Latest Japanese Reviews

ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か?

2 years 2 months ago
ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か? ドライアイとは何か? ドライアイとは、涙が目を十分に潤すことができないときに起こる、よく見られる症状である。さまざまな理由により、涙の量が不十分になったり不安定になったりする。例えば、涙の分泌量が減少したり、涙の質が悪くなったりする場合に、ドライアイになることがある。涙の量が不安定になることで、目の表面に炎症が起きたり、傷がついたりする。ドライアイの症状は不快であり、しばしばチクチクする、あるいは焼け付くような痛みを感じたり、時には視界がぼやけることもある。 ドライアイの治療方法は? ドライアイには、多くの治療法がある。涙の水層が相対的に不足しているために起こるドライアイに対しては、人工涙液、分泌刺激薬、血清点眼、涙点プラグ(涙の出口に栓をする)などの治療法がある。涙の油層の分泌が阻害されたドライアイに対する治療法としては、抗菌薬、温湿布、あるいは副腎皮質ホルモンやシクロスポリンAなどの抗炎症薬を使用する方法がある。副腎皮質ステロイドの点眼薬は、炎症を抑え、短期間に症状を緩和することを目的に使用されるが、長期的な使用により、眼圧の上昇あるいは白内障が発生することが懸念されている。 何を調査したのか? 副腎皮質ステロイド点眼薬が、単独使用、または他の薬との併用により、ドライアイの症状や、ドライアイの診断あるい...

炎症の検査は、医師が呼吸器感染症に抗生物質を使うかどうかの判断に役立つのか?

2 years 2 months ago
炎症の検査は、医師が呼吸器感染症に抗生物質を使うかどうかの判断に役立つのか? 要点 1.呼吸器感染症の症状で受診した患者に対して、診察時に医師がC反応性蛋白(CRP)の迅速検査(ポイントオブケア検査)を行うと、患者の回復に影響を与えることなく、抗生物質の処方をする患者の数をおそらく減らすことができる。 2.プロカルシトニンのポイントオブケア検査が、抗生物質の使用や患者の回復に影響を与えるかどうかはわからない。 3.今後は、小児、免疫系の疾患を持つ人、併存疾患(現在かかっている別の疾患)を持つ80歳以上の人に焦点を当てた研究を行う必要がある。抗生物質処方の指針となる、プロカルシトニンや新しいバイオマーカーを評価する研究が推奨される。 ポイントオブケア検査とは何か? ポイントオブケア検査では、診察時に数滴の血液を採取するだけで、3~20分以内に結果が出る。そのため、採血した血液を検査室に運ぶ必要がなく、診察の際に結果をすぐに治療法の選択に役立てることができる。炎症に反応して体内で作られる血液中のさまざまな物質を検出することができるポイントオブケア検査がある。このような物質をバイオマーカーと呼ぶ。 炎症とバイオマーカーとは何か? 炎症とは、細菌やウイルス感染などの傷害に対する反応である。体は、炎症に反応して自然に物質を作り出すが、それは血液中で検出され、バイオマーカーと呼ばれている。バ...

乗り物酔いの予防および治療のための抗ヒスタミン薬

2 years 2 months ago
乗り物酔いの予防および治療のための抗ヒスタミン薬 本レビューの目的は何か? 乗り物酔いは、船酔い、車酔いなどとも呼ばれ、一連の症状(通常は吐き気と嘔吐)を伴う。これらの症状は、現実の動き(例えば、車の運転や船に乗っているとき)、または仮想の動き(例えば、仮想現実シミュレーション)や動く視覚環境(例えば、動いている電車の窓から外を見ているとき)にさらされたときの動きの錯覚に反応して、無意識的に体が動くことによって引き起こされる。抗ヒスタミン薬は、乗り物酔いの予防または治療のために一般的に用いられてきた薬の一つである。この研究の目的は、抗ヒスタミン薬が乗り物酔いに有効であるかどうかを調査することである。 要点 乗り物酔いを起こしやすい成人において、抗ヒスタミン薬は、プラセボ(偽の薬)と比較して、自然に発生する動きのある状況下(船や飛行機など)で、乗り物酔いを起こすリスクを低減する可能性があることがわかった。また、プラセボと比較した場合、抗ヒスタミン薬は眠気を起こしやすいことがわかった。なお、既に起こってしまった乗り物酔いの治療に抗ヒスタミン薬が有効かどうかを調査した研究はなく、18歳未満の小児等に対する影響についてはほとんど情報がなかった。その他、調査を行ったすべての知見について、他の薬を使用した場合や薬を使用しない処置を行った場合と比較した抗ヒスタミン薬の真の効果、他の副作用の有無...

変形性股関節症または変形性膝関節症に対する運動療法と並行して行う追加の治療

2 years 2 months ago
変形性股関節症または変形性膝関節症に対する運動療法と並行して行う追加の治療 本レビューの目的 変形性関節症は、股関節や膝関節によくみられる慢性の変性疾患であり、痛みを生じ、歩行などの日常生活に支障をきたす。陸上での運動療法とは、水中ではなく陸上で行われる運動療法のことで、治療の第一選択とされる。このレビューの目的は、陸上での運動療法に別の治療を追加することによって、変形性股関節症または膝関節症を抱える人の痛みや身体機能、生活の質(QOL)、患者自身が思う全体的な変化、レントゲン上の所見が改善するかどうかを明らかにすることにある。追加の治療には、徒手療法(身体の上に軽く手をあてるもの)、心理療法、食事療法、物理療法(患部を温めたり、冷やしたり、神経を刺激したり、超音波やレーザーをあてるものなど)や鍼治療などがある。陸上での運動療法に別の治療を追加した場合と、1)陸上での運動療法に偽の治療を加えた場合を比べた研究、もしくは 2)陸上での運動療法のみを比べた研究をレビューの対象とした。 検索日 このシステマティックレビューは2021年6月10日現在のものである。 わかったこと ランダム化比較試験 62件(24か国、6,508人の参加者、ほとんどが女性)が見つかった。平均年齢は52~83歳、症状の継続期間は9か月から12年であった。変形性膝関節症の人を対象とした研究が59件、変形性股関節...

集団的リーダーシップは医療従事者の行動、患者の健康、および職員の幸福度を向上させるか?

2 years 2 months ago
集団的リーダーシップは医療従事者の行動、患者の健康、および職員の幸福度を向上させるか? 要点 集団的リーダーシップには、複数の医療従事者が観点や知識を共有することが含まれる。利用可能なエビデンスからは、集団的リーダーシップにより、医療従事者の行動、患者の健康、または職員の幸福度に大きな違いをもたらされるかどうかについての確信性は得られなかった。また、研究の結果に対する信頼性は、「中等度」から「非常に低い」であり、研究の質が低く、数も少なかったために大きく制限されていた。 何を調べたかったのか? 本レビューの目的は、集権的で階層的なリーダーシップとは対照的な、集団的リーダーシップの経験が、医療従事者としての専門的な行動、患者の医療、職員の幸福度を向上させるかどうかを調査することである。そのために、集団的リーダーシップと集権的リーダーシップを比較した研究について検索が行われた。 何を行ったのか? 医療従事者間での共同意思決定と意思疎通を特徴とする集団的リーダーシップの介入に関連したすべての研究について検索し、解析を行った。 何が見つかったのか? 合計955人の参加者を対象とした、3件の研究が見つかった。これらの研究は、カナダ、イラン、米国の病院で実施されていた。集団的リーダーシップの介入は、リーダーシップを改善し(合計955人の参加者を対象とした3件の研究より)、加えてチームワークを...

早発卵巣不全の女性には、どのホルモン療法がより効果的か?

2 years 2 months ago
早発卵巣不全の女性には、どのホルモン療法がより効果的か? 要点 さまざまなホルモン療法を比較検討した研究は、3つの異なる内容で実施されたものが3件しか見つからなかった。 これらの小規模な研究のデータに基づいた結果、明確な結論を出すことはできなかった。 早発卵巣不全の女性が健康な妊娠をする可能性を高めるために、最適なホルモン療法を調べることを目的とした、適切に実施され、十分に大規模な試験が必要である。 早発卵巣不全とは何か? 卵巣は、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなどのホルモンに反応し、またこれらのホルモンを生成する性腺であり、左右に一対ある。骨、心臓、生殖に関する健康にとって、重要な役割を担っている。早発卵巣不全は、卵巣が正常なホルモンを分泌できなくなる状態で、女性の約1%が罹患する。その結果、骨折や心臓病、不妊症のリスクが高まる。16歳までに初経(初潮)を迎えなかったり、40歳までに6ヶ月以上月経(生理)が来なかったりすると、早発卵巣不全と診断されることがある。また、卵巣の働きに関係する各種ホルモンの値に異常があるかどうかを確認するために、血液検査が必要になる。 早発卵巣不全はどのように治療するのか? 早発卵巣不全は、一般的に、正常に働いている卵巣から分泌されるホルモンを模倣したホルモンを用いたホルモン療法で治療される。治療の目的は、骨、心臓、血管および生殖機能へ...

性的虐待と性暴力に対する介入に関するサバイバー、家族、専門家の体験談

2 years 2 months ago
性的虐待と性暴力に対する介入に関するサバイバー、家族、専門家の体験談 このレビューの目的は何か? このレビューの目的は、性的虐待や性暴力のサバイバーを支援し、健康と幸福を向上させるための介入を受けたサバイバーの経験、およびその家族やそのような介入を提供した専門家の経験を探ることであった。そのために、介入に対する見解や経験を記述した37件の研究を分析した。 要点 - サバイバー、その家族、専門家は、介入が行われる組織の環境(例えば、その場所や組織内の全スタッフのアプローチ)が、介入の経験やそこから得られる利益にとって非常に重要であることを強調していた。 - 参加者は、セラピーや介入によって、心身の健康、気分、対人関係、トラウマの理解、生活の幅広い領域で再活動できるようになったなど、ポジティブな結果(評価項目)を得たと話した。 - 参加者は、介入の恩恵を最もよく受けることができる介入とその設定の特徴は、しばしば障害となりうる特徴であると説明した。例えば、セラピストとの関係がオープンで温かいものであれば利益となるが、そのような関係が実現できない場合は障害となる。 - サバイバーのサブグループに関連する介入(例:信仰に基づく介入)、およびすべてのサバイバー(例:男性、障害者、その他の少数民族出身のサバイバー)に包摂されているという感覚を与える程度も、各サバイバーがそれらから最大の利益を得...

心臓と血管(心血管)の病気を予防するための慢性的歯肉炎症(歯周炎)の治療

2 years 2 months ago
心臓と血管(心血管)の病気を予防するための慢性的歯肉炎症(歯周炎)の治療 レビューの疑問 このレビューの主な疑問は、慢性歯周炎(歯肉炎症)に対する治療により、心血管(心臓と血管)の病気を予防または管理できるかどうかということであった。 背景 慢性歯周炎は歯ぐきの腫れや痛みを引き起こし、歯を支えている歯槽骨の喪失をも引き起こす。「慢性」とは、治療がなされないで一定期間病気が続いていることを意味する言葉である。「慢性歯周炎」という用語は、歯肉疾患の異なる病型を分類する新体系がつくられ廃止されつつあるが、本レビューに含まれた研究は古い体系に基づており、この用語を使用した。 歯周炎と心血管病とには関連があるかもしれない。慢性歯周炎の治療は細菌や感染を除去し、炎症を抑え、心臓と血管の病気の発生や再発を防ぐことができるかもしれないと考えられている。歯周病治療が死亡を防いだり、脳卒中や心臓発作などの心血管「発作」の可能性を低下することにつながるかどうかを明らかにしたかった。 研究の特徴 主要な電子データベースを利用して、2021年11月までに発表された「無作為化比較試験」として知られる研究を検索した。この種類の研究では、参加者は無作為に実験群と対照群に割り付けられる。実験群の人々には試験される治療が行われ、対照群の人々には、通常は治療を受けないか、プラセボ(偽の治療)、別の種類の治療、または定...

抗精神病薬と併用して投与される薬剤は統合失調症患者における体重増加の予防にどの程度有効か?

2 years 2 months ago
抗精神病薬と併用して投与される薬剤は統合失調症患者における体重増加の予防にどの程度有効か? 要点 ‐ メトホルミンは抗精神病薬による体重増加の予防に有効である可能性がある ‐ H2受容体拮抗薬とモノアミン調節薬は、抗精神病薬による体重増加の予防にわずかに有効である可能性がある ‐ 今後の研究では、より多くの人を対象とし、より長期間の評価を行う必要がある。 抗精神病薬とは何か? 抗精神病薬とは、幻覚、妄想、興奮などの精神疾患の症状を治療するために用いられる薬で、統合失調症の患者の治療によく使用される。抗精神病薬の例として、ハロペリドール(ハルドール)、クロルプロマジン(ソラジン)、オランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスパダール)などが挙げられる。 統合失調症と体重増加 統合失調症の患者は一般人より2倍太りやすいと言われているが、これはおそらく食生活の乱れや運動不足が原因と思われる。体重増加は、心疾患、脳卒中、糖尿病などにつながる可能性がある。 残念ながら、体重増加は抗精神病薬の好ましくない作用でもある。統合失調症の患者には、この体重増加を防ぐために、抗精神病薬と一緒に薬(追加薬)が投与されることがある。これらの薬には空腹感を抑えたり、満腹感を得やすくさせたりする作用がある。追加薬として通常使用されるのは、糖尿病の治療薬であるメトホルミンや抗うつ薬であるフルオキセチンなど、他...

腎不全患者における動静脈瘻成熟に上肢運動プログラムは有効か?

2 years 2 months ago
腎不全患者における動静脈瘻成熟に上肢運動プログラムは有効か? 問題は何か? 動静脈瘻(AVF)は動脈と静脈を特別に連結したもので、血液透析の際に繰り返し穿刺可能な丈夫な血管を作成する。一度作成すると、通常6週間から8週間で発達(成熟)し、使用可能となる。成熟により連結した静脈は太くなり、血流が増加することで血管の壁はより厚く丈夫になる。運動プログラムは、AVFとその機能を成熟させるまでの時間を短縮する可能性があるが、運動プログラムの種類や運動プログラムを実施する時期(AVFの作成前か後か)についてはまだ不明である。 本レビューで実施したこと 腎不全患者でAVF成熟に上肢運動の活用が記載された研究を見つけ出すため文献検索を行った。研究から情報を集め、介入が有用であるかどうかを特定するために情報を統合した。観察された効果がどの程度確かなものであるか判断するために、介入の質を調べた。 何が分かったか? 579人の患者を含んだ9件の研究が見つかった。2件の研究は、AVF作成前に行った運動を検討し、7件の研究では、AVF作成後に行った運動を検討していた。残念ながら、AVF作成後に運動を実施した7件の研究しか分析できなかった。運動プログラムの種類として、等張性(筋肉に一定の重量をかけながら関節を動かす運動)と等尺性(周囲の関節を動かすことなく筋肉を収縮させる運動)が使用されていた。 等張性運...

自閉スペクトラム症と診断された就学前の子どものうち、1年以上経っても診断が継続するのはどの程度の割合なのか?

2 years 2 months ago
自閉スペクトラム症と診断された就学前の子どものうち、1年以上経っても診断が継続するのはどの程度の割合なのか? 要点 - 研究において自閉症と診断された就学前の子どもの10人中9人は、1年以上経っても診断基準を満たし続ける可能性がある。 - 確実なエビデンスが不足しているため、今回の結果を含まれた研究の環境以外の環境に適用することはおそらくできないであろうし、また、診断が継続されるかどうかに影響するような、子どもや調査研究の要因を特定することはできない。 - 今後の研究としては、臨床の場において、ある子どもが長期間にわたって自閉症診断を維持し得るかどうか、また、他の要因があれば、どのような要因がその診断を維持する可能性を変えるかを探る頑健な研究の設計に焦点を当てる必要がある。 自閉症とは? 自閉症(自閉スペクトラム症)は、一般的に生涯続くと考えられている神経発達障害である。社会的なコミュニケーションの難しさや、興味の制限、反復的な行動などが特徴である。これらの領域がどの程度の課題であるかは、個人によって大きく異なる。 自閉症はどのように診断されるのか? 自閉症は、標準化された一連の診断基準を満たすかどうかを評価することで診断される。 子どもの場合、自閉症の診断には、小児科医、児童精神科医、言語聴覚士、作業療法士、心理士が関与することがある。これらの医療専門家の1人または複数が、子ど...

脳卒中患者の日常生活動作に対する反復末梢磁気刺激(repetitive peripheral magnetic stimulation:rPMS)

2 years 2 months ago
脳卒中患者の日常生活動作に対する反復末梢磁気刺激(repetitive peripheral magnetic stimulation:rPMS) レビューの論点 反復末梢磁気刺激(repetitive peripheral magnetic stimulation:rPMS)は脳卒中後の人の日常活動を向上させるのに有効であるか? 背景 脳卒中は、身体的障害の最も一般的な原因であり、脳の一部への血液供給が遮断されたり、減少したりすることで起こる。脳卒中には、虚血性(血流不足によるもの)と出血性(出血によるもの)の2種類があることが知られている。脳卒中後の上下肢麻痺は、食事、入浴、更衣、歩行などの日常生活動作に問題を生じさせる。脳卒中後の人は、しばしば上下肢のトレーニング、日常動作に重点を置いた運動、適切な歩行補助用具(杖など)といった身体のリハビリテーションが必要である。しかし、有用な治療法は現在限られている。反復末梢磁気刺激(rPMS)は、運動神経の末端枝を刺激して筋収縮を起こすことにより、脳や神経の損傷で筋力が低下した人の動きを改善する非侵襲的治療(身体に器具を挿入しない治療)である。rPMSは筋肉の深層まで浸透し、痛みがほとんどなく、副作用がほとんどないのが特徴である。 検索日 この検索は2021年10月5日現在のものである。 研究の特性 本レビューは2019年に報告された...

多嚢胞性卵巣症候群の女性における不妊治療で用いるアロマターゼ阻害薬

2 years 2 months ago
多嚢胞性卵巣症候群の女性における不妊治療で用いるアロマターゼ阻害薬 レビューの論点:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による不妊症の女性に用いるアロマターゼ阻害薬に関するエビデンスを検討した。 背景:PCOSは、希発月経や無月経の最もよく見られる原因であり、全世界の女性の約5%~20%が罹患していると言われている。それはしばしば排卵障害による不妊症の原因となる。アロマターゼ阻害薬は、排卵を促すために用いられる。2001年頃以降、アロマターゼ阻害剤であるレトロゾールの不妊治療における効果についての臨床試験が行われているが、最も一般的に使用されるクロミフェンクエン酸塩と比較して少なくとも同等の効果があるかどうかについて、結論は一致していない。 試験の特徴:レビューには、参加者が無作為に介入群(レトロゾール)か対照群(クロミフェンクエン酸塩など)に割り付けられた臨床試験を組み入れた。これらの試験はランダム化比較試験と呼ばれている。このレビューには、6,522人の女性を対象とした41件のランダム化比較試験が含まれる。すべての試験で、用いられたアロマターゼ阻害薬はレトロゾールであった。対照群では、26件のランダム化比較試験でクロミフェンクエン酸塩が用いられ、4件のランダム化比較試験では腹腔鏡下卵巣開孔術(排卵を促すために行われる外科的処置)が行われた。他の治療法を行う試験もいくつかあった。 主...

デクスラゾキサン(dexrazoxane)はアントラサイクリン(anthracyclines)を使用している成人および小児のがん患者の心臓障害を予防または軽減できるか?

2 years 2 months ago
デクスラゾキサン(dexrazoxane)はアントラサイクリン(anthracyclines)を使用している成人および小児のがん患者の心臓障害を予防または軽減できるか? レビューの論点 アントラサイクリン系化学療法を受けた成人および小児のがん患者における心臓障害の予防または軽減に対するデクスラゾキサンの有用性に関するエビデンス(科学的根拠)を評価した。また、心臓障害以外にも、抗腫瘍効果(すなわち生存率および奏効率)、生活の質および有害作用(治療による望ましくないまたは有害な影響)に関してデクスラゾキサンの潜在的効果を検証した。 背景 アントラサイクリンはさまざまな種類のがんに使用できる、有効な化学療法剤である。しかし、累積投与量(時間とともに投与された総量)に応じて心臓障害(心毒性)のリスクがある。心毒性は無症候性心機能不全(心機能が制限されたことを示す結果が検査により得られているものの、患者に症状が認められない)を引き起こす場合があり、この状態は症候性心不全(患者に症状が認められる)へと進行する可能性がある。デクスラゾキサンは、この心臓障害を予防または軽減する可能性がある医薬品である。 本レビューは以前報告されたコクランレビューの3回目のアップデート版である。前回のレビューでは心臓保護剤(心臓を保護する薬剤)の候補となり得るすべての薬剤を検討したが、これを分割し、本レビューでは...

成人と小児の喘息発作において吸入ステロイドを増量した場合と通常の用量で続けた場合の治療効果の比較

2 years 2 months ago
成人と小児の喘息発作において吸入ステロイドを増量した場合と通常の用量で続けた場合の治療効果の比較 要点 喘息発作が起きた当初に一回量が通常の用量よりも多いステロイド薬吸入器を使用するという行動計画に従っても、おそらく患者は(増量しない場合と)同様に症状が悪化して経口ステロイド薬が必要になる可能性がある。他の有益性と有害性については確かではないが、誰の吸入量が増やされたか参加者にも治験実施者にもわからないように「盲検化された吸入器」を使ったどの研究においても、軽度または中等度喘息患者の吸入量を増やすことによる有益性は示されなかった。なお、盲検化された吸入器が用いられなかったために本レビューの対象から除外された最近の研究で、コントロール不良の喘息につき、より好ましい結果が得られたことは留意すべきである。 喘息とは? 喘息は、よくある慢性の肺の病気で、咳、息切れ、喘鳴などを引き起こす。喘息患者はしばしば、増悪または「発作」と呼ばれる短期的な症状悪化に見舞われるが、これは中等度のこともあれば、生命を脅かすこともある。 これが喘息患者にとって重要なのはなぜか 喘息患者にとって喘息発作は怖いもので、しばしば自宅や病院での応急手当てが必要となる。どうしたら初期的な徴候が出た時点で喘息の発作をよりよく抑えられるかを知ることは、経口ステロイド薬や病院での救急治療が必要となる事態を避けるために重要で...

肥厚性瘢痕やケロイドに対するレーザー治療

2 years 2 months ago
肥厚性瘢痕やケロイドに対するレーザー治療 このレビューでは何が評価されたのか? 肥厚性瘢痕およびケロイドとは、傷口が正しく治癒しない場合に形成される凹凸のある瘢痕である。これらの瘢痕は変色したり、赤くなることがあり、また痛みやかゆみを引き起こすこともある。治療法には、シリコーンゲルやステロイドを用いた方法など、さまざまなものがある。 レーザー治療は、これらの瘢痕に対する新たな治療方法となる可能性がある。レーザー治療では、皮膚に強力な光線を照射することで、損傷した組織を破壊することができる。患者の皮膚の性状や瘢痕の性質に応じて、さまざまな種類のレーザー治療が用いられる。レーザー治療は高価で、また有害作用を起こす可能性もあるため、安全かつ効果的であるかどうかを評価することが重要である。 このレビューの目的は何か? このレビューの目的は、レーザー治療が肥厚性瘢痕やケロイドに対し、効果的な治療法であるかどうかを調査することである。この疑問を解決するために、コクランの研究者は関連したすべての研究を収集、分析した結果、15件のランダム化比較試験(RCT)が見つかった。 このレビューの主な結果は? 1999年から2019年にかけて発表された15件の研究が対象とされ、小児および成人の男女、合計604人の参加者が対象となった。それぞれの研究規模は小さく(10人から120人の参加者数)、被験者の観察...

境界性パーソナリティ障害の人への危機介入

2 years 2 months ago
境界性パーソナリティ障害の人への危機介入 境界性パーソナリティ障害とは? 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、一般集団の約2%が罹患する複雑で重度の精神障害である。BPDと診断された人の多くは、人間関係が不安定で、つらい急激な感情の変化があり、頻繁に危機的状況に陥る。このような危機は、薬物やアルコールの使用量が増えたり、医療専門家との接触が減ったり、自傷行為に走ることにつながりかねず、命にかかわることもあるため、重要な時期である。 知りたかったこと 現在までのところ、BPDと診断された人々が急性期の危機に直面しているときに、何が助けになるのか、ほとんどわかっていない。このレビューでは、ランダム化比較試験(一部の参加者(介入群)が実験的な治療を受けるように無作為に割り当てられ、他の参加者(対照群)は治療を一切受けないか、ダミー治療(プラセボ)または通常の治療を受けるように無作為に割り当てられる)のエビデンス(科学的根拠)を調べることによって、BPDと診断された人々に対して危機介入が有効であるかどうかを見極めたいと考えた。 わかったこと 医学データベースを検索したところ、この問題を扱った2件の研究が見つかった。 1件の研究では、介入群は共同危機管理計画(将来の危機管理のための治療に関する本人の希望を説明した文書で、危機の際に携帯して参照できる)を立てていた。この文書は、元気回復行動...

歯槽骨炎(ドライソケット)に対する予防および治療の方法にはどのようなものがあるか?

2 years 2 months ago
歯槽骨炎(ドライソケット)に対する予防および治療の方法にはどのようなものがあるか? 要点 ・抜歯前、または抜歯後24時間以内におけるクロルヘキシジンの洗口液によるうがいにより、ドライソケットを予防できる可能性がある。 ・抜歯直後にクロルヘキシジンゲルを抜歯窩(歯を抜いた後の穴)に直接注入することにより、ドライソケットを予防できる可能性がある。 ・クロルヘキシジンの洗口液には軽度の有害作用があるが、抜歯窩用のクロルヘキシジンゲルには有害作用は認められなかった。 ・Alvogyl(訳者注:ドライソケット治療用の製剤。翻訳時、日本未販売)は、酸化亜鉛ユージノールよりもドライソケットの痛みを軽減する作用が強いが、そのエビデンスは非常に不確実である。 ・Alvogylには、有害作用は認められなかった。 ・今後のさらなる研究により、エビデンスを強化し、ドライソケットを予防および治療するための最適な方法を調査していく必要がある。 ドライソケットとは何か? ドライソケットとは、歯を抜いた後に時々発生する痛みを伴う症状であり、下の智歯(親知らず)を抜いた後に起こりやすいと言われている。 ドライソケットの原因は何か? 歯を抜いた後に、抜歯窩の底にできる血餅(血が固まったもの)の一部または全部が失われることと関連していると考えられている。 ドライソケットを予防する方法は? ドライソケットの予防法として...

ギャンブル依存症の治療のための薬物療法

2 years 3 months ago
ギャンブル依存症の治療のための薬物療法 背景 ギャンブルの問題は、ギャンブル依存症の人、その家族・友人、そして地域社会に深刻な影響を与える可能性がある。ギャンブル依存症の患者の治療にはさまざまな薬剤が使用されているが、実際にどの薬剤を使用すべきかを示すエビデンスの質の高いレビューはほとんどない。 論点 異なる種類の薬剤が、無治療(プラセボ、またはダミー治療)と比較して、ギャンブル症状の軽減に有効であるかどうかを調査した。 研究の特徴 2022年1月以前に発表されたランダム化比較試験(参加者が2つ以上の治療法のいずれかに無作為に割り付けられた治療の有効性を評価するためのゴールドスタンダードである試験)を対象とした。17件の研究をレビューに含め、合計1,193人の参加者を得た。これらの研究では、抗うつ薬(うつ病の予防や治療に用いられる薬)、オピオイド拮抗薬(鎮痛剤やヘロインなどのオピオイドの作用を逆転させてブロックする薬;例.ナルトレキソン、ナルメフェンなど)、気分安定薬(ハイ(躁)状態やロー(鬱)状態を治療・予防する薬)、非定型抗精神病薬(統合失調症の治療や他の精神疾患の治療に用いられる薬)を互いに比較したり、無治療対照群(すなわちプラセボ)と比較していた。ギャンブル症状の重症度、ギャンブルへの支出、ギャンブルの頻度、うつ症状、不安症状、機能障害(病気による制限)、レスポンダー状態...

ニルマトレルビルとリトナビルの併用は新型コロナウイルス感染症の治療または予防に有効か

2 years 3 months ago
ニルマトレルビルとリトナビルの併用は新型コロナウイルス感染症の治療または予防に有効か 要点 ニルマトレルビルとリトナビルの併用(販売名パキロビッド®パック、2種類の錠剤1日分が1枚のシートになっているパック製剤)は、2019年に始まった新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の治療として評価されている。 ニルマトレルビルとリトナビルの併用は、投与後28日以内の入院の必要性または死亡により評価した場合、患者の状態を改善し、死亡率を減少させる可能性がある。 データは、ワクチンの接種をしておらず、疾患の進行リスクが高い患者で、症状発現後5日以内に治療が開始された患者のデータしかなかった。 検索の結果、進行中の研究が8件見つかった。今後、毎月検索結果を更新していく予定である。 ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド®)について ニルマトレルビルとリトナビルの併用(パキロビッド®)は、SARS-CoV-2ウイルスによる感染症(COVID‐19)を治療するために開発された新しい薬であり、無症状または軽症の患者が重症化するのを防ぐことを目的としている。リトナビルはニルマトレルビルの効果を高めるが、他の多くの薬剤と相互作用を起こし、副作用を増加させる可能性がある。 知りたかったこと ニルマトレルビルとリトナビルの併用がCOVID-19患者の死亡率や症状、感染期間を減少させるかどうか...
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2 hours 46 minutes ago
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