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尿失禁の有無を問わず、骨盤臓器脱の女性にとって手術療法の利益とリスクは何か?

1 week 5 days ago
要点

- 骨盤臓器脱(POP)および腹圧性尿失禁(SUI)を持つ女性において、POP手術と同時に尿失禁手術を行うことで、術後のSUI改善率が向上する可能性が高い。尿失禁のない骨盤臓器脱の女性の場合、追加の尿失禁治療は必要ない可能性がある。

- 尿失禁のない骨盤臓器脱の女性において、手術後の腹式尿失禁(SUI)に対しては、経腟的メッシュ(訳注:人工の医療材料)修復術よりも、腟前壁の自家組織による修復術の方が優れている可能性がある。一方、手術から1年~7年後の診察時の骨盤臓器脱再発がより多くなる可能性がある。

骨盤臓器脱とは?

骨盤臓器脱は、特に出産後や閉経後の女性によくみられる状態である。これには子宮、膀胱、腸、腟などの骨盤臓器が、腟口の内側ないし外側に下がる(脱出する)状態が含まれる。しばしば、咳やスポーツなど運動時の尿漏れを併発する。これを「腹圧性尿失禁(SUI)」と呼ぶ。その一方、臓器脱が尿道を圧迫するために、腹圧性尿失禁が骨盤臓器脱の修復を受けるまで気づかれない場合がある。これを「潜在性」(隠れ)SUIと呼ぶ。腹圧性尿失禁が骨盤臓器脱の術後に初めて発症することもあり、「新規発症SUI」と呼ぶ。POPは女性のQOL(生活の質)に深刻な影響を及ぼしうる。臓器脱の程度や合併する排尿・排便の症状によって不快感が増大することが多い。

骨盤臓器脱はどう治療するか?

骨盤臓器脱の手術療法には経腟的、または腹腔鏡(「キーホール」手術)やロボット支援下といった経腹的な方法の選択肢がある。女性自身の結合組織を使用する(native tissue repair, 自家組織修復)ことも、結合組織の代替または補強のためにメッシュを使用することもできる。腹圧性尿失禁の手術を骨盤臓器脱の手術と同時に行うこともできる。治療には尿道を支えるメッシュスリング(中部尿道スリング)や骨盤から尿道両側の組織を引き上げる方法(バーチ手術)がある。

知りたかったこと

骨盤臓器脱の手術を受ける、尿失禁のある女性とない女性にとって、もっともよい治療を知りたかった。尿失禁手術の有無を問わず、骨盤臓器脱手術が術後の尿失禁を減少させるかに関心があった。また、骨盤臓器脱の再発、過活動膀胱症状(突然の尿意)、排尿機能障害(膀胱が上手く空にならないこと)、追加手術の必要性について調査した。

実施したこと

至適治療法を同定するために、研究を検索し、適切なデータを収集、要約、分析した。

わかったこと

尿失禁の有無にかかわらず、また同時尿失禁手術の有無にかかわらず、骨盤臓器脱の手術を受けた3095人の女性を対象とした22件の研究を同定した。

骨盤臓器脱と腹圧性尿失禁の女性に対する手術

骨盤臓器脱の手術中に中部尿道スリングを挿入すると、腹圧性尿失禁が減少する可能性(2研究、319女性)と追加の尿失禁手術を減少させる可能性(1研究、134女性)がある。尿失禁手術を骨盤臓器脱の術後3か月まで延期しても、同様の成功率が得られる。この状況では、尿失禁がないために追加の尿失禁手術を避ける女性がいるかもしれない。

経腹的子宮脱修復(仙骨腟固定術または仙骨子宮固定術)に経腹的尿失禁手術(バーチ手術)を追加することで、腹圧性尿失禁を改善されるかは不明である(1研究、47女性)。別の研究(113女性)はバーチ手術と中部尿道手術の仙骨腟固定術同時実施を術後2年の時点で比較しており、バーチ手術よりも中部尿道スリングの方が腹圧性尿失禁を減少させる可能性があった。

骨盤臓器脱に対する経腟的アーム付きメッシュ留置術と、腹圧性尿失禁に対する中部尿道スリングおよび経腟的native tissue repair(自家組織修復)の比較では、術後の腹圧性尿失禁やその他のアウトカムについて有意差を認めなかった。

骨盤臓器脱および潜在性尿失禁の女性を対象とした手術

中部尿道スリングを併用する経腟的骨盤臓器脱手術は、併用しない場合に比べて腹圧性尿失禁や追加手術率を減少させる可能性が高い(5研究、369女性)。しかし骨盤臓器脱の再発、過活動膀胱、新規発症の過活動膀胱や排尿障害についてはほとんどあるいは全く差がない可能性がある。

腹圧性尿失禁を伴わない骨盤臓器脱の女性を対象とした手術

経腟的骨盤臓器脱の手術に中部尿道スリングを併用する場合を併用しない場合と比べて、新規発症の腹圧性尿失禁には差を認めない可能性がある(1研究、220女性)。

経腹的仙骨腟固定術にバーチ手術を併用する場合と併用しない場合をくらべて、腹圧性尿失禁が改善するかどうかは不明である(2研究、364女性)。

3~7年のフォローアップ期間において、メッシュ手術に比べnative tissue repair(自家組織修復)の経腟的骨盤臓器脱手術は腹圧性尿失禁をわずかに減少させる可能性がある(3件、417女性)。一方、経腟的メッシュ留置は骨盤臓器脱の再発を減少させる可能性がある(3研究、458女性)。

エビデンスの限界

エビデンスの質は中等度から低であった。主な限界として、手術のアウトカム評価に手術の種類が盲検化されていない研究があること、関心を持ったアウトカム全てを網羅していないこと、ほとんどの研究で参加者が少ないことがある。

エビデンスの更新状況

エビデンスは2025年7月現在のものである。

Baessler K, Christmann-Schmid C, Haya N, Mowat A, Chen Z, Wallace SA, Yeung E, Maher C

新生児の敗血症(感染症に対する重篤な反応)や死亡を防ぐために臍帯(へその緒)断端に消毒薬を使うことで、どのような利益とリスクがあるか?

1 week 5 days ago
主なメッセージ
  • 新生児の臍帯断端に消毒薬のクロルヘキシジンを塗布することは、感染症のリスクを減少させる可能性が高く、低・中所得国においては死亡リスクも減少させる可能性がある。クロルヘキシジンは臍帯が脱落するまでの期間を1~2日間遅らせる可能性もある。

  • 他の消毒薬(アルコール、スルファジアジン銀、ポピドンなど)についてのエビデンスは限定的で不明確である。

  • 高所得国においては、臍帯を清潔で乾燥した状態に保つことに比べて、消毒薬を利用することの明確な利益はなかった。消毒薬は臍帯の脱落を遅らせる可能性がある。

なぜ臍帯のケアが重要なのか

赤ちゃんが生まれると臍帯は切断され、小さなへその緒が残り、これは通常5~15日ほどで乾燥して自然に脱落する。この期間のこの部位で、赤ちゃんの皮膚や周囲の環境由来の細菌が容易に繁殖する。臍帯断端には死んだ組織が含まれているため、そこに細菌が繁殖し、周囲の皮膚に感染( 臍炎 と呼ばれる)を引き起こすことがある。時により、これらの細菌が赤ちゃんの血流に入り込み、全身に及ぶ重篤な感染症( 敗血症 )を引き起こす可能性がある。これは、特に衛生環境や医療へのアクセスが限られている地域では、命に関わる恐れがある。

知りたかったこと

消毒薬(細菌の増殖を防ぐ物質)を臍帯断端に塗布することが以下のリスクを減少させるか:

  • 死亡

  • 臍帯感染

  • 臍帯が脱落するまでの期間の変化、これは看護者の関心やケアの方法に影響する可能性があるが、通常は害がない。

また、これらの影響が低所得国、中所得国、高所得国の間で異なるかを知りたかった。

実施したこと

クロルヘキシジン、70%アルコール、スルファジアジン銀、ポピドンヨードなどさまざまな消毒薬と、ドライケア(臍帯断端を清潔で乾燥した状態に保つこと)または同じ消毒薬を使用しないこととを比較したランダム化比較試験のエビデンスをレビューした。

これらの治療がどのように影響したかを評価した:

  • 新生児死亡(生後28日以内)

  • 臍帯断端の感染(臍炎)

  • 臍帯脱落までの期間

研究の質を評価し、類似した研究の結果をメタアナリシスで統合した。また、感染リスクは状況によって異なるため、低・中所得国の研究と高所得国の研究を別々に分析した。

わかったこと

本レビューでは2013年版から9件を加えて18件の研究を対象とした。これらの研究は低所得国と高所得国の両方で実施され、143,150人の新生児が対象となった。

低所得国と中所得国でクロルヘキシジンを使用した場合:

  • 新生児死亡を減少させる可能性がある(1000出生あたり18人から15人へ)が、この効果は不確実である;

  • 臍帯感染を減少させる可能性が高い(1000出生あたり87人から62人);

  • 臍帯脱落までの平均期間が約1.85日延長する可能性が高い。

高所得国でクロルヘキシジンを使用した場合:

  • 新生児死亡の予防については研究されていなかった;

  • エビデンスが非常に不確実であるために、臍帯感染を予防するか、臍帯脱落までの期間に影響するかは不明である。

低所得国と中所得国で70%アルコールを使用した場合:

  • 新生児死亡の予防については研究されていなかった;

  • エビデンスが非常に不確実であるために、アルコールが臍帯感染を予防するかは不明である;

  • エビデンスが非常に不確実であるために、アルコールが臍帯脱落までの期間に影響するかは不明である。

高所得国で70%アルコールを使用した場合:

  • 新生児死亡や臍帯感染の予防については研究されていなかった;

  • 臍帯脱落までの平均期間が約1.6日延長する可能性が高い。

エビデンスの限界
  • 低・中所得国における臍帯感染予防のためのクロルヘキシジン使用に関するエビデンスの確実性は中等度である。これは研究の参加者がどの治療を受けたか知っていたことと、それぞれの研究の設定が異なっていたことによる。クロルヘキシジンが新生児死亡を減少させることについての確実性は低い。これは研究によって結果がばらつくこと、その効果はわずかな有益性から明らかな差がない程度にとどまっていることによる。クロルヘキシジンが臍帯の脱落をわずかに遅らせることに関する確実性は中等度である。

  • 高所得国におけるクロルヘキシジンの使用に関するエビデンスは非常に低く、これは試験が小規模な1件のみであったことによる。

  • 低・中所得国におけるアルコールの使用に関するエビデンスの確実性は非常に低い。アルコールが臍帯感染あるいは臍帯脱落までの期間に影響を与えるかどうかは、研究の対象となった赤ちゃんがほとんどいなかったため、不明である。

  • 高所得国において、アルコールが臍帯脱落をわずかに遅らせることに関する確実性は中等度である。一方、アルコールが臍帯感染を予防するか、新生児死亡に影響するかについては、アウトカムが研究されていないため明らかでない。

このレビューの更新状況

このサマリーは2025年12月時点で入手可能なエビデンスに基づいており、2013年に実施された前回のレビューをアップデートしたものである。

Imdad A, Medina M, Cooper C, Bhutta ZA, supported by the Cochrane Neonatal Review Group

スポーツ団体が提供するプログラムは、健康的な行動を促進し、人々の健康を改善するか?

1 week 5 days ago
要点

• スポーツ団体のプログラムは、人々の身体活動量を少し増やす効果があるだろう。

• スポーツ団体のプログラムは、人々が動かない(座って過ごす)時間にほとんどまたは全く影響を与えないかもしれない。一方、人々が果物や野菜を食べる量は増えるかもしれない。

• スポーツ団体のプログラムの影響で、人々が糖分の多い飲料やアルコール飲料を飲む量あるいは喫煙習慣が変わるかについては、エビデンスが非常に不確実なため、明らかではない。

健康的な行動とは何か?また、なぜそれが重要なのか?

慢性疾患は、世界中で多くの人々がかかり、亡くなる主な原因となっている。健康的な食事や適度な運動などの健康的な生活習慣によって、慢性疾患のリスクを減らすことができる。スポーツ団体は多くの国で人気があり、健康的な行動を促進したり、健康状態を改善したりするための効果的な手段となり得る。

知りたかったこと

スポーツ団体で行われているプログラムが、健康的な行動の促進や人々の健康増進に効果的かどうかを知りたかった。スポーツ団体の選手やその他のメンバー、コーチ、サポーター、小・中・高校生または大学生、選手の親その他を対象としたプログラムを調べることにした。

実施したこと

無作為に2つ以上のグループ、つまり健康増進プログラム群とそのプログラムに参加しなかった群(「対照」群)に割り当てられた人々を対象に、健康に関係する評価項目を比較した研究を検索した。対象とする研究の選定条件は、健康的な行動(身体活動や健康的な食事など)の促進、不健康な行動(飲酒や喫煙など)の抑制、あるいは体重や血圧、健康に関する知識などの評価項目の改善を目的としたプログラムを評価していることとした。

わかったこと

合計8,179人を対象とする20件の研究を特定した。ほとんどの研究は、スポーツ団体の成人会員やサポーターを対象としており、フットボール・クラブ(例:サッカー、アメリカン・フットボール、オーストラリア・フットボール・リーグ)で行われたものだった。14件の研究が、1つ以上の健康的または不健康な行動を対象とするプログラムを評価していた。20件の研究はすべて高所得国で行われていた。半数強(11件)の研究は男性だけを対象とし、1件の研究が女性だけを対象としていた。

主な結果

対照群の人々と比べて、スポーツ団体のプログラムに参加または関与した人々は、

• 身体活動量が、おそらく1日あたり7.4分相当増加した。
• 動かずに(座ったまま)過ごす時間は減らなかった可能性がある。
• より多くの果物や野菜を食べたかもしれない。

しかし、スポーツ団体のプログラムが、糖分の多い飲料やアルコールを飲む量、あるいは喫煙に影響したかは定かではない。

スポーツ団体のプログラムが、参加者に対して望ましくない、有害な影響を与えたかどうかについても、定かではない。予期せぬ悪影響に関する情報を報告したごく少数の研究では、結果はまちまちであった。

エビデンスの限界

このエビデンスに対する信頼度は、中程度から極めて低いものまであった。今後得られるエビデンスによって、結論が変わる可能性がある。信頼度を下げた主な要因は4つある。まず、一部の研究は特定の集団に焦点を当てていたが、このレビューで知りたかった問題はより広いものであった。例えば、主な評価項目(身体活動の増減や、果物、野菜、糖分の多い飲料の摂取状況など)に関するエビデンスの大部分は、過体重や肥満といった健康上のリスク要因を持つ男性や、サッカー等の男性サポーターを対象とした研究に基づいている。第二に、一部の研究では、被験者は自分がプログラムに参加しているかどうかを知っていた。他の研究では、被験者がプログラムへの参加を知っていたかどうかが明確に報告されていなかった。第三に、一部の評価項目については、研究間で結果に大きなばらつきが見られた。最後に、いくつかの研究は規模がかなり小さかった。

エビデンスはいつのものか?

エビデンスは、2024年5月までのものである。

Hodder RK, O'Brien KM, Al-Gobari M, Flatz A, Borchard A, Klerings I, Clinton-McHarg T, Kingsland M, von Elm E

蘇生訓練は赤ちゃんの生存率を向上し、健康上のアウトカムを改善するか?

1 week 5 days ago
要点
  • 新生児蘇生訓練(NRT)のプログラムは生後28日以内、特に最初の24時間以内と7日以内の新生児死亡を減少させる可能性がある。

  • 新生児蘇生訓練が、蘇生を受けた赤ちゃんの脳障害や長期的な発達の問題を減少させるかを明らかにするには、さらなる研究が必要である。

出産時の蘇生訓練の重要性

新生児は、出生時に蘇生(呼吸や心拍がない、あるいは不十分な場合に施される応急処置)を必要とする場合がある。正期産児の約10人に1人が呼吸を開始するために簡単な処置、皮膚の乾燥や刺激を必要とする。約20人に1人が呼吸の補助を含むさらなる支援を必要とする。さらに少数の新生児は、気管挿管、胸骨圧迫、緊急投薬といったさらなる集中的な処置を必要とする。赤ちゃんの健康状態によって、蘇生への反応の良しあしが影響される。例えば、早産で生まれた赤ちゃんは出産時に呼吸の補助やその他の救命処置など、医療的な助けが必要な可能性がより高くなる。

医師、助産師、看護師その他の医療従事者を対象とした新生児蘇生訓練プログラムにはさまざまなものがある。こうした訓練プログラムが新生児死亡を減少させたり、低酸素による脳障害や長期的な発達の問題を予防したりするかはまだ研究されていない。2015年のレビューでは、訓練後に新生児死亡が減少することがわかったが、脳障害や長期的な発達の問題に着目した研究はなかった。今回の更新では、新生児死亡率の低下を支持する新たな研究があるか、また脳障害や長期的な発達の問題について報告した研究があるかを知りたかった。

知りたかったこと

新生児蘇生訓練プログラムが生後24時間、生後7日間、生後8~28日間を含む28日以内の新生児死亡を低下させるか、脳障害や長期的な発達の問題の可能性を低下させるかについて明らかにしたかった。

実施したこと

医師、助産師、看護師ほか出産に関わる医療従事者向けの蘇生訓練に関する研究を検索した。新生児死亡およびまたは脳障害や発達上の問題について報告している研究を対象とした。新生児蘇生訓練プログラムと、訓練を行わないかごく基本の訓練のみを行う場合を比較した研究を検討した。また、新生児蘇生訓練プログラムのみを実施した場合と、リフレッシャー訓練(復習を目的とした訓練)などの追加要素を組み合わせた新生児蘇生訓練プログラムとを比較した研究についても検討した。

研究結果を比較して要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

本レビューでは27件の研究(新生児528,366名)を対象としたが、個々の結果に寄与したのはそのうち1~4件の研究のみであった。

  • 資源の乏しい地域で行われた研究のエビデンスによると、訓練を受けない場合と比較して、新生児蘇生訓練は生後24時間および7日間の新生児死亡を低下させる可能性が高い。

  • 資源の乏しい地域で行われた研究のエビデンスによると、ごく基本的な訓練と比較して、新生児蘇生訓練は生後28日間の新生児死亡を減らす可能性があり、生後24時間および7日間の新生児死亡を低下させる可能性が高い。ごく基本的な訓練と比較して、新生児蘇生訓練は生後8~28日間の新生児死亡を低下させない可能性がある。

  • リフレッシャー訓練を伴う新生児蘇生訓練が、生後28日間の新生児死亡に影響を与えるかどうかはエビデンスが不確実である。

  • 蘇生を受けた赤ちゃんについて、新生児蘇生訓練が脳障害や長期的な発達の問題を減少させるかどうかを調べた研究はなかった。

エビデンスの限界

エビデンスの質は中等度から非常に低かった。対象者や介入の方法が異なっていたため、エビデンスの信頼性は限定的である。また、それぞれの結果に対して対象者が少なく、研究の参加者が治療の方法について知っており、フォローアップの途中で脱落者がいた。多くの研究は資源の乏しい環境で行われているため、その結果は先進国のように資源が豊富な環境には当てはまらない可能性がある。

このレビューの更新状況

このレビューは、前回のレビューを更新したものである。エビデンスは、2025年6月現在のものである。

Dempsey E, Joyce R, Neveln N, Fiander M, Barrington KJ, Pammi M, supported by the Cochrane Neonatal Group

子宮内膜を傷つけることは体外受精を受ける女性のアウトカムを改善させるか?

1 week 5 days ago
要点
  • 子宮内膜に傷をつけることが、体外受精により児を得ることに影響するかどうかは明らかでない。現在のエビデンスは、効果がないあるいはわずかに可能性を高めると示している。

  • 同様に、子宮内膜に傷をつけることが体外受精による妊娠の可能性に影響するかどうかは明らかでない。現在のエビデンスは、体外受精による妊娠の可能性を高める、影響しない、低くするのいずれもありうると示している。

  • 子宮内膜の損傷は、体外受精後の流産のリスクには影響しない可能性がある。

  • 損傷が1回か2回かによって、生児の出産、妊娠の成立、または流産に影響するか否かは明らかでない。

体外受精(IVF)とは?

体外受精とは、妊娠が難しいカップルを対象とした不妊治療である。体外受精では、女性から卵子を採取し、培養室で精子と受精させて胚を作る。胚は、着床することを期待して子宮に移植される。着床とは、胚が子宮内膜の中に入りこむことで、これが妊娠成立の第一歩となる。

子宮内膜損傷とは何か?

子宮内膜の損傷は、体外受精(IVF)周期前に実施できる任意の処置である。この処置では、細いプラスチック製のチューブを子宮内に挿入し、子宮内膜に小さな傷(「スクラッチ」と呼ばれる)を作る。この処置を胚移植の前に実施することで、着床の可能性が高まることが示唆されている。

知りたかったこと

体外受精・胚移植を受ける女性が子宮内膜損傷(またはスクラッチ)を受けることが、処置を受けない場合や偽の処置と比較して、安全かつ有効かを明らかにしたかった。

実施したこと

子宮内膜損傷が、処置を行わない場合や偽処置と比較して、生児の出産や妊娠といった体外受精の主要なアウトカムに及ぼす影響を調査した研究を検索した。流産、多胎妊娠、痛み、出血など、望ましくない影響が生じるかどうかを検討した。

また、1か所の損傷と2か所の損傷を比較した研究も対象に含めた。

本研究では、質の高い研究(ランダム化比較試験)のみを対象とした。十分に類似したすべての対象研究の結果を統合し、子宮内膜の損傷が各アウトカムに及ぼす影響を検討した。研究結果をまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

24件の研究(女性7,234名)を対象とした。これらの研究はそれぞれ非常に異なっており、対象となった女性の集団や、使用した医療器具、体外受精の周期に対する処置のタイミングなど処置についてもさまざまであった。多くの研究は質が低かったため、結果の信頼性は低い。したがって、主要な分析には質の高い研究のみを用いた。24件の研究のうち、主要な分析に含めたのは8件(女性4,402名)のみであった。

子宮内膜の損傷が体外受精による出産の可能性に影響を与えるかどうかは明らかではない。体外受精で赤ちゃんを授かる確率が通常約27%だとすると、体外受精の前に子宮内膜を傷つけた場合の赤ちゃんを授かる確率は、27%~32%になる。同様に、妊娠についてもエビデンスは明らかでなかった。体外受精で妊娠する確率を約32%とすると、体外受精の前に子宮内膜を傷つけた場合の妊娠の確率は31%~37%になる。子宮内膜の損傷は、体外受精による流産には影響を与えない可能性がある。

子宮内膜を傷つける処置では、軽度から中程度の痛みがあり、腟からの出血が少量認められるが、長くは続かない。

2件の研究(女性40名)が1回の損傷と2回の損傷について影響を比較していた。潜在的なバイアスの懸念、研究規模の小ささ、および特異的な女性にのみ焦点をあてていることから、このエビデンスにはほとんど信頼性がない。したがって、体外受精前の処置が1回である場合と2回である場合を比較して、体外受精による出産の可能性、妊娠成立、流産に影響があるかは不明である。

エビデンスの限界は何か?

対象とした多くの研究において、参加者と研究スタッフは参加者がどちらの群に割り当てられたか知っていた。また、適切に登録されていない研究が含まれており、どんなアウトカムを報告するかについてのバイアスがあった懸念が生じた。不自然な被験者募集率や、それぞれのアウトカムに対する一貫性のない結果報告など、潜在的なバイアスの兆候を示す研究もあった。

このような問題がない研究に限定して主要な分析を行った。研究の質を問わず全ての研究を対象とした分析を行ったところ、子宮内膜の損傷が妊娠と生児の出産の可能性を高める可能性が示唆された。しかし、これらの研究にはバイアスが生じている可能性があるため、この結果に対する信頼性が低い。

エビデンスの更新状況

本レビューは2021年のコクランレビューの更新版である。本エビデンスは2025年12月現在のものである。

Perera AK, Gan J, Afroz A, Armstrong S, Raine-Fenning N, Martins WP, Lensen SF

針を使う処置の際、新生児に砂糖水を与えることで痛みを軽減できるか

1 week 5 days ago
要点
  • 針を使う処置を受ける際、ショ糖(砂糖水)を与えられた新生児は、何も与えられなかった場合や通常のあやす手段をとられた場合に比べて処置中や直後の痛みが和らぐ可能性が高い。

  • ショ糖はおしゃぶりよりも痛みを和らげる効果があるようだ。肌と肌の触れ合いによるケア(スキン・トゥ・スキンケア)と比較した場合のショ糖の効果について、良質なエビデンスは得られていない。

  • 吐き気や無呼吸(一時的な呼吸停止)などの有害な副作用について報告された研究はなかった。

ショ糖鎮痛とは?

ショ糖とは砂糖のことである。水に溶かして、ごく少量を新生児の鎮痛のために使用することができる。採血や治療のために静脈に針を刺す約2分前およびまたは直前に、赤ちゃんの舌にショ糖を垂らす。

入院中の新生児における痛みの緩和の重要性

入院中の早産児や正期産児は投薬や診断のため、多くの痛みを伴う処置を受ける。痛みは新生児にさまざまな影響を及ぼす。これは身体の発育不良や脳の発達に影響しうる。したがって、赤ちゃんが成長する過程で健康を守るためには、痛みをできるだけ軽減することが重要である。

何を明らかにしたかったのか?

新生児における針を使う処置の間および直後の痛みを和らげるために、ショ糖がどの程度有効か調べたかった。ショ糖が、おしゃぶり、母乳、母親や父親の肌に密着して抱かれること(スキン・トゥ・スキンケア)といった他の鎮痛手段に比べてどのような効果があるか知りたかった。また、ショ糖に有害な影響があるか調べたかった。

何を行ったのか?

ショ糖の鎮痛効果を、母乳、おしゃぶり、抱っこなど他の方法と比較して検討した研究を検索した。結果を要約し、治療された乳児の数や研究方法の質などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

2764人の新生児を対象とした29件の研究を同定した。これらの研究では、異なる用量と投与方法でショ糖が使用されていた。これらの研究は世界的に実施された。多くはアジアで、そのほかヨーロッパ、北米、南米で行われた。全ての研究がランダム化比較試験であり、乳児は2つ以上の治療群にランダムに割り付けられた。これは、研究グループが類似していることを確実にし、誰がどのグループに属しているかを治験責任医師と両親が知らないようにする最善の方法である。いずれの研究も製薬業界からの支援を受けていなかった。

主な結果
  • ショ糖は、鎮痛措置を施さない場合(水などを与える場合)と比較して、注射針の挿入中および直後(30秒から1分間)の乳児の痛みを軽減する可能性が高い。

  • 処置中の痛みに関しては、ショ糖はスキン・トゥ・スキンケアと比べて、ほとんど、あるいは全く差がない可能性がある。

  • 授乳に比べ、ショ糖は針を刺す際の痛みを和らげる可能性が高い。

  • ショ糖(おしゃぶりと併用)は、おしゃぶりのみの場合と比較して、針の挿入中および直後(30秒から2分間)の痛みを軽減する可能性が高い。

対象とした比較項目について、有害な影響を報告した研究はなかった。

エビデンスの限界は何か?

ショ糖群と非介入群または水群の比較

介入を行わない場合と比較して、ショ糖が痛みを軽減する可能性が高いことについて、確実性は中等度である。一方、研究に参加した人々が、赤ちゃんが受けた治療の種類に気づいていた可能性があり、また研究の対象となった赤ちゃんの数は少なかった。

ショ糖とスキン・トゥ・スキンケアの比較

2つの研究で報告された結果が大きく異なっていたため、ショ糖がスキン・トゥ・スキンケアよりも痛みを軽減することについては確実でない。この知見が、今後の研究によって変わる可能性は高い。

ショ糖と母乳の比較

ショ糖は母乳よりも痛みを軽減する可能性について、確実性は中等度である。しかし、この研究では、その実施方法の詳細が明確に報告されていなかった。

ショ糖とおしゃぶりの比較

おしゃぶりとショ糖を併用した方が、おしゃぶりだけの場合よりも痛みを軽減する可能性について、確実性は中等度である。各研究では、ショ糖の投与方法(投与量、投与方法、おしゃぶりを併用するか否かなど)が異なっていた。

エビデンスはいつのものか?

エビデンスは2024年7月現在のものである。

Bueno M, Candido L, Hu J, Fiander M, Cracknell J, Xu E, Kang J, Yamada J, Supported by the Cochrane Neonatal Group

黄疸のある新生児に対して、より高用量の光線療法を行うことは有効か

1 week 5 days ago
要点
  • 黄疸のある新生児に対して:

    • 高用量と低用量の光線療法のどちらが、退院前の新生児の脳損傷、脳性まひ、死亡を減少させるのかは不明である。

    • 高用量と低用量の光線療法を比較すると、治療開始後12~48時間時点のビリルビン値をわずかに低下させる可能性がある。

  • 乳児の健康状態を改善するための最適な光線療法の用量を決定するには、異なる用量の光線療法について検討する、より大規模で良質な研究が必要である。

新生児黄疸とは

黄疸(皮膚と眼球の黄染)は新生児にもっともよく見られる症状である。これは血液中のビリルビン(黄色がかった色素)によって引き起こされる。ビリルビンは体内で古い赤血球が自然に分解される過程で産生される。ビリルビンの量が、赤ちゃんが尿や便で排出する能力を上回ると、体内に蓄積される。

光線療法とは

光線療法は新生児黄疸の主な治療である。光線療法の装置からの光は、日光と同じように皮膚から吸収される。光線療法はビリルビンを、赤ちゃんが尿や便から輩出できる害の少ない物質に変える特殊な光を使用している。光線療法は異なる用量で行うことができる。用量について、光の強度、使用する装置、光と赤ちゃんの肌の距離を定義した。

黄疸治療の重要性

黄疸は脳の発達や機能に問題を引き起こす可能性がある。例えば脳症(損傷や脳に影響する病気)は、筋肉の制御に影響を及ぼす運動障害である脳性まひの原因となる、恒久的な脳損傷の一種である核黄疸を引き起こす。黄疸による重篤な脳損傷は死亡の原因にもなり得る。

知りたかったこと

新生児に対して高用量の光線療法を行うことで、ビリルビンの減少が速まり、脳損傷や障害に起因する長期的な問題や死亡のリスクが低下するかを調べたかった。

実施したこと

異なる用量の光線療法を比較した研究を検索し、用量の違いによって効果に違いがあるかを調べた。異なる装置、異なる光の強度、異なる赤ちゃんの皮膚と光線の距離について比較した。研究結果をまとめ、研究方法や規模および研究間の整合性などの要素に基づいて、エビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

光線療法による治療を受けた黄疸の新生児6,927人を対象とした41件の研究を同定した。これらの研究における光線療法は16時間から60時間続いた。

主な結果

黄疸の乳児において:

  • 高用量と低用量の光線療法のどちらが、脳症や脳性まひの発生を減少させるかは不明である。

  • 高用量と低用量の光線療法の比較:

    • 入院中の死亡率にはほとんど、あるいは全く差を認めない可能性がある;

    • 治療後24時間または48時間のビリルビン値はわずかに減少する可能性がある;

    • 治療後72時間のビリルビン値の低下にはほとんど、あるいは全く影響を認めない可能性があるが、これらの結果については非常に不確実である。

核黄疸の発生を報告した研究はなかった。

エビデンスの限界

エビデンスの信頼性を低下させた主な要因は3つある。まず、研究の約3分の1において、対象者が各治療群へ厳密に無作為に割り付けられていないようであった。つまり、グループ間の違いは、治療法の違いではなく、対象者の違いによるものである可能性があるということである。つぎに、ビリルビン値についての結果は、このアウトカムを報告している研究間で大きく異なっており、詳細な評価を行った後もその理由を完全には解明できていない。第三に、脳性まひや死亡のアウトカムについての研究や対象者はほとんどなかった。こうした理由から、光線療法の用量がどのように有効であったかについて、確たる結論を出すことはできない。

エビデンスの更新状況

2025年6月9日時点におけるエビデンスである。

Lai NM, Ahmad Kamar A, Lee SWH, Ng KT, Fiander M, Cracknell J, Choo YM, Supported by the Cochrane Neonatal Group

入院中で栄養失調またはそのリスクがある高齢者に対して行うさまざまなタイプの栄養補給の利益とリスク

1 week 5 days ago
要点
  • 特別な食事と飲み物を提供すると、標準的な病院のケアと比べて、入院から1ヵ月後に患者が死亡したり、重大な健康上の問題が生じたりする可能性が低くなるかもしれない。

  • 患者の基本的な日常の活動を行う能力、生活の質 (QOL)、入院期間、体重の面では、さまざまなタイプの栄養補給の利益とリスクは非常に不確かであるか、標準的な病院のケアと比べてほとんどまたはまったく差がない可能性を示すエビデンスがある。

  • より規模が大きく、さまざまなタイプの栄養補給を比較するためによくデザインされた研究によって、これらの結果に対する信頼性が高まるかもしれない。

栄養失調とは?

人は、エネルギーとタンパク質の摂取量がその身体に見合った必要量に満たないと、栄養失調になる。この状態では貯蔵された脂肪と筋肉が減少しかねない。栄養失調になると、人の健康はおびやかされ、免疫系が感染症と闘う能力は低下する。栄養失調の高齢者は、そうでない高齢者と比べて、合併症を引き起こしたり、自立性を失ったり、死亡したりするリスクが高い。また、生活の質 (QOL)も低い。

高齢者が栄養失調となったり、そのリスクに晒される原因は複数あるが、これには食欲減退、咀嚼の問題、身体的制限(たとえば、食事を用意するために長時間立っていられないこと)、孤独などが含まれる。

入院中の高齢者は特に栄養失調になりやすい。病気ゆえにより多くのエネルギーとタンパク質を必要としているのに、十分に食べていない可能性がある。栄養失調は、入院中の高齢者のおよそ3分の1から3分の2程度に起こる。

栄養失調に対してどのような治療が行われるか?

栄養失調に対してはさまざまな治療があり、タンパク質その他の栄養素を補給する特別な食事と飲み物の提供、食事摂取や水分摂取の実際的な介助、間食を増やすこと、タンパク質強化食品やサプリメントの利用、栄養指導、または必要に応じてこれらの方法の組合せることなどがある。

知りたかったこと

入院中で栄養失調またはそのリスクがある高齢者にさまざまなタイプの栄養補給を行うと、標準的なケアよりも以下の点で優れているか知りたかった。

  • 死亡リスクや重大な健康上の問題(感染症など合併症やけがの治癒の遅れ)の低減

  • 基本的な日常の活動を行う能力と生活の質 (QOL)の向上

  • 入院期間の短縮

  • 体重と筋肉量の増加

また、どのタイプの栄養補給が最も有効か知りたかった。

実施したこと

入院中で栄養失調またはそのリスクがある65歳以上の人を対象に行われた研究を探した。1つのタイプの栄養補給を別のタイプと比較した研究、または栄養補給と標準的な病院のケア(つまり通常の病院食)と比較した研究、場合によっては、試験するサプリメントと同一に見える「偽治療薬」を組み合わせた研究を含めた。 すべての治療を要約・比較し、研究方法や参加者数などの要因に基づいて、結果に対する信頼性を評価した。

わかったこと

さまざまな急性疾患で入院した高齢者3,309人が参加した21件の研究があった。これらの人々が受けた治療を5つのカテゴリーに分類した。

  • 特別な食事と飲み物

  • タンパク質を多く含む食品またはサプリメント

  • エネルギー補給用サプリメント

  • 患者の必要に応じた、介護者による食事摂取支援(たとえば、食べ物の好みに配慮したり、食べやすいよう体位を調整したり、食ベる際に介助したりする)。

  • 患者の必要に応じた、栄養士または食事療法士による複合的栄養管理(たとえば、食材を変更したり、カウンセリングを行ったりする)

主な結果

標準的な病院のケアと比べて、特別な食事と飲み物を提供すると、入院から一ヵ月後の、

  • 死亡リスクが低下:1,000人あたりの死亡数は57人減る可能性がある。

  • 重い健康上の問題が減少:1,000人あたりの事例数が84件減る可能性がある。

下記の面では、標準的な病院の看護と比べて、特別な食事と飲み物、タンパク質を多く含む食品またはサプリメント、エネルギー補給用サプリメント、患者の必要に応じた食事摂取支援、患者の必要に応じた複合的栄養管理がもたらす効果は極めて不確かであるか、ほとんどまたはまったく違いがない可能性がある。

  • 基本的な日常の活動を行う能力

  • 生活の質 (QOL)

  • 入院期間

  • 体重と筋肉量

さまざまなタイプの栄養補給をそれぞれ比較したところ、本レビューで測定した項目について、他のすべてに優る結果を得られるような方法は見られなかった。

エビデンスの限界

いくつかの理由から、結果の信頼性は低いまたは非常に低い。一部の研究が採用した方法は、誤った結果につながりうるものだった。参加者が少なすぎるか、本レビューで関心のある要素のすべて(たとえば、評価項目としての筋肉量や、さまざまなタイプの栄養補給どうしの比較など)を調べていない研究が多かった。また、入院中の高齢者はそれぞれの抱える病気や機能的能力が異なるため、さまざまなタイプの栄養補給がさまざまな人々にどのように影響するか評価できなかった。

エビデンスはいつのものか?

エビデンスは2024年7月2日現在のものである。

Kiesswetter E, Schwarzer G, Stadelmaier J, Lohner S, Grummich K, Dagnelie PC, Beck AM, Beelen J, Botella-Carretero JI, Faxén-Irving G, Hickson M, Iff S, Johansen A, Sharma Y, Sorensen JM, Kaegi-Braun N, Wunderle C, Bongaerts B, Meerpohl JJ, Norman K,…

脳内の異常タンパク質の蓄積を抑える薬(抗アミロイドモノクローナル抗体)は、アルツハイマー病による軽度認知障害や軽度認知症のある人にとって有効な治療法なのか。また、副作用はあるか?

1 week 5 days ago
要点
  • 抗アミロイドモノクローナル抗体は、実験室で製造される医薬品である。脳内に蓄積して潜在的に有害なアミロイドタンパク質を標的として、脳から除去する。アルツハイマー病による軽度の記憶や思考の問題(軽度認知障害(MCI))や軽度認知症がある人において、この抗アミロイドモノクローナル抗体は、治療開始から18か月後において、プラセボ (偽薬治療)と比較して、記憶機能や思考能力の低下、あるいは認知症症状の重症度には、ほとんど、あるいは全く差をもたらさないと考えられる。

  • 抗アミロイドモノクローナル抗体は、プラセボよりも脳の腫脹や微小出血を引き起こす可能性が高い。プラセボと比較して、その他の重篤な副作用や死亡のリスクを高めることはない。

  • 脳からアミロイドタンパク質を除去することに成功しても、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)や軽度認知症がある人において、臨床的に意義のある改善にはつながらないようだ。アルツハイマー病の病態修飾療法(訳注:疾患の原因に直接作用して、疾患の進行を抑制する治療)に関する今後の研究は、他の治療法に焦点を当てるべきである。

アルツハイマー病とは何か?

アルツハイマー病では、タンパク質(アミロイド斑と呼ばれる)が蓄積することで、脳細胞が死滅する。アルツハイマー病は、人の記憶力や思考能力に影響を及ぼす。症状は通常、最初は軽度で、日常生活に支障をきたすことはない。これは「軽度認知障害」(MCI)と呼ばれる。時間が経つにつれて、軽度の認知症へと進行することがあり、その場合は記憶力や思考力の低下が深刻化し、日常生活に支障をきたすようになる。軽度認知障害(MCI)の患者の約15%は、2年以内にアルツハイマー病による認知症を発症する。これは高齢者において最も一般的な認知症の一種である。

抗アミロイドモノクローナル抗体とは何か?

抗体は、病気に対する防御として体内で作られる。また、治療用として実験室で製造することも可能である。抗アミロイド抗体は、アルツハイマー病の原因となるアミロイド斑を形成するアミロイドタンパク質を標的とし、脳からそれらを除去するように設計されている。これらはアミロイドタンパク質のみに作用するため、「モノクローナル」と呼ばれる。脳からアミロイドタンパク質を取り除くことで、アルツハイマー病の進行を遅らせることができるかもしれない。

知りたかったこと

抗アミロイドモノクローナル抗体が、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)や軽度認知症がある人にとって有効な治療法となるかどうかを調べたかった。抗アミロイドモノクローナル抗体が、以下の項目の進行を遅らせたかどうかを評価した:

  • 記憶力や思考力の低下;

  • 日常生活を送る能力の低下;および

  • 認知症の症状の悪化。

また、抗アミロイドモノクローナル抗体が何らかの副作用を引き起こすかどうかについても知りたかった。

行ったこと

アルツハイマー病に起因する軽度認知障害(MCI)または軽度認知症がある人を対象に、1種類以上の抗アミロイドモノクローナル抗体をプラセボ(薬物を一切含まないが、試験薬と外観が同一で、投与方法も同様である偽薬)と比較した研究を検索した。

研究結果を要約し、研究規模や方法論などの要素を考慮して、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

さまざまな国で実施され、20,342人が参加した17件の研究を特定した。各研究における平均年齢は70歳から74歳であった。すべての研究は、抗アミロイドモノクローナル抗体を製造する企業から資金提供を受けていた。

主な結果

18か月の治療後、抗アミロイドモノクローナル抗体は:

  • 認知症の症状の重症度には、ほとんど、あるいは全く影響を与えない可能性がある(9件の研究、8,053人);

  • 記憶力や思考力の低下(13件の研究、9,895人)や、日常生活を送る能力(3件の研究、3,478人)に対しては、おそらくほとんど、あるいは全く効果がないと考えられる;

  • 買い物、家計の管理、服薬、交通機関の利用といった、より複雑な日常の活動において、わずかな改善をもたらす可能性がある(1件の研究、1,252人);

  • おそらく脳浮腫の発生率をわずかに上昇させるだろう。モノクローナル抗体を使用した1,000人につき119人が脳浮腫を発症したのに対し、プラセボを使用した1,000人ではわずか12人が脳浮腫を発症した(11件の研究、13,595人);

  • 脳内の微小出血をわずかに増加させる可能性がある(3件の研究、4,308人);

  • それぞれの研究で著者が定義したその他の重篤な有害事象の発生率を増加させない(9件の研究、11,904人);

  • いかなる原因による死亡率も増加させない(7件の研究、9,733人)。

エビデンスの限界

いくつかの理由から、エビデンスへの確実性は限定される。まず、モノクローナル抗体を投与された患者は、プラセボを投与された患者に比べて、脳の浮腫や微小出血がより多く見られた。しかし、ほとんどの研究では、脳浮腫や微小出血による症状がある人と、画像検査でしかこれらの所見が確認されなかった人を区別していなかった。こうした報告の不備により、患者は潜在的な副作用の深刻さを理解するために必要な情報を得ることができなくなっている。第二に、結果は、実施期間がそれほど長くなかった研究に基づくものである。これは、薬の長期的な効果や副作用について知りたいアルツハイマー病患者にとって、重要なエビデンスの限界である。

現在進行中の研究を6件見つけた。新たな結果が明らかになるにつれて、このレビューの結論は変わる可能性がある。

エビデンスの更新状況

エビデンスは2025年8月7日現在のものである。

Nonino F, Minozzi S, Sambati L, Del Giovane C, Baldin E, Bassi MC, De Santis C, Gonzalez-Lorenzo M, Vignatelli L, Filippini G, Richard E

ニコチン吸引を止めるための治療の効果は?

1 week 5 days ago
要点
  • テキストメッセージを使った介入は、何もしない、あるいは最小限の支援しかしない場合に比べ、より多くの若者がベイプをやめるのに役立つ可能性がある。

  • バレニクリンは、プラセボ(偽の治療薬)と比較して、より多くの人がベイプを止めるのに役立つ可能性がある。

  • これらや他の介入が、人々がベイプをやめるのを助けることができるかどうか、それらの潜在的な害、そしてそれらがタバコを吸う人の数に影響を与えるかどうかについてのより多くの情報が必要である。

ニコチン入りベイプとは?

ベイプ(電子タバコまたはe-シガレットとも呼ばれる)は、通常ニコチンや香料を含む液体を加熱する携帯機器である。液体は、使い捨てまたは詰め替え可能なカートリッジ、リザーバー、または「ポッド」に保存される。ベイプは、煙ではなく蒸気としてニコチンを吸入することができる。ベイプはタバコを燃やさないため、タバコよりも有害物質にさらされる量が少ない。しかし、ベイプはベイプをしない場合よりも害を及ぼす可能性が高い。禁煙のためにニコチン・ベイプを使う人もいるが、ニコチン・ベイプを使う人の中には喫煙経験のない人もいる。ニコチン入りベイプの使用をやめたいと思っても、ニコチンには中毒性があるため、なかなかやめられない人もいるだろう。

どのような介入が、人々がベイプを止めるのに役立つだろうか?

ニコチン置換療法(NRT:ガムやパッチなど)、バレニクリン、ブプロピオン、シチシンなど、禁煙を助ける薬も、ベイプをやめるために使われる可能性がある。ベイプをやめるための行動的介入としては、カウンセリング、テキストメッセージ、ベイプ削減プログラム、印刷物などが考えられる。

知りたかったこと

ニコチン入りのベイプを止める最善の方法に関するガイダンスは限られている。どのようなツールがテストされ、人々がベイプを止めるのに役立つかどうかを知りたかった。また、これらの介入がタバコを吸う人を増やすかどうかなど、潜在的な害についても調べた。

実施したこと

ニコチン入りベイプを使用している人がベイプをやめることを支援するためにデザインされた介入を検討した研究を検索した。結果を比較・要約し、研究方法と規模に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。

以下の評価を行った:

  • 研究開始から少なくとも6か月後に、何人がベイプを止めたか;

  • 研究開始後少なくとも6か月間におけるタバコ喫煙の変化;

  • 治療開始から少なくとも1週間後に、治療による好ましくない影響を経験した人の数。

わかったこと

ニコチンベイプを使用した5,800人を含む15の件の研究を発見した。14件の研究が米国で、1件の研究がイタリアで行われた。ベイプを止めるために行われた治療は以下の通りである:

  • 2種類のNRTを併用する(コンビネーションNRT);

  • 異なる用量のNRT;

  • シチシン(禁煙補助薬);

  • バレニクリン(禁煙補助薬);

  • ベイプに含まれるニコチンを減らし、ベイプの量を減らすための計画;

  • アプリの有無にかかわらず、テキストメッセージ;

  • メディア・リテラシーeラーニング;

  • 経済的インセンティブ。

主な結果

テキストメッセージによる支援は、支援なし/最小限の支援に比べ、より多くの若者(13~24歳)がベイプをやめるのに役立つ可能性がある。バレニクリンはベイプをやめる助けにもなる。他の介入がベイプを止めるのに役立つかどうかについては、十分な情報がなかった。

重篤な副作用を報告した研究はほとんどなかったが、治療の潜在的有害性について結論を出すには十分な情報がなかった。2件の研究では、介入(NRTの併用;テキストメッセージ)が6か月後にタバコを吸う人の数に影響を与えたかどうかを調べた;エビデンスは、これらの介入が喫煙に影響を与えなかったことを示唆しているが、結果については非常に不確かである。

エビデンスの限界

テキストメッセージによる介入を受けた若者は、何もしない、あるいは最小限の支援を受けた場合よりも、ニコチン吸引をやめる可能性が高いというエビデンスがいくつか見つかった。しかし、これを検証した研究は同じテキストメッセージ介入を用いており、他のテキストメッセージ介入や高齢者においても同様の結果が得られるかどうかはわからない。また、バレニクリンはプラセボ(ダミー治療)よりもニコチン吸引を止めるのに役立つ可能性があることもわかったが、さらなるエビデンスがあれば結論が変わる可能性もある。

6か月後にタバコをやめた人の数や、研究中の介入による重大な好ましくない影響については、明確な結論を出すことができなかった。もっと研究が進めば、もっと確信が持てるようになるだろう。

全体として、調査結果は少数の研究と参加者に基づくものであり、いくつかのケースでは研究方法に問題があったため、エビデンスに対する信頼性は限定的であった。より多くの研究が進行中であり、エビデンスの信頼性が高まるだろう。

本レビューの更新状況

本レビューは、前回のレビューを更新したものである。エビデンスは2025年7月1日までのものである。本レビューはリビングシステマティックレビューであり、毎月新しいエビデンスを探し、本レビューの結論を強化または変更する新しいエビデンスを発見した場合には、レビューを更新する。

Butler AR, Lindson N, Livingstone-Banks J, Notley C, Turner T, Rigotti NA, Fanshawe TR, Begh R, Wu AD, Brose L, Conde M, Simonavičius E, Hartmann-Boyce J

無排卵による不妊症に対するクロミフェンおよびその他の抗エストロゲン薬

4 weeks ago
レビューの論点

多嚢胞性卵巣症候群に伴う無排卵の女性において、クロミフェンを含む抗エストロゲン薬は妊孕性を改善するか。

背景

排卵がないことによる不妊症は、女性によく見られる問題である。内科的治療により、これらの女性に排卵を起こすことができる。例えば、クロミフェンのような経口抗エストロゲン薬は、卵巣への刺激を強め、排卵を助ける。

研究の特徴

2016年のアップデート版では新たに13件の試験を追加し、現在のレビューには28件の試験(3377人の女性)が含まれている。対象となった28件の試験のうち、5件が生児出産を報告している。流産、多胎妊娠率、卵巣過剰刺激症候群などの有害事象の報告は少ない。エビデンスは2016年8月現在のものである。

主な結果

得られたエビデンスから、クロミフェンクエン酸塩はプラセボと比較して、臨床的な妊娠の可能性を向上させることが示唆された。

また、クロミフェンとタモキシフェン(類似の抗エストロゲン薬)との違いを示すエビデンスはなかった。クロミフェンクエン酸塩を投与された女性は、ゴナドトロピンを投与された女性と比較すると、妊娠または生児を得る可能性が低いことがわかった。多胎妊娠率の違いに関するエビデンスはなかった。これらの試験では、妊娠した女性の数が非常に少ないため、結果は確実なものではない。

デキサメタゾン(ステロイド)と複合経口避妊薬の両方がクロミフェンを補うために使用されており、その効果に期待が持たれているが、これを確認するためにはさらなる研究が必要である。初期の妊娠成立以降について報告した研究はほとんどなかった。クロミフェン治療に伴う流産のリスクが報告されていることから、効果的な治療法については明確な結論を出すことができない。クロミフェンクエン酸塩の10日間投与のレジメンが5日間投与のレジメンと比較して妊娠転帰を改善することを示唆するエビデンスがあった。しかし、データの量が限られているため、さらなる研究が必要である。クロミフェンクエン酸塩の早期投与と遅れて投与するレジメンの比較については、報告されたデータが不十分であったため、妊娠転帰の違いを判断することができなかった。

エビデンスの質

エビデンスの質は、低度から非常に低度であった。エビデンスの質をダウングレードした主な理由は、不正確さとバイアスのリスクである。

Brown J, Farquhar C

風邪の予防および治療のための亜鉛

4 weeks 1 day ago

要点
‐ 亜鉛サプリメントの摂取は、プラセボ(偽薬)と比較して風邪を発症するリスクはほとんど、あるいはまったく減少しない可能性がある。

‐ 風邪を発症している場合の亜鉛サプリメントの摂取は、プラセボと比較して風邪の発症期間を短縮できる可能性がある。

- 風邪の治療に亜鉛を使用した場合、重篤ではない有害事象のリスクが増加する可能性がある。

風邪とは何か?
風邪とは、一般的に上気道におけるウイルス感染症である。特定の症状の組み合わせが風邪を定義するわけではないが、症状には発熱の有無にかかわらず、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、咳、疲労感、および鼻水などが含まれる。ほとんどは通常、特別な治療をしなくても回復するが、風邪を予防したり、風邪の期間を短縮したりする決定的な治療法はない。成人および小児における風邪の頻度を考えると、風邪は公衆衛生上の負担であり、労働生産性の低下や学校の欠席における有意な原因となっている。亜鉛による風邪の予防および治療の試みは、現在でも関心を集めている。

何を調べようとしたのか?
亜鉛がプラセボよりも風邪にかかるリスクを低減し、また風邪の発症期間を短縮するのに効果的であるかどうかについて調査した。プラセボとは、見た目は治療薬に似ているが、治療効果が不明な物質のことである。プラセボは、治療を受けているという思い込みがもたらす効果について評価を行うことに役立つ。

また、亜鉛が有害事象と関連しているかどうか、特に風邪の合併症と関連している可能性について調べたかった。さらに、自己評価による風邪の総合的な重症度、それぞれの症状の重症度や持続期間、および仕事や学校を休んだ日数についても調査した。

何を行ったのか?
成人および小児の風邪の治療または予防を目的に亜鉛とプラセボを比較した研究を調査するため、6つのデータベースと2つの臨床試験登録システムについて検索を行った。研究結果を比較、要約し、バイアスのリスクや研究方法などの特定の要因に基づいて、エビデンスの信頼性を評価した。

何が見つかったのか?
風邪の予防または治療に関する合計34件の研究が見つかった。これらの研究は13の国で実施されていたが、ほとんどが米国で実施されていた。12件の研究は小児(18歳未満)を対象としており、22件は成人を対象としていた。ほとんどの治療は自己申告による症状の消失をもって終了としており、治療期間は最短で5日間、最長で540日間であった。また、ほとんどの研究は、関連産業とのつながりのある組織から資金提供を受けていたか、資金提供元についての情報がなかった。その他は民間の診療所、非政府財団、大学、または政府事業体から資金提供を受けていた。

本レビューでは、以下の項目について評価を行った:

- 風邪の予防における亜鉛の効果

- 風邪の治療における亜鉛の効果

得られた結果は以下である:

風邪の予防における亜鉛の効果

亜鉛の摂取は、プラセボと比較して、風邪の予防にはほとんど、または全く差はない(合計1,449人が参加した9件の研究より)。また、風邪の予防のために亜鉛を摂取することは、実際に風邪を発症した場合における発症期間にはほとんど差がなく(合計740人が参加した3件の研究より)、重症度にもほとんど、または全く差がない可能性がある(合計101人が参加した2件の研究より)。有害事象は亜鉛またはプラセボを服用した両群から報告されており、症状としては味覚異常と胃の不調が最も多かった。

風邪の治療における亜鉛の効果

風邪の治療として亜鉛を服用した場合、プラセボと比較して風邪の発症期間が約2日間軽減する可能性がある(合計972人が参加した8件の研究より)。しかし、この結論を裏付けるエビデンスの信頼性は低い。亜鉛が症状の重症度に影響するかどうかは不明である(合計261人が参加した2件の研究より)。有害事象は、プラセボよりも亜鉛を服用した場合に多く報告され、味覚異常と胃の不調が最も多くみられた。経鼻的に亜鉛を投与した研究では、嗅覚喪失の症例は報告されておらず、また特有の有害事象に関する情報も不明であった。

エビデンスの限界は何か?
エビデンスに対する信頼性は、ほとんどが低いか、または非常に低く、今後の研究結果は本レビューの結果と異なる可能性がある。エビデンスの信頼性を低下させた要因はいくつかあるが、第一に、一部の研究において、参加者を無作為に治療群に割り付けた方法についての報告が十分ではなかった。つまり、試験群間の差異は、治療によるものではなく、参加者における差異による可能性があるということである。第二に、治療方法が大きく異なっている研究があった。最後に、亜鉛の有効性を検証する際に使用されたアプローチが研究間で大きく異なっていた。確固とした結論を導くには、さらなる研究が必要であると思われる。

本エビデンスはいつのものか?
2023年5月22日時点におけるエビデンスである。

Nault D, Machingo TA, Shipper AG, Antiporta DA, Hamel C, Nourouzpour S, Konstantinidis M, Phillips E, Lipski EA, Wieland LS

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する有効かつ安全な治療法か?

1 month 2 weeks ago
要点

- 成人において、rTMSはおそらくプラセボrTMS(偽刺激)と比較して、治療終了時までにPTSD症状の重症度を軽減させない。しかし、これらの結果は、治療の実施方法に大きなばらつきがあったことと、参加者の数が少なかったことにより、限定的なものであった。

- PTSDに対するrTMSの研究では、重篤な有害事象が起こることはまれであった。

- 成人のPTSDに対するrTMSについて、さらなる研究が必要である。今後の研究で、有害事象についてより詳細に報告され、PTSDの重症度を評価するために治療後に参加者をより長く追跡調査することができれば有益であろう。

心的外傷後ストレス障害とは何か?

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、心的外傷を伴う出来事に遭遇した後に発症する、苦痛や障害を伴う症状を特徴とする精神疾患である。PTSDを治療せずに放置すると、PTSDがある多くの人は何年も苦しむことになる。

PTSDはどのように治療されるのか?

PTSDには薬物療法や精神療法などいくつかの治療法がある。しかし、既存の治療法では脱落率が高く、これは治療への忍容性に問題があり、症状が続く可能性があることを示唆している。PTSDにはより効果的な治療法が必要である。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、PTSDに対する有望な治療法かもしれない。

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)とは?

rTMSは、磁気パルスを放出するコイルを頭皮に当てることで、脳組織に電界を誘導する非侵襲的な治療法である。rTMSが精神症状の変化をもたらす生物学的経路は依然として不明であり、活発な研究分野である。rTMSは、PTSDと重要な特徴を共有する2種類の精神疾患である大うつ病性障害と強迫性障害がある人の治療において有効であることが証明されている。

知りたかったこと

rTMSがプラセボ治療(偽刺激)よりも治療直後のPTSDの重症度を軽減するのに優れているかどうか、またrTMSが治療中の重篤な有害事象と関連しているかどうかを調べたいと考えた。治療効果の持続性に興味があったので、治療後1~4週間および1~3か月におけるPTSD重症度に対するrTMSの影響を調べることを目的とした。rTMSの忍容性を調べるため、積極的rTMS群と偽rTMS群で、早期に治療を中止した参加者の数を比較した。最後に、rTMS治療が治療直後の不安と抑うつ症状に及ぼす影響を調べたいと考えた。

実施したこと

成人のPTSD患者において、rTMSと偽rTMSを比較した研究を検索した。研究の結果を比較・要約し、研究方法や参加者数などの要素に基づいて、エビデンスの確実性を評価した。

わかったこと

13件の研究に参加した577人のデータを対象とした。研究は世界各国で実施され、うち5件は米国で実施された。治療直後のPTSD重症度に対するrTMSの効果を調べる主分析には、99人の参加者を含む3件の研究が寄与した。251人が参加した5件の研究が、rTMSの安全性(重篤な有害事象の発生)の主要な推定に貢献した。

主な結果

- rTMSはおそらく、偽治療と比較して、治療直後のPTSD症状にはほとんど差がないと思われる。しかし、この一次解析にデータを提供してくれたのは3件の研究のみであった。6件の研究の結果を分析したところ、偽治療と比較したrTMSの有効性は研究によって異なっていた。このレビューに含まれる研究からは、このばらつきの理由を探るのに十分な情報が得られなかった。PTSDに対するrTMSに関する他のレビューによると、rTMSを行う方法によっては、他の方法よりも効果的である可能性が示唆されている。

- rTMS治療による重篤な有害事象はまれである。rTMSが重篤な有害事象を経験する可能性を高めるかどうかは不明である。

- rTMSが治療後数週間あるいは数か月後のPTSD重症度に影響を及ぼすかどうかについては、この問題を検討するのに十分な情報がなかったため、わからない。

- rTMSは、治療からの脱落率や治療直後のうつ症状や不安症状にほとんど影響をもたらさない可能性がある。

エビデンスの限界は?

rTMSはおそらく治療直後のPTSD重症度にほとんど、あるいは全く違いをもたらさないという結果に中等度の確信を持っている。つまり、新たなエビデンスが出てくれば、結論が変わる可能性は十分にある。重篤な有害事象に関するエビデンスについては、含まれる研究における有害事象とその測定方法に関する記述が限られているため、確信が持てない。一般的に、重篤な有害事象の発生率は、そのような事象が稀であることから、推定が困難である。今回のレビューでは、解析に含めることができた研究参加者の数が少なかったため、この問題はさらに悪化した。

本エビデンスはいつのものか?

2023年1月時点におけるエビデンスである。

Brown R, Cherian K, Jones K, Wickham R, Gomez R, Sahlem G

抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬剤)はCOVID-19の入院患者の血栓形成を防止するのか?

2 months ago
要点

- COVID-19で入院した患者では、高用量の抗凝固剤は低用量の抗凝固剤と比較して死亡割合にほとんど差がなく、軽度の出血が増加する。抗凝固剤を投与すると、投与しない場合よりは死亡割合が下がるかもしれない。

- 新たな研究が行われたとしても、抗凝固剤の投与量の違いによる死亡割合や小出血への影響に関するエビデンスが変わることはないだろう。呼吸管理(人工呼吸器等)の必要性、抗凝固剤の投与と非投与の比較、異なる抗凝固剤の比較、抗凝固剤の長期投与などについては、質の高い研究がまだ必要である。

COVID-19とは?

COVID-19は通常、肺と気道に症状を起こすが、呼吸器系の問題に加えて、COVID-19で入院した患者の約16%が血管に問題を起こし、動脈、静脈、肺に血栓を形成する。集中治療室での治療が必要な重症のCOVID-19患者のほぼ半数は、静脈や動脈に血栓を形成する可能性がある。

抗凝固剤とは?

抗凝固剤は、有害な血栓(深部静脈血栓症)ができるのを防ぐ薬剤である。一方で、出血などの望ましくない影響が出ることもある。ガイドラインの中には、血栓が形成されてから抗凝固剤で治療するのではなく、COVID-19で入院した最初の段階から血栓を予防するために、抗凝固剤を投与することを推奨しているものもある。

何を調べようとしたのか?

COVID-19で入院した患者に予防的に抗凝固剤を投与した場合、何も投与されなかった患者やプラセボ治療(同じように見えるが有効成分を含まない治療)を受けた患者と比較して、死亡数が減少するかどうかを知りたかった。また、これらの患者が必要な呼吸管理(人工呼吸器等)が減ったかどうか、有害な血栓ができたかどうか、出血を起こしたかどうか、その他の望ましくない事象を経験したかどうかも調べたいと考えた。

何を行ったのか?

COVID-19入院患者に対して血栓予防のために投与された抗凝固剤を評価した研究を検索した。研究は、ある抗凝固剤を他の抗凝固剤、無治療、またはプラセボ(偽薬)と比較する限り、どのようなデザインのものであっても構わないこととした。また、実施場所も世界中のどこであってもよく、参加者はCOVID-19の感染が確認されて入院してしている限り、年齢も問わないこととした。適切な研究と判断したら、結果を統合した。

何がわかったか?

集中治療室、病棟、救急部のいずれかにCOVID-19で入院した16,185人を対象とした7件の研究を対象とした。これらの研究は、ブラジル(2件)、イラン(1件)、イタリア(1件)、アメリカ(1件)で行われ、他の2件は複数の国で行われた。研究に参加した患者の平均年齢は55~68歳であった。研究期間は15~90日で、死亡、出血、血栓の形成、入院期間、有害事象に関するエビデンスが得られた。呼吸管理(人工呼吸器等)の必要性、COVID-19に関連した死亡、QOL(生活の質)に関するエビデンスはほとんどなかった。

高用量の抗凝固剤と低用量の抗凝固剤の比較(4件、4,647人)
高用量の抗凝固剤を投与された患者と低用量の抗凝固剤を投与された患者では、死亡割合にほとんど差がなかった。しかし、高用量投与群では、低用量投与群に比べて軽度の出血が起きる可能性が高かった。高用量の抗凝固剤を投与された患者は、低用量の抗凝固剤を投与された患者と比較して、肺塞栓症(肺または肺につながる血管内に血栓ができて血管がつまる状態)が減少し、大出血がわずかに増加し、入院期間はほとんど変わらなかったようである。高用量の抗凝固剤を投与された患者では、低用量の抗凝固剤を投与された患者と比べて、深部静脈血栓症やその他の望ましくない事象の発生割合にほとんど差がなかった。

抗凝固剤と無治療との比較(3件、11,538人)
抗凝固剤を投与された患者は、投与されなかった患者に比べて死亡割合が減少したが、そのエビデンスは非常に不確かである。

エビデンスの限界は何か?

COVID-19で入院した患者において、抗凝固剤の投与量を増やしても死亡のリスクは変わらないが、出血のリスクは増加することが確実である。

エビデンスに対する信頼性は非常に限られているが、抗凝固剤を投与された患者は、抗凝固剤を投与されなかった患者に比べて死亡割合が低いかもしれない。

今後望まれること

検索したところ、35,470人を対象とした62件の研究が進行中である。これらの研究結果が発表された際には、レビューに追加する予定である。

本エビデンスはいつのものか?

エビデンスは、2021年4月14日までのものである。

Flumignan RLG, Civile VT, Tinôco JD, Pascoal PIF, Areias LL, Matar CF, Tendal B, Trevisani VFM, Atallah ÁN, Nakano LCU

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防と管理に役立つ対策について、人々やコミュニティ(地域社会)とどのようにコミュニケーションをとればよいか?

2 months ago
要点

- パンデミック(世界的大流行)の最中、政府やその他の当局は、人々がどのようにすれば安全を保てるかについて、国民に明確に伝える必要がある。このコミュニケーションは信頼に基づき、綿密に計画されたものでなければならない。パンデミックの影響を受ける人々やコミュニティは、コミュニケーションの計画と実施に関与する必要がある。コミュニケーションは、読み書きが困難な人、コミュニティの主要言語以外の言語を話す人、その他の種類の不利益な状況に直面している人などを含め、コミュニティ全体のすべての人に届くものでなければならない。明確なコミュニケーションによって、人々が自分自身の安全を守る対策を実行する力を向上させることができる。

- このレビューでは、パンデミック時のパブリックヘルスコミュニケーション(国民のヘルスコミュニケーション)における最良のアプローチを導くことができる6件のテーマを特定した。これらのテーマは以下の通りである。

1) 国民の信頼を強化し、誤った情報への対抗。

2) コミュニケーションのあり方について、人々が意見を出し合えるようにするため、コミュニティを巻き込んだ双方向のコミュニケーション。

3) 対象は誰なのか、またコミュニティにおけるさまざまな人々のニーズをどのように満たすことができるのかを考慮したパブリックコミュニケーションに対する開発と準備。

4) コミュニティへのメッセージの伝え方とタイミングを含む、パブリックコミュニケーションの特徴。

5) 個人および集団レベルでの行動変容を支援。

6) パブリックヘルスコミュニケーションに対する受容性と反応性の長期にわたる促進と維持。

- このレビューの結果は、パンデミック時のパブリックヘルスコミュニケーションについて、政府やその他の当局が決定を下す際に役立つものである。この知見は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)および将来の公衆衛生上の緊急事態に関連するものである。この調査結果は、さまざまな国やさまざまな緊急事態に適用することができる。

- このレビューを通じて、いくつかの研究上のギャップが見つかった。これらは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって重症化したり死亡したりするリスクが高い人々とのコミュニケーション、低・中所得国でのコミュニケーション、社会的不平等で知られている環境でのコミュニケーションなどである。これらの分野でのさらなる研究を進めることで、パンデミック(世界的大流行)のコミュニケーションに関する知識を深め、実践を改善することができる可能性がある。

物理的な距離の取り方とは?

「物理的距離対策」とは、人と人との物理的接触を減らすことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような病気の蔓延を抑える方法を指す。物理的な距離を取る方法としては、接触者の追跡、人ごみの回避、隔離、検疫、学校や職場での感染を減らすための対策などがある。

知りたかったこと

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や他の類似した病気の蔓延を防ぐために、人々が自分の身を守るための物理的距離を取る方法を理解し、使用するようになるには、どのような方法で一般市民とコミュニケーションをとるのが最も効果的かを調べたいと考えた。また、不利な立場に置かれている人々など、コミュニティ内のの特定のグループにとってより効果的なコミュニケーション方法があるかどうかも調べたかった。

実施したこと

これは2020年に実施されたレビューの更新版である。2020年のレビューには、一次研究(質的および量的)と二次情報源(レビュー研究およびガイドライン)が含まれた。

今回の更新版のための検索では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やその他の感染症の予防および/または制御のための物理的距離の取り方に関するコミュニケーションについて検討したガイドラインやレビュー研究を検索した。2020年のレビューの結果と、含まれた研究およびガイドラインの結果を比較し、要約した。

わかったこと

このレビューには、68件の研究(ガイドライン、レビュー、一次研究[研究者が独自にデータを収集した研究])が含まれている。今回の更新では、当初の2020年のレビューに17件のガイドラインと20件のレビュー(二次研究とみなされる)が追加された。

パンデミック時の物理的距離に関するコミュニケーションの計画と実施に関する6件の主要なテーマを特定した。

これらのテーマは、パンデミックや公衆衛生上の緊急事態におけるコミュニケーションに関する政策や意思決定プロセスに役立つ。これらのテーマは以下の通りである。1)国民の信頼の強化と誤った情報への対抗、2)双方向のコミュニケーション、3)パブリックコミュニケーションの開発と準備、4)パブリックコミュニケーションの特徴、5)個人および集団レベルでの行動変容の支援、6)パブリックヘルスコミュニケーションに対する受容性と反応性の促進と維持。

エビデンスの限界は?

今回の更新では、レビューとガイドラインに焦点を当てた。通常、これらは入手可能な最良のエビデンスであるが、今回の更新では、主に質が低いか中等度と評価された。研究のデザインはそれぞれ異なるため、質の評価はエビデンスの序列(ランキング)として使用するものではない。

このレビューの長所は、主要なテーマと知見が、一次研究、レビュー、ガイドラインを含む多様な情報源から得られたことである。多くの場合、異なる研究手法、母集団、環境で同様の結果が報告されている。この最新レビューから得られた知見もまた、2020年レビューの知見に基づいており、主な知見を追加し、主要なギャップを埋めている。異なる研究手法で同様の結果が得られ、今回の更新で新たな情報が追加されたことで、含まれる研究のほとんどが質が低いか中等度であるにもかかわらず、結果に対する確実性が高まった。しかし、新しいエビデンスの検索が最後に行われたのは2021年であるため、現在ではさらに関連するエビデンスが存在している可能性が高い。

このエビデンスはいつのものか?

エビデンスは2021年8月現在のものである。

Ryan RE, Silke C, Parkhill A, Virgona A, Merner B, Hurley S, Walsh L, de Moel-Mandel C, Schonfeld L, Edwards AGK, Kaufman J, Cooper A, Chung RK, Solo K, Hellard M, Di Tanna GL, Pedrana A, Saich F, Hill S

運動療法はうつ病治療に有効か?

2 months 2 weeks ago
要点
  • 運動は、うつ病の症状を軽減するのに、無治療と比較して中等度の効果があるかもしれない。

  • エビデンスによれば、運動によるうつ症状の軽減効果は心理療法や抗うつ薬による効果と比べてほとんど差がないか、全く差がないことが示唆されている。しかしこの結論は、ごく少数の小規模な研究結果に基づいたものである。

  • また、これらの研究では治療終了時にアウトカムを測定しており、ほとんどの研究で参加者の長期的な追跡調査をしていなかった。

  • 運動療法による好ましくない影響はあまり見られず、ごく少数の参加者に影響を与えただけであった。

うつ病とは?

うつ病は一般的な病気で、世界中で1億人以上が罹患している。うつ病は、人々の生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、身体の健康にも大きな影響を与える可能性がある。

うつ病の治療法は?

うつ病の治療には、薬物療法(抗うつ薬)と心理療法(思考、感情、行動を変えることを目的とした対話療法)の両方が有効であることが研究で示されている。しかし、多くの人は別のアプローチを試すことを好んでいる。健康ガイドラインの中には、運動療法が代替治療として用いられる可能性を示唆するものがある。

知りたかったこと

運動療法がうつ病の症状を軽減し、うつ病患者の生活の質(QOL)を向上させるかどうか、また運動療法が薬物療法、心理療法、代替療法と比較してどう異なるのかを調べたいと考えた。さらに、運動療法が好ましくない効果をもたらすかどうか、運動が金額に見合う価値をもたらすかどうかも調べたいと考えた。このレビューは2013年に発表されたものを更新したものである。

実施したこと

成人(18歳以上)のうつ病に対する運動療法の有効性を評価したランダム化比較試験(RCT:対象者を無作為に治療群に割りつける試験)を検索した。研究は、運動療法と他の積極的治療(薬物療法や心理療法など)、または運動療法と非積極的介入(無治療、待機リスト、プラセボ治療(すなわち、実際の治療のように見える非積極的治療))のいずれかを比較したものとした。すべての研究は、うつ病と診断された成人を対象とし、実施された身体活動は本研究における「運動」の定義に合致しているものとした。

対象となった研究の結果を記述・評価し、統括した。研究の規模や実施方法などの要因に基づいて、エビデンスの信頼性を判断した。2023年11月までの研究を医学データベースから検索した。

わかったこと

少なくとも4,985人の成人のうつ病患者を対象とした、73件の研究を特定した。いくつかの研究ではバイアスのリスクが高かったため、結果の信頼性が低下した。

運動療法は無治療と比較して抑うつ症状の軽減をもたらすかもしれないが、長期的な効果に関するエビデンスは不確かである。

運動療法を行う人と心理療法を受ける人の間で、抑うつ症状にはほとんど、あるいは全く差はないと考えられる。運動療法を行う人と抗うつ薬を服用している人の間で、抑うつ症状にはほとんど、あるいは全く差がないかもしれない。

研究を完了した参加者の数によって測定した場合、治療の受容性という点では、異なる介入間に差はないようである。

無治療、心理療法、薬物療法と比較した運動療法のQOLに対する効果は一貫しておらず、不確実である。

運動療法による有害事象は多くは見られなかった。有害事象を経験した少数の参加者は、通常、筋肉や関節の問題やうつ症状の悪化を報告していた。

エビデンスの限界

多くの研究は対象が比較的少人数であり、研究手法の点でバイアスのリスクが高かった。また、ほとんどの研究は、運動療法の短期間の効果しか評価していなかった。これらの要因は、レビュー結果の信頼性を制限するものである。今後の研究では、研究の質を向上することに焦点をあてて、対象者によってどのような特徴の運動が効果的なのかを明らかにするとともに、健康の公平性の問題を考慮できるよう、多様な人々が研究に含まれるよう計画すべきである。

Clegg AJ, Hill JE, Mullin DS, Harris C, Smith CJ, Lightbody CE, Dwan K, Cooney GM, Mead GE, Watkins CL

青少年へのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種に関する青少年とその保護者の考えや行動に影響を与える要因は何か?

2 months 2 weeks ago
主なメッセージ

- 多くの複雑な要因が、青少年へのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種に関する青少年とその保護者の考えや行動に影響を及ぼす可能性がある。これらの要因を、個人の知識や認識、家族関係や社会での関係、青年とその保護者が暮らす環境条件にあわせて、8つのテーマに分けた。

- 医療者や政策立案者は、HPVワクチン接種について人々がどのような意思決定をしているかという具体的な状況を理解するために、これらのテーマを活用することができる。これは、ワクチン接種の受け入れと接種率向上を促すための、より適切で効果的な方法を考案するのに役立つだろう。

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何か、なぜHPVワクチンを接種するのか?

HPVは、女性の子宮頸がんの主な原因である。性器にできる尖圭コンジローマや数種類のがんの原因でもある。青少年(9~19歳までの若者)にワクチンを接種することは、これらの病気を予防する最も効果的な方法のひとつである。

なぜ、HPVワクチン接種に関する青少年とその保護者の考えに何が影響するかを理解することが重要なのか?

HPVワクチン接種プログラムを成功させるには、接種率が高いことが重要である。しかし、世界では、HPVワクチン接種を受けていない青少年がたくさんいる。これにはいくつかの理由がある。ワクチンが入手できない環境もあるかもしれない。あるいは、医療サービスの質が低い、医療施設から遠い、お金がないなどの理由で、ワクチン接種サービスを受けることが困難な青少年がいるかもしれない。HPVワクチン接種を受け入れない青少年やその保護者もいる。

知りたかったこと
HPVワクチン接種に関する青少年とその保護者の考えと行動に影響を与える要因を知りたかった。HPVワクチン接種の受け入れを「促進」または「減少」させる可能性のある要因に関心を持った。

実施したこと
HPVワクチン接種が実施されているすべての国において、青少年へのHPVワクチン接種に関する青少年またはその保護者の考え、経験、行動を調べた研究を検索した。研究参加者は、青少年、または青少年がワクチン接種を受けるかどうかを決定する責任を負う保護者とした。

わかったこと
関連した研究を206件見つけ、そのうちの71件の結果を分析した。研究は世界中で行われ、都市部や農村部、高所得、中所得、低所得の国や地域に住む人々も含まれていた。

主な結果
多くの複雑な要因が、HPVワクチン接種に関する青少年やその保護者の考えや行動に影響を及ぼす可能性があることがわかった。これらの要因を8つのテーマに分けた。

1.医療知識の不足

2.HPVワクチン接種のリスクと利益に関する信念と考え

3.他のワクチンや予防接種プログラムについての考えや経験

4.青少年とその主な保護者が意思決定において果たす役割

5.HPVワクチン接種に関する、他の家族、または仲間、伝統的または宗教的指導者、メディアなどの社会共同体の他のメンバーの考えや行動

6.思春期、セクシュアリティ、ジェンダー、子育て、健康に関する、より広範な社会的または文化的な信念

7.教師や学校、製薬業界、政府、医療従事者など、ワクチン接種に関連する組織や人々に対する信頼や不信

8.HPVワクチン接種プログラムやサービスに対するアクセスや経験(利便性、ワクチンの費用、言語に関する障壁など)

エビデンスの限界は?
エビデンスに対する信頼性は、主に中程度から高い。しかし、いくつかの研究の手法や得られた結果があまり明確ではなく、また特定の条件や国に焦点を当てたものもあったため、他の条件や国にはあてはまらない可能性があった。対象とした研究はすべて英語またはフランス語で発表されたものであるため、他の言語で発表された知見を見逃している可能性がある。

本エビデンスの更新状況
エビデンスは、2023年2月現在のものである。

Cooper S, Schmidt B-M, Jama NA, Ryan J, Leon N, Mavundza EJ, Burnett RJ, Tanywe AC, Wiysonge CS

慢性疼痛の治療におけるケタミンおよび他のN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬の利益と有害性は何か?

2 months 2 weeks ago
要点
  • ケタミン(投与方法として、静脈内への注射、内服、またはクリーム剤を皮膚に塗るなどがある)が痛みの強さを減少させるかどうかは不明であるが、静脈内に投与した場合に望ましくない有害事象を引き起こす可能性がある。

  • メマンチン、デキストロメトルファン、アマンタジン、マグネシウムが痛みの強さを減少させるのか、また望ましくない有害事象を引き起こすかどうかは不明である。

  • 慢性疼痛に対するケタミンおよび他のNMDA受容体拮抗薬の利益と有害性を調査するには、より多く、より質の高い研究が必要である。

慢性疼痛とは何か?

慢性疼痛とは、少なくとも3ヵ月間持続する痛みのことである。慢性疼痛は一般的な疾患であり、全人口の最大3分の1に影響を与えている。慢性の(長期にわたる)痛みは、さまざまな疾患の症状に関連している場合もあれば、原因不明の場合もある。慢性疼痛がある人は、疲労感、不安、抑うつ、機能低下や生活の質(QOL)の低下を経験することがよくある。

N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬とは何か?

NMDA受容体拮抗薬は、痛みや脳機能における神経の(過剰な)興奮性に影響を与える薬剤群である。この薬剤群には、ケタミン、メマンチン、デキストロメトルファン、アマンタジン、マグネシウムなどが含まれる。慢性疼痛を含むさまざまな疾患の治療に対して、これらの治療薬が医師によって使用される。

知りたかったこと

ケタミンおよび他のNMDA受容体拮抗薬が、「偽薬」(プラセボ)、通常の薬物療法、または他の治療薬よりも痛みを減少させるのに優れているかどうかを調べたかった。また、NMDA受容体拮抗薬と有害事象との関連性についても明らかにしたかった。

実施したこと

慢性疼痛がある成人を対象に、ケタミンおよび他のNMDA受容体拮抗薬をプラセボ、通常の薬物療法、または他の治療薬と比較した研究を検索した。研究結果を比較および要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づき、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

神経障害性疼痛(例:糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛)、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群など、さまざまな慢性疼痛の疾患がある2,309人を対象とした67件の研究を特定した。対象とした研究に占める女性参加者の割合は、11%~100%の範囲であった。39件の研究がケタミン、10件の研究がメマンチン、9件の研究がデキストロメトルファン、3件の研究がアマンタジン、8件の研究がマグネシウムについて評価していた。62件の研究は、これらの薬剤をプラセボと比較していた。ほとんどの研究は、ヨーロッパ、英国、米国で行われ、対象となった研究の19%は、製薬会社から何らかの形で資金援助を受けていた。研究は、一般的に短期間で実施され、数ヶ月間であった。

主な結果

ケタミン(静脈内への注射、内服、またはクリーム剤を皮膚に塗るなどの投与方法)が痛みの強さを減少させるかどうかは不明である。ケタミンを静脈内に注射すると、現実感の喪失、吐き気、嘔吐などの望ましくない有害事象を引き起こす可能性がある。ケタミンを内服または皮膚に塗って使用した場合、望ましくない有害事象を引き起こすかどうかはわからない。

メマンチン、デキストロメトルファン、アマンタジン(内服)やマグネシウム(静脈注射または内服)が、痛みの強さを減少させるかどうか、または望ましくない有害事象を引き起こすかどうかは不明である。

エビデンスの限界は何か?

いくつかの理由により、エビデンスにあまり信頼性がない。研究参加者は、自分がどの治療を受けているかを認識していた可能性がある。また、すべての研究において、関心を持っている情報すべてが得られたわけではない。この調査結果について確信を持つには、十分な研究数がなく、対象とした研究は非常に小規模であった。

エビデンスの更新状況

エビデンスは、2025年6月現在のものである。

Ferraro MC, Cashin AG, Visser EJ, Abdel Shaheed C, Wewege MA, Wand BM, Gustin SM, O'Connell NE, McAuley JH

頚部痛(首の痛み)に対する運動療法を併用した徒手療法の利点とリスクは何か?

2 months 2 weeks ago
要点
  • 運動療法を併用した徒手療法は、プラセボ(偽の治療)と比較した場合、中等度の機能改善を示す可能性があるが、痛みの軽減にはほとんど、または全く効果がない可能性がある。

  • 運動療法を併用した徒手療法は、治療を行わなかった場合(無治療)と比較した場合、頚部痛の大幅な軽減および機能と健康関連QOL(生活の質)の中等度の改善をもたらす可能性がある。

  • 軽度の有害事象(望ましくない、害のある事象)、すなわち治療後の筋肉痛、頭痛、めまいなどの発生率には、ほとんど差がない可能性がある。

頚部痛とは何か?

頚部痛(首の痛み)は一般的な疾患であり、機能障害を引き起こし、経済的にも大きな負担となる。症状の持続期間により急性(4週未満)、亜急性(4〜12週)、持続性(12週を超える)に分類される。頚部痛は、腕の筋力低下やしびれを伴うことがあり、また、頭部、上背部、腕への放散痛(原因とは異なる場所で発生する痛み)を伴うこともある。頚部痛の原因は、骨、関節、神経、筋肉、軟部組織などに由来し、社会的、心理的、および個人的要因によっても影響を受ける。

頚部痛はどのように治療されているのか?

頚部痛の治療には、運動療法を併用した徒手療法が含まれる。徒手療法は、軟部組織、関節、神経の可動化または操作を目的として行なわれる治療法である。運動療法の要素には、ストレッチ、筋力トレーニング、モーターコントロール(運動制御)、有酸素運動、およびマインドボディエクササイズ(心身運動:ヨガなど)などが含まれる。

知りたかったこと

本研究では、運動療法を併用した徒手療法の利点とリスクを明らかにすることを目的とした。

実施したこと

成人の頚部痛患者に対し、運動療法を併用した徒手療法についてプラセボ、または治療を行わなかった場合(無治療)とを比較した研究について検索を行った。各研究結果を比較、および統合し、研究方法、結果の一貫性、研究規模といった要素に基づいてエビデンスの確実性を評価した。

わかったこと

合計694人の成人参加者を含む9件の研究が見つかった。研究は北米、欧州、アジア、および太平洋地域で実施されていた。

短期間における運動療法を併用した徒手療法とプラセボ治療との比較(4週に最も近い時点)。

  • 痛み(実質的な効果: 9%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜10点スケール(値が低いほど痛みが少ない)において0.91点の改善を示し、効果はほとんど、または全くない可能性がある。

  • 機能(実質的な効果: 10%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほど良好)において10.20点の改善を示す可能性がある。

  • 健康関連QOL(実質的な効果: 2%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほどQOLが良好)において2点の改善を示し、効果はほとんど、または全くない可能性がある。

  • 参加者の自己報告による治療の成功および有害事象については報告されていなかった。

短期間における運動療法を併用した徒手療法と無治療との比較

  • 痛み(実質的な効果: 24%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜10点スケール(値が低いほど痛みが少ない)において2.44点の改善を示す可能性がある。

  • 機能(実質的な効果: 14%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほど良好)において13.84点の改善を示す可能性がある。

  • 健康関連QOL(実質的な効果: 24%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほどQOLが良好)において24.80点の改善を示す可能性がある。

  • 参加者の自己報告による治療の成功に関するエビデンスは、非常に不確実であった。

  • 軽度の有害事象:運動療法を併用した徒手療法を受けたグループでは100人中2人、無治療群では100人中1人が軽度の有害事象を報告した。すなわち、治療後の筋肉痛、頭痛、めまいなどの一過性の軽度有害事象のリスクは2%増加した。

  • 重篤な有害事象は報告されなかった。

エビデンスの限界

以下の理由により、エビデンスの確実性は低いと判断された。研究参加者が、自分がどの治療群に属しているかを認識していた可能性があるが、これは多くのリハビリテーション研究において避けられない制限である。短期および長期における主要な結果についての報告が不完全であり、これにより介入効果の過大または過小な評価が生じた可能性がある。有害事象についての報告は全体的に少なく、また多くの研究において参加者数が少数であった。今後は、より多くの参加者を対象とした研究設計と、徒手療法および運動の種類、強度、頻度、期間についての一貫した報告が必要である。現時点におけるエビデンスには不確実性が残るため、急性および亜急性頚部痛に関するさらなる研究が求められる。

本エビデンスはいつのものか?

本レビューは、過去の非Cochraneレビューを更新したものであり、2025年3月時点におけるエビデンスである。

Chacko N, Gross AR, Miller J, Santaguida PL, Burnie SJ, Gelley GM, Paquin JP, Duranai MR, Langevin P, Chopra-Tandon N, Chak NT, Hoving JL, Bobos P

多発性硬化症の患者にとって作業療法はどのような利益とリスクがあるか?

2 months 2 weeks ago
要点
  • 多発性硬化症の患者は、作業療法を行った直後に日常の生活機能と精神的健康関連の生活の質(QOL)が少し改善する可能性があるが、身体的健康関連QOLや社会参加の面では、作業療法はほとんどまたはまったく効果がないかもしれない。

  • 作業療法を行うと、治療から3~6ヵ月後の精神的健康関連QOLも少し改善する可能性があるが、日常の活動や身体的健康関連QOLにはほとんど影響がないかもしれない。通常の手当てと比べて、作業療法は日常の生活機能と身体的および精神的健康関連QOLをある程度改善する可能性がある。

  • 作業療法の長期的な利益または害については、情報が不足しており、はっきりしたことは言えない。

  • このレビューの結果では、作業療法の実際の効果が過小評価されているかもしれない。なぜなら、研究ごとにさまざまな異なる作業療法介入を調べており、作業療法と他の療法の組合せを評価した研究は、作業療法のみの効果を測定していない限り、対象に含めなかったからである。

  • 今後の研究では、どの要素がどの患者にいかなる状況で最も有効であるか特定することを目指すべきである。

多発性硬化症とは何か?

多発性硬化症(MS)はよくある中枢神経系の病気で、世界全体で約290万人の患者がいる。多発性硬化症になると、免疫系が脳内や脊髄の神経線維保護層を誤って攻撃してしまう。そのせいで脳と身体の他の部分の間で情報伝達がうまくいかず、疲労感、筋力低下、平衡感覚の異常などの症状が起きる。多発性硬化症により、服を着る、食事の支度をする、歩くといった日常の作業が困難になることもある。また、記憶や集中力にも影響し、仕事や社会関係に支障を来すこともある。

多発性硬化症にはどのような治療が行われるか?

多発性硬化症の治療薬の目的は、急性増悪(急激な悪化)を抑えて病気の進行を遅らせ、症状を緩和することである。リハビリテーション療法は、多発性硬化症の患者が自分の症状を管理し、日常の生活機能を改善して、社会参加を維持する助けとなりうる。

作業療法はリハビリテーション療法の一つである。作業療法は、患者が着替えや料理、入浴、仕事などの日常の作業を行うのに役立つ。作業療法士は、こうした活動をより楽に行う方法を患者に教え、症状の管理に役立つ道具を提供する。また、日常生活における困難に対処しやすくするために、筋力や協調運動能力の強化を図る。

知りたかったこと

作業療法が多発性硬化症の患者にどのような利益をもたらすか、特に、日常の生活機能、身体的・精神的健康関連QOL、そして社会参加にどのような影響を与えるかを調べたかった。また、作業療法による望ましくない影響があるかも知りたかった。

実施したこと

多発性硬化症の患者に対する作業療法を他の介入、通常の手当て、または無治療と比較した研究を探した。集学的な研究(複数の異なるタイプの医療従事者が並行して治療を提供する研究)は、作業療法の貢献が個別に報告されていない限り除外した。関心があったのは、治療の直後、治療から3~6ヵ月後(中期)、そして治療から1年後(長期)の効果である。研究の結果を統合し、研究方法や研究の数などの要因に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

多発性硬化症患者1,628人を対象に行われた20件の作業療法介入の研究が見つかった。そのうち10件は多発性硬化症患者の疲労感の管理に役立つ方法を調べたもの、9件は着替えや料理など日常の活動の改善に的を絞ったもの、1件は社会的活動への参加拡大を支援することを目指す研究だった。これらの研究は主に高所得国で行われた。研究に参加したのは、多発性硬化症が原因で軽度から中等度の障害を負う18~70歳の成人である。

レビューの結果

作業療法は、短期的には他の治療と比べて日常の生活機能をやや改善する可能性があり、通常の手当てや無介入よりも利益が大きいかもしれないが、エビデンス(科学的根拠)の確実性が低い研究が多い。中期的・長期的な効果は不明である。

作業療法により、短期的には精神的健康関連QOLがやや改善しうるが、身体的健康関連QOLへの影響は僅かまたは皆無かもしれない。通常の手当てや無介入の場合との比較の結果は非常に不確かであるほか、中期的・長期的な影響はよくわからない。

作業療法は、短期的に社会参加にはほとんどまたは全く影響しない可能性があるが、エビデンスは非常に限定的である。

どの研究も作業療法の害について体系的に報告していないため、これらは不明のままである。

エビデンスの限界

作業療法が多発性硬化症患者の身体的健康関連QOLに及ぼす影響に関するエビデンスは限定的である。作業療法が通常の手当てや無治療と比べてどうであるかは、確証をもって結論を下すのに十分な研究がないため、よくわからない。作業療法がもたらしうる有害な影響に関するエビデンスは皆無で、多発性硬化症が原因の重度の障害がある人に関するエビデンスも限られている。

もう一つの限界は、非常に異なる作業療法の介入をまとめたために、結果の確実性が低く、解釈が難しいことである。作業療法の取り組み方は一つだけではなく、多種多様である。また、作業療法の役割について明確な記載がない限り、チーム医療に基づく研究の多くを除外したため、重要なエビデンスを見逃した可能性がある。

多発性硬化症患者に対する作業療法の影響を十分に理解するには、より多くの研究が必要である。

このエビデンスの更新状況

エビデンスは2024年11月に行った検索に基づくものである。

Kos D, Boers A, O'Meara C, Bekkering GE, De Coninck L, Koen M, Freeman J, Hynes SM, Eijssen ICJM
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1 hour ago
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