Latest Japanese Reviews

透析を必要とする慢性腎臓病患者に対するカルニチン補充療法の効果

1 year 4 months ago
透析を必要とする慢性腎臓病患者に対するカルニチン補充療法の効果 レビューの論点 カルニチン欠乏症は、透析を必要とする慢性腎臓病(CKD)患者にみられる重要な問題である。透析に伴うカルニチン欠乏によって、透析中の症状(例:筋肉のけいれん(こむら返り)や筋力低下など筋肉症状や低血圧)および腎不全の慢性合併症(例:貧血)が悪化する可能性がある。しかし、カルニチンを補充すれば、透析に伴うカルニチン欠乏の症状を改善できるかどうかは不明である。 本レビューで実施したこと 透析を要するCKD患者に対するカルニチン補充に関して実施された全ランダム化比較試験について、医学文献を検索した。目的は、カルニチン補充が生活の質(QOL)およびカルニチン欠乏による症状を改善するかどうかを明らかにすることにあった。また、有害事象の観点から、カルニチン補充が安全かどうかも評価した。エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて評価した。 わかったこと 透析を受けているCKD患者計3,398人を対象とした研究52件が見つかった。L-カルニチンがQOLおよび透析に伴うカルニチン欠乏による症状に与える影響については、明らかにすることができなかった。一方、L-カルニチンによってこのような...

3剤併用吸入療法とは何か、どのような場合に使用され、喘息にどのような効果をもたらすのか。

1 year 4 months ago
3剤併用吸入療法とは何か、どのような場合に使用され、喘息にどのような効果をもたらすのか。 喘息の管理に吸入はどのように使用されるのか。 喘息の管理には、重症度に応じて段階的な一連の治療が必要である。初期治療は、通常、必要に応じて短時間作用型吸入薬を使用し(ステップ1)、必要に応じて喘息のコントロールを改善するために低用量から中用量の吸入ステロイド薬を毎日追加する(ステップ2)。その後、必要に応じて吸入ステロイドに加え、気道の通路を拡張・弛緩させて呼吸の苦しさを軽減する長時間作用型β(ベータ) 2 刺激薬(LABA)と呼ばれる気管支拡張薬を使用するのが一般的である(ステップ3、4)。 吸入ステロイドとLABAの併用で喘息がコントロールできない場合、どのような選択肢があるか。 現在のガイドラインでは、中用量吸入ステロイドとLABAの2剤併用吸入療法で喘息がコントロールできない場合、高用量の吸入ステロイドを使用するか、または長時間作用型抗コリン薬(LAMA)という別の気管支拡張薬の追加(すなわち3剤併用吸入療法)を行うことが推奨されている(ステップ5)。 本レビューにおける疑問に、どのように答えたのか。 コントロールされていない喘息を抱えた青年と成人の計17,161人を含む17件の研究からデータを収集し、ネットワークメタ解析という特殊な方法を用いて、複数の吸入療法の群を同時に比較するこ...

妊娠37週以前の単胎児出産を防止するための膣頸部支持器具

1 year 4 months ago
妊娠37週以前の単胎児出産を防止するための膣頸部支持器具 早産とは? 早産とは、妊娠37週未満での出産をいう。早産は新生児の主な死因である。多くの場合、早産は子宮頸管(子宮の下の細い部分)の弱さ(訳注:子宮口が閉鎖した状態を保つ力のことをいい、専門用語では頸管無力とされる)が原因である。 早産を防ぐために、子宮頸管の弱さはどのように治療すればよいのか。 子宮頸管の脆弱性を治療する方法としては、子宮頸管縫縮術(子宮頸管に糸を通して縫い縮めることで、子宮口が早期に開くのを防ぐ)、待機的管理(問題が生じるまで介入せずに経過観察)、女性ホルモンのプロゲステロンによる内科的治療(経膣投与) または子宮頸管ペッサリー(子宮頸管を閉じておくためのシリコンリング)の使用が挙げられる。子宮頸管ペッサリーは、妊娠12週から24週の間に膣の上部に挿入され、37週で取り外される。麻酔を必要としない簡便な低侵襲術で、子宮頸部縫縮術に取って代わる可能性がある。 知りたかったこと 1人の赤ちゃんを妊娠し(単胎妊娠)、子宮頸管が弱くなるリスクがある女性の早産予防において、子宮頸管ペッサリーが、他の治療または無治療よりも優れているかどうかを知りたかった。 本レビューで実施したこと 子宮頸管が弱くなるリスクのある単胎妊娠の女性を対象に、子宮頸管ペッサリーを他の治療法、または無治療と比較検討した研究を検索した。研究結...

心臓手術患者における血圧目標値について

1 year 4 months ago
心臓手術患者における血圧目標値について レビューの論点 心肺バイパス術(CPB)による心臓手術を受ける患者で、高い血圧目標値は、低い血圧目標値と比較してどのような効果をもたらすか? 要点 高い血圧目標値は、低い目標値と比較して、腎障害、認知(学習し理解する能力)障害、および生存においてほとんど差がない結果かも知れない。 血圧目標値を高くした場合、入院期間がわずかに長くなる可能性がある。 心臓手術とは? 心臓手術は、世界中でよく行われている手術である。ほとんどの術式の心臓手術は、CPBを使用して行われる。CPBは、心臓や肺の働きに代わり、血液を循環し、血液に酸素を取り込み、血液から二酸化炭素を排除する医療機器である。心臓手術を受ける患者は血圧が高い(高血圧症と呼ばれる)ことが多い。高血圧症の患者は、脳や腎臓などの重要な臓器への血流を維持するために、より高い血圧を必要とする。しかし、心臓手術時における最適な血圧目標値に関するエビデンスは乏しい。 何を調べたかったのか? 血圧目標値をより高くした場合とより低くした場合における、腎臓、脳、生活の質(QOL)、および入院中に起こる合併症に及ぼす影響を評価したかった。 何を行ったのか? CPBによる心臓手術において、高い対低い血圧目標値の比較を行った臨床研究を医学データベースで検索した。 何を見つけたか? 心臓手術を受けた737人を対象とした...

頭蓋照射を受けた成人における認知障害の予防および改善に関する介入

1 year 4 months ago
頭蓋照射を受けた成人における認知障害の予防および改善に関する介入 背景 原発性または続発性(転移性)脳腫瘍に対して、あるいは体の他の場所から脳への腫瘍の転移を防ぐために、脳への放射線照射を受けた人に、精神/認知能力/スキルの問題(認知の副作用)がよくみられる。脳への放射線照射によるこの毒性の副作用は、急性(治療中)または治療後早期(1~6か月)に発生し、可逆的である場合もある。しかし、晩期の毒性は何か月も何年も経ってから発生することがあり、発生した場合は一般的に不可逆的で、多くの場合ゆっくりと進行する。記憶障害、作業計画の問題、行動の変化などの後期認知障害は、生活の質(QOL)や通常活動を行う能力に深刻な影響を与える可能性がある。これらの晩期放射線障害の予防や治療を支援する介入は、患者の幸福を向上させる可能性がある。ここでは、脳への放射線照射に伴う認知機能の副作用を予防または治療することを目的とした薬理学的(医療用医薬品)および非薬理学的(心理学的)介入に関するすべての研究をレビューする。 研究の特性 2014年8月に発表されたオリジナルレビューでは、査読付き雑誌などの定期刊行物の論文を特定するために使用される4種類の文献データベースを検索した。介入群または比較群(対照群)に無作為に割り付けられた6件のランダム化比較試験を組み入れることができた。各試験はそれぞれ異なる介入策を評価...

腸管熱(腸チフス)治療用のセファロスポリン系抗菌薬

1 year 5 months ago
腸管熱(腸チフス)治療用のセファロスポリン系抗菌薬 要点 - セフトリアキソン(セファロスポリンの一種)は、成人および小児の腸チフスに対するアジスロマイシン、フルオロキノロン、クロラムフェニコール(他の抗菌薬)と比較して、性能に差がない可能性がある。 - セフィキシム(別の種類のセファロスポリン)も成人および小児の腸管熱の治療に使用できるが、フルオロキノロン系抗菌薬ほど有効でない場合がある。 - 政策立案者と臨床医は、腸熱の治療法を検討する際に、地域の薬剤耐性パターンを考慮する必要がある。 腸管熱とは? 腸管熱とは、腸チフスとパラチフスと呼ばれる2つの類似した病気の総称である。これらの病気は、 Salmonella typhi (腸チフスの原因微生物の名称)や Salmonella paratyphi A 、B、C(パラチフスの原因微生物の名称)と呼ばれる細菌によって引き起こされ、水や衛生環境が十分でない低・中所得国で最もよく見られる病気である。腸管熱は通常、発熱や頭痛に加え、下痢や便秘、腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振などを引き起こす。放置しておくと、人によっては重篤な合併症を引き起こし、死に至ることもある。 セファロスポリンとはどのようなもので、どのように作用する可能性があるのか? セファロスポリン系抗菌薬は、様々な感染症の治療によく使われる大きな抗菌薬のグループである。セファロ...

単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝子検査での5日目と3日目における胚生検の比較

1 year 5 months ago
単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝子検査での5日目と3日目における胚生検の比較 背景 嚢胞性線維症などの単一遺伝子疾患の既往歴や家族歴を持つ夫婦は、同じ遺伝子疾患を持った子どもを出産する確率を減らすために生殖補助医療(ART)を受けられるようになった。これは、単一遺伝子疾患の着床前遺伝子検査(PGT-M)と呼ばれるものである。PGT-Mでは、受精卵から細胞を採取し(生検)、遺伝子疾患について分析が行われた後、疾患を持たない受精卵が女性の子宮に戻される。生検は、胚発生後の3日目または5日目に行うことができ、現在は5日目における生検が最も広く用いられている。胚の生検を3日目に行うか、5日目に行うかによって、胚の発生の進展や着床、ならびに妊娠および周産期の結果に異なる影響を及ぼす可能性がある。 主な結果 ARTを受けている合計20人の女性を対象として、PGT-Mのために行われた5日目と3日目における胚生検を比較した1件のランダム化比較試験が見つかった。この研究からは、生児出生または流産の確率に違いがあるかどうかを示すのに十分なエビデンスが得られず、結果については非常に不確実であった。 エビデンスによると、3日目に胚生検を行った場合の生児出生率を40%と仮定した場合、5日目に行った場合の生児出生率は15%から85%の間であることが示唆されていた。 その他の妊娠および周産期の結果に関するエビ...

統合失調症がある人に対する抗精神病薬の減量

1 year 5 months ago
統合失調症がある人に対する抗精神病薬の減量 要点 抗精神病薬の投与量を減らすと、より多くの試験参加者が再発し、早期に試験から離脱する可能性がある。 生活の質(QOL)、機能、副作用に関する情報はほとんどなかった。 レビューテーマの紹介 統合失調症は、薬物治療(抗精神病薬)が必要な重い病気である。抗精神病薬の使用は副作用と関係があり、その副作用は投与量が多いほど悪化するようである。一方、症状に対する効果を発揮するためには、十分な量を投与する必要がある。 知りたかったこと 以下に示す項目の改善のために、抗精神病薬の量を減らすことが、同じ量を維持するよりも良いのかどうかを知りたかった。 – 生活の質(QOL); - 再入院した参加者の数; - 副作用のため早期に試験を終了した参加者の数; - 機能; - 再発; - 何らかの理由で研究を早期に終了した参加者の数; - 少なくとも1つの副作用があった参加者の数。 実施したこと 統合失調症患者において、抗精神病薬の量を減らすことと、同じ量の抗精神病薬を維持することを比較検討した研究を検索した。 研究結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 わかったこと 合計2,721人の統合失調症患者を対象とした25件の研究が見つかった。22件の研究(2,635人)のデータを解析のために使用した。研究期...

急性腎障害に対する腎代替療法(透析)の開始時期について

1 year 5 months ago
急性腎障害に対する腎代替療法(透析)の開始時期について レビューの論点 急性腎障害(AKI)は集中治療室(ICU)に入室した患者に非常に多く、腎機能が急速に低下することが特徴であり、死亡率が高い。AKI患者では、血清尿毒症毒素(クレアチニンや尿素)、血清カリウム値、代謝酸の値が上昇し、体液が蓄積され、ほとんどの場合、尿量の減少が認められる。この患者集団では、このような化学物質と体液過多が死亡率の上昇に関係する。理論的には、血液中の毒素や過剰な水分を早期に除去することで患者の予後(死亡率や腎機能の回復など)を改善できる可能性がある。 腎代替療法(KRT)は透析とも呼ばれ、過剰な水分や毒素を除去できる血液浄化技術である。腎代替療法は、カテーテル(静脈内に留置する中空で柔軟な管)を介して患者から脱血し、過剰な水分や毒素を除去する濾過システムに通し、浄化された血液をカテーテルから返血する。腎代替療法の早期開始は毒素や過剰な水分の除去を改善する。 本レビューの目的は、AKIの重症患者に対する腎代替療法の開始時期の違い(早期または標準)が、死亡、腎機能の回復、有害事象に及ぼす影響を詳しく調べることにあった。 本レビューで実施したこと 2022年8月4日までの文献を検索し、AKIを発症した重症患者4,880人を登録した研究12件を対象として評価を行った。 わかったこと 腎代替療法の早期開始は、...

心臓手術に伴う出血治療におけるプロトロンビン複合体濃縮製剤

1 year 5 months ago
心臓手術に伴う出血治療におけるプロトロンビン複合体濃縮製剤 このレビューの目的は、プロトロンビン複合体濃縮製剤を心臓手術に伴う出血を予防するため安全に使用できるか最近のエビデンスについて評価を行うことであった。また、他の治療法と比較した場合、死亡および他の重篤な合併症を減少させることができるかについても評価を行った。 背景 複雑な心臓手術に伴う出血は、管理することに挑戦し続けることができる。血液凝固経路は複雑で、心臓バイパス装置を使用されていると、血液中の特定の成分の減少が起きる。バイパス時間に依存して凝固因子が著しく減少することがある。新鮮凍結血漿とプロトロンビン複合体濃縮製剤が、これらの凝固因子を代替えする唯一の認識された方法である。新鮮凍結血漿は250から300mLがバッグに入っており、使用することで総血液量を増やすことができるが、心臓に余分な負担をかける可能性がある。プロトロンビン複合体濃縮製剤は粉末製剤であり、より少ない容量で溶解し投与する。希釈された新鮮凍結血漿はゆっくりと注入されるのに対し、この製剤は凝固因子が濃縮され迅速に投与されて速かに作用する。遺伝子組換え血液凝固第Ⅶa因子(rFⅦa)は、ヒトから得られたものではなく、人工的に作製されたもう一つの血液凝固因子である。出血が血液製剤で止めることができない程酷い時に用いられる。プロトロンビン複合体濃縮製剤がrFⅦa...

生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ

1 year 5 months ago
生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ レビューの論点 不妊治療のうち生殖補助医療(ART)を受けている女性において、採卵の一環として行われる卵胞フラッシュの安全性と有効性を評価しようとした。 背景 自然に妊娠するのが困難なカップルは、妊娠するための介入(治療)を受けることを選択するかもしれない。これらの介入は、生殖補助医療(ART)と呼ばれる。ARTのひとつに体外受精(IVF)がある。体外受精では、ホルモン剤を用いて卵巣を刺激し、それぞれの卵巣にある卵胞の中で卵を複数発育させる。この卵巣刺激に続き、これらの卵を採取するために、超音波ガイド下で卵胞内に針を挿入する。卵胞内を吸うだけでその内容物を回収する吸引法の代わりに、吸引後に卵胞内をフラッシュすることで、卵の回収率があがり、その結果、妊娠・出産の可能性が高くなるのではないかという提案がなされてきた。この方法は、卵胞フラッシュと呼ばれる。 研究の特性 合計1,643人の女性が、卵胞吸引単独群または卵胞吸引後フラッシュ群に無作為に割り付けられた15件の研究を対象とした。この2 つの手法に差があるかを見るため、主要な結果として出生率 (女性1000人あたり生まれた赤ちゃんの数)および流産率 ( 女性1000人あたりの流産数) について調査した。この分野で2021年7月に利用可能なすべての関連した研究を同定するため、包括的な検索を...

慢性非特異的腰痛に対するヨガ

1 year 5 months ago
慢性非特異的腰痛に対するヨガ 主要な結果 原因不明の腰痛(慢性非特異的腰痛)が長期間持続する人において、3カ月間ヨガをした場合としなかった場合では、疼痛と腰や背中の機能改善において、改善は小さいものの、ヨガは運動をしないよりもおそらく良いと考えられる。 腰や背中の機能改善について、ヨガと腰や背中に重点を置いた他の運動との間におそらくほとんどまたは全く差はないが、疼痛の改善についてはヨガと他の運動との間の差は明らかにされていない。 腰や背中の痛みは、ヨガの試験で最もよく報告された有害性であった。有害性のリスク(危険)は、ヨガをしない場合と比べてヨガによって高くなったが、ヨガと他の運動では同程度であった。ヨガが重篤な有害性のリスクと関連しているという示唆はなかった。 慢性非特異的腰痛とは何か? 腰痛はよく起こる健康問題である。多くの場合、痛みの原因は不明で、「非特異的」腰や背中の痛みと呼ばれる。人によっては、痛みが3カ月以上持続することもあり、この時点で「慢性」と呼ばれる。 非特異的な腰痛は通常、市販の鎮痛薬と運動で治療され、手術などの侵襲的な処置は必要としない。ヨガは腰痛の治療や管理に使われることがある。 わかったこと ヨガが腰痛に関連する機能(例えば、歩行、家の周りの仕事、着替えなど)、疼痛、生活の質(Quality of Life:QOL)を改善するかどうかを検証したいと考えた...

脳卒中後の感情的傾向に対する薬物療法

1 year 5 months ago
脳卒中後の感情的傾向に対する薬物療法 レビューの論点 脳卒中後の情緒不安定な人に対する薬の利益と害を評価すること。 背景 脳卒中後は、情動不安定になることがよくある。情動不安定とは、感情的行動をコントロールすることが難しい状態を意味する。脳卒中後の患者は突然泣き出したり、稀ではあるが明らかな理由もなく笑ったりすることがある。この傾向は特定の人々や介護者を困らせる。うつ病がある人に効果がある抗うつ薬は脳卒中後の情動不安定に対する効果的な治療薬かもしれない。しかしながら、この分野でのランダム化比較試験(RCT)はほとんどなかった。(*RCTは、参加者を2つ以上の治療集団群に無作為に割り当てる研究デザインである。これは、参加者のグループが類似しており、調査員と参加者が誰がどのグループに入っているかを知らないようにするための最良の方法である。) 検索日 2022年5月26日に実施した検索により、研究を特定した。 研究の特性 情動不安定性を持つ239人が参加した7件のランダム化比較試験をレビューに含め、感情的傾向の治療に対する抗うつ薬の使用について報告した。研究対象者の人数は10人から92人であった。研究対象者の平均年齢/中央値は57.8歳から73歳であった。試験はヨーロッパ(イギリス:1件, デンマーク:1件, スコットランド:1件, スウェーデン:1件); アジア(韓国:1件, 日本:...

電子タバコは禁煙に役立つのか?また、禁煙目的で使用した場合、副作用はないのか?

1 year 5 months ago
電子タバコは禁煙に役立つのか?また、禁煙目的で使用した場合、副作用はないのか? 電子タバコとは? 電子タバコ(e-シガレット)は、携帯型のデバイスで、通常はニコチンと香料を含んだ液体を加熱することで作動する。電子タバコは、煙ではなく蒸気でニコチンを吸い込むことができる。電子タバコはタバコを燃やさないため、従来タイプのタバコを吸っている人の喫煙関連疾患の原因となるのが明らかなレベルと同じレベルの有害物質を吸い込むことはない。 電子タバコを使用することは、「ベイピング」と呼ばれている。電子タバコは、タバコを止めるために使用する人が多い。このレビューでは、主にニコチン入り電子タバコに焦点を当てている。 このコクランレビューを行った理由 禁煙することで、肺がんや心筋梗塞、その他多くの病気にかかるリスクが低くなる。多くの人が、タバコを止めるのは難しいと思っている。電子タバコの使用が禁煙の助けになるかどうか、また、電子タバコを使用している人に望ましくない影響がないかどうかを調べた。 このレビューで行ったこと 電子タバコを使った禁煙支援について調べた研究を検索した。 人々が受けた治療が無作為に決定されたランダム化比較試験を探した。このタイプの研究は通常、介入の効果について最も信頼性の高いエビデンスを与える。また、全員が電子タバコによる治療を受けた研究も探した。 以下の内容に興味を持った: - ...

耳鳴りに対するイチョウ葉のハーブサプリメント

1 year 5 months ago
耳鳴りに対するイチョウ葉のハーブサプリメント 耳鳴りとは何か? 耳鳴りは、外部からの音がないのに音が聞こえるという症状である。リンギング(訳注:振動によるノイズ音で、ジージー等の振動音)、ヒスノイズ(訳注:テープの再生時に鳴るシューとか、サーといった、高音域の音)や、ブンブン、ヒューヒューといった音で表現されることが多い。一般人口の5%から43%が罹患するといわれ、年齢とともに有病率は増加する。耳鳴りが続くと、睡眠障害(不眠症)、集中力の低下、コミュニケーションや人付き合いの難しさ、不安や抑うつを引き起こす人もいる。管理には、教育やアドバイス、リラクゼーション療法、耳鳴り再訓練療法(TRT)、認知行動療法(CBT)、音響発生器や補聴器、薬物療法が含まれる。また、ハーブのサプリメントであるイチョウ葉も使用されている。 知りたかったこと イチョウ葉が耳鳴りの程度を軽減するかどうか、また、好ましくない作用や有害な作用があるかどうかを調べたいと考えた。 実施したこと 大人と子どもの耳鳴りを対象に、イチョウ葉をプラセボ(「ダミー」治療)、無治療、教育・情報提供のみと比較した研究を探した。研究結果について比較、要約し、研究の進め方や参加人数などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 わかったこと 合計1,915人を対象とした12件の研究が見つかった。11件の研究では、イチョウ...

介護施設における肺炎予防のための口腔ケア

1 year 5 months ago
介護施設における肺炎予防のための口腔ケア 介護施設関連肺炎(NHAP)とは何か? 介護施設関連肺炎(NHAP)とは、長期療養施設や介護施設の入居者に発生する肺の細菌感染症を指す。 NHAPを防ぐ対策として、どのようなものがあるか? 口腔内(口の中)の衛生状態が悪いと、感染症にかかりやすくなる可能性がある。専門的な口腔ケアとは、歯と歯ぐきのブラッシング、義歯の清掃、洗口液の使用、そして歯科医師による訪問診療などを組み合わせたものである。これに対して日常的な口腔ケアは、自分で行うケア、または口腔衛生に関する特別な教育を受けていない介護施設の職員が行うケアである。 何を調べたかったのか? 口腔ケアによってNHAPが減少するかどうかを明らかにしたいと考えた。また、介護施設やその他の長期療養施設の入居者の死亡数(肺炎やその他の原因によるもの)が口腔ケアによって減少するかどうかについても調査を行った。 何を行ったのか? 介護施設入居者の口腔ケアに関するランダム化比較試験(RCT)について、科学文献データベースおよび登録されている研究の検索を行った。ランダム化比較試験(RCT)は、参加者が各治療群に無作為に割り振られるため、最も信頼できる科学的エビデンスが得られると考えられている。研究結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 何が見つかった...

早産児にCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)を行う場合、鼻マスクと鼻カニューレどちらを用いる方がいいのか

1 year 5 months ago
早産児にCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)を行う場合、鼻マスクと鼻カニューレどちらを用いる方がいいのか 要点 鼻カニューレ(鼻腔に挿入する短い管)よりも鼻マスク(鼻を覆うマスク)を用いた場合の方が、CPAP療法の失敗リスクを低減し、鼻腔を傷つけるリスクを低減する可能性がある。ただ、早産による死亡リスクや合併症リスクについては、鼻マスクを用いることによる影響がほとんど、あるいは全く無い可能性がある。 CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)とは 経鼻的CPAP療法とは、呼吸補助の一つであり、人工呼吸器(新生児の気管にチューブを挿入する)に比べ体への負担が少ない方法である。経鼻的CPAP療法では、鼻に管を入れるか、鼻を覆う柔らかいマスクを着けるかのいずれかの方法で新生児に酸素を送り込む。この療法は、新生児から人工呼吸器をはずした(挿管チューブを抜き取った)後や、新生児の肺(呼吸)に問題があり補助が必要だが人工呼吸の必要はない場合に用いることができる。 知りたかったこと CPAP療法の失敗率(新生児の状態が悪くなる、または人工呼吸器が必要となる)、CPAP療法による合併症や有害事象を減少させるためには、鼻カニューレよりも鼻マスクの方が好ましいというエビデンス(科学的根拠)が存在するのかどうかを調査した。 このレビューで行ったこと 医療データベースの中から2021年10月までに行われた臨床試験を検...

湿疹や食物アレルギーを予防するためのスキンケア介入

1 year 5 months ago
湿疹や食物アレルギーを予防するためのスキンケア介入 乳児の肌の保湿は、湿疹や食物アレルギーの予防になるか? 要点 生後1年間、保湿剤を肌に塗るなどのスキンケア治療は、湿疹の発生を予防するものではない。むしろ、食物アレルギーの可能性や皮膚感染症の可能性を高めると考えられる。このレビューでは、湿疹と食物アレルギーの予防についてのみ検討している。湿疹を治すには、やはりスキンケア治療が重要である。 アレルギーとは何か? 免疫反応とは、体が有害と思われる物質を認識し、防御する仕組みのことである。アレルギーとは、通常は無害である特定の食物や物質(アレルゲン)に対して、体の免疫系が反応することである。アレルギーは体のさまざまな部位に影響を及ぼし、その影響は軽度なものから重篤なものまである。 食物アレルギーと湿疹 湿疹は、皮膚の乾燥やかゆみ、ひび割れなどを引き起こす一般的な皮膚疾患である。湿疹は子どもに多く、それも1歳の誕生日前に発症することが少なくなく、長く続くこともある。 食べ物に対するアレルギーは、口の中のかゆみ、盛り上がったかゆみのある赤い発疹、顔の腫れ、胃の症状や呼吸困難などを引き起こすことがある。通常、食べ物を食べてから2時間以内に起こる。 食物アレルギーがある人は、喘息、花粉症、湿疹など、他のアレルギー疾患も持っていることが多い。 このコクランレビューを行った理由 乳児の湿疹や食物...

スミス・レムリ・オピッツ症候群に対するスタチン療法

1 year 5 months ago
スミス・レムリ・オピッツ症候群に対するスタチン療法 レビューの論点 スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)の患者に対して、スタチンを用いた治療単独またはコレステロール療法との併用は、コレステロール療法単独と比較して、より良い結果(生存率、生活の質、神経行動異常の頻度または重症度、成長パラメータまたはバイオマーカーレベルの変化など)をもたらすか、また有害作用の発生リスクはどの程度あるのか? 背景 スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)は遺伝性の奇形症候群であり、コレステロールが体内で生成されず、7-デヒドロコレステロール(7-DHC)や8-デヒドロコレステロール(8-DHC)などの、通常であればコレステロールに変換されるいくつかの毒性分子が蓄積されることで発症する。つまり、SLOSでは正常な身体的成長が妨げられ、さまざまな程度の知的障害や発達遅延(あるいはその両方)および行動異常(例えば、興奮性、攻撃性、不安性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、衝動性、睡眠障害など)を示す可能性がある。また、SLOSはさまざまな身体的異常や障害を引き起こす可能性があることも特徴的である。現在のところSLOSの治療法はないが、SLOS患者の診療においては、コレステロールの補充療法が一般的な対処法とされている。これは、この疾患の現在の生化学的知見のみに基づくものである。しかし、実験室や独立した個...

境界性パーソナリティ障害をもつ人に対する薬物療法の利益とリスクは何か?

1 year 5 months ago
境界性パーソナリティ障害をもつ人に対する薬物療法の利益とリスクは何か? 要点 このレビューは、2010年に発表された同テーマのレビューを更新したものである。このレビューにはその後追加された18件の研究が含まれているが、結論は同じままである。境界性パーソナリティ障害(BDP)に対する薬物療法の利益とリスクはおそらくないが、そのエビデンスは不明確である。 薬物療法の効果をプラセボと比較する、より良い大規模な研究が必要である。そのような研究は、男性、青年、そして追加の精神疾患の診断を受けた人々にも焦点を当てるべきである。 BPD(境界性パーソナリティ障害)とは? BPDは、他者との関わり方や、自己の理解の仕方に影響を与える。正確な原因は不明であるが、遺伝的要因と環境要因(成長期にストレスやトラウマとなるようなライフイベントなど)が組み合わさって生じると考えられている。成人の約2%、青少年の約3%が罹患している。 BPDの症状は、4つのカテゴリーに分類される。 気分の不安定さ:BPDをもつ人は、激しい感情を経験し、それが急激に変化して、コントロールすることが困難になることがある。また、空虚で見捨てられたと感じることも多い。 認知の歪み(乱れた思考パターン):BPDをもつ人は、しばしば混乱した考えを持つことがある(例えば、自分はひどい人間だと思うかもしれない)。また、妄想的な考えやストレス...
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