに十分な精度があるかどうかを知りたかった。

実施したこと

COVID-19の症状がない人を対象とした迅速抗原検査の精度を測定した研究を検索した。これらの人々は、感染の有無を確認するためにRT-PCR検査も受けた。研究は病院、地域社会、あるいは自宅で行われた。

わかったこと

144,250サンプルを含む146件の研究をレビューした。このうち7,104検体でCOVID-19の罹患が確認された。研究では41種類の抗原検査が行われた。研究の約60%はヨーロッパで行われた。

主な結果

COVID-19の罹患が確認された人のうち、抗原検査でCOVID-19の罹患が正しく同定されたのは、症状のない人の平均55%であった。この検査は、COVID-19に感染した人と接触したことのある人(感染者の平均59%が正しく同定された)については、接触歴のない人(感染者の平均53%が正しく同定された)よりもわずかに正確であった。

COVID-19に罹患していない人では、抗原検査で99.5%の人が感染を正しく除外できた。

検査精度は検査ブランドによって異なる。どの検査も、症状のない人を検査した場合、COVID-19を確定または除外するための世界保健機関(WHO)の基準を満たしていなかった。いくつかの検査は、単独の研究ではWHOの基準を満たしたが、症状のない人を対象とした評価では満たされなかった。

10,000人の無症状者のうち、COVID-19に罹患している人との接触が知られていない人の要約結果を使用した場合、50人(0.5%)が本当にCOVID-19に罹患していた:

- 67人がCOVID-19に陽性反応を示すことが示唆される。このうち、40人(60%)は実際にはCOVID-19に罹患していないだろう(偽陽性の結果)。

- 9,934人がCOVID-19に陰性反応を示すことが示唆される。このうち、24人(0.2%)は実際にはCOVID-19に罹患しているだろう(偽陰性の結果)。

COVID-19に感染している人との接触が疑われる人の結果を要約すると、症状のない10,000人が抗原検査を受け、そのうちの50人(0.5%)が本当にCOVID-19に感染していたとする:

- 89人がCOVID-19に陽性反応を示すことが示唆される。このうち、60人(67%)は実際にはCOVID-19に罹患していないだろう(偽陽性の結果)。

- 9,911人がCOVID-19に陰性反応を示すことが示唆される。このうち、21人(0.2%)は実際にはCOVID-19に罹患しているだろう(偽陰性の結果)。

エビデンスの限界

ほとんどの研究は、代表的なグループを含み、バイアスのない方法でテストを解釈した。しかし、多くの場合、試験はメーカーの指示通りに実施されていなかったり、実世界の条件下(Point of Careなど)で実施されていなかったりする。

COVID-19に罹患していないことを確認するのは、あまり得意ではなかった。半数以上の研究では、陰性と判定された人が本当にCOVID-19に感染していないのかどうか、例えばCOVID-19の症状を持つ人と接触してからの期間を考慮するなどして確認しようとする試みはなかった。

さまざまな検査のブランドを直接比較した研究はほとんどないため、どれがベストかを簡単に判断することはできない。抗原検査結果が陽性であることと、その人の感染力との関係についてコメントすることはできない。また、抗原検査を繰り返し行うことで、集団内でウイルスが蔓延するリスクが低くなるかどうかについては、十分な情報がない。

本レビューの更新状況

このレビューは、前回のレビューを更新し、2022年2月17日までに発表されたエビデンスを含む。

Dinnes J, Berhane S, Walsh J, Reidy P, Doherty A, Hillier B, Scandrett K, Hettiarachchi D, Islam F, Mathangasinghe Y, Nyaaba N, Taylor M, Weeratunga P, Wickramasinghe D, van Wyk SS, Cunningham J, Davenport C, Dittrich S, Emperador D, Hooft L, Leeflang…

上気道の感染症である感冒に対する抗菌薬

3 weeks 6 days ago

世界中のほとんどの人が、毎年1回以上風邪をひく。低所得国を除けば、風邪は人々が抗菌薬を使用する最も大きな理由のひとつであり、鼻からの粘液が着色している場合はなおさらである(急性化膿性鼻炎)。しかし、一般的な風邪はウイルスが原因で、抗菌薬が効かない。また、抗菌薬は副作用を引き起こす可能性があり、特に下痢を引き起こすことがある。抗菌薬の使い過ぎは、細菌が抗菌薬に耐性を持つことにつながる。

風邪に抗菌薬が効くかどうかを調べるために、抗菌薬を服用するグループと、抗菌薬を含まないが似たような薬(プラセボ)を服用するグループを比較した研究を特定した。風邪に関する研究が6件(1,047人の参加者)、急性化膿性鼻炎に関する研究が5件(791人の参加者)であった。多くの研究には結果にバイアスが生じる可能性のある欠陥があった。特に、参加者の多くが研究者が把握していなかった胸部や副鼻腔の感染症に罹患していた可能性があるためである。

抗菌薬は風邪にも急性化膿性鼻炎にも効かず、多くの人が抗菌薬の副作用に悩まされていることが示唆された。

Kenealy T, Arroll B

電子タバコは禁煙に役立つのか?また、禁煙目的で使用した場合、副作用はないのか?

4 weeks 2 days ago
要点

ニコチンを含む電子タバコは、少なくとも6か月間は禁煙に役立つと思われる。ニコチン置換療法よりも効果があり、ニコチンを含まない電子タバコよりも効果があることを示すエビデンスがある。

また、サポートなしの場合や、行動支援のみの場合よりも効果があり、重篤な副作用を伴わない可能性がある。

しかし、電子タバコの効果について確信を持つためには、より多くのエビデンスが必要である。特に、古いタイプの電子タバコよりもニコチンの供給が優れている新しいタイプの電子タバコの効果については、より多くのエビデンスが必要である。

電子タバコとは?

電子タバコ(e-シガレット)またはベイプは、通常ニコチンや香料を含む液体を加熱することによって動作する携帯型デバイスである。電子タバコは、煙ではなく蒸気でニコチンを吸い込むことができる。電子タバコはタバコを燃やさないため、従来タイプのタバコを吸っている人の喫煙関連疾患の原因となるのが明らかなレベルと同じレベルの有害物質を吸い込むことはない。

電子タバコを使用することは、「ベイピング」と呼ばれている。電子タバコは、タバコを止めるために使用する人が多い。ここでは主にニコチンを含む電子タバコに焦点を当てる。

レビューを行った理由

禁煙は多くの病気のリスクを下げる。多くの人が、タバコを止めるのは難しいと思っている。電子タバコの使用が禁煙の助けになるかどうか、また、電子タバコを使用している人に望ましくない影響がないかどうかを調べた。

実施したこと

禁煙のために電子タバコを使用した研究を検索した。

治療が無作為に決定されるランダム化比較試験を検索した。このランダム割付という研究手法は、治療効果について最も信頼性の高いエビデンスが得られるとされている。また、全員に電子タバコを配布した研究や、喫煙者に電子タバコを配布し、その健康状態をモニターした研究も探した。たとえ無作為化がなかったとしても、参加者の健康への影響について学ぶことができたであろう。

以下の点に着目した:

- 何人の人が6か月以上喫煙を止めたか、そして

- 望まない効果(つまり副作用)があった人は何人いたか(少なくとも使用を始めて1週間の時点で報告されている望まない効果)。

文献の検索日

2025年3月1日までに発表されたエビデンスを対象とした。

わかったこと

喫煙者30,366人を含む104件の研究が見つかった。ニコチン入り電子タバコを以下のものと比較した研究である:

- ニコチン補充療法(パッチやガムなど);

- バレニクリン(禁煙補助薬);

- ニコチンを含まない電子タバコ;

- 加熱式タバコ(タバコを燃焼させたり煙を発生させたりすることなく、タバコを十分に高温に加熱して蒸気を放出させる製品;これらは電子タバコとは異なり、タバコの葉やシートを加熱する);

- 経口ニコチン・パウチ(タバコは入っていないが、口の中に入れておくとニコチンを放出するパウチ);

- 他のタイプのニコチン入り電子タバコ(例:ポッドデバイス、新型デバイス);

- 行動面のサポート(アドバイスやカウンセリングなど)。

- 禁煙のためのサポートなし。

ほとんどの研究は米国(48研究)と英国(21研究)で行われた。

レビューの結果

ニコチン代替療法(9研究、2,703人)やニコチンを含まない電子タバコ(7研究、1,918人)を使用するよりも、ニコチンを含む電子タバコを使用したほうが、少なくとも6か月間禁煙できる可能性が高い。

ニコチン入り電子タバコは、サポートがない場合や行動支援のみの場合に比べて、より多くの人の禁煙を助ける可能性がある(11件の研究、6,819人)。

ニコチン代替療法を受けた100人中6人、ニコチンを含まない電子タバコを使用した100人中6人、サポートなしまたは行動支援のみを受けた100人中4人に比べ、ニコチン入り電子タバコを使用した100人中8~11人が禁煙に成功する可能性がある。

ニコチンを含む電子タバコを使用した場合、ニコチン置換療法、サポートなし、行動支援のみの場合と比較して、副作用の発生率に差があるかどうかは不明である。ニコチン入り電子タバコを使用しているグループでは、サポートなしや行動サポートのみと比較して、重篤でない望ましくない影響がより一般的であったというエビデンスがいくつかあったが、エビデンスは不確かである。ニコチンを含む電子タバコとニコチン置換療法を比較した研究では、重篤な副作用を含む副作用が少数報告されている。ニコチンを含む電子タバコを使用している人が、ニコチンを含まない電子タバコを使用している人と比較して、重篤ではない望ましくない効果がどれだけ発生するかについては、おそらく差はない。

ニコチンを含む電子タバコで最も多く報告された副作用は、喉や口の中の炎症、頭痛、咳、気分の悪さだった。これらは、ニコチン代替療法(NRT)を使用したときに経験することと似ているようだ。ニコチン入り電子タバコを使い続けると、時間の経過とともに望ましくない影響は減少した。

結果の信頼性

ニコチンを含む電子タバコは、ニコチン置換療法よりも多くの人の禁煙を助けることができるというエビデンスがあることが分かった。ニコチンを含む電子タバコは、ニコチンを含まない電子タバコよりも禁煙に役立つと思われるが、これを確認するためにはまだ多くの研究が必要である。

また、ニコチンを含む電子タバコと行動療法やサポートなしを比較した研究では、ニコチンを含む電子タバコを使用している人の禁煙率が高いことが示されたが、研究デザインに問題があるため、確実なデータは得られていない。

望ましくない効果に関する結果のほとんどは、より多くのエビデンスが得られれば変化する可能性がある。

Lindson N, Livingstone-Banks J, Butler AR, McRobbie H, Bullen CR, Hajek P, Wu AD, Begh R, Theodoulou A, Notley C, Rigotti NA, Turner T, Fanshawe T, Hartmann-Boyce J

非特異的腰痛に対する非薬物的・非外科的治療の有益性と有害性は何か?

4 weeks 2 days ago
主なメッセージ

急性腰痛(痛くなってから6週間未満の痛み)の場合

・活動的でいるように勧めることは、ベッドで安静にしているように勧めることに比べ、痛みを軽減し、運動機能を向上させるだろう。

亜急性腰痛(6~12週間続く痛み)の場合

・集学的治療(様々な分野を組み合わせた総合的なアプローチによる治療)は、通常治療と比べ、痛みを軽減するだろう。
・脊椎マニピュレーションは、プラセボ(実際の治療に似せてデザインされた「シャム(偽、みせかけ)」または「ダミー」の治療法だが、有効成分や意図された治療効果がないもの)と比べ、運動機能を改善しないだろう。

慢性腰痛(12週間以上続く痛み)の場合

・鍼治療は、プラセボや治療なし、通常治療と比べ、痛みを軽減し、運動機能を改善するだろう。
・運動療法は、プラセボや治療なし、通常治療と比べ、痛みを軽減し、運動機能を改善するだろう。
・牽引療法は、シャムの牽引療法と比べて痛みを軽減することはないだろう。
・集学的治療は、通常治療と比べ、痛みを軽減し、運動機能を改善するだろう。
・心理療法は通常治療と比べ、おそらく痛みを軽減するが、運動機能はほとんど変わらないだろう。

腰痛とは何か。また、どのように治療されるのか?

腰痛はよくある身体の状態であり、能力低下や生活の質の低下を伴うことがある。腰痛のほとんどは、痛みの原因が不明で「非特異的」腰痛と表現される。急性腰痛(6週間未満の痛み)、亜急性腰痛(6~12週間続く痛み)、慢性腰痛(12週間以上続く痛み)など、様々な時期の腰痛に対して、多くの種類の非薬物的・非外科的治療が行われている。腰痛をよりよく管理するために、医療従事者や患者に対して、薬物療法や外科的治療以外の治療法の利点や安全性に関するわかりやすく質の高い情報を提供する必要がある。

何を調べようとしたのか?

成人の非特異的腰痛に対する非薬物療法と非外科的療法の有効性と安全性に関するコクラン・レビューのエビデンスを要約しようとした。

実施したこと
97,183人の参加者、644件の研究を含む31件のレビューが見つかった。これらの研究では、腰痛に対する27種類の治療の効果が調査された。

わかったこと

急性・亜急性の腰痛患者に対しては、ベッドで安静にすることを勧めるよりも、活動的に過ごすことを勧める方が、短期間(3か月まで)では痛みを軽減できるだろう。集学的治療は長期的(12か月以上)には痛みを軽減するだろう。脊椎マニピュレーションは、短期的には運動機能を改善しないだろう。

慢性の腰痛患者に対しては、鍼治療、運動療法、心理療法が短・中期的(3か月から12か月)には、痛みを軽減するだろう。鍼治療と運動療法は、短・中期的には運動機能も改善するだろう。集学的治療は、短・中期的には痛みを軽減し、運動機能を改善するだろう。牽引療法は短期的には痛みを軽減しないだろう。

腰痛に対する他の非薬物的、非外科的治療の効果については、あまり確実性がない。

非薬物的および非外科的治療は、重篤な有害事象(望ましくない、有害な事象)とは関連しないだろう。

エビデンスの限界は何か?

38%のレビューが利用可能な最も厳密な方法論に沿っていないと判断したため、エビデンスに対する確実性を低下させた。レビューの約75%が2020年以前に発表されたもので、含まれるエビデンスが比較的古い可能性があるだろう。推奨ガイダンスにしたがって、これらのコクランレビューを更新する必要がある。

エビデンスの質が低いため、腰痛の臨床で一般的に使用されている多くの非薬物療法や非外科的治療の有益性と有害性については、不確実なままである。医療従事者、患者、腰痛研究に資金を提供している団体には、腰痛治療を十分な情報を得た上で判断をするために、この概要を利用すること勧める。

エビデンスはいつのものか?

この概要は2023年4月現在のものである。 しかし、レビューの1/3(31件中10件)は15年以上前のもので、含まれるエビデンスはさらに古くなっている。

Rizzo RRN, Cashin AG, Wand BM, Ferraro MC, Sharma S, Lee H, O'Hagan E, Maher CG, Furlan AD, van Tulder MW, McAuley JH

リスクが低い子宮内膜癌や子宮内膜異型増殖症(子宮内膜癌の前癌病変)がある女性が、妊娠を望んだ場合、どのような治療の選択肢があるか?

4 weeks 2 days ago
要点

- 子宮内膜癌と子宮内膜異型増殖症(前癌病変)に対する妊孕性(妊娠する能力)を温存する治療法として、さまざまな治療法があることがわかった。しかし、どの治療法が最も効果的なのか、どんな方法で治療するのが最もいいのかについては、わかっていない。

- プロゲスチン(卵巣が出す黄体ホルモンに似た合成ホルモン)による治療にメトホルミンを加えることは、子宮内膜癌や子宮内膜異型増殖症の治療に役立つであろう。レボノルゲストレル子宮内システム(長期にレボノルゲストレルというプロゲスチンを放出する器具)は、プロゲスチンの飲み薬と比べて、好ましくない影響が少なく、同等の効果が得られるため、より有効かもしれない。

- さまざまな治療法を評価し、比べるためには、もっときちんとデザインされた研究が必要である。

子宮内膜癌と子宮内膜異型増殖症とは?

子宮内膜癌は、子宮の内膜にできるがん(子宮体がん)である。世界で6番目に多いがんで、高所得国では4番目に多く、増加傾向にある。子宮内膜異型増殖症とは、子宮の内膜に異常な細胞が増殖する状態で、子宮内膜癌の前癌病変である。治療しなければ、子宮内膜癌に発展する可能性がある。晩産化と肥満率の増加は、どちらもこれらの癌や前癌病変の危険因子である。子宮内膜癌や子宮内膜異型増殖症に対する最も効果的な治療は、手術で子宮を摘出することである。子宮内膜癌や前癌病変は閉経後に多く見られるが、25%くらいは若い女性で発生する。つまり、妊娠を希望しているのに、がんと診断される女性が増えている。このため、妊孕性を温存する治療を検討したいと考える女性が増えている。

通常、プロゲスチンによる治療が勧められる。さらに、メトホルミン(糖尿病の治療薬)や肥満手術(肥満に対する手術)、子宮鏡下内膜掻把術(腟から細いカメラと特殊な器具を挿入し、異常な組織を取り除く手術)といった他の治療法も現在研究されている。しかしながら、最もよい治療法は依然として不明である。

知りたかったこと

どの治療法が子宮内膜癌や前癌病変に有効なのか、また、女性の妊孕性を維持するためにも有効なのかを調べたかった。

実施したこと

子宮内膜癌および前癌病変に対する治療で、妊孕性の温存も目的とした研究を検索した。さまざまな薬、手術、減量プログラムなど、あらゆる治療法を対象とした。女性の全生存期間、何人の女性が出産したか(生児出産率)、何人の女性が癌の再発なしに生存したか、何人の女性が完全に回復したか(病理学的完全奏効率)、治療による重篤な好ましくない影響、心理的症状や生活の質(QOL)への影響の有無、何人の女性が妊娠したか、何人の女性が治療がうまくいかず最終的に子宮摘出術を必要としたかについて、さまざまな治療の効果を知りたいと考えた。研究の結果を要約・比較し、研究の方法や規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

904人の女性を対象とした12件の研究が見つかった。これらには、女性を複数の治療法に無作為に割り付けた6件の研究と、無作為に割り付けなかった6件の研究が含まれていた。

主な結果

メトホルミンとプロゲスチンの併用は、プロゲスチン単独と比べて 、完全奏効率(治療後に検出可能ながんがないこと)をわずかに増やすかもしれない。生児出産や、疾患が持続・進行したために手術が必要になる可能性はほとんど変わらないかもしれない。重篤な副作用は報告されていない。女性の全生存期間や、病気が再発するまでの生存期間、QOLへの影響については情報がない。

子宮内レボノルゲストレル放出システムは、プロゲスチンを長期間放出する小さな器具で子宮の中に挿入して使う。これは、プロゲスチンの飲み薬と比べて、完全奏効率は変わらないかもしれない。体重増加などの好ましくない影響は減るかもしれない。この器具による治療は、女性にとって継続しやすいかもしれない。その他の結果については情報がない。

プロゲスチンの飲み薬に子宮内レボノルゲストレル放出システムを追加しても、生存率、生児出産率、治癒率、QOL、将来の手術の必要性に違いはないかもしれない。また、好ましくない影響を増加させることもないようだ。

エビデンスの限界

いくつかの理由から、エビデンスの確実性は低い。第一に、女性が治療法に無作為に割り付けていない研究がいくつかあった。つまり、比較群の違いが、治療法の違いではなく、割り付けられた女性間の違いによるものである可能性がある。第二に、いくつかのエビデンスは、肥満女性など特定の女性集団に焦点を当てたものであった。最後に、いくつかの研究は非常に小規模なものであった。したがって、さらなる研究によって、これらの結果が変わったり、確実視されるようになったりするだろう。

このレビューの更新状況

エビデンスは、2025年2月3日現在のものである。

Fernandez-Montoli M-E, Sabadell J, Contreras Perez NA, Verdaguer Menéndez-Arango P, Julia Torres C, Lleberia J

モルヌピラビル(抗ウイルス薬)はCOVID-19患者の治療として安全で有効であるか?

4 weeks 2 days ago
要点
  • 入院していない軽度から中等度のCOVID-19患者では、モルヌピラビルはプラセボ(ダミー治療)または通常の治療と比較して、死亡リスクの減少においておそらくほとんど差がない。モルヌピラビルは、入院の必要性を減らしたり、より早く回復させるという点では、ほとんど差がないかもしれない。モルヌピラビルはおそらく望ましくない作用のリスクを増加させず、重篤な望ましくない作用のリスクを増加させない。

  • COVID-19で入院した人に対するモルヌピラビルの安全性や有効性については、エビデンスがはっきりしない。

モルヌピラビルとは?

モルヌピラビルは、重症化するリスクが高い人のCOVID-19の治療に用いられる錠剤である。この薬は、SARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)の繁殖能力を阻害し、身体が感染を撃退するのを助ける。

知りたかったこと

モルヌピラビルが無治療、プラセボ(ダミー治療)、標準治療と比較して以下の項目に関してどのような違いがあるかを明らかにしたかった:

  • COVID-19患者の死亡と入院が減少するか;

  • 回復(症状消失までの時間)を早めるか;

  • COVID-19の原因ウイルスを除去するか(ウイルスクリアランス);

  • 安全性(すべての望ましくない出来事と重大な望ましくない出来事に目を向ける)。

実施したこと

COVID-19が確認された患者において、モルヌピラビルを無治療、プラセボ、標準治療と比較して評価した研究を検索した。研究結果を比較・要約し、研究方法などに基づいてエビデンスの信頼性を評価した。調査したのは、ランダム化比較試験で、参加者を無作為に2種類以上の治療群に割り当てるものである。これは、研究グループが類似していることを確実にし、誰がどのグループに属しているかを治験責任医師と参加者が知らないようにする最善の方法である。

わかったこと

このレビューには11件の研究が含まれ、参加者は31,272人で、ほとんどが軽度から中等度のCOVID-19の外来患者(入院していない人)であった。軽度から中等度のCOVID-19の外来患者(入院していない人)を対象とした研究の結果を合わせると、以下のような主要な結果が得られた:

  • モルヌピラビルによる死亡リスクの差は、おそらくほとんどない。プラセボまたは標準治療を受けた人と比較して、モルヌピラビルを投与された人が1か月以内に死亡する割合は、1万人あたり4人から10人少ない。この減少は臨床的に重要でないと考えた。

  • モルヌピラビルは入院を減少させないかもしれない。つまり、病気が悪化したり、病院での治療が必要になったりするのを防げないかもしれない。

  • モルヌピラビルは5日目までにウイルスクリアランスを増加させるエビデンスがあったが、この効果は14日目までに減少した。患者にとって実際に何らかの差があるかどうかは定かではない。

  • モルヌピラビルは、14日目または28日目までに症状が消失する確率にほとんど影響を及ぼさない可能性がある。

  • モルヌピラビルの有害事象はおそらくほとんど差がなく、重篤な有害事象もほとんど差がない。

重度のCOVID-19で入院した患者におけるモルヌピラビルの効果について明確な結論を出すにはデータが少なすぎる。

エビデンスの限界は?

ほとんどのエビデンスは、軽度から中等度のCOVID-19の外来患者を対象に行われた研究から得られたものであるため、入院中の重症患者には当てはまらない可能性がある。これらの研究では、回復後の生活の質やウイルスがどのくらい体内に留まるかといった長期的な結果に関するエビデンスは乏しかった。モルヌピラビルが、重篤な既往症のある人や低・中所得国の人など、特定のグループにおいて異なる効果を示すかどうかを解析することはできなかった。

本エビデンスはいつのものか?

レビューには、2024年4月までに発表された研究が含まれている。継続的な研究により、将来的にはより多くの洞察が得られるだろう。

Tatz GS, Ochodo EA, Fox T, Owino EJ, Nyagol B, Rupali P, McCaul M, Kredo T, Cohen K

小児の結核とリファンピシン(抗生物質)耐性を診断するためのXpert Ultra検査はどの程度正確か?

1 month ago
要点
  • 小児の肺結核を見つける上で、喀痰(咳によって肺から排出される粘液)、胃の吸引物(胃から吸引された粘液や唾液)、排泄物(ふん便)サンプルのXpert Ultra検査は正確である。

  • 肺結核を見逃すリスクはあるが、肺結核にかかっていると誤診するリスクは低い。

なぜ結核の診断精度を高めることが重要なのか?

2023年には推定130万人の小児が Mycobacterium tuberculosis という細菌(結核菌)によって引き起こされる病気である結核にかかった。結核と判定されない(偽陰性)と、診断が遅れ、病気が悪化して死に至る可能性がある。他方、誤って結核と診断される(偽陽性)と、患者は不必要な治療を受ける可能性がある。

このレビューの目的は何か?

結核の症状がある10歳未満の小児において、肺を侵す結核(肺結核)、中枢神経と脳を侵す結核(結核性髄膜炎)、リンパ節を侵す結核について診断を下し、またリファンピシン(結核治療に用いられる抗生剤)耐性を検出するXpert Ultra検査の精度を評価することである。

このレビューでは何を調べたのか?

Xpert Ultra検査は 結核菌 とリファンピシン耐性を同時に検出する。 結核菌 の検出については、培養(菌を増殖させるために用いる方法)と、症状、胸部X線画像および培養に基づく病気の複合的な定義付けという2つの基準に照らして結果を評価した。リファンピシン耐性については、薬剤感受性試験またはゲノム配列決定(薬剤耐性化をもたらす遺伝子変異を同定する方法)に照らして結果を評価した。

レビューの主な結果

合計23件の研究がレビュー対象に含められた。大半の研究は肺結核に関するものだった(9,223人の小児を対象とする21件の研究)。リファンピシン耐性を調べた研究は3件、結核性髄膜炎について調べた研究は3件、リンパ節結核について調べた研究は2件あった。

1,000人のうち100人が肺結核に罹患している(培養検査の結果)小児の集団では、

喀痰サンプルのXpert Ultra検査:

  • 112人が陽性判定を受け、うち75人は肺結核である(真陽性)が、37人は肺結核ではない(偽陽性)。

  • 888人が陰性判定を受け、うち863人は肺結核ではない(真陰性)が、25人は肺結核である(偽陰性)。

胃の吸引物サンプルのXpert Ultra検査:

  • 151人が陽性判定を受け、うち70人は肺結核である(真陽性)が、81人は肺結核ではない(偽陽性)。

  • 849人が陰性判定を受け、うち819人は肺結核ではない(真陰性)が、30人は肺結核である(偽陰性)。

排泄物サンプルのXpert Ultra検査:

  • 85人が陽性判定を受け、うち68人は肺結核である(真陽性)が、17人は肺結核ではない(偽陽性)。

  • 915人が陰性判定を受け、うち883人は肺結核ではない(真陰性)が、32人は肺結核である(偽陰性)。

鼻咽頭吸引物サンプルのXpert Ultra検査:

  • 68人が陽性判定を受け、うち46人は肺結核である(真陽性)が、22人は肺結核ではない(偽陽性)。

  • 932人が陰性判定を受け、うち878人は肺結核ではない(真陰性)が、54人は肺結核である(偽陰性)。

リファンピシン耐性を調べた3件の研究(対象となった小児は76人)では、リファンピシン耐性があった小児は2人だけだった。

3件の研究において、結核性髄膜炎がXpert Ultra検査により検出された小児の割合は67%と100%の間である(合計215人の小児のうち培養検査で結核性髄膜炎と確定したのは13人)。2件の研究において、培養検査でリンパ節結核が確定された小児の100%につき、Xpert Ultra検査により診断が裏付けられた(合計58人の小児のうち培養検査でリンパ節結核と確定したのは21人)。

エビデンスの限界

肺結核については、レビューの結果の信頼性は中等度である。本レビューにはさまざまな国からの研究が含められ、2つの異なる参照基準が用いられたが、いずれの基準も完璧ではない。リファンピシン耐性に関する結果については確信が持てない。なぜなら、この側面を調査した研究は3件のみであり、リファンピシン耐性を示した小児は2例のみだったからである。リンパ節結核や結核性髄膜炎について調べた研究が少なかったため、これらの種類の結核に関しては、さまざまな研究の結果を統合することができなかった。

このレビューの結果は誰に適用できるか?

このレビューは、HIV感染者またはHIV陰性で、肺結核、結核性髄膜炎またはリンパ節結核の徴候または症状のある小児(生後から9歳まで)に適用される。これらの結果はまた重度の栄養失調で結核の症状がある小児にも適用される。これらの結果は主に、世界で結核の罹患率または結核とHIVの罹患率が高い諸地域に住む小児に適用される。

このレビューが意味すること

レビューの結果は10歳未満の小児において、喀痰、胃の吸引物、排泄物のサンプルから肺結核を見つける上で、Xpert Ultra検査の精度は中等度であることを示している。鼻咽頭吸引物サンプルの検査精度はこれより低い。

Xpert Ultra検査を用いても、(培養検査で確認された)肺結核が診断されないリスクが残るため、臨床医はXpert Ultra検査のみに依存するべきではないことを示唆している。

本レビューの更新状況

このレビューは、前回のレビューを更新し、2023年10月6日までに発表されたエビデンスを含む。

Kay AW, Madison M, Scandrett K, Ness T, Amuge P, Inbaraj LR, Sathya Narayanan MK, González Fernández L, Eisenhut M, Ismail N, Korobitsyn A, Verkuijl SE, Brands A, Viney K, Masini T, Mandalakas AM, Steingart KR, Takwoingi Y

反応性のない統合失調症がある人に対して、同じ抗精神病薬を使い続けるよりも、別の抗精神病薬に切り替えた方がよいのか?

2 months ago
要点

- 非反応性統合失調症がある人に対して、別の抗精神病薬に切り替えた方が結果(評価項目)が良いのか、同じ抗精神病薬を継続した方が良いのかは、エビデンスが非常に不確かであるためわからない。
- この論点を検討した数少ない研究は、使用された抗精神病薬、試験期間、初期無反応の定義などの点で互いに著しく異なっていた。
- この重要なトピックをより深く調査するには、さらに大規模で適切に実施された研究が必要である。

統合失調症とは?

統合失調症は重篤で、長期にわたり身体機能に支障をきたす精神疾患である。人がどう考え、どう感じ、どう行動するか(思考、感情、行動)に影響を与える。約100人に1人が、人生のある時点で統合失調症を発症する。男性も女性も同じように生涯を通じてこの疾患を発症する可能性があるが、男性の方が早期に診断される傾向がある。

治療法は?

抗精神病薬による薬物療法は、統合失調症の主な治療である。抗精神病薬は、統合失調症がある人が経験する幻覚、妄想、思考の混乱、激しい興奮などの症状を抑えるのに役立つ。

しかし、多くの統合失調症がある人は最初の抗精神病薬治療に反応しない(「非反応性」統合失調症と呼ばれる)。このような状況では、抗精神病薬の追加する、他の向精神薬(気分安定薬や抗うつ薬など、抗精神病薬以外の精神障害治療薬)を追加する、最初に投与された薬の量を増やす、他の抗精神病薬に切り替えるなどの治療法が考えられる。しかし、何が最良の治療であるかは依然として不明である。

知りたかったこと

このレビューでは、同じ抗精神病薬で治療を継続する場合と比較して、別の抗精神病薬に切り替えることによって、患者の治療反応率が改善し、統合失調症の全体的な症状や特異的な症状が緩和され、また治療中断率や副作用(好ましくない影響や有害作用)が増加するどうかを検討した。

実施したこと

初期治療に反応しなかった統合失調症がある人を対象に、抗精神病薬の切り替えと同じ抗精神病薬の継続を比較検討した研究を検索した。研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

参加者997人を対象とした10件の研究のみ特定された。ほとんどの研究は小規模で、参加者が100人を超えた研究は3件しかなかった。

薬物に対する反応性、忍容性(有害な作用のために試験を早期に中止した人数で測定)、生活の質(QOL)などの主要な結果において、2種類の戦略(すなわち、別の抗精神病薬に変更した場合と元の抗精神病薬を継続した場合)の間に差は認められなかった。しかし、関心のある結果のほとんどについて、エビデンスは非常に不確実であった。

エビデンスの限界

エビデンスに対する信頼性は限定的である。主な理由は、参加者数が少なく、少数の研究しか含まれていないためである。さらに、調査された抗精神病薬、研究デザイン、試験期間、研究者が用いた非反応の定義に関して、これらの研究は大きく異なっていた。医療従事者が非反応性の統合失調症がある人を治療する最善の方法を決定するためには、より大規模で適切にデザインされた研究が緊急に必要である。

本エビデンスはいつのものか?

エビデンスは、2022年12月現在のものである。

Samara MT, Kottmaier E, Helfer B, Leucht C, Christodoulou NG, Huhn M, Rothe PH, Schneider-Thoma J, Leucht S

非定型抗精神病薬は、自閉症がある人のいらいらやその他の症状の治療に有効か?

2 months ago
要点
  • リスペリドンとアリピプラゾールは易刺激性の症状を軽減する可能性があるが、ルラシドンはおそらく自閉症の小児ではほとんど易刺激性の症状を軽減しない。

  • 自閉症のある小児の攻撃性、体重増加、不随意運動(震えなど)に対するこれらの薬剤の効果については、かなり不確実性がある。

  • これらの薬は、自閉症のある小児の強迫症状(望まない考え(強迫観念)や反復行動(強迫行為))や不適切な言動を減少させる可能性がある。

  • 成人の自閉症がある人におけるこれらの薬剤の有益性と有害性については、データが少なく、十分に検討することができなかった。

自閉症とは?

自閉症は、自閉スペクトラム症または自閉症スペクトラム状態とも呼ばれ、コミュニケーション、社会的相互作用、行動に影響を及ぼす発達障害である。

非定型抗精神病薬とは?

抗精神病薬は主に精神疾患の治療に使用され、脳内の特定の神経伝達物質(神経が体全体に伝達するための自然発生的な化学物質で、例えばドーパミン)のバランスを維持し、様々な症状を改善する。 非定型 抗精神病薬は、 定型 抗精神病薬とは異なる有益性と有害性を持つ薬である。

知りたかったこと

非定型抗精神病薬が自閉スペクトラム症のある小児と成人の易刺激性の軽減にどの程度効果があるかを比較したかった。さらに、他の症状に対する有効性と有害性も把握したかった。

実施したこと

自閉スペクトラム症と診断された人を対象に、異なる非定型抗精神病薬をプラセボ(ダミー治療)または別の非定型抗精神病薬と比較した研究を検索した。

わかったこと

1,027人を含む17件の研究が見つかった。ほとんどの研究は小児を対象としており、大人を対象とした研究は1件のみであった。

リスペリドンやアリピプラゾールなどの一部の非定型抗精神病薬は、自閉スペクトラム症の小児の易刺激性を短期間で軽減する可能性がある。一方、ルラシドンはほとんどまたは全く効果がないとされている。非定型抗精神病薬は強迫症状を改善し、不適切な言動を減らす可能性がある。攻撃性、体重増加、運動に関する好ましくない影響については非常に不確かである。

エビデンスの限界

エビデンスの信頼性は、中等度から非常に低いものまであった。易刺激性など、いくつかの症状や尺度についてはより高い信頼性が認められるが、より強力なエビデンスがまだ必要である。体重増加や運動に関連した好ましくない影響といった指標については、研究が小規模で結果にばらつきがあることから、信頼性はさらに低い。さらに、入手可能なデータのほとんどは短期間の研究によるものであった。

本レビューの更新状況

この情報は2024年1月までのものである。

Meza N, Franco JVA, Sguassero Y, Núñez V, Escobar Liquitay CM, Rees R, Williams K, Rojas V, Rojas F, Pringsheim T, Madrid E

メチルフェニデートは注意欠如・多動症(ADHD)の小児や青少年に有効な治療であるか?

2 months ago
要点

- メチルフェニデートは多動や衝動性を抑え、小児が集中力を高める助けになるかもしれない。また、一般的な行動の改善にも役立つかもしれないが、生活の質(QOL)には影響しないようである。

- メチルフェニデートは、最長6か月間までの使用では、重篤な(生命を脅かす)副作用のリスクを増加させないようである。しかし、睡眠障害や食欲減退など、重篤でない副作用のリスクが高まる。

- 今後の研究では、副作用の報告にもっと焦点を当てるべきであり、より長期間にわたって行われるべきである。

注意欠如・多動症(ADHD)とは?

ADHDは、最もよく診断され、治療されている小児期の精神疾患のひとつである。ADHDの小児は集中するのが難しい。多動(そわそわし、長時間じっとしていられない)で衝動的(考える時間をとらずに物事にとりかかる)であることが多い。ADHDの小児は、指示に従ったり集中したりするのが難しいため、学校でうまくやっていくのが難しくなる。行動上の問題は、家族や友人とうまくやっていく妨げになり、他の小児よりも多くの問題を起こすことが多い。

ADHDの治療法は?

メチルフェニデート(例えばリタリン)は、ADHDの小児や青年に最もよく処方される薬である。メチルフェニデートは興奮剤で、集中力に関係するような脳の部分の活動を高めるのに役立つ。メチルフェニデートは、錠剤として服用することも、皮膚パッチとして投与することもできる。即効性があるように配合することもできるし、数時間かけてゆっくりと効かせることもできる。メチルフェニデートは、頭痛、腹痛、睡眠障害などの副作用を引き起こす可能性がある。時には、心臓の障害、幻覚、顔の「チック」(痙攣)などの重篤な副作用を引き起こすこともある。

知りたかったこと

メチルフェニデートが、小児のADHD症状(注意力、多動性)が主に教師の評価(さまざまな尺度を用いた)において改善するかどうか、また死亡、入院、障害のような重篤な副作用を引き起こすかどうかを調べたいと考えた。また、睡眠障害や食欲不振など、それほど深刻ではない副作用や、小児の一般的な行動やQOLへの影響にも関心があった。

実施したこと

ADHDの小児および青年におけるメチルフェニデートの使用を調査した研究を検索した。研究参加者は18歳以下で、ADHDの診断を受けていることが条件であった。他の障害や病気を抱え、他の薬を服用したり、行動療法を受けている可能性もある。参加者はIQ(知能指数)が正常でなければならなかった。研究では、メチルフェニデートとプラセボ(見た目や味はメチルフェニデートと同じだが、有効成分を含まないようにデザインされたもの)または無治療を比較していた。参加者は無作為にメチルフェニデートを投与するかしないかを決められていた。研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要素から、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

16,302人のADHDの小児または青年を対象とした212件の研究が見つかった。ほとんどの研究はメチルフェニデートとプラセボを比較したものであった。70人程度の小規模な研究が多く、平均年齢は10歳であった(年齢は3歳から18歳)。ほとんどの研究の期間は短く、平均1か月程度であった。最も短い研究では1日、長い研究では425日であった。大部分の研究は米国で行われた。

教師による評価では、プラセボまたは無治療と比較して、メチルフェニデートは:

- ADHD症状を改善する可能性がある(21件の研究、1,728人)

- 重篤な副作用に差がない可能性がある(26件の研究、3,673人)

- 重篤でない副作用がより多く発現する可能性がある(35件の研究、5,342人)

- 一般的な行動が改善する可能性がある(7件の研究、 792人)

- QOLに影響しないかもしれない(4件の研究、608人)

エビデンスの限界

レビューの結果に対する信頼性は、いくつかの理由から限定的である。研究関係者は、小児がどの治療を受けているかを知ることが可能であることが多く、それが結果に影響を与える可能性があった。結果の報告は多くの研究で完全ではなく、いくつかの結果については研究によって結果が異なっていた。研究は小規模で、症状を測定する尺度も異なっていた。また、ほとんどの研究は短期間しか行われておらず、メチルフェニデートの長期的な効果を評価することは不可能である。約41%の研究が製薬企業から資金提供を受けているか、一部資金提供を受けている。

本エビデンスはいつのものか?

これは2015年に実施されたレビューのアップデートである。エビデンスは2022年3月現在のものである。

Storebø OJ, Storm MR, Pereira Ribeiro J, Skoog M, Groth C, Callesen HE, Schaug JP, Darling P, Huus C-ML, Zwi M, Kirubakaran R, Simonsen E, Gluud C

脳卒中生存者の基礎体力トレーニング

2 months 1 week ago

レビューの論点
基礎体力トレーニングが脳卒中生存者の健康と機能に有益であるかどうかを考察するエビデンスをレビューした。

背景
体を動かすことは、ウォーキングや階段を上るなどの日常的な活動を実行できるようにするために重要だ。体力は人によって異なる。例えば、男性の体力は女性よりも少し高くなる傾向があり、年を取るにつれて、また身体的活動が少なくなると、すべての人の体力が低下する。特に、脳卒中生存者の体力は低い傾向にある。これは、日常活動を行う能力を制限し、また脳卒中に関連する障害を悪化させる可能性がある。このため、脳卒中生存者の役に立つアプローチとして基礎体力トレーニングが提案されている。基礎体力レーニングに参加すると、認知機能(思考スキル)の向上、気分、生活の質の向上など、脳卒中生存者にとって重要な利点が得られ、再び脳卒中を発症する危険性が低下する可能性がある。

研究の特徴
我々は2018年7月に75件の研究を特定し、本レビューの対象とした。研究には、入院中や在宅療養を含むケアのすべての段階における合計3,617人の参加者を対象とした。参加者の多くは一人で歩くことができた状態である。研究では、さまざまな形態の基礎体力トレーニングを評価した。心肺または「持久力」トレーニング、レジスタンスまたは「強度」トレーニング、または心肺とレジスタンストレーニングを組み合わせた混合トレーニングが含まれる。

主な結果
特にウォーキングを含む心肺フィットネストレーニングは、脳卒中後の体力、バランス、ウォーキングを改善できることがわかった。心肺機能の改善により、脳卒中による入院のリスクが7%減少する可能性がある。混合トレーニングは歩行能力とバランスを改善することができる。筋力トレーニングは、バランスの改善をする可能性がある。したがって、一般的に、脳卒中生存者に対し、心肺トレーニングを含むトレーニングやウォーキングを含むトレーニングが最も有効なようである。ただし、基礎体力ストレーニングが生活の質、気分、認知機能などの他の領域に与える影響について信頼できる結論を導き出すには、十分な情報がなかった。認知機能は脳卒中生存者にとって重要な関心のある結果であるにもかかわらず、十分に検証されていない。さまざまな種類の基礎体力トレーニングが怪我やその他の健康問題を引き起こしたというエビデンスはなかったため、運動は安全のようである。脳卒中生存者にとって最も重要である利点を検証ために、特に歩くことができなくなった重症の脳卒中生存者に向けて、さらに多くの研究が必要である。

エビデンスの質
基礎体力トレーニングの研究は、実行するのが難しい場合がある。心肺トレーニング(中程度から高度の強度)から得られた効果の評価に絶対の信頼を置いている。他の種類のトレーニングに対するエビデンスは、中程度から弱いとされる。ただし、一貫した調査結果としては、参加者の異なるグループで同様の効果を示す傾向があると明らかになった。

Saunders DH, Sanderson M, Hayes S, Johnson L, Kramer S, Carter D, Jarvis H, Brazzelli M, Mead GE

子宮内膜症による痛みの症状に対する合成黄体ホルモン製剤

2 months 1 week ago
要点

- 合成黄体ホルモン製剤の経口投与は、おそらくプラセボ(ダミーの治療)よりも子宮内膜症に伴う痛みの症状をやわらげる。合成黄体ホルモン製剤がどの程度痛みをやわらげるかは、痛みの種類や治療期間によって異なる。合成黄体ホルモン製剤の経口投与が、他のホルモン剤による治療と比べて、痛み全般、骨盤痛、生理痛、性交の時の痛みに効果があるかどうかついては、結論が出ていない。

- また、合成黄体ホルモン製剤のデポー(効果が長期間続く注射製剤)が、経口避妊薬、性腺刺激ホルモン放出ホルモン療法(GnRH作動薬および拮抗薬で、エストロゲンとプロゲステロンの濃度を低下させる治療)、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具(子宮内に挿入する小さな器具で、レボノルゲストレルという合成黄体ホルモンを放出する)、エトノゲストレル避妊インプラント(腕の皮下に挿入する小さなプラスチックの棒)と比べて、痛み全般、骨盤痛、生理痛、性交の時の痛みに効果があるかどうかについても、結論が出ていない。合成黄体ホルモン製剤のデポーは、GnRH作動薬と比べると、望ましくない作用がおそらく少ない。合成黄体ホルモン製剤のデポーは、他の治療と比べて望ましくない作用に明らかな差はなかった。

- 限界はあるものの、このレビューは子宮内膜症の治療に関するさらなる研究の必要性を強調している。

子宮内膜症とは何か

子宮内膜症は、子宮の内膜に似た組織が体の他の部分で増える病気である。生殖できる年齢の女性の5~10%がかかり、多様な性の人ではその数は不明である。子宮内膜症は、特に生理中に痛むことが多い。合成黄体ホルモン製剤と呼ばれる、経口薬や注射、インプラントが治療法として研究されてきた。これらの治療は、子宮内膜症の悪化を防ぐ可能性がある。

知りたかったこと

子宮内膜症の患者に合成黄体ホルモン製剤がどのくらい効くのか知りたかった。具体的には、合成黄体ホルモン製剤が痛みやQOL、患者の満足度に与える影響に関心があった。また、合成黄体ホルモン製剤に望ましくない作用があるかどうかも知りたかった。

実施したこと

症状がある子宮内膜症の患者を対象に、合成黄体ホルモン製剤とプラセボ(ダミーの治療)または他の薬剤と比べた研究を検索した。研究の選択と分析には、複数のレビュー著者が関わり、複数のツールを使った。

わかったこと

5,059人の子宮内膜症の患者を対象とした33件の研究が見つかった。

以下の所見は、比べた治療内容や評価項目それぞれに対する研究の数が少ないため、結論は限定的である。

- プラセボと比べて、経口黄体ホルモン製剤は、6ヵ月後の痛み全般と3ヵ月後の生理痛をやわらげる可能性が高い。
- 経口避妊薬やGnRH作動薬と比べて、経口黄体ホルモン製剤は、痛みやQOL、望ましくない作用の軽減に明らかな効果を示さない。
- GnRH作動薬と比べて、黄体ホルモン製剤のデポーは、生理痛をやわらげるが、6ヵ月後の骨盤痛にはほとんど影響しないかもしれない。望まない作用が起こるリスクについて、黄体ホルモン製剤のデポーは、GnRH作動薬よりおそらく低い。
- GnRH拮抗薬と比べて、黄体ホルモン製剤のデポーは、痛みをやわらげる効果や望ましくない作用の発現リスクに対してほとんど影響を与えないかもしれない。しかし、黄体ホルモン製剤のデポーによる治療を受けている人は、望ましくない作用のために研究から離脱する可能性がおそらく高い。
- 痛みや患者の満足度、副作用に関して、エトノゲストレルのインプラントと比べた黄体ホルモン製剤のデポーの効果についてはわからない。

これらの結果は、子宮内膜症の症状に対する合成黄体ホルモン製剤の有効性がさまざまであることを示唆しており、さらなる研究の必要性を強調している。

エビデンスの限界

それぞれの比較に対して、研究が数件ずつしかなかった。多くの研究は、参加者が少なかった。これらの知見が決定的なものであるかどうかを知るためには、より多くの参加者による大規模な研究が必要である。

このエビデンスはどれくらい最新のものか?

エビデンスは、2024年10月29日現在のものである。

Chen I, Kives S, Zakhari A, Nguyen DB, Goldberg HR, Choudhry AJ, Le A-L, Kowalczewski E, Schroll JBennekou

ドナー母乳は超早産児または極低出生体重児の重篤な腸障害を予防するか?

2 months 1 week ago
要点

- 超早産児や極低出生体重児には、粉ミルクではなくドナー母乳を与えることで、壊死性腸炎のリスクを約半分に減らすことができる。

- 乳児の入院中の感染率や死亡率には、おそらくほとんど影響はないだろう。

壊死性腸炎とは?

超早産児(8週間以上早く生まれた児)や極低出生体重児(出生時の体重が1.5 kg未満の児)は、壊死性腸炎を発症するリスク(危険)がある。壊死性腸炎は、乳児の腸の内壁の組織が炎症を起こし、死に至る重篤な疾患である。この状態は、重篤な感染症、死亡、障害や発達の問題を引き起こす可能性がある。

ドナーミルクとは何か?

超早産児や極低出生体重児の壊死性腸炎を予防する方法の一つとして、母乳が入手できない場合に、人工粉ミルク(通常は牛乳から作られる)よりもドナー母乳(他の女性から提供される)を与えることが良い可能性がある。

知りたかったこと

我々は、母親自身の母乳が得られない場合、超早産児や極低出生体重児に粉ミルクではなくドナー母乳を与えることで、壊死性腸炎、重篤な感染症、死亡のリスクが減少するかどうかを知りたかった。

何を行ったのか?

研究を検索し、見つかった研究の結果を比較し、要約した。研究方法や研究規模などの要因に基づいてエビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

合計2296人の乳児を対象とした12件の研究が見つかった。- 超早産児や極低出生体重児には、粉ミルクではなくドナー母乳を与えることで、壊死性腸炎のリスクを約半分に減らすことができる。- 乳児の入院中の感染率や死亡率には、おそらくほとんど影響はないだろう。

エビデンスの限界は何か?

壊死性腸炎に効果があるというエビデンスには確実性がある。重篤な感染と死亡に関するエビデンスについては、私たちは中程度の確実性しか持っていない。なぜなら、その影響について確信できるほど十分な研究がなかったからであり、また、研究に参加した人々がどの治療を受けているかを知っていた可能性があり、それが結果に影響を与えた可能性があるからである。

本エビデンスはいつのものか?

エビデンスは2024年2月時点のものである。

Quigley M, Embleton ND, Meader N, McGuire W

ランダム化比較試験から得られる治療効果の推定値と観察研究から得られる治療効果の推定値はどの程度似ているか

2 months 1 week ago
要点

- ランダム化比較試験(RCT)の効果推定値と観察研究の効果推定値には、平均してごくわずかしか差がない。効果推定値とは、臨床試験や研究で検討した2つのグループの結果の差という点で、介入効果の大きさを表す統計的構成要素である。
- さらに多くの研究によって、さまざまな種類の研究の間にみられる効果推定値の類似性や差に影響を与える可能性のある要因を注意深く検討する必要がある。

RCTと観察研究とはどのようなもので、なぜその効果推定値が異なる可能性があるのか

ランダム化比較試験(RCT)とは、参加者を2つ(またはそれ以上)の治療群のいずれかに無作為に割り付ける医療実験の一種である。一方のグループには実験的治療(「介入」とも呼ばれる)が行われ、もう一方のグループは介入を行わない「対照」グループである。RCTは、理想的な条件下で実験的治療にどの程度の効果があるのか、また安全なのかを検証するものである。

観察研究は、実験的ではない「実際の現場(リアルワールド)」で介入の有効性を測定しようとするものである。観察研究のなかでもよくみられるのが、症例対照研究(または後ろ向き研究)とコホート研究の2種類である。症例対照研究では、特定の疾患や疾病がある人と、そうでない人のグループを比較する。コホート研究は、共通の特徴がある人のグループを長期にわたって追跡し、そのうちの何人がある健康上の結果に到達したかを検討するものである。

同じ研究課題を扱ったRCTと観察研究の結果が異なる場合もある。両者の研究は、実施方法と系統的エラーの起こりやすさが異なる。

知りたかったこと

研究の種類(RCTと観察研究)が要約効果推定値に与える影響を評価し、その差が説明される可能性がある方法論的側面を評価したかった。

実施したこと

健康に関する同じ研究課題を扱ったRCTと観察研究で報告された効果推定値を系統的に比較したレビューをデータベースから検索した。発表された言語に制限を設けず、あらゆる医療の結果を含むレビューを探した。1990年1月1日から2022年5月12日までに発表されたレビュー/オーバービューを検索した。そのあとレビューの結果を比較して、エビデンスをまとめた。レビューに用いられた方法やその規模、レビュー間の結果の一貫性などの要因に基づいて、このエビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

関連する47件のレビューを特定し、34件のデータが主な解析に寄与した。対象としたレビューでは、RCTの効果推定値をコホート研究、症例対照研究、またはその両方の効果と比較しており、健康に関するさまざまなトピックが取り上げられていた。レビューは世界各国で実施されていたが、ほとんどが米国であった。12件のレビューでは、レビューの資金源に関する情報は報告されていなかった。8件のレビューが、著者らは資金提供を受けていないと報告している。23件のレビューには、著者らは政府からの資金提供、大学や財団からの資金提供など公的資金を受けたと報告されていた。2件のレビューが欧州連合(EU)の資金援助を受けており、2件のレビューが産業界の資金援助を受けたと報告している。資金提供を受けたレビューのほとんどが、複数の資金源を報告していた。

主な結果

- RCTと観察研究の効果推定値は、ほとんど差がないか、まったく差がないことがわかった。
- (手術や理学療法などの他の医療処置とは対照的に)薬物のみを調査した研究の効果推定値を比較すると、わずかな差があるかもしれない。

また、以下のデータに基づいて推定された効果も、ほとんど差がないことがわかった:
- 統計的にかなりの異質性(異なる研究で評価された介入効果のばらつき)を示した、RCTと観察研究を混ぜたメタアナリシス、
- 介入の有効性に影響を及ぼしうる集団の特徴を考慮する方法(傾向スコアによる調整)を用いていないか、その方法が不明確であった観察研究、
- 研究デザインについて十分な情報を提供しなかった観察研究。

エビデンスの限界

エビデンスの信頼性は低い。というのも、対象としたレビューには、その実施方法による系統的エラーのリスクがある可能性があるためである。さらに、レビューの対象となった人や介入の種類も異なっていたため、レビュー間の個々の結果はかなり異なっていた。

本レビューの更新状況

エビデンスは2022年5月までのものである。

Toews I, Anglemyer A, Nyirenda JLZ, Alsaid D, Balduzzi S, Grummich K, Schwingshackl L, Bero L
Checked
17 hours 49 minutes ago
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