1 week ago
要点
- 成人において、rTMSはおそらくプラセボrTMS(偽刺激)と比較して、治療終了時までにPTSD症状の重症度を軽減させない。しかし、これらの結果は、治療の実施方法に大きなばらつきがあったことと、参加者の数が少なかったことにより、限定的なものであった。
- PTSDに対するrTMSの研究では、重篤な有害事象が起こることはまれであった。
- 成人のPTSDに対するrTMSについて、さらなる研究が必要である。今後の研究で、有害事象についてより詳細に報告され、PTSDの重症度を評価するために治療後に参加者をより長く追跡調査することができれば有益であろう。
心的外傷後ストレス障害とは何か?
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、心的外傷を伴う出来事に遭遇した後に発症する、苦痛や障害を伴う症状を特徴とする精神疾患である。PTSDを治療せずに放置すると、PTSDがある多くの人は何年も苦しむことになる。
PTSDはどのように治療されるのか?
PTSDには薬物療法や精神療法などいくつかの治療法がある。しかし、既存の治療法では脱落率が高く、これは治療への忍容性に問題があり、症状が続く可能性があることを示唆している。PTSDにはより効果的な治療法が必要である。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、PTSDに対する有望な治療法かもしれない。
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)とは?
rTMSは、磁気パルスを放出するコイルを頭皮に当てることで、脳組織に電界を誘導する非侵襲的な治療法である。rTMSが精神症状の変化をもたらす生物学的経路は依然として不明であり、活発な研究分野である。rTMSは、PTSDと重要な特徴を共有する2種類の精神疾患である大うつ病性障害と強迫性障害がある人の治療において有効であることが証明されている。
知りたかったこと
rTMSがプラセボ治療(偽刺激)よりも治療直後のPTSDの重症度を軽減するのに優れているかどうか、またrTMSが治療中の重篤な有害事象と関連しているかどうかを調べたいと考えた。治療効果の持続性に興味があったので、治療後1~4週間および1~3か月におけるPTSD重症度に対するrTMSの影響を調べることを目的とした。rTMSの忍容性を調べるため、積極的rTMS群と偽rTMS群で、早期に治療を中止した参加者の数を比較した。最後に、rTMS治療が治療直後の不安と抑うつ症状に及ぼす影響を調べたいと考えた。
実施したこと
成人のPTSD患者において、rTMSと偽rTMSを比較した研究を検索した。研究の結果を比較・要約し、研究方法や参加者数などの要素に基づいて、エビデンスの確実性を評価した。
わかったこと
13件の研究に参加した577人のデータを対象とした。研究は世界各国で実施され、うち5件は米国で実施された。治療直後のPTSD重症度に対するrTMSの効果を調べる主分析には、99人の参加者を含む3件の研究が寄与した。251人が参加した5件の研究が、rTMSの安全性(重篤な有害事象の発生)の主要な推定に貢献した。
主な結果
- rTMSはおそらく、偽治療と比較して、治療直後のPTSD症状にはほとんど差がないと思われる。しかし、この一次解析にデータを提供してくれたのは3件の研究のみであった。6件の研究の結果を分析したところ、偽治療と比較したrTMSの有効性は研究によって異なっていた。このレビューに含まれる研究からは、このばらつきの理由を探るのに十分な情報が得られなかった。PTSDに対するrTMSに関する他のレビューによると、rTMSを行う方法によっては、他の方法よりも効果的である可能性が示唆されている。
- rTMS治療による重篤な有害事象はまれである。rTMSが重篤な有害事象を経験する可能性を高めるかどうかは不明である。
- rTMSが治療後数週間あるいは数か月後のPTSD重症度に影響を及ぼすかどうかについては、この問題を検討するのに十分な情報がなかったため、わからない。
- rTMSは、治療からの脱落率や治療直後のうつ症状や不安症状にほとんど影響をもたらさない可能性がある。
エビデンスの限界は?
rTMSはおそらく治療直後のPTSD重症度にほとんど、あるいは全く違いをもたらさないという結果に中等度の確信を持っている。つまり、新たなエビデンスが出てくれば、結論が変わる可能性は十分にある。重篤な有害事象に関するエビデンスについては、含まれる研究における有害事象とその測定方法に関する記述が限られているため、確信が持てない。一般的に、重篤な有害事象の発生率は、そのような事象が稀であることから、推定が困難である。今回のレビューでは、解析に含めることができた研究参加者の数が少なかったため、この問題はさらに悪化した。
本エビデンスはいつのものか?
2023年1月時点におけるエビデンスである。
Brown R, Cherian K, Jones K, Wickham R, Gomez R, Sahlem G
3 weeks 1 day ago
要点
- COVID-19で入院した患者では、高用量の抗凝固剤は低用量の抗凝固剤と比較して死亡割合にほとんど差がなく、軽度の出血が増加する。抗凝固剤を投与すると、投与しない場合よりは死亡割合が下がるかもしれない。
- 新たな研究が行われたとしても、抗凝固剤の投与量の違いによる死亡割合や小出血への影響に関するエビデンスが変わることはないだろう。呼吸管理(人工呼吸器等)の必要性、抗凝固剤の投与と非投与の比較、異なる抗凝固剤の比較、抗凝固剤の長期投与などについては、質の高い研究がまだ必要である。
COVID-19とは?
COVID-19は通常、肺と気道に症状を起こすが、呼吸器系の問題に加えて、COVID-19で入院した患者の約16%が血管に問題を起こし、動脈、静脈、肺に血栓を形成する。集中治療室での治療が必要な重症のCOVID-19患者のほぼ半数は、静脈や動脈に血栓を形成する可能性がある。
抗凝固剤とは?
抗凝固剤は、有害な血栓(深部静脈血栓症)ができるのを防ぐ薬剤である。一方で、出血などの望ましくない影響が出ることもある。ガイドラインの中には、血栓が形成されてから抗凝固剤で治療するのではなく、COVID-19で入院した最初の段階から血栓を予防するために、抗凝固剤を投与することを推奨しているものもある。
何を調べようとしたのか?
COVID-19で入院した患者に予防的に抗凝固剤を投与した場合、何も投与されなかった患者やプラセボ治療(同じように見えるが有効成分を含まない治療)を受けた患者と比較して、死亡数が減少するかどうかを知りたかった。また、これらの患者が必要な呼吸管理(人工呼吸器等)が減ったかどうか、有害な血栓ができたかどうか、出血を起こしたかどうか、その他の望ましくない事象を経験したかどうかも調べたいと考えた。
何を行ったのか?
COVID-19入院患者に対して血栓予防のために投与された抗凝固剤を評価した研究を検索した。研究は、ある抗凝固剤を他の抗凝固剤、無治療、またはプラセボ(偽薬)と比較する限り、どのようなデザインのものであっても構わないこととした。また、実施場所も世界中のどこであってもよく、参加者はCOVID-19の感染が確認されて入院してしている限り、年齢も問わないこととした。適切な研究と判断したら、結果を統合した。
何がわかったか?
集中治療室、病棟、救急部のいずれかにCOVID-19で入院した16,185人を対象とした7件の研究を対象とした。これらの研究は、ブラジル(2件)、イラン(1件)、イタリア(1件)、アメリカ(1件)で行われ、他の2件は複数の国で行われた。研究に参加した患者の平均年齢は55~68歳であった。研究期間は15~90日で、死亡、出血、血栓の形成、入院期間、有害事象に関するエビデンスが得られた。呼吸管理(人工呼吸器等)の必要性、COVID-19に関連した死亡、QOL(生活の質)に関するエビデンスはほとんどなかった。
高用量の抗凝固剤と低用量の抗凝固剤の比較(4件、4,647人)
高用量の抗凝固剤を投与された患者と低用量の抗凝固剤を投与された患者では、死亡割合にほとんど差がなかった。しかし、高用量投与群では、低用量投与群に比べて軽度の出血が起きる可能性が高かった。高用量の抗凝固剤を投与された患者は、低用量の抗凝固剤を投与された患者と比較して、肺塞栓症(肺または肺につながる血管内に血栓ができて血管がつまる状態)が減少し、大出血がわずかに増加し、入院期間はほとんど変わらなかったようである。高用量の抗凝固剤を投与された患者では、低用量の抗凝固剤を投与された患者と比べて、深部静脈血栓症やその他の望ましくない事象の発生割合にほとんど差がなかった。
抗凝固剤と無治療との比較(3件、11,538人)
抗凝固剤を投与された患者は、投与されなかった患者に比べて死亡割合が減少したが、そのエビデンスは非常に不確かである。
エビデンスの限界は何か?
COVID-19で入院した患者において、抗凝固剤の投与量を増やしても死亡のリスクは変わらないが、出血のリスクは増加することが確実である。
エビデンスに対する信頼性は非常に限られているが、抗凝固剤を投与された患者は、抗凝固剤を投与されなかった患者に比べて死亡割合が低いかもしれない。
今後望まれること
検索したところ、35,470人を対象とした62件の研究が進行中である。これらの研究結果が発表された際には、レビューに追加する予定である。
本エビデンスはいつのものか?
エビデンスは、2021年4月14日までのものである。
Flumignan RLG, Civile VT, Tinôco JD, Pascoal PIF, Areias LL, Matar CF, Tendal B, Trevisani VFM, Atallah ÁN, Nakano LCU
3 weeks 1 day ago
要点
- パンデミック(世界的大流行)の最中、政府やその他の当局は、人々がどのようにすれば安全を保てるかについて、国民に明確に伝える必要がある。このコミュニケーションは信頼に基づき、綿密に計画されたものでなければならない。パンデミックの影響を受ける人々やコミュニティは、コミュニケーションの計画と実施に関与する必要がある。コミュニケーションは、読み書きが困難な人、コミュニティの主要言語以外の言語を話す人、その他の種類の不利益な状況に直面している人などを含め、コミュニティ全体のすべての人に届くものでなければならない。明確なコミュニケーションによって、人々が自分自身の安全を守る対策を実行する力を向上させることができる。
- このレビューでは、パンデミック時のパブリックヘルスコミュニケーション(国民のヘルスコミュニケーション)における最良のアプローチを導くことができる6件のテーマを特定した。これらのテーマは以下の通りである。
1) 国民の信頼を強化し、誤った情報への対抗。
2) コミュニケーションのあり方について、人々が意見を出し合えるようにするため、コミュニティを巻き込んだ双方向のコミュニケーション。
3) 対象は誰なのか、またコミュニティにおけるさまざまな人々のニーズをどのように満たすことができるのかを考慮したパブリックコミュニケーションに対する開発と準備。
4) コミュニティへのメッセージの伝え方とタイミングを含む、パブリックコミュニケーションの特徴。
5) 個人および集団レベルでの行動変容を支援。
6) パブリックヘルスコミュニケーションに対する受容性と反応性の長期にわたる促進と維持。
- このレビューの結果は、パンデミック時のパブリックヘルスコミュニケーションについて、政府やその他の当局が決定を下す際に役立つものである。この知見は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)および将来の公衆衛生上の緊急事態に関連するものである。この調査結果は、さまざまな国やさまざまな緊急事態に適用することができる。
- このレビューを通じて、いくつかの研究上のギャップが見つかった。これらは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって重症化したり死亡したりするリスクが高い人々とのコミュニケーション、低・中所得国でのコミュニケーション、社会的不平等で知られている環境でのコミュニケーションなどである。これらの分野でのさらなる研究を進めることで、パンデミック(世界的大流行)のコミュニケーションに関する知識を深め、実践を改善することができる可能性がある。
物理的な距離の取り方とは?
「物理的距離対策」とは、人と人との物理的接触を減らすことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような病気の蔓延を抑える方法を指す。物理的な距離を取る方法としては、接触者の追跡、人ごみの回避、隔離、検疫、学校や職場での感染を減らすための対策などがある。
知りたかったこと
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や他の類似した病気の蔓延を防ぐために、人々が自分の身を守るための物理的距離を取る方法を理解し、使用するようになるには、どのような方法で一般市民とコミュニケーションをとるのが最も効果的かを調べたいと考えた。また、不利な立場に置かれている人々など、コミュニティ内のの特定のグループにとってより効果的なコミュニケーション方法があるかどうかも調べたかった。
実施したこと
これは2020年に実施されたレビューの更新版である。2020年のレビューには、一次研究(質的および量的)と二次情報源(レビュー研究およびガイドライン)が含まれた。
今回の更新版のための検索では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やその他の感染症の予防および/または制御のための物理的距離の取り方に関するコミュニケーションについて検討したガイドラインやレビュー研究を検索した。2020年のレビューの結果と、含まれた研究およびガイドラインの結果を比較し、要約した。
わかったこと
このレビューには、68件の研究(ガイドライン、レビュー、一次研究[研究者が独自にデータを収集した研究])が含まれている。今回の更新では、当初の2020年のレビューに17件のガイドラインと20件のレビュー(二次研究とみなされる)が追加された。
パンデミック時の物理的距離に関するコミュニケーションの計画と実施に関する6件の主要なテーマを特定した。
これらのテーマは、パンデミックや公衆衛生上の緊急事態におけるコミュニケーションに関する政策や意思決定プロセスに役立つ。これらのテーマは以下の通りである。1)国民の信頼の強化と誤った情報への対抗、2)双方向のコミュニケーション、3)パブリックコミュニケーションの開発と準備、4)パブリックコミュニケーションの特徴、5)個人および集団レベルでの行動変容の支援、6)パブリックヘルスコミュニケーションに対する受容性と反応性の促進と維持。
エビデンスの限界は?
今回の更新では、レビューとガイドラインに焦点を当てた。通常、これらは入手可能な最良のエビデンスであるが、今回の更新では、主に質が低いか中等度と評価された。研究のデザインはそれぞれ異なるため、質の評価はエビデンスの序列(ランキング)として使用するものではない。
このレビューの長所は、主要なテーマと知見が、一次研究、レビュー、ガイドラインを含む多様な情報源から得られたことである。多くの場合、異なる研究手法、母集団、環境で同様の結果が報告されている。この最新レビューから得られた知見もまた、2020年レビューの知見に基づいており、主な知見を追加し、主要なギャップを埋めている。異なる研究手法で同様の結果が得られ、今回の更新で新たな情報が追加されたことで、含まれる研究のほとんどが質が低いか中等度であるにもかかわらず、結果に対する確実性が高まった。しかし、新しいエビデンスの検索が最後に行われたのは2021年であるため、現在ではさらに関連するエビデンスが存在している可能性が高い。
このエビデンスはいつのものか?
エビデンスは2021年8月現在のものである。
Ryan RE, Silke C, Parkhill A, Virgona A, Merner B, Hurley S, Walsh L, de Moel-Mandel C, Schonfeld L, Edwards AGK, Kaufman J, Cooper A, Chung RK, Solo K, Hellard M, Di Tanna GL, Pedrana A, Saich F, Hill S
1 month ago
要点
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運動は、うつ病の症状を軽減するのに、無治療と比較して中等度の効果があるかもしれない。
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エビデンスによれば、運動によるうつ症状の軽減効果は心理療法や抗うつ薬による効果と比べてほとんど差がないか、全く差がないことが示唆されている。しかしこの結論は、ごく少数の小規模な研究結果に基づいたものである。
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また、これらの研究では治療終了時にアウトカムを測定しており、ほとんどの研究で参加者の長期的な追跡調査をしていなかった。
-
運動療法による好ましくない影響はあまり見られず、ごく少数の参加者に影響を与えただけであった。
うつ病とは?
うつ病は一般的な病気で、世界中で1億人以上が罹患している。うつ病は、人々の生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、身体の健康にも大きな影響を与える可能性がある。
うつ病の治療法は?
うつ病の治療には、薬物療法(抗うつ薬)と心理療法(思考、感情、行動を変えることを目的とした対話療法)の両方が有効であることが研究で示されている。しかし、多くの人は別のアプローチを試すことを好んでいる。健康ガイドラインの中には、運動療法が代替治療として用いられる可能性を示唆するものがある。
知りたかったこと
運動療法がうつ病の症状を軽減し、うつ病患者の生活の質(QOL)を向上させるかどうか、また運動療法が薬物療法、心理療法、代替療法と比較してどう異なるのかを調べたいと考えた。さらに、運動療法が好ましくない効果をもたらすかどうか、運動が金額に見合う価値をもたらすかどうかも調べたいと考えた。このレビューは2013年に発表されたものを更新したものである。
実施したこと
成人(18歳以上)のうつ病に対する運動療法の有効性を評価したランダム化比較試験(RCT:対象者を無作為に治療群に割りつける試験)を検索した。研究は、運動療法と他の積極的治療(薬物療法や心理療法など)、または運動療法と非積極的介入(無治療、待機リスト、プラセボ治療(すなわち、実際の治療のように見える非積極的治療))のいずれかを比較したものとした。すべての研究は、うつ病と診断された成人を対象とし、実施された身体活動は本研究における「運動」の定義に合致しているものとした。
対象となった研究の結果を記述・評価し、統括した。研究の規模や実施方法などの要因に基づいて、エビデンスの信頼性を判断した。2023年11月までの研究を医学データベースから検索した。
わかったこと
少なくとも4,985人の成人のうつ病患者を対象とした、73件の研究を特定した。いくつかの研究ではバイアスのリスクが高かったため、結果の信頼性が低下した。
運動療法は無治療と比較して抑うつ症状の軽減をもたらすかもしれないが、長期的な効果に関するエビデンスは不確かである。
運動療法を行う人と心理療法を受ける人の間で、抑うつ症状にはほとんど、あるいは全く差はないと考えられる。運動療法を行う人と抗うつ薬を服用している人の間で、抑うつ症状にはほとんど、あるいは全く差がないかもしれない。
研究を完了した参加者の数によって測定した場合、治療の受容性という点では、異なる介入間に差はないようである。
無治療、心理療法、薬物療法と比較した運動療法のQOLに対する効果は一貫しておらず、不確実である。
運動療法による有害事象は多くは見られなかった。有害事象を経験した少数の参加者は、通常、筋肉や関節の問題やうつ症状の悪化を報告していた。
エビデンスの限界
多くの研究は対象が比較的少人数であり、研究手法の点でバイアスのリスクが高かった。また、ほとんどの研究は、運動療法の短期間の効果しか評価していなかった。これらの要因は、レビュー結果の信頼性を制限するものである。今後の研究では、研究の質を向上することに焦点をあてて、対象者によってどのような特徴の運動が効果的なのかを明らかにするとともに、健康の公平性の問題を考慮できるよう、多様な人々が研究に含まれるよう計画すべきである。
Clegg AJ, Hill JE, Mullin DS, Harris C, Smith CJ, Lightbody CE, Dwan K, Cooney GM, Mead GE, Watkins CL
1 month ago
主なメッセージ
- 多くの複雑な要因が、青少年へのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種に関する青少年とその保護者の考えや行動に影響を及ぼす可能性がある。これらの要因を、個人の知識や認識、家族関係や社会での関係、青年とその保護者が暮らす環境条件にあわせて、8つのテーマに分けた。
- 医療者や政策立案者は、HPVワクチン接種について人々がどのような意思決定をしているかという具体的な状況を理解するために、これらのテーマを活用することができる。これは、ワクチン接種の受け入れと接種率向上を促すための、より適切で効果的な方法を考案するのに役立つだろう。
ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何か、なぜHPVワクチンを接種するのか?
HPVは、女性の子宮頸がんの主な原因である。性器にできる尖圭コンジローマや数種類のがんの原因でもある。青少年(9~19歳までの若者)にワクチンを接種することは、これらの病気を予防する最も効果的な方法のひとつである。
なぜ、HPVワクチン接種に関する青少年とその保護者の考えに何が影響するかを理解することが重要なのか?
HPVワクチン接種プログラムを成功させるには、接種率が高いことが重要である。しかし、世界では、HPVワクチン接種を受けていない青少年がたくさんいる。これにはいくつかの理由がある。ワクチンが入手できない環境もあるかもしれない。あるいは、医療サービスの質が低い、医療施設から遠い、お金がないなどの理由で、ワクチン接種サービスを受けることが困難な青少年がいるかもしれない。HPVワクチン接種を受け入れない青少年やその保護者もいる。
知りたかったこと
HPVワクチン接種に関する青少年とその保護者の考えと行動に影響を与える要因を知りたかった。HPVワクチン接種の受け入れを「促進」または「減少」させる可能性のある要因に関心を持った。
実施したこと
HPVワクチン接種が実施されているすべての国において、青少年へのHPVワクチン接種に関する青少年またはその保護者の考え、経験、行動を調べた研究を検索した。研究参加者は、青少年、または青少年がワクチン接種を受けるかどうかを決定する責任を負う保護者とした。
わかったこと
関連した研究を206件見つけ、そのうちの71件の結果を分析した。研究は世界中で行われ、都市部や農村部、高所得、中所得、低所得の国や地域に住む人々も含まれていた。
主な結果
多くの複雑な要因が、HPVワクチン接種に関する青少年やその保護者の考えや行動に影響を及ぼす可能性があることがわかった。これらの要因を8つのテーマに分けた。
1.医療知識の不足
2.HPVワクチン接種のリスクと利益に関する信念と考え
3.他のワクチンや予防接種プログラムについての考えや経験
4.青少年とその主な保護者が意思決定において果たす役割
5.HPVワクチン接種に関する、他の家族、または仲間、伝統的または宗教的指導者、メディアなどの社会共同体の他のメンバーの考えや行動
6.思春期、セクシュアリティ、ジェンダー、子育て、健康に関する、より広範な社会的または文化的な信念
7.教師や学校、製薬業界、政府、医療従事者など、ワクチン接種に関連する組織や人々に対する信頼や不信
8.HPVワクチン接種プログラムやサービスに対するアクセスや経験(利便性、ワクチンの費用、言語に関する障壁など)
エビデンスの限界は?
エビデンスに対する信頼性は、主に中程度から高い。しかし、いくつかの研究の手法や得られた結果があまり明確ではなく、また特定の条件や国に焦点を当てたものもあったため、他の条件や国にはあてはまらない可能性があった。対象とした研究はすべて英語またはフランス語で発表されたものであるため、他の言語で発表された知見を見逃している可能性がある。
本エビデンスの更新状況
エビデンスは、2023年2月現在のものである。
Cooper S, Schmidt B-M, Jama NA, Ryan J, Leon N, Mavundza EJ, Burnett RJ, Tanywe AC, Wiysonge CS
1 month ago
要点
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ケタミン(投与方法として、静脈内への注射、内服、またはクリーム剤を皮膚に塗るなどがある)が痛みの強さを減少させるかどうかは不明であるが、静脈内に投与した場合に望ましくない有害事象を引き起こす可能性がある。
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メマンチン、デキストロメトルファン、アマンタジン、マグネシウムが痛みの強さを減少させるのか、また望ましくない有害事象を引き起こすかどうかは不明である。
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慢性疼痛に対するケタミンおよび他のNMDA受容体拮抗薬の利益と有害性を調査するには、より多く、より質の高い研究が必要である。
慢性疼痛とは何か?
慢性疼痛とは、少なくとも3ヵ月間持続する痛みのことである。慢性疼痛は一般的な疾患であり、全人口の最大3分の1に影響を与えている。慢性の(長期にわたる)痛みは、さまざまな疾患の症状に関連している場合もあれば、原因不明の場合もある。慢性疼痛がある人は、疲労感、不安、抑うつ、機能低下や生活の質(QOL)の低下を経験することがよくある。
N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬とは何か?
NMDA受容体拮抗薬は、痛みや脳機能における神経の(過剰な)興奮性に影響を与える薬剤群である。この薬剤群には、ケタミン、メマンチン、デキストロメトルファン、アマンタジン、マグネシウムなどが含まれる。慢性疼痛を含むさまざまな疾患の治療に対して、これらの治療薬が医師によって使用される。
知りたかったこと
ケタミンおよび他のNMDA受容体拮抗薬が、「偽薬」(プラセボ)、通常の薬物療法、または他の治療薬よりも痛みを減少させるのに優れているかどうかを調べたかった。また、NMDA受容体拮抗薬と有害事象との関連性についても明らかにしたかった。
実施したこと
慢性疼痛がある成人を対象に、ケタミンおよび他のNMDA受容体拮抗薬をプラセボ、通常の薬物療法、または他の治療薬と比較した研究を検索した。研究結果を比較および要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づき、エビデンスに対する信頼性を評価した。
わかったこと
神経障害性疼痛(例:糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛)、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群など、さまざまな慢性疼痛の疾患がある2,309人を対象とした67件の研究を特定した。対象とした研究に占める女性参加者の割合は、11%~100%の範囲であった。39件の研究がケタミン、10件の研究がメマンチン、9件の研究がデキストロメトルファン、3件の研究がアマンタジン、8件の研究がマグネシウムについて評価していた。62件の研究は、これらの薬剤をプラセボと比較していた。ほとんどの研究は、ヨーロッパ、英国、米国で行われ、対象となった研究の19%は、製薬会社から何らかの形で資金援助を受けていた。研究は、一般的に短期間で実施され、数ヶ月間であった。
主な結果
ケタミン(静脈内への注射、内服、またはクリーム剤を皮膚に塗るなどの投与方法)が痛みの強さを減少させるかどうかは不明である。ケタミンを静脈内に注射すると、現実感の喪失、吐き気、嘔吐などの望ましくない有害事象を引き起こす可能性がある。ケタミンを内服または皮膚に塗って使用した場合、望ましくない有害事象を引き起こすかどうかはわからない。
メマンチン、デキストロメトルファン、アマンタジン(内服)やマグネシウム(静脈注射または内服)が、痛みの強さを減少させるかどうか、または望ましくない有害事象を引き起こすかどうかは不明である。
エビデンスの限界は何か?
いくつかの理由により、エビデンスにあまり信頼性がない。研究参加者は、自分がどの治療を受けているかを認識していた可能性がある。また、すべての研究において、関心を持っている情報すべてが得られたわけではない。この調査結果について確信を持つには、十分な研究数がなく、対象とした研究は非常に小規模であった。
エビデンスの更新状況
エビデンスは、2025年6月現在のものである。
Ferraro MC, Cashin AG, Visser EJ, Abdel Shaheed C, Wewege MA, Wand BM, Gustin SM, O'Connell NE, McAuley JH
1 month ago
要点
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運動療法を併用した徒手療法は、プラセボ(偽の治療)と比較した場合、中等度の機能改善を示す可能性があるが、痛みの軽減にはほとんど、または全く効果がない可能性がある。
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運動療法を併用した徒手療法は、治療を行わなかった場合(無治療)と比較した場合、頚部痛の大幅な軽減および機能と健康関連QOL(生活の質)の中等度の改善をもたらす可能性がある。
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軽度の有害事象(望ましくない、害のある事象)、すなわち治療後の筋肉痛、頭痛、めまいなどの発生率には、ほとんど差がない可能性がある。
頚部痛とは何か?
頚部痛(首の痛み)は一般的な疾患であり、機能障害を引き起こし、経済的にも大きな負担となる。症状の持続期間により急性(4週未満)、亜急性(4〜12週)、持続性(12週を超える)に分類される。頚部痛は、腕の筋力低下やしびれを伴うことがあり、また、頭部、上背部、腕への放散痛(原因とは異なる場所で発生する痛み)を伴うこともある。頚部痛の原因は、骨、関節、神経、筋肉、軟部組織などに由来し、社会的、心理的、および個人的要因によっても影響を受ける。
頚部痛はどのように治療されているのか?
頚部痛の治療には、運動療法を併用した徒手療法が含まれる。徒手療法は、軟部組織、関節、神経の可動化または操作を目的として行なわれる治療法である。運動療法の要素には、ストレッチ、筋力トレーニング、モーターコントロール(運動制御)、有酸素運動、およびマインドボディエクササイズ(心身運動:ヨガなど)などが含まれる。
知りたかったこと
本研究では、運動療法を併用した徒手療法の利点とリスクを明らかにすることを目的とした。
実施したこと
成人の頚部痛患者に対し、運動療法を併用した徒手療法についてプラセボ、または治療を行わなかった場合(無治療)とを比較した研究について検索を行った。各研究結果を比較、および統合し、研究方法、結果の一貫性、研究規模といった要素に基づいてエビデンスの確実性を評価した。
わかったこと
合計694人の成人参加者を含む9件の研究が見つかった。研究は北米、欧州、アジア、および太平洋地域で実施されていた。
短期間における運動療法を併用した徒手療法とプラセボ治療との比較(4週に最も近い時点)。
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痛み(実質的な効果: 9%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜10点スケール(値が低いほど痛みが少ない)において0.91点の改善を示し、効果はほとんど、または全くない可能性がある。
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機能(実質的な効果: 10%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほど良好)において10.20点の改善を示す可能性がある。
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健康関連QOL(実質的な効果: 2%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほどQOLが良好)において2点の改善を示し、効果はほとんど、または全くない可能性がある。
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参加者の自己報告による治療の成功および有害事象については報告されていなかった。
短期間における運動療法を併用した徒手療法と無治療との比較
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痛み(実質的な効果: 24%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜10点スケール(値が低いほど痛みが少ない)において2.44点の改善を示す可能性がある。
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機能(実質的な効果: 14%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほど良好)において13.84点の改善を示す可能性がある。
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健康関連QOL(実質的な効果: 24%):運動療法を併用した徒手療法を行った参加者では、0〜100点スケール(値が低いほどQOLが良好)において24.80点の改善を示す可能性がある。
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参加者の自己報告による治療の成功に関するエビデンスは、非常に不確実であった。
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軽度の有害事象:運動療法を併用した徒手療法を受けたグループでは100人中2人、無治療群では100人中1人が軽度の有害事象を報告した。すなわち、治療後の筋肉痛、頭痛、めまいなどの一過性の軽度有害事象のリスクは2%増加した。
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重篤な有害事象は報告されなかった。
エビデンスの限界
以下の理由により、エビデンスの確実性は低いと判断された。研究参加者が、自分がどの治療群に属しているかを認識していた可能性があるが、これは多くのリハビリテーション研究において避けられない制限である。短期および長期における主要な結果についての報告が不完全であり、これにより介入効果の過大または過小な評価が生じた可能性がある。有害事象についての報告は全体的に少なく、また多くの研究において参加者数が少数であった。今後は、より多くの参加者を対象とした研究設計と、徒手療法および運動の種類、強度、頻度、期間についての一貫した報告が必要である。現時点におけるエビデンスには不確実性が残るため、急性および亜急性頚部痛に関するさらなる研究が求められる。
本エビデンスはいつのものか?
本レビューは、過去の非Cochraneレビューを更新したものであり、2025年3月時点におけるエビデンスである。
Chacko N, Gross AR, Miller J, Santaguida PL, Burnie SJ, Gelley GM, Paquin JP, Duranai MR, Langevin P, Chopra-Tandon N, Chak NT, Hoving JL, Bobos P
1 month ago
要点
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多発性硬化症の患者は、作業療法を行った直後に日常の生活機能と精神的健康関連の生活の質(QOL)が少し改善する可能性があるが、身体的健康関連QOLや社会参加の面では、作業療法はほとんどまたはまったく効果がないかもしれない。
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作業療法を行うと、治療から3~6ヵ月後の精神的健康関連QOLも少し改善する可能性があるが、日常の活動や身体的健康関連QOLにはほとんど影響がないかもしれない。通常の手当てと比べて、作業療法は日常の生活機能と身体的および精神的健康関連QOLをある程度改善する可能性がある。
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作業療法の長期的な利益または害については、情報が不足しており、はっきりしたことは言えない。
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このレビューの結果では、作業療法の実際の効果が過小評価されているかもしれない。なぜなら、研究ごとにさまざまな異なる作業療法介入を調べており、作業療法と他の療法の組合せを評価した研究は、作業療法のみの効果を測定していない限り、対象に含めなかったからである。
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今後の研究では、どの要素がどの患者にいかなる状況で最も有効であるか特定することを目指すべきである。
多発性硬化症とは何か?
多発性硬化症(MS)はよくある中枢神経系の病気で、世界全体で約290万人の患者がいる。多発性硬化症になると、免疫系が脳内や脊髄の神経線維保護層を誤って攻撃してしまう。そのせいで脳と身体の他の部分の間で情報伝達がうまくいかず、疲労感、筋力低下、平衡感覚の異常などの症状が起きる。多発性硬化症により、服を着る、食事の支度をする、歩くといった日常の作業が困難になることもある。また、記憶や集中力にも影響し、仕事や社会関係に支障を来すこともある。
多発性硬化症にはどのような治療が行われるか?
多発性硬化症の治療薬の目的は、急性増悪(急激な悪化)を抑えて病気の進行を遅らせ、症状を緩和することである。リハビリテーション療法は、多発性硬化症の患者が自分の症状を管理し、日常の生活機能を改善して、社会参加を維持する助けとなりうる。
作業療法はリハビリテーション療法の一つである。作業療法は、患者が着替えや料理、入浴、仕事などの日常の作業を行うのに役立つ。作業療法士は、こうした活動をより楽に行う方法を患者に教え、症状の管理に役立つ道具を提供する。また、日常生活における困難に対処しやすくするために、筋力や協調運動能力の強化を図る。
知りたかったこと
作業療法が多発性硬化症の患者にどのような利益をもたらすか、特に、日常の生活機能、身体的・精神的健康関連QOL、そして社会参加にどのような影響を与えるかを調べたかった。また、作業療法による望ましくない影響があるかも知りたかった。
実施したこと
多発性硬化症の患者に対する作業療法を他の介入、通常の手当て、または無治療と比較した研究を探した。集学的な研究(複数の異なるタイプの医療従事者が並行して治療を提供する研究)は、作業療法の貢献が個別に報告されていない限り除外した。関心があったのは、治療の直後、治療から3~6ヵ月後(中期)、そして治療から1年後(長期)の効果である。研究の結果を統合し、研究方法や研究の数などの要因に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。
わかったこと
多発性硬化症患者1,628人を対象に行われた20件の作業療法介入の研究が見つかった。そのうち10件は多発性硬化症患者の疲労感の管理に役立つ方法を調べたもの、9件は着替えや料理など日常の活動の改善に的を絞ったもの、1件は社会的活動への参加拡大を支援することを目指す研究だった。これらの研究は主に高所得国で行われた。研究に参加したのは、多発性硬化症が原因で軽度から中等度の障害を負う18~70歳の成人である。
レビューの結果
作業療法は、短期的には他の治療と比べて日常の生活機能をやや改善する可能性があり、通常の手当てや無介入よりも利益が大きいかもしれないが、エビデンス(科学的根拠)の確実性が低い研究が多い。中期的・長期的な効果は不明である。
作業療法により、短期的には精神的健康関連QOLがやや改善しうるが、身体的健康関連QOLへの影響は僅かまたは皆無かもしれない。通常の手当てや無介入の場合との比較の結果は非常に不確かであるほか、中期的・長期的な影響はよくわからない。
作業療法は、短期的に社会参加にはほとんどまたは全く影響しない可能性があるが、エビデンスは非常に限定的である。
どの研究も作業療法の害について体系的に報告していないため、これらは不明のままである。
エビデンスの限界
作業療法が多発性硬化症患者の身体的健康関連QOLに及ぼす影響に関するエビデンスは限定的である。作業療法が通常の手当てや無治療と比べてどうであるかは、確証をもって結論を下すのに十分な研究がないため、よくわからない。作業療法がもたらしうる有害な影響に関するエビデンスは皆無で、多発性硬化症が原因の重度の障害がある人に関するエビデンスも限られている。
もう一つの限界は、非常に異なる作業療法の介入をまとめたために、結果の確実性が低く、解釈が難しいことである。作業療法の取り組み方は一つだけではなく、多種多様である。また、作業療法の役割について明確な記載がない限り、チーム医療に基づく研究の多くを除外したため、重要なエビデンスを見逃した可能性がある。
多発性硬化症患者に対する作業療法の影響を十分に理解するには、より多くの研究が必要である。
このエビデンスの更新状況
エビデンスは2024年11月に行った検索に基づくものである。
Kos D, Boers A, O'Meara C, Bekkering GE, De Coninck L, Koen M, Freeman J, Hynes SM, Eijssen ICJM
1 month ago
要点
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歯周炎(歯周病のより重症のもの)患者において、通常の指導のみと比較した場合、口腔衛生指導に対する行動科学的アプローチが重要な利益をもたらすかどうかについては、非常に不確実である。
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歯肉炎(歯周病のより軽症のもの)患者において、通常の指導のみと比較した場合、口腔衛生指導に対する行動科学的アプローチが重要な利益をもたらすかどうかについては、非常に不確実である。
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歯周病患者の支援における行動科学的アプローチの役割をよりよく理解するためには、今後の研究が必要である。
歯周病とは何か?
歯周病の症状には、歯肉の出血や腫れ、口臭などが含まれる。歯肉炎(gingivitis)はこの疾患の最も初期の段階である。治療されないままでいると、歯肉炎はより重度の歯周炎(periodontitis)へと進行する可能性がある。歯周炎は歯の周囲の軟組織や歯槽骨に永続的な損傷を引き起こすことがあり、場合によっては歯を失うこともある。
歯周病はどのように治療されるのか?
歯周病は、歯科医師や歯科衛生士による治療を受ける必要があり、手術や抗菌薬による治療が必要になる場合もある。しかし、良好な口腔衛生習慣(少なくとも1日2回の歯磨きと、デンタルフロスやその他の器具を用いた歯間部や歯肉縁部の清掃)を実践することで、症状を軽減することができる。セルフケアは歯周病患者にとって非常に重要であり、あらゆる歯科治療の成功はこのセルフケアにかかっている。歯周病患者には歯科医師または歯科衛生士により口腔衛生指導が行われるが、それでもなお、疾患を管理するために十分な口腔衛生を維持できていない人がいることがわかっている。
何を明らかにしたかったのか?
歯周病を有する成人において、口腔衛生習慣の改善に関して、口腔衛生指導に対する行動科学的アプローチが通常の指導のみ行った場合よりも効果的かどうかについて明らかにしたかった。行動科学的アプローチには、患者の普段の行動パターンを変えることに対する支援を目的とした行動変容技法が含まれる。
特に、軽いプロービング後における出血(bleeding on probing:BOP)、炎症(歯肉の腫れ)、プラーク(歯垢)、歯周ポケットの深さ(probing pocket depth:PPD)、および歯と歯槽骨との付着の喪失(clinical attachment loss:CAL)について評価を行った。また、患者自身による口腔衛生習慣の改善の報告、さらに行動科学的アプローチの有害性についても評価を行った。
何を行ったのか?
歯周病を有する成人に対する研究について検索を行い、口腔衛生指導に対する行動科学的アプローチと、通常の指導のみを比較した研究を組み入れた。歯周炎または歯肉炎のどちらに介入が行われたかに基づいて結果を比較、要約を行った。歯周炎患者については、歯周病の治療を受けていないグループ(活動期治療群)と、長期的な管理を受けているグループ(安定期治療群)に分けて結果をまとめた。研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。
何がわかったのか?
合計1,422人の参加者を対象とした25件の研究が見つかった。そのうち19件は歯周炎患者のみ、5件は歯肉炎患者のみ、1件は両疾患を対象としていた。
組み入れられた研究において、口腔衛生習慣を変えるためのさまざまな行動科学的アプローチが用いられていた。具体的には、モバイルアプリを使用した口腔衛生情報の提供やリマインダーの送信、口腔内カメラや鏡を使用した疾患の進行に関するフィードバックの提供、より詳細で個別化された指導、家庭用の口腔衛生用品の提供、カウンセリングや動機づけ面接法を用いた対話による行動変容の支援、次の診察時における相談のための(口腔衛生習慣の)記録などが含まれていた。
主な結果
成人の歯周炎患者では、出血、炎症、プラーク、および歯周ポケットの深さの減少において、行動科学的アプローチが通常の指導のみを行うことより優れているかどうかは不明である。また、口腔衛生習慣の自己報告において、行動科学的アプローチを受けた患者が、通常の指導のみを受けた患者より改善の報告が多いかどうかも不明である。この結果は、活動期治療群と安定期治療群においても同様であった。
成人の歯肉炎患者においても、歯肉炎の症状の軽減や口腔衛生習慣の改善に関して、行動科学的アプローチが通常の指導のみを行うことより優れているかどうかは不明である。
検索を行った時点では、付着の喪失(CAL)や有害事象に関する情報を報告した研究は見つからなかった。
エビデンスの限界は何か?
本レビューのエビデンスに対する信頼度は非常に低い。その理由は以下のとおりである。
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参加者が自分の受けている行動科学的アプローチを認識していた可能性があり、それが結果に影響した可能性がある。
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組み入れられた研究は、必要とするすべての情報を常に報告していたわけではなかった。
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ほとんどの研究は参加者数が非常に少ない、あるいは結果を確実に判断するには十分な人数が含まれていなかった。
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研究デザインはすべて異なっており、研究結果の間に相違がみられる場合があった。
本エビデンスはいつのものか?
2024年7月3日時点におけるエビデンスである。
O'Malley L, Lewis SR, Preshaw PM, Riley P, Adair P, Edwards ML E, Raison H, Byrne MJ, Kitsaras G, Jervøe-Storm PM
1 month ago
要点
• 思考や記憶について心配している人にとって、6か月後の全体的な状態改善において、イチョウ葉がプラセボ(偽薬)よりも優れているかどうかは不明である。
• 多発性硬化症で思考や記憶の問題を抱える人にとって、3か月後の思考能力改善において、イチョウ葉はプラセボよりも優れているとは考えにくい。
• 認知症ではなく軽度認知機能障害と診断された人にとって、6か月後の全体的な状態、思考、または日常生活動作に必要な技能の改善においては、イチョウ葉はプラセボよりも優れているとは考えにくい。
• 認知症と診断された人にとって、6か月後の全体的な状態、思考能力、日常生活動作に必要な技能の改善において、イチョウ葉はプラセボよりも効果的である可能性がある。しかし、個々の研究ではイチョウ葉の効果について非常に異なる推定値が示されており、確固たる結論を導き出すことは困難であった。
• 軽度認知機能障害または認知症に対するイチョウ葉とプラセボの比較研究では、イチョウ葉による有害事象のリスク増加はおそらく認められないことが示された。
認知機能障害と認知症とは何か?
認知機能障害とは、思考、学習、記憶、または意思決定において問題がある状態をさす。また、気分、行動、または意欲の変化も含まれる場合がある。認知症とは、日常生活や通常の活動に支障をきたす深刻な認知機能障害の総称である。認知症のリスクは加齢とともに高まり、高齢者に診断される最も一般的な認知症はアルツハイマー病である。
認知機能障害と認知症はどのように治療されるか?
認知機能障害や認知症の進行を止めたり遅らせたりすることが証明された治療法は現時点で存在しない。コリンエステラーゼ阻害薬などの医薬品は症状を改善する可能性があり、非薬物療法も有用である場合がある。
知りたかったこと
Ginkgo biloba
(イチョウ葉)を原料とする医薬品が、認知機能障害や認知症の治療に役立つかどうか、特に思考能力や日常生活動作に必要な技能の改善に効果があるかどうかを明らかにしたかった。また、思考能力の低下を心配している人や、多発性硬化症に関連する思考障害を抱える人に対して、イチョウ葉が役立つかどうかについても知りたいと考えた。
実施したこと
思考障害、軽度認知機能障害、または認知症の診断を受けた人を対象に、イチョウ葉の有効性を検証した研究を検索した。参加者が少なくとも3か月間治療を受けたことを条件とした。これらの研究結果を、思考障害の種類や診断名ごとに別々にまとめた。研究の実施方法の質、研究規模、異なる研究間で結果に類似性があるか相違があるかといった要素に基づき、エビデンスに対する信頼度を評価した。
わかったこと
思考能力の低下を心配している人、多発性硬化症に関連する思考障害がある人、あるいは軽度認知機能障害または認知症の診断を受けた人を含む82件の研究(10,613人)を特定した。研究では、イチョウ葉をプラセボ(偽薬)や他の医薬品と比較したり、他の治療法にイチョウ葉を追加したりした。研究の半数以上が中国で実施された。
主な結果
記憶力や思考力の低下を心配している人にとって、6か月後の全体的な状態改善において、イチョウ葉がプラセボよりも優れているかどうかは不明である。1件の研究では、6か月時点でイチョウ葉とプラセボの有害事象に差は認められなかった。しかし、わずか3か月間しか続かなかった別の1件の研究では、イチョウ葉には全体としてより多くの有害作用がある可能性が示された。
多発性硬化症に伴う認知障害を有する患者において、3か月間のプラセボではなくイチョウ葉による治療は、思考能力にほとんど差をもたらさない可能性が高い。有害事象を経験した人の総数を報告した研究はなかった。1件の研究では、2人が重篤な有害事象を経験したが、これらはイチョウ葉とはおそらく無関係であった。
軽度認知機能障害と診断された人において、6か月間のプラセボではなくイチョウ葉による治療を受けた場合、全体的な状態、思考能力、または日常生活動作に必要な技能に、おそらくほとんど差は見られない。イチョウ葉とプラセボでは、12か月までの有害事象リスクにほとんど差がない可能性があり、重篤な有害事象リスクにもほぼ差がない。
認知症と診断された人に対して、6か月間のプラセボではなくイチョウ葉による治療を行うと、全体的な状態、思考能力、日常生活動作に必要な技能において、ある程度の改善がみられる可能性がある。イチョウ葉とプラセボでは、12か月までの有害事象リスクにほとんど差がない可能性があり、重篤な有害事象リスクにもほぼ差がない。
エビデンスの限界
多くの研究では方法論に問題があり、研究間で結果に一貫性がない場合もあったため、結果に対する確信度が低下している。認知症に対するイチョウ葉の試験は6か月を超える研究がほとんどないため、認知症における長期使用の潜在的な有益性と有害性は不明である。
エビデンスの更新状況
2024年11月時点におけるエビデンスである。
Wieland LS, Ludeman E, Chi Y, Feinberg TM, Chen I-H, Chen K-H, Zhu Y, Wolverson E, Amri H
1 month ago
主な結果
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看護師によるケアと医師によるケアの間に、ほとんど、あるいは全く差がない場合もある。
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エビデンスは不確かではあるが、少数の症例において、臨床アウトカム(身体的・心理的機能、糖尿病および湿疹の管理)および施術者の相対的パフォーマンス(患者評価/評価の正確性、診療推奨事項の遵守、薬剤管理、ポリープの同定、処置開始までの所要時間)が改善される可能性がある。
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低・中所得国においては、治療群への割り当てにランダム化法を用いた今後の研究が必要である。
医師ではなく看護師によって提供されるケアとは何を意味するのか?
医師ではなく看護師が行うケアとは、通常医師が行う業務や役割を看護師が担うことを指す。これらには、患者の病歴聴取や身体検査の実施、検査の指示、薬の処方、患者教育の提供などが含まれるが、これらに限定されない。看護師は患者に対して同じケアを提供することを責任とする。看護師は医師とは独立してこれらの役割を担うこともあれば、医師の監督下でそれらを遂行することもある。
高齢化、慢性疾患、過重な業務負担、高額な治療費、医師不足により、医療サービスには大きな圧力がかかっている。質の高い医療を提供するため、一部の国では医師の代わりに適切な訓練を受けた看護師を配置している。これにより医療へのアクセスが改善されると同時に、医療提供コストのコントロールが可能となっている。
知りたかったこと
以下の点について明らかにすることを試みた:
実施したこと
病院環境において、医師ではなく看護師が提供するケアを比較した研究を検索した。患者アウトカム(死亡、患者安全事象、臨床アウトカム、生活の質(QOL)、自己効力感)、ケアプロセスのアウトカム(医療従事者の相対的パフォーマンス)、経済的アウトカム(直接費用)を検証した研究を対象とした。
わかったこと
世界中で実施された82件の研究を対象とした。そのうち大半は英国で実施された(32件)。研究には合計28,041名の参加者が含まれており、参加者の規模は7人から1,907人まで幅があった。ほとんどの研究は12か月間継続され、2件の研究は最大5年間継続された。いくつかの研究は患者の退院時または処置後に終了した。
主な結果
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看護師を医師に代えても、死亡率にほとんど差がないか、差がない可能性が高いことが判明した。患者の安全に関する事象にもほとんど差がないか、差がない可能性がある。また、一部の臨床的アウトカム(身体的・心理的機能、糖尿病、湿疹の管理)においてわずかな改善が見られる可能性がある。看護師を医師に代えても、生活の質や自己効力感にはほとんど、あるいは全く差が生じない可能性が高い。一方で、医療従事者の評価指標における相対的なパフォーマンス(患者評価/評価の正確性、診療ガイドラインの遵守、薬剤管理、ポリープの識別、処置開始までの所要時間)の一部では、わずかな改善が見られるかもしれない。看護師を医師に代替することが直接費用に影響を与えるかどうかは不明である。
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低・中所得国では看護師が医師の代わりを務める場合、QOLが向上する可能性があるが、高所得国では医療従事者の相対的なパフォーマンスが低・中所得国よりも優れている場合がある。
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疾患タイプによる差を検討した結果、看護師主導型診療を受診する心血管疾患患者において、医療従事者の相対的パフォーマンスに改善が見られる可能性があることが判明した。
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看護師主導の診療所や入院患者ケアにおいて、医師ではなく看護師がケアを提供する場合、臨床的アウトカムがより良好となる可能性があることが、様々な形態の看護師と医師の代替を検討した結果明らかになった。死亡、患者の安全に関する事象、QOL、自己効力感については差は認められなかった。医療従事者の相対的なパフォーマンスに差があるかどうかは不明である。
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看護師の職位を検討した結果、専門看護師によるケアでは患者安全上の事象が少なかったことが判明した。看護師の職位よる死亡率、臨床アウトカム、QOL、自己効力感に差は認められなかった。
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専門看護師または上級看護師に対しては、登録看護師よりも少ない研修機会しか提供されなかった。追加の訓練や責任のレベルを考慮した場合でも、いずれの結果においても差は認められなかった。
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代替方法に関して、看護師が医師に代わった場合、標準ケアおよび強化ケアにおいて、医療従事者がより優れた相対的パフォーマンスを示したことが結果から明らかになった。
エビデンスの限界
参加者の差、介入内容、およびアウトカム測定方法の差により、エビデンスの確実性は中等度から低度の範囲にあった。さらに、低・中所得国を基盤とした研究はごく少数であった。
本エビデンスはいつのものか?
2024年6月25日時点におけるエビデンスである。
Butler M, Kirwan M, Mc Carthy VJC, Cole JA, Schultz TJ
1 month 2 weeks ago
要点
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1件のランダム化比較試験によると、中隔切除術(中隔を手術で取り除く)と待機的管理(何もせず様子を見る)では、生児出産と妊娠継続にほとんど差がないかもしれない。
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ランダム化されていない研究から得られた知見の信頼性は、非常に低い。
-
結果の信頼性を高めるためには、より質の高い研究が必要である。
中隔子宮とは?
中隔子宮とは、生まれつき子宮の中に壁(中隔)がせり出ていて、子宮が2つの空洞に分かれている状態をいう。中隔子宮があると、不妊症、反復流産、早産のリスクが高まる。中隔を除去する手術は、これらのリスクを下げると考えられているが、その効果ははっきりしていない。
知りたかったこと
子宮鏡下子宮中隔切除術(子宮内にカメラを入れながら、中隔を取り除く手術)が、子宮中隔がある女性の生児出産の可能性を高めるかどうか、また、この利点が手術で起こりうる合併症による不利益を上回るかどうかを調べたかった。
実施したこと
ランダム化比較試験(RCT)とは、無作為な方法で2つ以上の治療群から1つに割り当てる試験である。このような研究は質が高いと考えられる。また、ランダム化以外の研究、例えば診療録(カルテ)のレビューや分析を行った研究についても調べた。このような研究は非常に質が低いと考えられる。
わかったこと
1件のRCTと12件の非ランダム化研究が見つかり、そのうち10件は診療録のレビューと分析であった。すべての研究で、中隔切除術と待機的管理が比べられていた。RCTでは、39人の女性が中隔切除術を受け、40人の女性が待機的管理を受けた。12件の非ランダム化研究では、1,134人の女性が中隔切除術を受け、692人の女性が待機的管理を受けた。
主な結果
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RCTの結果から、中隔切除術と待機的管理では、生児出産にほとんど差がない可能性が示唆される。非ランダム化研究の結果から、中隔切除術によって生児出産が増えるかどうかは判断できない。
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このRCTでは、子宮穿孔(子宮の壁に穴が開いたり裂けたりした)1例と、残存中隔(手術で中隔が取り除ききれなかった)1例が報告された。手術合併症について報告した非ランダム化研究のうち、3件では合併症なし、他の3件では主に子宮穿孔、出血、再手術を必要とする残存中隔について報告していた。残りの研究は、合併症について報告していない。
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RCTの結果から、中隔切除術と待機的管理では妊娠継続にほとんど差がない可能性が示唆される。非ランダム化研究の結果から、中隔切除術が妊娠継続に影響するかどうは判断できない。
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RCTの結果から、中隔切除術と待機的管理では、臨床的妊娠(胎児の徴候が確認できた状態)にほとんど差がない可能性が示唆される。非ランダム化試験の結果から、中隔切除術が臨床的妊娠を増やせるかどうかは判断できない。
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中隔切除術は、待機的管理と比べて流産の可能性を高めるかもしれない。しかし、この研究は非常に小規模であるため、この結果に対する信頼性は低い。非ランダム化研究の結果から、中隔切除術が待機的管理と比べて流産を減らせるどうかは判断できない。
エビデンスの限界
RCTから得られたエビデンスについては、研究が非常に小規模であり、研究数も結果について確信できるほど十分ではないため、信頼性が非常に低い。ランダム化されていない研究から得られたエビデンスに対する信頼性は非常に低い。なぜなら、これらの研究は異なるタイプの人々を対象としており、研究に参加した女性が自分はどの治療を受けているかを知っていた可能性があるからである。
本エビデンスはいつのものか?
エビデンスは、2025年9月現在のものである。
Joosse MI, Kostova EB, Rikken JFW, Mol BWJ, Goddijn M, van Wely M
1 month 2 weeks ago
要点
- 骨盤臓器脱の手術を受ける女性は、手術合併症の軽減、治療成績の向上、またはその両方を目的としたさまざまな追加治療を受けることがある。
- 全体として、どの治療についても、その治療を強く推奨するにはエビデンスが限られている。
- しかしながら、尿を排出させるための留置カテーテルを手術後24時間以上使った場合、尿路感染症を発症するリスクが3~8倍高くなる可能性があることがわかった。
骨盤臓器脱とは?
骨盤臓器脱(POP)は、1つまたは複数の骨盤内臓器(腟、子宮、小腸、膀胱、直腸)が腟内に下がってくることによって起こる。骨盤内臓器を支える支持組織が弱くなることが原因である。リスク要因は、経腟分娩や加齢、肥満である。骨盤臓器脱は、尿や便の漏れ、圧迫感、性交時の痛みなどさまざまな問題を引き起こし、女性の生活の質を著しく下げる。
骨盤臓器脱の手術を受ける場合、どんな追加治療があるか?
手術は、骨盤臓器脱の治療法のひとつである。手術は、臓器を通常の位置に固定させることで、正常な解剖学的位置関係を取り戻すことを目的としている。骨盤臓器脱に対する手術は、女性の人生を変える結果をもたらす可能性がある。しかし、その手術の前、手術中、および手術後に行われるさまざまな治療の有用性や潜在的な有害性については、専門家の間でも意見が分かれている。これらの治療は、起こりうる合併症の発生率を減少させたり、骨盤臓器脱の手術の治療成績を向上させたりすることを目的としている。
知りたかったこと
合併症は、手術中(腸の損傷など)や手術後(尿路感染症など)に起こりうる。骨盤臓器脱の手術の前、手術中、および手術後に、どんな追加治療がこれらの合併症を減らすことができるかを明らかにしたかった。
また、骨盤臓器脱の手術は、理想的には骨盤臓器脱を修復し、症状を改善する。どの治療がこの目標を達成するのに最も効果的かも知りたかった。
実施したこと
18歳以上の女性を対象に、骨盤臓器脱の手術に対して、手術前、手術中、および手術後の治療の有無を比べた研究を探した。研究結果を比較して要約し、研究方法や研究規模などに基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。
わかったこと
その結果、5,657人の女性が参加した49件の研究が見つかった。これらの研究は16カ国で行われていた。19種類の治療が評価されており、このレビューでは主に12種類に分類して分析した。しかし、このレビューで知りたかった評価項目の多くは調べられていなかった。全体として、どの治療についても、強く推奨できるようなエビデンスは限られていた。
骨盤底筋トレーニング(PFMT)
骨盤底筋トレーニングは、骨盤底筋を強化し、下がっている臓器への支持を高めることを目的としている。手術前に骨盤底筋トレーニングを行った女性と行わなかった女性では、骨盤臓器脱の自覚症状にほとんど差がないかもしれない。トレーニングを行わずに手術した女性の20%が手術後に骨盤臓器脱の症状を自覚しているとすれば、トレーニングを行った女性の13~31%が手術後に症状を自覚する可能性がある。同様に、再手術の必要性、骨盤臓器脱が再発する可能性、女性の自己申告による生活の質(QOL)についても、骨盤底筋トレーニングの有無による差はほとんどないかもしれない。
留置カテーテル
骨盤臓器脱の手術後、一時的に尿道留置カテーテルを使うことがある。これは、尿を排出するために膀胱に留置される柔らかく自在に曲がるチューブである。2件の研究では、24時間後に留置カテーテルをはずした場合とそれ以降にはずした場合の効果を比べていた(1件は術後48時間後、1件は術後4日後)。カテーテルを24時間以上留置している女性は、尿路感染症を起こすリスクが大幅に増える可能性がある。術後24時間でカテーテルをはずした女性の4%が尿路感染症を起こすとすれば、術後24時間を越えてからカテーテルをはずした女性の12%~47%が尿路感染症を起こす可能性がある。同様に、24時間を超えてカテーテルを留置することは、おそらく入院期間を延長するだろう。結果として、カテーテルを留置する総日数を大幅に増やす可能性がある。いずれの研究も、このレビューで知りたかった評価項目を調べてはいなかった。
その他の治療の比較
他の35件の研究では、骨盤臓器脱の手術に追加してさまざまな治療を受けた場合と受けなかった場合の効果が比べられていた。
- 腸の準備(手術前に患者の腸を空にする);
- 短時間作用型と長時間作用型の鎮痛薬;
- 血管収縮薬(手術部位の血管を細くする);
- 腟の消毒薬;
- クランベリーのサプリメント(尿路感染症を予防する);
- 腟エストロゲン(手術前の腟の状態を改善するために使う)。
全体として、これらの研究では、すべての治療で2群間の結果にほとんど差がないことが判明した。
エビデンスの限界
骨盤臓器脱に対する手術の前、手術中、および手術後の治療に関する強力なエビデンスは限られているが、それは研究者や医師だけでなく、ほとんどの女性がどの治療が行われているかを知っていたからである。これは、結果の報告や測定の方法に影響を与えたかもしれない。さらに、多くの研究は、このレビューで知りたかった評価項目を調べていなかった。
エビデンスはいつのものか?
このレビューは、前回のレビューを更新したものである。エビデンスは、2024年4月現在のものである。
Shahid U, Haya N, Baessler K, Christmann-Schmid C, Yeung E, Chen Z, Maher C
1 month 2 weeks ago
要点
‐乳がんの手術は、乳房内のがんの進行を抑えるのに役立つようである。場合によっては、平均余命が伸びることもある。
‐しかし、乳がんの手術は合併症を引き起こす可能性があり、これには手術中の死亡(まれ)、輸血が必要なほどの出血、感染症、腕のむくみ(リンパ浮腫)、身体像の変化、生活の質 (QOL)が低下する恐れなどが含まれる。
転移性乳がんはどのような病態で、どれほどの頻度で見られるか?
転移性乳がんとは、がんが乳房から他の臓器に広がっていることを意味する。乳がんの診断を受けた女性100人中5~10人程度において、がんはすでに他の臓器に広がっている。完治はできないが、このがんを患う女性の余命は伸びている。乳がんの手術は転移性乳がんの標準的な治療に含まれないが、これによって生存率や生活の質 (QOL)が改善されるかどうか調べたかった。
乳がんの治療にはどのようなタイプの手術が行われるか?
乳がんの手術には以下のタイプがある。
‐乳房の一部のみを切除する乳房温存手術、または
‐全乳房を切除する根治手術(乳房切除術)
乳房切除術を受ける女性は、同じ手術の流れの中で同時に乳房再建術を受けるという選択肢を与えられることもある。
実施したこと
転移性乳がんの女性において、乳房の手術と内科的治療(例えば、がん組織を殺傷する薬剤(化学療法)とがんの増殖を助長するホルモンを抑制する薬剤(ホルモン療法))を併用した場合と内科的治療のみの場合を比較した研究を探した。
わかったこと
転移性乳がんのある女性1368人を対象とするトルコ、インド、オーストリア、日本、米国の5件の研究が見つかった。これらの女性は3年から10年の期間につき追跡調査を受けた。
主な結果
全生存期間(研究に参加した時点から原因を問わず死亡するまでの期間):
乳がんの手術は全生存期間には影響しない可能性がある。しかし、乳がんの種類によっては、いくらかの利益があるかもしれない。これらの結果は予備的なもので、まだ検証されていない。
生活の質 (QOL):
乳がんの手術は生活の質 (QOL)に影響を与えないかもしれない。しかし、これを確かめるために、一層の研究が必要である。
病気の局所制御:
乳がんの手術は乳房内のがんを抑制して、同部位で悪化する可能性を減らすのに役立つ。
他の臓器への転移:
乳がんの手術は、がんが身体の他の部分へ転移するのを抑止する効果はないようである。
乳がんそのものに関する特異的生存率(全生存期間とは異なる)を報告した研究はなかった。
術後30日死亡(毒性):
乳がんの手術によって、手術後30日以内の死亡リスクが増加することはなかった。
エビデンスの限界
乳がんの手術が乳房内のがんの制御に役立つのは確かと思われる。生存率、他の臓器への転移、生活の質 (QOL)への影響と毒性については、それほど確信が持てない。それぞれの研究の規模が小さく、内容も大きく異なっていたため、これらの結果に対する信頼性は限定的である。また、研究ごとに手術を行う時期の選択基準が異なり、報告された結果も異なる時点のものだった。今後の研究により、レビューの結果も変わる可能性がある。
エビデンスの更新状況
本レビューは前回のレビューの更新版で、エビデンスは2023年4月までのものである。
Tosello G, Riera R, Torloni MR, Neeman T, Cruz MRS, Freitas IF, Christofaro D, de Paulo TR, Oliveira CB, Mota BS
1 month 2 weeks ago
要点
- サーバリックス、ガーダシルまたはガーダシル-9によるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種を受けた15歳から25歳の女性では、HPVワクチン接種を受けなかった場合と比較して、4年から6年後に高悪性度の
子宮頸部
前がん(放置するとがんになる可能性のある異常な外観の細胞)がわずかに減少した。ガーダシルまたはガーダシル-9を接種した人では、接種しなかった人と比較して、4年後に
外陰部と膣の
前がんがわずかに減少した。HPVワクチン接種により、性器疣贅(尖圭コンジローマとも呼ばれる)のリスクとHPV関連疾患の治療の必要性が減少した。がんの発生について報告できるほど長く続いた研究はなかった。
- HPVワクチン接種後、注射部位の痛みや腫れがよくみられたが、重篤な副作用は認められなかった。
- ほとんどの研究が15歳以上を対象としており、対象者は感染にさらされている可能性が高いため、ワクチン接種の恩恵を受けにくい。がんの発生など長期的な結果を測定するには、研究の期間が短すぎた。
ヒトパピローマウイルス(HPV)とは
HPVはよくある感染症であり、膣、肛門、オーラルセックスなど密接な接触によって人と人の間で感染する。HPVには多くの種類がある。種類によってはがんを引き起こすこともある。最も多いのは子宮頸がんであるが、膣がん、外陰がん、陰茎がん、肛門がん、頭頸部がん、肛門疣贅の原因にもなる。HPVは男性と女性のいずれにも感染する可能性がある。子宮頸がんは通常、初感染から発症まで10年以上かかる。それ以外のHPV関連がんは、さらにゆっくりと進行する。
HPVワクチンはどのように役立つのか
HPVワクチンは、時にがんや性器疣贅の原因となるHPV感染を予防することを目的としている。HPVワクチンは、すでにHPVに暴露している人にはあまり効果がないため、ほとんどのワクチン接種プログラムが、性的に活発になる前の若い人たちを対象としている。
知りたかったこと
HPVワクチンが、以下の項目に関して有効かどうかを確かめたかった。
- がんや前がん(放置するとがんになる可能性のある、見た目が異常な細胞)を予防するか
- HPV関連疾患の治療の必要性を減らすか
- 性器疣贅を予防するか
- 望ましくない影響があるか
実施したこと
以下の比較を行った研究を検索した。
- HPVワクチンとプラセボ(ダミーワクチン)、非HPVワクチン、またはワクチン無添加
- 異なるHPVワクチンまたは異なるHPVワクチンの接種回数
研究結果を比較してまとめ、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。消費者を含む独立諮問グループの支援を受けた。
わかったこと
計157,414人を対象とした60件の研究が見つかった。参加者数は、最も大規模な研究では34,412人、最も小規模な研究では11人であった。参加者の追跡期間は4日から11年までの範囲にあった。研究は世界中で行われ、ほとんどが12か月間続いた。対象とした研究のうち44件に製薬会社各社が資金を提供していた。
主な結果
- 対象とした研究はいずれも、がんの予防について直接説明できるほど長期にわたるものではなく、短期的な結果に焦点を当てたものであった。
- 15歳から25歳の女性では、サーバリックスとガーダシルによって、短期的にはすべての高悪性度子宮頸部前がん(CIN2+)が減少した。25歳以上の女性では、ほとんどまたはまったく差がなかった。
- 15歳から25歳の女性では、短期的には高悪性度の肛門がんや陰茎前がんにほとんどまたはまったく差がなかった。ガーダシルおよびガーダシル-9ワクチンによって、この集団の高悪性度の膣がんまたは外陰前がんが減少した。
- HPVワクチン接種により、性器疣贅のリスクが減少し、HPVに関連する可能性のある早期がんの治療を必要とする15歳から25歳の人数が減少した。
- 全HPVワクチン接種を完了した後、多少の痛みや腫れはよく見られたが、重篤な副作用はなかった。ワクチンの種類によってリスクに差があるかどうかはわからない。
エビデンスの限界
一部の研究の実施方法について懸念があり、それが結果に影響を与えている可能性がある。重篤な副作用、HPV関連疾患、子宮頸がん、膣がん、外陰前癌、性器疣贅の治療に関するエビデンスには、中等度の確信がある。がんや陰茎および肛門の前がんに関するエビデンスについては、症例数が少ないこと、がんを測定するには研究期間が短すぎること、研究対象者がワクチン接種の対象者よりも年齢が高いことなどから、あまり確信がない。
多くの研究は産業界から資金提供を受けていたが、独立した資金提供を受けている研究と比較して差は見られなかった。
本レビューの更新状況
本エビデンスは2024年9月18日現在のものである。
Bergman H, Henschke N, Arevalo-Rodriguez I, Buckley BS, Crosbie EJ, Davies JC, Dwan K, Golder SP, Loke YK, Probyn K, Petkovic J, Villanueva G, Morrison J
1 month 2 weeks ago
主なメッセージ
・経口でのエネルギーおよびタンパク質の補足による栄養療法は、日常生活動作を改善する可能性がある(非常に不確実な証拠)。
・経口でのエネルギーおよびタンパク質の補足による栄養療法は、障害を軽減しない可能性がある(不確実な証拠)。
・我々は障害や日常生活動作の改善のためのさまざまな栄養介入が存在することを確認した。脳卒中後の障害や日常生活動作に対する各種栄養療法の効果を明らかにするためには、より質の高い研究が必要である。
脳卒中とは?
脳卒中は、脳の一部への血液供給が妨げられたり、減少したりすることで起こる。脳卒中には主に3つのタイプがある。脳へつながる動脈が血栓で詰まったり狭くなったりする虚血性脳卒中、脳の血管が破裂して脳内出血を起こす出血性脳卒中、脳と周囲の膜の間(くも膜下腔)に出血が起こるくも膜下出血の3つである。
栄養療法とは?
栄養療法とは、毎日の食事や間食のときに、タンパク質、ビタミン、エネルギーなどの栄養素を摂取する介入であり、各患者の状態に応じた栄養ケアを含む。病気の治療中や治療後の人は、栄養療法を受けることが多い。
脳卒中後の栄養療法に注目すべきなのはなぜか?
脳卒中患者は機能障害の影響により、十分なエネルギーや栄養素を摂取できないため、低栄養に陥りやすい。脳卒中患者には身体的および認知的な障害が起こることが多く、栄養状態はその改善に影響を及ぼす可能性がある。
調べたかったこと
栄養療法が脳卒中後の障害を軽減し、日常生活動作を改善するかどうかを調べたかった。
実施したこと
脳卒中患者に栄養療法を実施したすべてのランダム化比較対照試験を検索した。また、栄養療法による望ましくない影響という観点で安全性も評価した。研究結果を比較して要約し、研究方法や研究規模などに基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。
わかったこと
11,926人を対象とした52件の研究を特定した。急性期脳卒中患者(発症から14日以内)を対象とした研究が36件、亜急性期脳卒中患者(発症14日後から6ヵ月以内)を対象とした研究が10件、急性期および亜急性期脳卒中患者を対象とした研究が3件、慢性期脳卒中患者(発症から6ヵ月以降)を対象とした研究が3件であった。脳卒中のタイプは、虚血性脳卒中が23件、出血性脳卒中が3件、くも膜下出血(SAH)が3件、虚血性または出血性脳卒中(SAHを含む)が23件であった。このレビューでは、25種類の栄養療法を特定した。障害とADL(日常生活動作)を評価した研究はそれぞれ9件と17件であった。
経口でのエネルギーおよびタンパク質の補足という主要な介入については、6件の研究を特定した。
経口でのエネルギーおよびタンパク質の補足による栄養療法について、以下のことがわかった:
- 障害を軽減しない可能性がある。しかし、その証拠は不確実である。
- 日常生活動作を改善する可能性がある。しかし、その証拠は非常に不確実である。
経口でのエネルギーおよびタンパク質の補足を使用した栄養療法のその他の結果については、:
- 体重増加において栄養状態を改善する可能性がある。しかし、その証拠は非常に不確実である。
- あらゆる要因による死亡リスクを減少しない可能性がある。しかし、その証拠は不確実である。
- 下痢と高血糖(血液中の糖分(グルコース)が多すぎる状態)または低血糖(血液中の糖分(グルコース)が少なすぎる状態)の両方の発生率の増加と関連していた。しかし、その証拠は不確実である。
経口でのエネルギーやタンパク質の補足を使用した研究で、歩く速さやQOL(生活の質)について報告したものは見つからなかった。
エビデンスの限界
障害の軽減と日常生活動作の改善に関するエビデンスについては、以下の理由で確信が持てない:
- ほとんどの研究で、患者は自分が受けている介入を認識していた。
- 医療従事者と結果の評価者は、患者が受けている介入を認識していた。
- ADL(日常生活動作)を評価した研究のほとんどは、その方法論を十分に詳しく記述していなかった。
- 脳卒中のタイプ、発症からの期間、栄養療法開始時の栄養状態によって効果が異なる可能性があるが、研究数が少ないため、それらの違いを十分に評価することはできなかった。
このエビデンスの更新状況
このエビデンスは2024年2月19日現在のものである。
Sakai K, Niimi M, Momosaki R, Hoshino E, Yoneoka D, Nakayama E, Masuoka K, Maeda T, Takahashi N, Sakata N
1 month 2 weeks ago
要点
利用可能なエビデンスは、STAIをスクリーニングツールとして使用することを明確に支持していない:なぜなら、
-
STAIは、スクリーニングのために特別に開発されたものではなく、一般に認められたカットオフ値(閾値)は存在しない;
-
STAIは、不安障害のある人を特定できるだろうが、多くの不安障害のない人に誤ったレッテルを貼る可能性もある;
-
含まれる研究の質にはばらつきがあり、ほとんどが病院にいるような状況の人々を対象としているため、一般化は不確実である。
これらの限界を考慮すると、現在のところ、STAIの代わりに不安スクリーニングのために特別に開発されたより短い質問票を使用する方が理にかなっているように思われる。
なぜ不安障害の早期発見が重要なのか?
不安障害はよくあるが、診断されないことが多く、そのために治療が遅れ、生活の質(QOL)が低下することがある。スクリーニングは、特に自分が不安障害であることに気づいていない人の不安を早期に発見するのに役立つ可能性がある。しかし、検査は完璧ではない。もし検査で不安障害が見つからなければ(「偽陰性」)、タイムリーな治療の機会を逃してしまうかもしれない。スクリーニングでは、最終的な診断を下す前に再度確認する必要があるものの、実際は不安障害ではないのにその疑いがあるとレッテルを貼ること(「偽陽性」)は、不必要な心配や、さらなる検査による余分な医療機関の受診につながる可能性がある。
状態・特性不安検査(STAI)とは何か?
STAIは、不安を測定するために広く用いられている質問票であり、2種類の下位尺度がある。1つ目の下位尺度は、ある状況に対する一時的な不安感情を指す状態不安に関するものであり、2つ目の下位尺度は、時間や状況を超えて不安を経験しやすいという、その人の一般的傾向に関するものである。各パートは20問の質問から構成される。得点が高いほど不安レベルが高いことを示す。スクリーニングに使用される場合、閾値(「カットオフ」と呼ばれる)が適用され、そのレベル以上の得点を得た人は、不安の可能性についてさらなる評価を受けるよう紹介されることがある。STAIは、この目的のためにデザインされたものではないが、いくつかの研究でスクリーニングツールとして調査されている。一般に認められたカットオフ値は存在しないが、個々の研究では、状態不安は40点、特性不安は44点というカットオフ値を推奨している。
知りたかったこと
これまで、スクリーニングツールとしてのSTAIの性能は系統的レビューで検討されていなかった。STAIが成人の不安障害をどの程度正確に検出できるかを確かめたかった。
実施したこと
成人の不安障害の検出におけるSTAIの精度を調べたすべての研究を検索した。レビューに組み込むためには、STAIの得点と、不安の診断に最も正確な方法である構造化臨床面接の結果を比較していることを条件とした。次に、両方の下位尺度(STAI-SとSTAI-T)のすべての可能なカットオフ値を考慮し、STAIの全体的な精度を評価するために結果を組み合わせた。
わかったこと
11か国から12件の研究が含まれ、2,525人が参加した(475人が不安障害であることが判明した)。ほとんどの研究は、さまざまな特異的な持病を持つ人々を対象としていた。1件の研究では、病気ではない人(がん患者のパートナー)を対象にした。
STAIを1,000人の集団に実施し、そのうちの153人が未検出の不安障害であった場合、:
-
STAI-Sの合計スコアが40点以上の508人のうち、127人が不安障害(「真陽性」)であると正しく特定され、さらなる治療から利益を得る可能性がある。しかし、残りの381人は不安障害の疑いがあると誤って分類され(「偽陽性」)、不安障害の診断が不要であることを後で明らかにするために、さらなる評価を受けるよう紹介される可能性が高い。これはある人にとっては有益かもしれないが(たとえば、他の原因を探るため)、他の人にとっては不必要かもしれない。一方、カットオフ値以下の492人のうち、不安障害で潜在的に治療が必要な26人が見逃されることになる(「偽陰性」)。残りの466人は、不安がないと正しく判定される(「真陰性」)。
-
STAI-Tの合計得点が44点以上の463人のうち、124人が「真陽性」、339人が「偽陽性」となる。カットオフ値以下の537人のうち、29人の不安障害のある人が見逃され(「偽陰性」)、508人が「真陰性」となる。
エビデンスの限界
研究の質はさまざまで、ほとんどが病院のような状況で行われたものであるため、STAIが一般市民など他の集団でどのように機能するかについての理解は限られている。また、STAIはスクリーニングのために特別に開発されたものではないので、この目的のために結果を解釈するのは難しい。
結果が意味すること
現在のエビデンスでは、STAIが不安障害を検出するための信頼できるスクリーニング手段であるかどうかについては明確な答えは得られていない。この結果は主に専門的な臨床現場での成績を反映したものであり、STAIが他の集団でも同じように機能するかどうかは不明である。特定されたエビデンスが曖昧で限られていることから、不安のスクリーニングのために特別に開発されたより短いツールを検討する価値があるかもしれない。
エビデンスの更新状況
エビデンスは2024年5月現在のもので、2008年から2023年までに発表された研究が含まれている。
Dümmler D, Eck S, Hapfelmeier A, Fomenko A, Aktürk Z, Teusen C, von Schrottenberg V, Dawson S, Linde K, Schneider A
1 month 2 weeks ago
要点
がん患者の不眠症とその治療法
不眠症はがん患者によくある問題である。このような睡眠不足は実際に患者の日常生活に悪影響を及ぼし、心身の調子を悪くする。がん患者およびがんサバイバーの不眠症に対する現在の推奨治療法には、心理学的アプローチ(CBT-Iなど)、薬物療法(睡眠薬など)、その他の方法(身体運動など)がある。CBT-I(不眠症に対する標準的な会話療法)は最も有効な治療法であると考えられているが、訓練を受けた実践者の不足と保険の障壁により、多くのがん診療病院で広く利用できない。
知りたかったこと
不眠症の重症度、睡眠の質、有害事象、睡眠日誌パラメータ(入眠時刻、起床時刻、総睡眠時間、睡眠効率など)を改善するにあたって、鍼治療が、1)偽薬またはプラセボ対照(実際の鍼治療を模倣した「偽」の処置)、2)非活動対照(無治療または通常のケア)、3)他の治療(CBT-Iなど)よりも優れているかどうかを知りたかった。
実施したこと
がん患者の不眠症に対して、鍼治療を他の治療法と比較した研究を探した。研究結果を比較して要約し、研究方法や研究規模などに基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。
わかったこと
計402人が参加した3種類の比較と5件の研究を特定した。参加者のほとんどが乳がんの女性であった。
鍼治療は、偽鍼治療と比較すると、不眠症の重症度を軽減したり、睡眠の質を改善したりする効果はほとんどまたはまったくないかもしれないが、ある種の睡眠日誌パラメータにはわずかな改善をもたらす可能性がある。しかし、これらの結果については非常に不確かである。鍼治療は有害事象のリスクを増加させるかもしれないが、この結果は非常に不確実である。
鍼治療は、不眠症の重症度を軽減し、睡眠の質を高め、睡眠日誌のいくつかのパラメーターを改善するにあたって、非活動対照よりも効果が高い可能性があるものの、有害事象のリスクが高くなる可能性がある。しかし、これらの結果については非常に不確かである。
鍼治療とCBT-Iを比較した試験では、鍼治療はおそらく総睡眠時間を改善するが、不眠症の重症度、睡眠の質、入眠時間、睡眠効率を改善する効果は低い。有害事象への影響はほとんどまたはまったくないかもしれない。
エビデンスの限界
研究が小規模であったり、結果にばらつきがあったりしたため、ほとんどの調査結果には確信が持てない。今後の研究によって、この主題に対する理解が変わる可能性がある。さらに明確で信頼性の高い答えを出すためには、もっと包括的な研究が必要である。
本レビューの更新状況
このエビデンスは2024年1月現在のものである。
Ma Q, Liu C, Zhao G, Guo S, Li H, Zhang B, Li B, Cai Z
1 month 3 weeks ago
主な結果
-
陣痛が始まり、子宮口が完全に開いている状態(全開大)になったにもかかわらず、胎児の頭が間違った方向(母体の腹側または側面)を向いている場合、胎児の頭を手で回して(用手回旋)、通常の向きである母体の背中側を向くようにすることが、帝王切開術や吸引分娩、鉗子分娩の必要性を減らすのに役立つかどうかは、現在のところ不明である。
-
用手回旋が効果的で安全かどうかをよりよく理解するためには、より多くの十分にデザインされた研究が必要である。
用手回旋とは?
用手回旋とは、出産中に医師や助産師が手や指を使って胎児の頭を通常の向き(母体の背中側)に向けることで、通常は子宮口が完全に開いてから行う。
なぜ、用手回旋が、出産中に胎児の頭が通常の向きでない女性にとって重要なのか?
出産中に胎児の頭が通常の向きでない場合、つまり、母体の背中側(前方後頭位)ではなく、母体の腹側(後方後頭位)や側面(低在縦定位)を向いていると、出産がうまく進まなかったり、母体からの出血、骨盤底筋群の重度な外傷などの合併症を引き起こしたり、吸引分娩や鉗子分娩、帝王切開術が必要になったりするリスクが高まる。胎児の頭を母体の背中側に向けることができれば、こうした介入を避けることができる。
知りたかったこと
私たちは、陣痛中に胎児の頭が通常の向きでない女性において、用手回旋が、何もしない(通常のケア)よりも、器械分娩(吸引分娩や鉗子分娩)や帝王切開術による出産を減らせるかどうかを調べたかった。
母体死亡や周産期死亡、出産時の重篤な会陰裂傷(第3度または第4度)、出産後の重篤な出血(500mL以上の出血)を含む他の転帰に対する用手回旋の効果に関心があった。
実施したこと
用手回旋が、偽の手技や通常のケアと比べて、母児にとって有益か有害かを調べた研究を探した。その結果を比べてまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。
わかったこと
1,002人の妊婦とその児を対象とした6件の研究を見つけた。すべての研究は、高所得国で行われていた。女性は全員、正期産(妊娠37週以上)で、子宮口は完全に開いており、大多数は硬膜外麻酔による鎮痛を受けていた。
主な結果
用手回旋を行った場合、行わなかった場合と比べて、器械分娩や帝王切開術の全体的な割合にほとんど差がないかもしれない。いずれの群でも、妊産婦死亡や周産期死亡はなかった。
用手回旋では、帝王切開術や器械分娩の可能性は減らないかもしれない。また、第3度または第4度の会陰裂傷や出産後の重篤な出血などの合併症を経験した女性の数にはほとんど差がなかった。
もう1件の研究が進行中である(46人の女性が登録中)。しかし、意味のある違いがわかるためには、もっと大規模な研究が必要であろう。今後、低・中所得国で行われる研究も必要である。
エビデンスの限界
得られたエビデンスには限界がある。その主な理由は、研究デザインに関する懸念(具体的には、6件の研究のうち3件で、女性は自分がどの治療を受けているかを知っていた)と、研究に組み入れられた女性の数が全体的に少なかったことである。
このエビデンスの更新状況
エビデンスは2024年3月現在のものである。
Phipps H, Osborn DA, Zhang R, Cooper C, Hyett JA, de Vries BS
1 month 3 weeks ago
要点
-
心血管疾患(すなわち、心臓や血管に異常が起きる疾患)がある人が低用量コルヒチンを6ヵ月以上服用すると、重い副作用のリスクを高めずに心筋梗塞(心臓発作)と脳卒中のリスクを減らせる。
-
しかし、低用量コルヒチンを服用しても、すべての原因による死亡リスクや心臓疾患を原因とする死亡リスクは減らず、心臓の血管を広げる治療を必要とする人の数にも影響しない。
-
コルヒチンの服用によって消化器系の有害事象(下痢、吐き気など)のリスクが高まるが、通常こうした症状は軽く、長引かない。
背景
心血管疾患(心臓や血管に異常が起きる疾患)は、しばしば全身の軽い炎症が原因で起こり、主要な有害(好ましくない)心血管イベント(心臓発作、脳卒中、または死亡など)を繰り返し引き起こすようになる。コルヒチンは、有用性が確立し、容易に入手できる安価な経口抗炎症薬であるため、心血管イベントの再発リスクが高い人にとって有望な追加の治療薬となっている。
知りたかったこと
近年、心臓発作や脳卒中などさらなる心血管イベントの予防(二次予防)を目的として初回の発作後に行う低用量コルヒチン療法の利益と害を調べるために、「ランダム化比較試験」と呼ばれる研究が数多く実施された。 このレビューの狙いは、すでに心血管疾患がある成人または最近心血管イベントが起きた成人が6ヵ月以上コルヒチンを使用することの利益と害について、系統的な評価を提供することである。
実施したこと
心血管疾患がある人における低用量コルヒチンの効果を6ヵ月以上にわたってプラセボ(偽薬)治療または無治療と比較して調べたすべての研究を探した。該当するすべての研究から情報を系統的に抽出すると共に、研究がどのように実施されたかを評価した。そこで、これらの研究結果を統合し、エビデンス(科学的根拠)の信頼性を判断した。
このレビューの主なアウトカム(評価項目)は、あらゆる原因による死亡(総死亡率)、心臓発作(心筋梗塞)、脳卒中、心臓の血管を広げる治療(冠動脈血行再建術)、心血管疾患による死亡(心血管疾患死亡率)、生活の質 (QOL)、重大な有害事象(副作用)、消化器系(胃腸)の有害事象である。
わかったこと
心血管疾患がある患者22,983人を対象とし、低用量コルヒチン療法の利益と害を調べた12件の研究が見つかった。
低用量コルヒチン療法は深刻な有害事象のリスクを高めずに心筋梗塞と脳卒中のリスクを減らすことが、確実性の高いエビデンスによって示された。ただし、コルヒチンは、軽度で一過性とはいえ、消化器系の副作用のリスクの高まりと結びついている。また、エビデンスから、恐らくコルヒチンには死亡リスクや冠動脈血行再建術が必要になるリスクを抑える効果はないことがうかがわれる。生活の質 (QOL)と入院に関する効果は、見つかった研究ではこれらの項目を調べていないため、不明である。
エビデンスの限界は何か?
低用量コルヒチンにより心臓発作と脳卒中のリスクが減るという結果の信頼性は高い。他の結果の信頼性レベルは中等度であるため、今後の研究では異なる結果が出る可能性がある。死亡率と生活の質 (QOL)に関する長期的な効果を調査するには、さらなる研究が必要である。これらは、より長期にわたり、より多くの人々を対象に行われる研究でなければならない。
このレビューの更新状況
このレビューは、2025年2月18日までに検索された医学文献に基づいている。
Ebrahimi F, Ebrahimi R, Beer M, Schönenberger CManuel, Ewald H, Briel M, Janiaud P, Hirt J, Hemkens LG
Checked
23 minutes 13 seconds ago
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