2 years 10 months ago
卵巣がんの初回治療でのパクリタキセル投与を週1回にすると、3週に1回よりも生存期間が改善するか 背景 卵巣がんは世界で6番目に多いがんである。治療は外科手術と化学療法(パクリタキセルとカルボプラチンがもっとも一般的)が併用される。併用の目的はがんの再発の確率を減少または再発を遅延させること(無増悪生存期間(PFS)の延長)と、延命(全生存期間(OS)の延長)である。パクリタキセルの投与スケジュール(頻度)が治療効果に与える影響を検討した臨床試験が複数あるが、報告されている結果は相反するものである。 本レビューの目的 卵巣がんの新規診断患者に対するパクリタキセルの投与頻度の差が生存期間に与える影響について、エビデンスのレビューを行った。 研究の特性 エビデンスは2021年11月15日現在のものである。計3,699人が参加した4件の研究をレビュー対象とした。いずれの研究も18歳以上の卵巣がんの新規診断患者を対象としたランダム化比較試験(患者が2群以上の治療群のいずれかにランダムに割り付けられる試験)である。各試験は、カルボプラチンと併用するパクリタキセルについて週1回投与と3週に1回投与を比較している。 主な結果 カルボプラチンと併用するパクリタキセルを3週に1回投与した場合に比べ、週に1回投与した場合、全生存期間にはほとんど差がないものの、無増悪生存期間がわずかに延長する可能性が高...
2 years 10 months ago
体圧分散型椅子は褥瘡予防に有効か? 要点 包括的な検索を実施したが、体圧分散型椅子が褥瘡の予防や管理に役立つかどうかを調べた研究は見つからなかった。これは重要なテーマであり、このような椅子が褥瘡を発症するリスクのある人々に有益かどうかを判断するために、質の高い研究が必要である。 褥瘡とは何か? 褥瘡は、長時間の圧迫により皮膚やその下の組織に生じる傷である。座ることは回復の過程で重要な役割を果たすが、長時間座ることは褥瘡の発生リスクを高める。 褥瘡はどのように管理されているのか? 長時間座っているときにかかる皮膚への圧力を分散させることを目的としたクッションや表面素材が使用される。車いすに体圧分散クッションを使用した場合の効果については、一般的な椅子よりも研究が多く存在する。 現在、体圧分散型椅子が標準的な椅子と比較して、リスクのある人々の褥瘡を予防または管理するためにどの程度効果的であるかは分かっていない。 体圧分散型椅子には、クッションや手動または機械で動かす機能がない一般的な病院用椅子や住宅用椅子から、体圧分散をする素材を使用し、人が座るとリクライニング、起き上がり、チルトの機能があるものまで、さまざまなものがある。これらは、標準的なデザインで製作するか、または、その人のニーズに合わせたオーダーメイドのデザインも可能である。 何を知りたかったのか? 医療、リハビリテーション、...
2 years 10 months ago
PARP阻害薬は卵巣がん患者の生存率を改善するか、またその副作用は何か 要点 化学療法終了後の治療(維持療法)として毎日服用する錠剤のPARP(ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ)阻害薬については、有効成分を含まない「ダミー」の薬(プラセボ)と比較すると、次のことが言える。 - 進行上皮性卵巣がん患者の全生存期間を延長する効果はほとんどないと思われる(ただし、この結果はさらに多くのデータが出てくれば変わる可能性がある) - 新たに上皮性卵巣がんと診断された患者では、病勢進行を遅らせる可能性が高い - プラチナ製剤感受性の上皮性卵巣がんの再発患者では、病勢進行を遅らせる可能性が高い - 重度の副作用のリスクを増加させる可能性が高い 病勢進行を遅らせることでQOLに有益な影響を及ぼすかどうかは、報告されたデータに矛盾がみられるため非常に不確かである。しかし少量のデータから、PARP阻害薬が病勢進行を遅らせることにより病気の症状を改善する可能性があることが示唆される。 上皮性卵巣がんとは何か 上皮性卵巣がんは、卵巣、卵管、腹腔(腹膜)の内膜(上皮)から発生するがんである。がん細胞が腹腔内に入りやすいため、多くの場合、上皮性卵巣がんは進行期で発見される。初期治療は手術(理想的には目に見える病変をすべて切除する)と化学療法の組み合わせである。しかし、ほとんどの患者は再発するため、さらに治療...
2 years 10 months ago
成人の人工股関節置換術 このレビューでは、成人の大腿骨近位部骨折の治療に用いられる様々なタイプの人工股関節置換術の有益性と有害性に関して、ランダム化比較試験(RCT)および準RCTにおけるエビデンスを評価した。 背景 大腿骨近位部骨折は、足の骨の付け根が折れることである。このような骨折は、骨粗鬆症という状態で骨がもろくなっている高齢者によく見られる。治療法のひとつに、折れた股関節を人工股関節に置き換えるという方法がある。これは、股関節の一部(関節のボール部分)を置き換える半関節形成術(HA)で実施することができる。これらの人工関節には、ユニポーラ(単一の人工関節)とバイポーラ(追加の関節を持つもの)がある。また、手術によって股関節全体(股関節の球が収まる受け皿の部分も含む)を置き換えることもある。これが全人工股関節置換術(THA)である。これらの人工関節は、いずれも骨セメントを使用して固定することも、使用せずに固定することも可能である。 検索日 2020年7月6日までのRCT(治療群に無作為に割り付ける臨床研究)、および準RCT(生年月日や病院の記録番号など無作為化されていない方法で群に入れる)を検索した。 研究の特徴 10,654人の成人、10,662の大腿骨近位部骨折を対象とした58件の研究を対象とした。研究参加者の年齢は63歳から87歳で、71%が女性であったが、これは、こ...
2 years 10 months ago
乳歯の齲蝕予防を目的とするシーラント レビューの論点 乳臼歯の噛み合わせ面にシーラントを塗ると、そこに虫歯ができるのを防げるか? 背景 虫歯は、小児の健康全般に影響を及ぼす小児期の代表的な病気の一つである。最もよく影響を受けるのは奥歯で、噛む面が平らでなく、溝(ピット(小孔)やフィッシャー(亀裂))があるため、食べ物のカスや細菌を留めてしまい、虫歯(齲蝕)の形成につながる。また、これらの溝の開口部は非常に小さく、歯ブラシの毛が完全に入らないため、清掃が困難である。溝を塞ぐことは、奥歯の虫歯を防ぐ方法の一つである。シーラントは、食べ物や細菌に対する防護壁の役割を果たし、歯の表面に有害な作用が及ぶのを防ぐ。 研究の特徴 1,120人の小児(18か月から8歳まで)が参加した9件の研究を対象とした。乳歯の虫歯予防のために、さまざまなシーラントを使った研究が行われている。結果(評価項目)を測定している歯科専門家は、シーラントが適用されているかどうかを見ることができ、また、シーラントの材料を識別できたため、ほとんどの研究は、全体的にバイアスのリスクが高いと評価した。 主な結果 3件の研究ではシーラントとシーラントなしを比較し、6件の研究では歯の表面をシールする異なる材料やプロセスを比較した。シーラントの種類、試験開始時の子どもの年齢、追跡期間の長さなど、研究デザインに重要な差があったため、デ...
2 years 10 months ago
高齢者の大腿骨近位部(股関節)外側骨折の治療には、どのようなものがあるのか? 要点 - このタイプの股関節の骨折には、「最善な治療法」はない。 - コンジロセファリックネイル(condylocephalic nails:膝から股関節に向かって上向きに釘を刺す方法)や静的固定アングルプレート(ピンやネジで骨折した骨にプレートを取り付ける方法)による治療後に、骨折した股関節の再手術が必要になった人が多かった。 - ショートセファロメデュラリーネイル(short cephalomedullary nail:股関節から膝に向かって下向きに釘を刺す方法)と動的固定アングルプレート(骨折した骨にプレートを取り付けるピンやネジがスリーブの中でスライドできる方法)に違いがない可能性がある。 - しかし、どの治療法も術後のQOL(生活の質)を向上させるのに優れているかどうかを知るには、研究数が少なすぎた。 高齢者における大腿骨近位部(股関節)の骨折 大腿骨近位部骨折は、足の骨の付け根が折れることである。大腿骨近位部骨折には2つのタイプがあり、今回のレビューでは、股関節のすぐ外側で骨折(大腿骨転子部骨折)した人を対象とした。大腿骨近位部骨折のもう一つのタイプは、骨頭(ボール)と骨盤の窪み(ソケット)の関節のすぐ下の骨折(大腿骨頚部骨折)である。この骨折については、別のレビューで紹介した。どちらの骨折...
2 years 10 months ago
心的外傷後ストレス障害(PTSD)を予防するための薬 このレビューの重要性 心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic stress disorder: PTSD)は、心的外傷(トラウマ)となるような出来事を経験した人が発症する可能性のある、重度で障害のある状態である。このような出来事は、それを経験した人だけでなく、彼らの大切な人の人生にも長期にわたって悪影響を及ぼす。 研究の結果、PTSDの人の脳の働きには変化があることがわかっている。そのため、心的外傷となる出来事の直後に、この脳の変化を標的とした薬を使うことで、PTSDの発症を予防することを提案する研究者もいる。しかし、心的外傷となるような出来事を経験しても、大多数の人はPTSDを発症しない。したがって、心的外傷となるような出来事のすぐ後に投与できる薬は、副作用のリスクとPTSD発症のリスクのバランスを含めて、その有効性を慎重に評価する必要がある。 誰が利益を得るか? - 心的外傷になるような出来事にさらされた人とその家族、友人、恋人。 -精神保健サービスに携わる専門家。 - 外傷・救急医療に携わる専門家。 - 心的外傷の被害者や軍隊の退役軍人をケアする人々。 このレビューで明らかにしたいことは? 心的外傷(トラウマ)をもたらすような出来事にさらされた人にとって、心理的な症状の有無にかかわらず、ある薬は他の薬やプラ...
2 years 10 months ago
脳卒中後のてんかん発作を予防するための抗てんかん薬の効果 レビューの論点 脳卒中後のてんかん発作を一次的あるいは二次的に予防するために抗てんかん薬(AEDs:antiepileptic drugs)の日常的な投与を支持するエビデンス(科学的根拠)はあるのだろうか?(一次予防:一度も発作のない状況での予防的な投薬、二次予防:一度発作があり、それ以降の再発作を予防するための投薬) 背景 脳卒中後のてんかん発作は臨床上重要である。成人脳卒中患者のてんかん発作予防に抗てんかん薬が有効かどうかは明らかではない。 結果 脳卒中後のてんかん発作の一次予防に関する抗てんかん薬を評価した、2件の前向きランダム化二重盲検プラセボ(偽薬)対照試験を見つけた。一件目は72人の成人を対象にバルプロ酸とプラセボとを比べた研究で、バルプロ酸のグループとプラセボのグループの間に脳卒中後のてんかん発作に差は見られなかった。二件目の研究は784人の成人を対象にジアゼパムとプラセボとを比べており、ジアゼパムのグループとプラセボのグループとの間に脳卒中後のてんかん発作に差は見られなかった。一方で、前方循環系(前大脳動脈や中大脳動脈など)の皮質性梗塞に限定したサブグループ解析では、脳卒中発症から3か月間は予防的なジアゼパムが有効である可能性を認めた。全体的にみると、脳卒中後のてんかん発作の予防を目的として抗てんかん薬を日...
2 years 10 months ago
手術後の深部静脈血栓症や肺塞栓症の予防に膨張式スリーブや薬は有効か? 要点 - 足に装着する膨張式スリーブ(間欠的空気圧迫法)と薬剤の併用により、膨張式スリーブのみの場合と比較して、肺や脚に血栓が新たに発生する割合が減少する可能性がある。 - 膨張式スリーブと投薬を併用することで、投薬のみの場合と比較して、脚の血栓の新規発生率が減少し、肺塞栓の新規発生も減少する可能性がある。 - 膨張式スリーブに薬剤を追加すると、膨張式スリーブのみの場合に比べて出血のリスクが高まる可能性がある。 なぜこの疑問が重要なのか? 深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症は、総称して静脈血栓塞栓症と呼ばれ、脚の静脈内で発生した血栓が肺に移動することで発症する。手術や外傷後の入院中、あるいはその他のリスク要因によって起こりうる合併症である。これらの合併症は入院期間を延長し、長期的な障害や死亡につながる。股関節や膝関節の全置換術(整形外科の手術)や大腸がんの手術を受ける患者さんは、静脈血栓塞栓症のリスクが高いと言われている。血流が悪くなったり、血が固まりやすくなったり、血管壁が傷ついたりすると、血栓ができやすくなる。これらの要因のうち2つ以上を治療することで、予防効果が高まる可能性がある。機械的な間欠的空気圧迫法では、膨張式スリーブで足を包んだり、フットポンプを使用する。脚とその静脈に優しく圧をかけることで血液の...
2 years 10 months ago
低炭水化物ダイエットとバランス炭水化物ダイエット:体重減少と心臓病リスクに効果があるのはどちらか? 要点 - 低炭水化物ダイエット(「低糖質ダイエット」としても知られている)を行った人の体重減少は、バランスのとれた炭水化物ダイエットを行った人の体重減少と比べて、最大で2年間で、ほとんどもしくは差がないと考えられている。 - 同様に、拡張期血圧、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c、2〜3ヶ月間の血糖値を反映する)、LDLコレステロール(「不健康な」コレステロール)などの心臓病リスクの変化についても、2年後までは両食事法にほとんどもしくは差がないと考えられている。 - これは、2型糖尿病のある人もない人も同じであった。 低糖質ダイエット、糖質バランスダイエットの減量方法とは? 人々はダイエット方法、商品、食品、本などを利用した減量のために、多くのお金を費やし、そしてどのダイエット方法が効果的で安全なのかを議論し続けている。そのため、主張の裏にある科学的根拠を検証することが重要である。低糖質ダイエットとは、食事に含まれる炭水化物、タンパク質、脂肪を調整して制限する減量食事法の大まかな分類である。これらの食事療法には、一貫して広く受け入れられている定義はなく、さまざまな説明が用いられている(「低炭水化物、高タンパク質」、「低炭水化物、高脂肪」、「超低炭水化物」など)。 低炭水化物ダイエ...
2 years 10 months ago
小児の扁平足を治療するための足部装具 レビューの論点 子どもの扁平足の治療にフットオルソーズ(靴の中敷き)を使用することのメリットとデメリットは? 背景 扁平足の子どもは足のアーチが低い。子どもが立っているとき、足のアーチは床に対して平らに見えるが、内側に下がっており、床に触れることもある。扁平足になると、痛みが出たり、歩き方が変わったりすることがある。 扁平足の手術以外の治療法には様々な種類があるが、痛みがない限り、ほとんどの子どもは治療の必要はない。 足底装具(FO)や靴の中敷き、筋肉のストレッチ、靴の選択、身体活動の修正、体重の減少などは、足と活動の総合的な管理の一環として行われる。痛みや炎症を抑えるための薬を短期間使用することもある。 研究の特徴 本レビューは2021年9月現在のものである。痛みのない扁平足の健康な子ども、関節炎と痛みのある扁平足の子ども、その他(発達性協調運動障害、痛みのある扁平足)の3グループを含む16の研究(1,058人、11カ月から19歳)がある。この研究は、米国、オーストラリア、インド、イラン、トルコ、英国、韓国で行われた。フットウェア、エクササイズ、様々なタイプのフットオルソーについての情報が含まれた。 結果: 痛みのない扁平足において、 カスタムフットオルソーズ (CFO)とシューズを比較した場合: 12ヵ月後に痛みのない割合(1試験、106...
2 years 10 months ago
インターロイキン‐1(免疫反応に関与するタンパク質)を阻害する薬は、COVID-19の治療に有効であり、望ましくない影響を引き起こすことはないか? 要点 - 全体として、インターロイキン-1(免疫反応に関与するタンパク質)を阻害する薬がCOVID-19の人に有効な治療法かどうか、または、望ましくない影響を引き起こすかどうかを示す十分なエビデンスは見つからなかった。 - 結果が公表されていない16件の研究が見つかった。新しいデータが入手できたら、このレビューを更新する予定である。 - 今後、COVID-19の治療におけるインターロイキン-1を阻害する薬を評価するためには、質の高い研究が必要である。 インターロイキン‐1とは何か、また、COVID-19におけるインターロイキン‐1の役割は何か? インターロイキン-1(IL-1)は、サイトカインと呼ばれるタンパク質の一種で、体の免疫システムを調整する働きがある。特に、IL-1は感染症に対抗するために炎症を誘発する。COVID-19においては、免疫系がウイルスと闘うために、肺や気道に炎症を起こし、呼吸困難を引き起こす。一部の人では、免疫系が過剰に反応し(「サイトカインストーム」と呼ばれる)、危険なほど高いレベルの炎症や組織の損傷を引き起こすことがある。その結果、重度の呼吸困難、臓器不全、死に至ることがある。 インターロイキン‐1「阻害薬(...
2 years 10 months ago
新生児のカフ付き気管内チューブと非カフ付き気管内チューブの比較 背景: 新生児が気管内にチューブを入れる必要があることはほとんどないが、処置の前や呼吸を助けるために行われることがある。気管内チューブにはカフ付きのものとカフなしのものがある。新生児の標準的に選択されるのは、カフのないチューブである。カフ付きチューブは、チューブ周辺のガス漏れ、誤嚥(食べ物や唾液、胃の内容物を気道や肺に吸い込むこと)のリスク、チューブ交換の必要性、チューブが抜けてしまうことなどを軽減するために、月齢の進んだ乳児や子どもに頻繁に使用される。 レビューの論点:このレビューでは、新生児にカフ付きチューブを使用することに対する賛否両方のエビデンスを評価した。 研究の特徴: レビューの論点に答えるために、関連するすべての研究を集めて分析したところ、76人の赤ちゃんを登録した1件の研究が見つかり、そのうち69人がこのレビューの適格性を満たしていた。このレビューは、2021年8月20日時点での最新情報である。 主な結果:気道の問題を防ぐためのカフ付きチューブについては、賛成も反対も十分なエビデンスがない。カフ付きのチューブを使用した新生児は、カフなしのチューブを使用した新生児に比べて、何らかの理由でチューブを交換する頻度や、正しいサイズを見つけるためにチューブを交換する頻度が少なくて済む可能性がある。 エビデンスの...
2 years 11 months ago
急性心不全における体液除去療法 レビューの論点 急性心不全(AHF)における体液除去療法である限外ろ過(UF)にどのような効果があるか? 背景 急性心不全(AHF)は、心臓のポンプ機能が低下し、肺や体に液体が溜まる一般的な疾患である。これにより、呼吸困難、心臓や腎臓へのダメージ、再入院の多さ、死亡率の高さなどの問題が発生する。通常の治療では、この余分な水分を取り除くために利尿剤と呼ばれる薬を服用するが、人によっては効かないことがある。限外ろ過(UF)は、体液を素早く除去する代替療法である。患者の血液を回路で取り出し、機械でろ過してから患者に戻す。これは、モニタリング、太い中心静脈カニューレ(血管に入れる管)、血液をサラサラにする薬を必要とする。急性心不全(AHF)において限外ろ過(UF)が有効であるか、安全であるかは不明である。 研究の特性 急性心不全(AHF)患者を対象に限外ろ過(UF)と通常のケアを比較した研究を検索した。2021年6月までのすべての関連する研究を検索したところ、約1,200人を対象とした14件の研究を特定した。心筋梗塞や感染症にかかったことのある人など、非常に病弱な人は研究の対象外となることが多かった。 エビデンスの確実性 妥当性性のあるツール(GRADE)を用いて、結果の確信度を評価した。研究対象のばらつき、研究間での結果の違い、研究デザインの限界などによ...
2 years 11 months ago
感冒に対する経口抗ヒスタミン剤-充血除去剤-鎮痛剤の併用療法 レビューの論点 市販されている抗ヒスタミン剤(AH)、充血除去剤(DC)、鎮痛剤(AN)を含む配合剤は、風邪の症状に効果があるか? 背景 平均すると、小児は1年につき6~8回、成人は2~4回風邪に罹患する。 風邪はウイルスが原因で、喉の痛み、鼻づまりや鼻水、くしゃみ、咳などの症状がある。風邪は通常1~2週間で自然に治るが、仕事や学校を休むことに大きな影響を与える。 風邪には治療法がないため、対症療法しかない。様々な症状に対応するため、くしゃみ、咳、鼻汁に対応する抗ヒスタミン剤、鼻づまりに対応する充血除去剤、のどの痛みに対応する鎮痛剤など、様々な製品を1つの錠剤に配合している。 検索期間 エビデンスは2021年6月10日までのものである。 研究の特徴 試験参加者は、風邪をひいている大人または子供であった。4種類の組み合わせ(AH+DC、AH+AN、AN+DC、AH+AN+DC)の効果を、プラセボ(ダミー治療)(24件の試験)または活性物質(6件の試験)と比較した。有益な効果を、全体的な症状や、鼻づまり、鼻水、咳、くしゃみなどの特定の症状の重症度や持続時間が減少したことと定義した。また、プラセボよりも併用療法の方が副作用が多いかどうかも調べた。 研究の資金源 独立した資金調達を報告したのは3件の研究だけであった。 主な結果...
2 years 11 months ago
超低出生体重児の壊死性腸炎を予防するための経腸栄養剤の導入の段階的延期 背景 超早産児(予定日よりも8週以上早くうまれた児)や超低出生体重児(VLBW:出生時の体重が1,500g未満)の新生児は、壊死性腸炎(腸が炎症を起こし、死に至ることがある)と呼ばれる重度の腸疾患を発症するリスクがある。子宮内での成長が阻害されている乳児は、壊死性腸炎を発症するリスクが高いと考えられている。超早産児や超低出生体重児には、最初は少量のミルクを与え、数日かけて徐々に量を増やしていく。生後数日(またはそれ以上)、ミルクの導入や量の増加を遅らせることは、この症状のリスクを減らすための一つの可能性のある方法である。 研究の特徴 超早産児または超低出生体重児の壊死性腸炎のリスク、死亡、一般的な健康状態に対して、ミルクの導入を遅らせる(生後4日以上)場合と早める場合の効果を評価した臨床試験を検索した。検索結果は2021年10月現在のものである。 主な結果 14件の研究が見つかり、1,551人の乳児が参加していた。これらの児の約半数は、胎内での成長に障害が見られた。これらの試験を総合的に分析した結果、段階的に経腸栄養剤の導入を遅らせても、壊死性腸炎や死亡のリスクを低減できない可能性が示された。ミルクの導入を遅らせることで、ミルクへの不耐性のリスクを若干減らすことができるが、重篤な感染症が発生するリスクはおそら...
2 years 11 months ago
介入のシステマティックレビューにおける健康の公平性への影響の評価方法 要点 有効性に関するシステマティックレビューにおいて健康の公平性を考慮するための5つの方法論が見出されたが、いずれの方法論に取り組むのが最も適切かは不明である。 レビューの論点 有効性に関するシステマティックレビューにおいて、健康の公平性を考慮するためにシステマティックレビュー担当者が使用する方法をレビューした。 背景 健康における回避可能で不公平な差である「健康格差」の削減は、国際的な政治的重要性と世界的な賛同を得ている。意思決定者は、システマティックレビューにおける公平性の考慮が不足していると指摘しており、システマティックレビューにおける健康の公平性への影響を評価する方法の利点と欠点に関するガイダンスが必要とされている。 研究の特徴 健康格差に対する効果を測定する方法を評価したシステマティックレビューのコレクションの実証研究を対象とした。私たちは、健康の不平等を、健康のための機会を制限する社会的階層化要因による不公平で回避可能な差と定義している。PROGRESS-Plus(居住地Place of residence, 人種・民族・文化・言語Race/ethnicity/culture/language, 職業Occupation, 性別Gender or sex,宗教 Religion, 教育Educati...
2 years 11 months ago
マラリア予防のために殺虫剤処理された蚊帳を使用しているコミュニティに屋内残留噴霧を追加すること 本レビューの目的 屋内残留噴霧(IRS)とは、化学殺虫剤を家の壁に定期的に散布することである。殺虫剤は数ヶ月間持続し、着地した蚊を殺す。殺虫剤処理された蚊帳(ITN)は、蚊が人を刺すのを防ぎ、蚊の数を減らすために殺虫剤で処理されたベッドネットである。いずれの介入も、マラリアに感染した蚊に刺される人の数を減らすことで、マラリアの抑制につながる。ITNを使用しているコミュニティでIRSを実施することは、ITNのみを使用するよりもマラリア対策として優れている可能性がある。これは、介入を2つする方が1つの介入よりも優れているという理由だけでなく、ITNに使用されているピレスロイド系殺虫剤に対して蚊が耐性を持っている地域でのマラリア対策を改善できる可能性があるからである。ピレスロイドは、2018年までITNに使用が認められていた唯一のクラスの殺虫剤であったが、ピレスロイドに対する蚊の耐性が高まっているため、その効果が損なわれている。IRSを追加することで、ITNの効果が低下するのを食い止めることができ、ピレスロイド耐性の出現を遅らせることができるかもしれない。ピレスロイド系とは異なる作用を持つ殺虫剤(「非ピレスロイド系」)によるIRSは、同じ作用を持つ殺虫剤(「ピレスロイド系」)のIRSよりも効...
2 years 11 months ago
COVID-19のパンデミックを抑制するために学校現場で実施された対策 レビューでは何を調べたのか? COVID-19の原因となるウイルスの拡散を抑えるために、多くの政府や社会が学校に軽減策を導入している。しかし、これらの対策がウイルスの拡散を抑える効果があるかどうか、また、これらの対策が教育や経済、社会全体といった生活の他の側面にどのような影響を与えるかについては不明である。 学校現場で行われている対策とは何か? 学校現場での対策は、大きく分けて以下の4つに分類される。 1.接触の機会を減らす対策 : クラスや学校の生徒数を減らしたり、特定の種類の学校(例えば小学校)のみを開校したり、生徒が別の日や別の週に学校に通うスケジュールを作ることで、生徒同士の対面での接触を減らすことができる。 2.接触をより安全にするための対策 : マスクをつける、窓を開けたり空気清浄機を使ったりして換気を良くする、掃除や手洗いをする、スポーツや音楽などの活動を変更する、などの対策を実施することで、接触をより安全にすることができる。 3.サーベイランス(監視)と対応策 : 症状をスクリーニングしたり、病気やその可能性がある生徒や教師、あるいは両方を検査したり、病気の人の隔離や病気の可能性のある人の隔離を行ったりする。 4.多要素の対策 : カテゴリー1、2、3の対策を組み合わせたものである。 本レビュ...
2 years 11 months ago
急性虚血性脳卒中に対する経口抗血小板療法 レビューの論点 急性虚血性脳卒中患者において、経口抗血小板薬が死亡数を減少させ、生存者の長期転帰を改善するかどうかを、プラセボまたは無治療と比較して、安全性と有効性を検討した。 背景 脳卒中の多くは、脳内の動脈が突然閉塞し、その原因は血栓であることがほとんどである(虚血性脳卒中という)。アスピリンなどの抗血小板薬を直ちに投与することで、新たな血栓の形成を防ぎ、脳卒中後の回復を促すことができる。しかし、抗血小板薬は脳内出血を引き起こす可能性もあり、効果が相殺されてしまうこともある。 研究の特性 2020年8月までの11件の研究を特定し、レビューに使用した。これらの研究には、42,226人の参加者が含まれた。前回のアップデート以降、新たに3件の試験が追加された。前回のレビューと同様に、2件の研究がデータの96%を占めた。レビュー参加者のほとんどが高齢者で、70歳以上の割合がかなり高かった。男性と女性がほぼ同じ割合で試験に参加していた。脳卒中の重症度については、対象となった試験の間で若干の違いがあるようであった。予定された治療期間は5日から3ヶ月まで、予定されたフォローアップ期間は10日から6ヶ月までと様々であった。 主な結果 アスピリンを1日160mgから300mgの用量、脳卒中の症状が出てから48時間以内に開始することで、生存が可能となり、...
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3 hours 37 minutes ago
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