Latest Japanese Reviews

睡眠中に発症した脳梗塞に対する2つの再開通療法の効果

3 years ago
睡眠中に発症した脳梗塞に対する2つの再開通療法の効果 レビューの論点 朝起きたときに、新たに発症した急性脳梗塞がわかった患者に対して、閉塞した血管を再開通させる治療(再開通治療)は有効だろうか? 背景 脳卒中の多くは脳の血管に血栓(血の塊)が詰まることによって起きる(虚血性脳卒中=脳梗塞)。これは世界中で死亡や身体障がいの主な原因のひとつとなっている。血栓溶解剤により詰まった血管を再開通させる治療(血栓溶解療法)や、血栓を取り除くための機器(血栓回収療法)は、できるだけ早く(発症から数時間以内に)血流を再開できれば、脳梗塞後の回復をよりよくする可能性がある。 脳梗塞のおよそ5件に1件が睡眠中に起きている(起床時脳梗塞)。睡眠中に起きた脳梗塞は、正確な発症時刻がわからないため、いままで血管再開通療法の適応外と考えられてきた。しかし、その中で特定の基準を満たす患者を選んで行った最近の複数の研究では、血管再開通療法が有益である可能性が示されている。 検索期間 2021年5月24日までに発表されたランダム化比較試験(参加者を2つかそれ以上の治療グループのどちらかにランダムに割り付けて行う研究方法のひとつ)を検索した。 研究の特徴 今回は合計980人を含む7件の試験を組入れた。睡眠中に脳梗塞となった患者775人を含む5件の試験では、静脈内投与による血栓溶解療法か、または対照群(プラセボ(疑...

気管支炎で入院中の小児に対する点滴と経鼻胃管または経口胃管による水分補給の比較

3 years ago
気管支炎で入院中の小児に対する点滴と経鼻胃管または経口胃管による水分補給の比較 レビューの論点 気管支炎の小児入院患者の水分補給には、栄養チューブと静脈カテーテルのどちらが適しているか? 背景 気管支炎は幼児によく見られる呼吸器系の感染症で、呼吸の努力性や粘液の分泌量が増えるため食事などによる口からの栄養補給が困難になる。口からの栄養補給が難しいと判断された場合、栄養チューブや静脈カテーテルを使って水分を与える方法がある。栄養チューブは、鼻や口から子どもの胃の中に挿入され、ミルクや補水液などの透明な液体を与えるために使用される。静脈カテーテルは静脈に挿入され、医療用の水分補給液を静脈内に投与する。ある水分補給の方法が他の方法よりも優れているかどうかは明らかではなく、気管支炎で入院した子どもたちがどの方法で水分補給を行われるかは、かなりのばらつきがある。今回のレビューでは、標準的なコクランの手法を用いて、栄養チューブまたは静脈カテーテルのいずれかに子どもを無作為に割り付け、2つの輸液療法の効果を比較した研究を特定した。本レビューは、ある方法が他の方法よりも優れているかどうかを検証することを目的とした。 検索期間 エビデンスは2021年3月8日現在のものである。 研究の特性 気管支炎で入院している子どもで栄養チューブの使用を静脈カテーテルの使用と比較した研究は2件しかなかった。対象と...

早産児の罹患率と死亡率を低下させるための経鼻的持続陽圧呼吸療法の圧レベル

3 years ago
早産児の罹患率と死亡率を低下させるための経鼻的持続陽圧呼吸療法の圧レベル レビューの論点 早産児に低圧あるいは中~高圧の経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行うことにより、健康に関する重要な評価項目にどのような影響を与えるか? 背景 早産児は、予定よりも早く生まれてくる。早産児は、正期産児に比べて肺が未熟で、部分的に虚脱する危険性がある。肺が虚脱すると、酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を体外に排出することが難しくなる。そのため、このような新生児には、気道に陽圧をかけて虚脱した肺を膨らませ、呼吸不全を防ぐための経鼻的CPAP療法が一般的に行われている。鼻マスクや鼻プロングを介して圧力をかける。経鼻的CPAPは、新生児集中治療室への入室時の初期呼吸補助として使用されるほか、人工呼吸器による機械的人工呼吸や呼吸チューブを抜いた後にも使用される。医療者はどの程度の圧力をかけるかを決める。この圧力の程度をCPAPレベルといい、単位は水柱センチメートル(cm H2O)で表される。圧力が十分でない場合も高すぎる場合も有害であり、どのCPAPレベルが最良の結果をもたらすかはまだ不明である。早産児の初期CPAPレベルを低レベル(5cmH2O以下)にすることと中~高レベル(5cmH2O以上)にすることの影響をまとめるために、医学文献を包括的に検索した結果、以下のような結果が得られた。 研究の特徴 検...

赤茶(ローゼル)による成人の血圧低下作用

3 years ago
赤茶(ローゼル)による成人の血圧低下作用 要点: ローゼルを摂取することで、高血圧症(高血圧)の人の血圧が下がるかどうかはわからない。 高血圧症の人がローゼルを摂取しても安全かどうか、心拍数や脈圧に影響を与えるかどうかはわからない。 何を知りたかったのか 私たちは、プラセボ(ダミー治療)や無治療と比較して、赤茶(ローゼル)が成人の高血圧患者の血圧を下げる安全で効果的な治療法であるかどうかを知りたいと思った。ローゼルにはアントシアニンと呼ばれる物質が含まれており、動物や人を対象とした研究では、血圧を下げる効果が認められている。 実施したこと 高血圧症の人を対象に、ローゼルをプラセボまたは無治療と比較した研究を検索した。 わかったこと 2型糖尿病と高血圧を有する60人の被験者を対象とした1件の研究を対象とした。参加者は、純粋なローゼルエキスのカプセルまたは乳糖を含むプラセボのいずれかを8週間にわたって摂取した。ローゼルが血圧に影響を与えるかどうかは定かではないし、この研究ではローゼルの安全性や心拍数の変化については報告されていない。 エビデンスの限界 少数の被験者を対象とし、全員が糖尿病を患っていた試験が1件だけ見つかった。様々なタイプの参加者や、ローゼルの摂取方法(形態、量、時間帯、使用期間)を変えた研究がさらに必要である。 このレビューの更新状況 本レビューは、前回のレビューを更...

外来で子宮鏡の検査を行う時に子宮腔を広げるために使用する物質

3 years ago
外来で子宮鏡の検査を行う時に子宮腔を広げるために使用する物質 レビューの論点 外来で行う子宮鏡検査の際に子宮腔を広げるにはどの物質が最適かを調べた。どの物質がより患者に受け入れられ、副作用が少なく、検査を実施する術者にとって満足度が高く、処置時間が短くなるかを確認した。 背景 子宮は中が空洞になっている器官である。子宮鏡とは、子宮内に挿入して子宮腔内を観察するための器具である。子宮腔内を観察するためには、その中を透明な物質で満たす必要がある。この物質は、液体(生理食塩水)であったり、気体(二酸化炭素)であったりする(訳者注:日本では、一般的に液体の灌流液が使用される)。液体の場合、体温と同じ温度に温めると患者の忍容性を高められることが示された。それぞれの物質には利点と副作用があり、ここではそれらを比較した。 研究の特徴 外来で子宮鏡検査を受ける合計1946人の女性を対象に、子宮を拡張するための物質を比較した12件のランダム化比較試験を特定した。エビデンスは2021年4月現在のものである。 主な結果 術中の痛みは、生理食塩水でも二酸化炭素でもほぼ変わらないかもしれない。強い痛みや鎮痛剤の使用が必要なために手術を中止する割合という点において、生理食塩水が二酸化炭素と同じ程度に許容されるかどうかははっきりしなかった。生理食塩水は、おそらく二酸化炭素よりも副作用が少ない。生理食塩水は、子...

集中治療や高度医療を行う病棟以外で入院治療を受けている成人患者のせん妄を予防するための非薬物的アプローチ

3 years ago
集中治療や高度医療を行う病棟以外で入院治療を受けている成人患者のせん妄を予防するための非薬物的アプローチ レビューの論点 集中治療室(ICU、重篤な患者を治療するための専門病棟)で治療を受けている人を含まない、入院中の成人患者のせん妄を予防するための非薬理学的(薬を使わない)アプローチに関するエビデンスを評価した。 背景 せん妄は、成人、特に入院中の高齢患者によく見られる重要な病気である。せん妄は時々「急性錯乱状態」と呼ばれる。典型的には、せん妄患者は変動する混乱状態が突然現れ、集中力、記憶力や思考力の低下、周囲の状況に対する認識の低下、眠気や焦燥感、落ち着きのなさ、そして通常は視覚的な幻覚(実際にはないものが見える)などをしばしば伴う。せん妄は本人やその家族にとって苦痛になり得る。また、入院中に死亡したり、入院期間が長くなったり、退院後に多くの医療が必要になるなどの合併症リスクも高まる。せん妄は、認知症の発症や悪化など、記憶力や思考力の永続的な悪化のリスクを高めるというエビデンスがますます増えている。 非薬理学的アプローチとは、薬を使わず、医療の他の側面に重点を置いたアプローチである。それらはせん妄リスクを低減する上で重要であることはすでに認識されているが、特にせん妄の一般的な危険因子のいくつかを対象とした複数要素介入はそうである。これらの複合的介入のうち、どの要素がせん妄の予...

神経内分泌腫瘍の治療選択肢

3 years ago
神経内分泌腫瘍の治療選択肢 レビューの論点 消化管および膵臓の神経内分泌腫瘍(NET)に対する治療法の安全性と有効性に関するエビデンスをレビューし、治療法の順位付けを行なった。 背景 NETは、多様な希少がんの総称であり、体のどこにでも発生する可能性がある。とはいえ、ほとんどのNETが消化管または膵臓から発生する。NETには多くの種類があり、増殖速度や症状もさまざまである。過剰なホルモンを分泌するNETがある一方、ホルモンを分泌しない、あるいは分泌しても症状が出るほどではないNETもある。治療の選択肢およびその組み合わせや順序は、腫瘍の種類、部位、悪性度、過剰なホルモン産生の有無によって異なる。 これまで、NETに対してどの治療が最も効果的で、有害事象が最も少ないかについて、明確な推奨ができなかった。そこで、入手可能な情報に基づき、統計的手法を用いてすべての治療法を相互に比較した。 研究の特性 2020年12月11日までに発表されたランダム化比較試験(RCT、参加者を治療群に無作為に割り当てる研究)22件、合計4,299人を対象とした。研究間では、腫瘍の部位(消化管および膵臓)、腫瘍の種類、対象患者数、治療法、研究の質に差があった。 主な結果 本解析では、消化管および膵臓NETのいずれでも、全般的にソマトスタチン様薬を含む併用療法の優位性が示唆された。しかし、膵臓NETでは、エベ...

病院における成人への投薬ミスを減らすための介入方法

3 years ago
病院における成人への投薬ミスを減らすための介入方法 臨床疑問の背景 薬剤有害事象(ADE)とは、薬剤に関連した医療介入によって生じる傷害のことである。ADEは、時に、投薬ミスと関連している。ADEや投薬過誤は、重要な損害、コスト、さらには死亡を引き起こす可能性がある。 投薬ミスを減らすための介入としては、患者の投薬指示と患者が服用していた薬を比較するプロセスであるMedication Reconciliation(薬物調整)がある。薬物調整は、電子処方システム、薬剤を正しく投与するためのバーコード、組織の変更、投薬ミスに関するフィードバック、専門家の教育、調剤システムの改善など、他の介入と一緒に行うことができる。 レビューの論点 病院環境で成人への投薬ミスを減らすための介入の有効性は? 入院患者(二次医療機関、三次医療機関、集中治療室、手術室)、外来患者、救命・救急部門を対象とした。 研究の特性 科学的研究のデータベースを検索した。65件の研究を対象とし、そのうち51件はランダム化比較試験であり、病院環境にある23,182人の成人を対象とした。残りの14件の研究は、介入の効果を評価するために介入の前後の長期的な期間を考慮した大規模な分割時系列研究で、87,000人以上の参加者を対象としていた。 エビデンスの確実性 我々は、含まれているエビデンスを評価して、その効果が真実であり、こ...

成人のうつ病に対するオメガ3脂肪酸

3 years ago
成人のうつ病に対するオメガ3脂肪酸 なぜこのレビューが重要なのか? 大うつ病性障害(MDD)は、憂鬱な気分、あらゆる活動に対する興味や喜びの顕著な低下を特徴とする。MDDは個人や社会に悪影響を与え、しばしば長期にわたる。MDDに対する有望な治療の1つがオメガ3油として知られるn-3多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)で、脂肪の多い魚やその他の魚介類、ナッツや種子類に含まれる。さまざまなエビデンスが、n-3PUFAが抑うつ症状に影響する可能性を示唆しているが、知見が異なる研究が多く、結論に達するのは困難である。 このレビューに関心をもつ人は誰か? 総合診療医、メンタルヘルスや精神科の専門医など医療従事者。MDD患者、患者の家族など。 このレビューでわかることは何か? MDDと診断された患者において、n-3PUFAは別の方法と比較して、抑うつ症状、好ましくない副作用、回復率、生活の質、研究からの脱落率に影響を及ぼすか? どのような研究がレビューに含まれたか? このレビューは、同じ手法を用いた以前の論文(Appleton 2015)を更新したものである。MDDと診断された成人にn-3PUFAまたは他の代替物を投与した、2021年1月までに完了したあらゆるランダム化比較試験について、科学的データベースを検索した。 35件の関連研究が含まれている。1,924人を対象とした34件の研究では、n...

脳卒中や時間の経過とともに悪化しない脳損傷(非進行性脳損傷)後のリハビリテーションをサポートするための環境エンリッチメントによる治療

3 years ago
脳卒中や時間の経過とともに悪化しない脳損傷(非進行性脳損傷)後のリハビリテーションをサポートするための環境エンリッチメントによる治療 背景 リハビリテーションは、脳卒中や、その他の非進行性の脳損傷に対して、セラピーを通じて回復を促す。しかし、セラピーの時間以外では、患者はほとんど刺激を受けることがない。環境エンリッチメントとは、リハビリテーションにおける比較的新しい概念で、環境そのものが魅力的で、運動やゲームのような身体的、思考的、社会的な活動を含むようにデザインされている。例えば、赤ちゃんのための保育園は面白くて刺激的かもしれないが、大人のための病院の環境は一般的にそうではない。環境のデザイン単独で、特別なリハビリテーションを更に多く実施しなくても活動を促せるように(強制ではなく)できたほうがいい。 レビューの論点 本レビューは、環境エンリッチメントを用いた治療が、他の治療法と比べて良いのか悪いのかを検討した。 検索期間 エビデンスは2020年10月26日までのものである。 研究の特性 対象者:脳卒中または非進行性の脳損傷(認知症、アルツハイマー病や多発性硬化症ではなく、外傷性脳損傷など)の成人 介入:環境エンリッチメントの介入は、通常、コンピュータやゲーム機器、音楽や読書など、複数の活動を含む 比較:環境への介入を、通常の治療(通常の理学療法、言語療法、作業療法)または代替療...

脳卒中患者とその介護者への情報提供

3 years ago
脳卒中患者とその介護者への情報提供 レビューの内容は何か? 脳卒中後の人への情報提供の効果に関するエビデンスを検討した。脳卒中や軽度の脳卒中(一過性脳虚血発作(TIA))を発症した人、またはその友人や家族などの介護者を対象にした。主に、脳卒中という病気そのものや脳卒中のケアに関する知識、気分、生活の質(QOL)への影響を調べた。 背景 脳卒中は、血液の供給不足により、突然、脳の機能が失われる病気である。脳卒中は、死亡や身体的・精神的な問題を引き起こす可能性がある。そして、その人の人生や周りの人に大きな影響を与える。 脳卒中の生存者とその介護者は、脳卒中について十分な情報を提供されなかったと訴えることが多い。また、退院後の生活の準備ができていないと感じることが多い。何も考えられなかったという人もいる。情報が説明されなかったり、間違ったタイミングで与えられることもあった。情報は、健康をよりよく管理し、脳卒中後の生活に適応するのに役立つかもしれない。 このレビューでは、多くの情報を与えられた方が良いのか悪いのかを検討した。また、情報の提供の仕方が重要かどうかも検討した。 研究の特性 5,255人の脳卒中患者と3,134人の介護者を対象とした33件の研究が見つかった。11件の研究では、リーフレット、DVD、病歴、個人用パンフレットにより、受動的に情報を提供された。22件の研究では、講演、...

体外受精(IVF)に用いる成長ホルモン剤

3 years 1 month ago
体外受精(IVF)に用いる成長ホルモン剤 レビューの論点 体外受精を受ける女性に追加治療として成長ホルモンを投与する場合と、投与しない場合とを比較したエビデンスを検討した。 背景 体外受精を行う月経周期では、卵巣を刺激してより多くの卵子を成熟させるために、ゴナドトロピン療法を行う必要がある。理論的には、成長ホルモンを追加で使用することで、ゴナドトロピン療法の効果を高められる可能性がある。体外受精を受ける女性を対象にして、成長ホルモンを使用した場合と使用しない場合を比較して、利益とリスクを評価した。体外受精(IVF)治療において「低反応者(poor responder)」は、通常、卵巣予備能が低い比較的高齢の女性や、過去の体外受精(IVF)治療で最大量の刺激薬を投与したにもかかわらず採卵数が5個に満たなかった女性をさす。卵巣予備能が良好で、刺激後の卵巣反応が良好(採卵数が5個以上)である比較的若い女性は、「正常反応者」と考えられる。 研究の特徴 1,352人の女性を対象とした16件のランダム化比較試験が確認された。ランダム化比較試験では、対象者は無作為に2群に分けられる。今回は、一方の群は体外受精と成長ホルモンの投与を受け、もう一方の群は体外受精のみを受けた。エビデンスは2020年11月11日現在のものである。 主な結果 「正常反応者」では、追加で成長ホルモンを使用した場合、出生率...

病状が不良な入院患者を認識し、管理するためのチェックリストと専門チーム

3 years 1 month ago
病状が不良な入院患者を認識し、管理するためのチェックリストと専門チーム 本レビューの目的は何か 臨床のスタッフは、病状が悪化した成人の入院患者が支援を必要としていることを迅速に認識する必要がある。そのための方法の1つとして、病棟で働く医師や看護師は、バイタルサイン(血圧や脈拍など)のチェックリストを使って、患者の状態が悪化している兆候を認識することができる。また、これらのチェックリストは、迅速な評価と治療のために、医師や看護師の専門チームに患者を紹介する際にも使用される。チェックリストの使用と専門家チームへの紹介が、これらの資源を持たない病棟と比較して、死亡数、集中治療室(ICU)への予定外の入室/再入室、入院期間、および心停止/呼吸停止の数を減少させるかどうかを検証するために、本レビューを実施した。 要点 医師や看護師が、病状が悪化する患者を早期に認識し、管理のために専門家チームに紹介するためのチェックリストは、死亡数、予定外の集中治療室(ICU)への入室数、入院期間、院内での心停止の数において、ほとんど、あるいは全く差がない可能性があるというエビデンスが見つかった。 レビュー結果から分かったこと このコクランレビューでは、医師や看護師が病院内で病状が悪化している患者を認識し、専門チームに紹介するための病院内チェックリストの効果に関する研究から分かったことを紹介する。急性期病棟...

肺炎の予防と治療のためのビタミンC補給

3 years 1 month ago
肺炎の予防と治療のためのビタミンC補給 レビューの論点 成人と小児において、肺炎の予防および治療を目的としたビタミンC補給の役割を、補給しない場合と比較する。 背景 肺炎は、ウイルス、細菌、真菌により引き起こされる胸部感染症である。ビタミンCは免疫系に関与するため、その補給は小児および成人で肺炎の予防と治療に重要となり得る。肺炎の予防と治療におけるビタミンCの役割を評価した。 検索期間 2020年3月4日までの文献を検索した。 研究の特徴 5つの研究と2件の進行中の研究を対象とした。5件の研究には計2,655人が参加し、1つの高所得国(米国)および2つの低中所得国(バングラデシュ、パキスタン)で実施された。3件の研究は病院、1件は学校、1件は軍事訓練センターで行われた。3件の研究に5歳未満の小児が含まれ、1件に学齢期の子供が、1件に成人の参加者が含まれていた。2件の研究が肺炎予防におけるビタミンC補給の効果を、3件の研究は肺炎治療におけるビタミンC補給の効果を評価した。ビタミンCの用量は、125 mg、200 mg、1 g、および2 gであった。 研究の資金源 2件の研究が製薬会社からの資金提供を受けていた。3件の研究は資金提供元について報告されていなかった。 主な結果 肺炎予防のためのビタミンCについて、肺炎の割合(発生率)、一般的な肺炎の頻度(有病率)、肺炎による死亡数(死亡...

急性くも膜下出血患者の血圧を変化させる様々な治療法の評価

3 years 1 month ago
急性くも膜下出血患者の血圧を変化させる様々な治療法の評価 背景 くも膜下出血は、脳の周囲の空間に出血して起こる脳卒中の一種で、毎年、人口10万人あたり9人が発症している。くも膜下出血の死亡率(死亡)は30%から45%で、生存者の20%は日常生活動作に援助が必要な状態になる。現在、短期的な治療としては、血圧を変化させて、高血圧を誘発する(つまり血圧を上げる)か、血圧を下げるかのいずれかが考えられるが、急性くも膜下出血の人における血圧変化の有益性と有害性については不明である。 レビューの論点 本レビューでは、急性くも膜下出血患者の血圧を変化させることの有益性と有害性を検討した。 検索日 科学的なデータベースを使用して、開始から2020年9月までの期間で検索を行った。 研究の特性 急性くも膜下出血患者の血圧変化を評価したランダム化比較試験(2つ以上の治療群のいずれかに無作為に分けられる試験)が3件見つかった。61人が参加した2件のランダム化比較試験では、高血圧の誘発をプラセボ(偽治療)または無治療と比較した。224人が参加した1件のランダム化比較試験では、血圧の低下とプラセボ(偽治療)を比較した。試験の逐次解析を用いて、重要な治療効果を検討するために必要な研究参加者数(情報量)を推定した。試験の逐次解析では、すべての治療効果について情報が不足していた。すべての試験はバイアスのリスクが高...

小児における呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症重症化予防のためのパリビズマブの使用

3 years 1 month ago
小児における呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症重症化予防のためのパリビズマブの使用 レビューの論点 小児の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)重症化予防のためのパリビズマブの効果(利益と有害性)は何か? 背景 RSV(訳注:日本ではRSウイルスと表記されることが多い)は、主に生後1年以内の小児における急性呼吸器感染症の主な原因であり、年間3,310万件の感染があり、その90.6%が低・中所得国で発生していると推定されている。これらの感染症は、鼻水、発熱、咳、息切れ、喘鳴、哺乳困難などの症状を呈する。特に生後2か月未満の乳児では、入院や集中治療室への入院、死亡に至ることもあり、全世界の5歳未満の小児における入院率は人口10万人あたり1,970人、死亡者数は年間59,600人と推定される。また、喘鳴の再発や慢性的な肺疾患など、長期的な合併症を引き起こす可能性もある。 シナジスの製品名で販売されているパリビズマブは、重症化するリスクの高い小児において、1か月ごとに最大5回まで筋肉注射を行い、重症化を予防する薬剤である。 検索日 エビデンスは2021年10月14日までのものである。 研究の特徴 3,343人の参加者を含む5件の研究を組み込んだ。どの研究も、早産や心臓・肺の病気など、基礎疾患によりRSVに感染した場合に有害な結果(評価項目)をもたらすリスクの高い子どもたちを含む、少数の参加者を...

成人がん患者にみられる化学療法による悪心・嘔吐の予防には、どのような薬剤の組み合わせがよいか

3 years 1 month ago
成人がん患者にみられる化学療法による悪心・嘔吐の予防には、どのような薬剤の組み合わせがよいか 化学療法による悪心・嘔吐の負担とその予防に役立つものは何か 化学療法は、成人がん患者の約70~80%に対して悪心(吐き気、嘔気)と嘔吐を誘発する(CINV)。化学療法の種類によって、高度催吐性化学療法(高度の吐き気を催すもの)と中等度催吐性化学療法(中等度の吐き気を催すもの)がある。複数の薬剤の組み合わせにより、高度および中等度催吐性化学療法を受けている成人のCINVに対して高い有用性が示されている。 本レビューの目的 ネットワークメタアナリシスを用いて、高度または中等度の催吐性化学療法を受けている患者のCINV予防のためのさまざまな薬剤の組み合わせの有益性と有害性を比較し、治療の順位を明らかにすることを目的とした。ネットワークメタアナリシスとは、すでに発表された試験で報告された異なる治療法を比較するために使用される手法であり、これには元の各試験にそのような比較が記載されていない場合も含まれる。 レビューの対象とした試験 検索対象として選択した医学データベースと試験登録を2021年2月まで検索した。臨床でよく使用されている高度または中等度催吐性化学療法を受けるあらゆる種類のがんの成人患者を対象に、CINVの予防を目的として複数の薬剤の組み合わせを比較した研究を対象とした。特に、化学療法後...

脳卒中回復のための選択的セロトニン再取り込み阻害薬

3 years 1 month ago
脳卒中回復のための選択的セロトニン再取り込み阻害薬 レビューの論点 選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)が脳卒中の回復に与える影響は? 背景 脳卒中は身体障害の主な原因の一つである。脳卒中による障害には、トイレや洗濯、歩行などの日常生活に支障をきたすものがある。時には障害が重く、基本的な動作を行うために他人に頼るようになることもある(これを「依存」という)。以前、SSRI(脳内の化学物質のレベルを変化させることで作用する、通常、気分障害の治療に用いられる薬剤の一種)が脳卒中後の回復を改善するかどうかを調べることを目的としたコクラン・レビューはの更新版を発表した。 2019年の更新以降、2つの大規模な研究が完了しているため、このレビューのさらなる更新を行う必要がある。バイアスを回避するための厳密な方法(例えば、脳卒中患者が実薬とプラセボのどちらを投与されたかを評価者が知っているなど)を用いた、質の高い試験のみを主な分析対象とした。これらの研究を「バイアスリスクが低い」研究と呼んでいる。 また、SSRIの他の効果、例えば、腕や脚の脱力感の重症度の改善、気分、不安、認知、生活の質の改善、出血や発作などの副作用の有無などについても調べた。 研究の特性 合計で76件の研究が見つかり、脳卒中後1年以内の脳卒中患者13,029人を対象とした。参加者は幅広い年齢層であった。約半数の研究では...

高齢者の大腿骨頸部骨折からの回復を支援するには、様々な専門分野(多職種)の混合チームが最適か?

3 years 1 month ago
高齢者の大腿骨頸部骨折からの回復を支援するには、様々な専門分野(多職種)の混合チームが最適か? 要点 - 老年病の医師やその他の医療専門家が率いる様々な専門性を持つチーム(多職種リハビリテーションチーム)が提供するケアは、通常のケアと比較して、より多くの大腿骨頸部骨折による入院高齢者の回復に貢献する可能性がある。 - 退院後の多職種によるリハビリテーションが通常のケアよりも優れているかどうかは、十分なエビデンスがないためわからない。 - 今後の研究は、人々が早期に退院して地域で支援を受けられるように、様々な専門家が集まって構成される多職種チームが提供する最善の治療法を特定することを目的に行なうべきである。 大腿骨頸部骨折の治療法にはどのようなものがあるか? 高齢者において、大腿骨頸部骨折はよくおこるが、重大な損傷である。大腿骨頸部骨折をした人の約3分の1は、怪我をしてから1年以内に死亡する。大腿骨頸部骨折をした人は、その他の状態により回復が遅くなる場合もある。多くの人が、骨折前の運動能力や自立した生活を取り戻すことができず、その後、介護施設での入所生活が必要になることもある。 通常、大腿骨頸部骨折の治療は、手術後に、運動機能や入浴・着替えなどの日常生活の基本的な機能を回復させるための治療が病棟で行われる。これには、院内の他の部署の人も関わることがある。しかし、大腿骨頸部骨折の人は...

分層黄斑円孔に対する手術の有効性

3 years 1 month ago
分層黄斑円孔に対する手術の有効性 なぜこの問題が重要なのか? 分層黄斑円孔とは、網膜の中心の黄斑と呼ばれるところに小さな欠損ができて膜が薄くなったものである。網膜は目の奥で光を感知する層で、黄斑はものを細かく見分けるのに欠かせない。分層黄斑円孔では、手術により視力の低下を防げる(または視力を改善できる)とする向きもあるが、今のところコンセンサスは得られていない。本レビューの対象となったのは、分層黄斑円孔の患者の視力を手術により改善できるか判断するために行われた公表済みの研究である。 どのようにエビデンスを特定し、評価したか? まず、ランダム化比較試験(患者を2つかそれ以上の治療グループのいずれかに無作為に割り付けて行う臨床研究)を検索した。なぜなら、治療の効果について最も確かなエビデンスが得られるのは、こうした研究だからである。その後、結果を比較し、各研究から得られるエビデンスを要約する計画だった。そして最後に、研究方法、規模、またさまざまな研究の結果がどの程度似ているかなどの要因に基づいて、エビデンスの信頼性を評価することを目指した。 レビューの結果 検索の結果、見つかったのは、分層黄斑円孔と診断された合計36人の患者を含む研究1件だった。この研究では、手術を受けずに経過を観察した人に比べて、手術を受けた人は6か月後に視力が改善する可能性があることが示された。とはいえ、研究のデ...
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3 hours 10 minutes ago
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