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メンタルヘルスの問題を持つ人のための共同意思決定

1 year 5 months ago
メンタルヘルスの問題を持つ人のための共同意思決定 共同意思決定と通常のケアでは、精神機能に障害を持つ人にとって効果が高いのはどちらか。 精神機能の障害とは 精神機能(メンタルヘルス)の障害や問題にはさまざまなものがある。一般に、思考、知覚、感情、行動、他者とのかかわりなど、複数の面で平均や通常の価値から外れていることを特徴とする。治療や社会的支援の提供体制が整った医療保健および福祉サービスにつなげることが重要である。 何を知りたかったのか 共同意思決定とは、当事者と専門職のコミュニケーションの取り組みであり、意思決定の過程で、両者(たとえば、患者またはその介護者、あるいはその両方と担当医)が同等に大切なそれまでの経験と専門知識を認めるというものである。この手法では、両者が協力しながら治療の推奨や実際の治療を決定する。 この手法は、行動医学の分野では、さらに幅広いリカバリー(回復)と本人中心のケアを目指す運動の一部とみなされている。専門職、介護者、同じ問題を抱える仲間たち、そして家族らの協力を得ながら、症状を理解して、症状に対処していくことを本人の責任として、リカバリーに焦点を当てることもこの手法の基本となる。 時には、動画、小冊子、オンラインツールなど「意思決定支援ツール(ディシジョンエイド)」も使いながら、治療法の説明、複数の選択肢とそれぞれの利点とリスクに関する情報を提示し、...

未成熟な蚊の生息する水環境にどのような恒久的または一時的な変化をもたらすと、マラリアの人への感染の減少に、より効果的か?

1 year 5 months ago
未成熟な蚊の生息する水環境にどのような恒久的または一時的な変化をもたらすと、マラリアの人への感染の減少に、より効果的か? なぜマラリアの人への感染を減らすことが重要なのか? マラリアは、主にアフリカやアジアに住む人々の間で、公衆衛生上、非常に大きな影響を及ぼしている。マラリアを減少させるための対策は長年にわたって研究されてきた。人を刺してマラリアに感染させることができるのはメスの蚊の成虫であるため、対策のほとんどは、未成熟な蚊(幼虫やサナギ)の数を減らして、成虫になるのを防ぐことに重点を置いている。 未成熟な蚊の生息環境の恒久的または一時的な変化とは? 未成熟な蚊が生息する水環境は、恒久的な変化(改変)や一時的な変化(処置)によって攪乱できる。恒久的な変化の例としては、排水路を設置する、整地する、側溝を埋め戻すなどが挙げられる。一時的な変化の例としては、川の流量を変える、水路の底をさらう、草を刈る、植物で水面を覆うなどが挙げられる。これらの介入は、単独で、あるいは殺虫剤の定期的な散布(幼虫駆除)など他の標準的な処理と併せて行うことができる。 何を調べたかったのか? 未成熟な蚊の生息環境にどのような恒久的または一時的変化を与えると、人のマラリア感染数の減少(臨床面の結果)と未成熟な蚊や成虫の個体数の減少(昆虫学的結果)につながるか明らかにすることを試みた。 何を行ったのか? 未成熟...

予定外の入院をしている高齢者に対する運動

1 year 5 months ago
予定外の入院をしている高齢者に対する運動 要点 予定外の入院中の高齢者向けの運動療法には利点がある場合もあるが、それは定かではない。運動による介入は、おそらく害を及ぼすことはない。高齢者が入院しているときに転倒のリスクを増加させることはなかった。 何が問題なのか? 高齢者は、予定外の入院をした後、普段の日常生活を送ることができなくなることがよくある。その理由のひとつは、入院中は健康なときに家で過ごすよりも非活動的になってしまうからである。また、入院中に活動的でないことは、混乱するリスクの増加、移動の困難、退院時の生活の質の低下など、他の問題の原因となることもある。 何を知りたかったのか? 入院中の高齢者の運動を支援することで、退院時の回復を促し、退院後普段の日常生活を送る能力が向上するか? 何を行ったのか? 運動プログラムを通常のケア(偽の介入の有無にかかわらず)と比較した研究を医療データベースで検索した。通常のケアとは、研究調査に参加していない患者に通常行われる治療である。2件の研究では、通常のケアに加えて偽の介入を行った。偽の介入は、患者の回復に影響を与えるためではなく、研究に信頼性を持たせるために実施された。 何が分かったか? 7,511人が参加した24件の研究が見つかり、参加者の58%が女性であった。研究参加者の平均年齢は73歳から88歳であった。ヨーロッパで実施された研...

脳卒中後の知覚障害に対する介入

1 year 5 months ago
脳卒中後の知覚障害に対する介入 要点 脳卒中は、聴覚、嗅覚、体性感覚(体温、位置、動きの感覚)、味覚、触覚、視覚など、五感からの情報を処理し理解する能力に影響を及ぼすことがある。これらの感覚からの情報を処理し、理解することを「知覚」という。 脳卒中に関連した知覚の問題に対する何らかの治療法が有効かどうかについては、ほとんど研究が行われていない。 脳卒中による聴覚、嗅覚、体性感覚、味覚、触覚、視覚に問題がある人は、臨床ガイドラインで推奨されているリハビリテーションに参加し続けた方が良い。医療専門家は、現在の臨床ガイドラインや推奨事項に従って、脳卒中に関連した知覚の問題に対するリハビリテーションを提供し続ける必要がある。 知覚障害とは? 脳卒中になる前、大人は聴覚、嗅覚、体性感覚、味覚、触覚、視覚などの感覚を通して情報を収集する。体性感覚とは、皮膚、筋肉、関節から生じる感覚を指し、圧力、振動、温度、位置などの知覚が含まれる。集めた情報には、目に見える物体の色、形、大きさなどが含まれるかもしれない。人は、記憶や文化的な経験とともに、表情を見れば相手の気持ちを理解することができる。また、嗅覚で匂いの違いを識別したり、触覚で感触の違いを感じたりすることもできる。脳卒中は、これらの能力に影響を与える可能性がある。 知覚障害の治療とは? 作業療法士、理学療法士、臨床心理士などの医療専門家は、さ...

避妊用インプラントや子宮内避妊具は、産後数日以内に挿入したほうがよいのか、4~6週間待ったほうがよいのか?

1 year 5 months ago
避妊用インプラントや子宮内避妊具は、産後数日以内に挿入したほうがよいのか、4~6週間待ったほうがよいのか? この要約で「人」という言葉を使うときは、現在妊娠する能力のある個人を意味する。 要点 - 避妊用インプラントや子宮内避妊具(IUD)の挿入を4~6週間待つ(遅延挿入)よりも、出産後数日以内に挿入する(即時挿入、入院中)方が、挿入される人の数が増える。 - 挿入のタイミングは、産後6か月または12か月にこれらの避妊法を使用する人の数にほとんど差をもたらさない。 - IUDの自然排出は、即時挿入した人の方が多いようである。 - インプラントやIUDの即時挿入と遅延挿入の両方における意図しない妊娠の割合については、さらなる研究が必要である。 避妊用インプラントや子宮内避妊具とは何か? 避妊用インプラント(訳者注:2022年12月現在、日本では未承認)と子宮内避妊器具(IUD)は、出産後すぐに使用できる可逆的で安全な、非常に有効な避妊方法である。インプラントは上腕部に、IUDは子宮に、医師や看護師が挿入する。これらの避妊法を行う人は、インプラントかIUDのどちらかを使用する。 妊娠と妊娠の間隔が適度に空いていることは、妊娠中の人と新生児の両方の健康にとって望ましい。通常、避妊のための処置は産後最初の健診(通常、産後6週間前後)で行われる。しかし、この受診前に性行為をしたり、受診しな...

授乳中の母親への支援

1 year 6 months ago
授乳中の母親への支援 レビューの論点 世界保健機関(WHO)は、生後6か月までは母乳のみで育て、少なくとも2歳までは母乳育児を重要な食生活の一部として継続することを推奨している。母乳育児は、乳幼児と母親の短期的・長期的な健康に良いことが分かっている。母乳で育てられた赤ちゃんは、肺や腸の感染症になりにくい。太り過ぎや糖尿病になる可能性も低くなる。また、母親は糖尿病になりにくく、乳癌や卵巣癌にもなりにくいと言われている。いくつかの問題に直面した結果、希望していたよりも早く母乳育児を止めてしまう母親は多いかもしれない。良いケアと支援は、女性が困難を乗り越え、母乳育児を続けられるように自信をつけるのに役立つかもしれない。 このレビューでは、母乳育児中の母親に対して組織的な支援を提供することが、標準的な出産ケアと比較して、母親の母乳育児の継続を助けるかどうかを検討した。助産師、看護師、医師などの医療専門家、あるいはコミュニティ・ヘルス・ワーカーやボランティアなどの訓練を受けた一般市民からの支援に関心があった。 重要性 母乳育児のためにどのような支援ができるかを知ることで、母親がどこに住んでいても、望む限り母乳育児を続けることができるよう手助けすることができる。母乳育児を早期にやめると、母親は失望し、落ち込み、長期にわたる苦痛を味わい、自分自身と乳児の健康にも問題が生じる可能性がある。支援は...

子宮内膜を傷つけることで、性交や子宮内への精子注入をするカップルの妊娠率を向上できるか

1 year 6 months ago
子宮内膜を傷つけることで、性交や子宮内への精子注入をするカップルの妊娠率を向上できるか レビューの論点 性交や精子を子宮に入れる方法(子宮内人工授精)で妊娠を希望している女性に対し、子宮内膜に意図的に小さな傷をつけたときの効果や痛みの程度を評価する。 背景 体外受精(IVF)を行う女性に対して、意図的に子宮内膜に軽微な傷をつけると、妊娠の可能性が高まると言われている。この損傷は、pipelleのような柔軟性のあるプラスチック製の小さな器具を使った子宮内膜の小さな生検によって作ることができ、一般的で安全な婦人科的処置である。しかし、日常の臨床現場では、この処置はある程度の不快感や痛みを伴うことが知られており、追加の内診が必要になる。体外受精を行っていない女性、例えば、性交や人工授精で妊娠を試みている女性やカップルに対する、この手法の有効性はまだわかっていない。 研究の特徴 計3,703人の女性を含む22件のランダム化比較試験が、このレビューの対象基準を満たした。ほとんどの女性は、「原因不明不妊」と呼ばれるタイプの不妊症で、通常の検査をすべて行ってもこれまでに妊娠しなかった理由が明らかに説明できなかった。レビューの主な評価項目は、生児出産と妊娠継続(12週を超えた妊娠)と、処置中に経験した痛みである。エビデンスは2020年5月21日までのものある。 主な結果 意図的に子宮内膜を傷つけ...

中枢性睡眠時無呼吸症候群がある人に対する非侵襲的換気法

1 year 6 months ago
中枢性睡眠時無呼吸症候群がある人に対する非侵襲的換気法 検討した内容 このレビューでは、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)がある人に対する非侵襲的換気(換気を補助する人工呼吸のこと、以下、NIV)の効果を、他の治療法や異なるタイプのNIVと比較検討した。CSAとは、睡眠中に脳が筋肉に空気を取り込むように指示を出せないため、呼吸が定期的に停止する疾患である。CSAは、男性や慢性心疾患がある人に多く発症する。CSAの人は、夜中によく目が覚め、日中はとても眠くなり、普段のように運動ができなくなる。睡眠時無呼吸症候群は、心臓発作や脳卒中など、他の疾患や死亡のリスクを高める可能性もある。 NIVでは、機械を使って呼吸を助ける。NIV療法では、フェイスマスクや鼻マスクを使用して、肺に空気を送り込み、呼吸努力の必要性を軽減させる。NIV療法にはいくつかのタイプがあり、呼吸を補助する方法が異なる。以下にいくつか例をあげる。 • CPAP(Continuous Positive Airway Pressure、シーパップ):吸気と呼気で連続的に肺に空気を送り込む。 • 二重陽圧(BiPAP、バイパップ):吸気時に呼気時よりも多く肺に空気を送り込む。 • ASV(Adaptive Servo Ventilation):主に呼吸が止まった時に肺に空気を送り込む。 非侵襲的な換気により、空気が肺に入りや...

変形性関節症に対する抗うつ薬

1 year 6 months ago
変形性関節症に対する抗うつ薬 背景 変形性関節症は、軟骨が減少し、関節の間が狭くなることを特徴とする関節の病気である。その結果、痛み、変形、障害などが生じることがある。 抗うつ薬は、中枢神経系の神経経路を調節することにより、痛みに影響を与えると考えられている。 変形性膝関節症および股関節症の痛みに対する抗うつ薬の臨床的有用性と有害性を評価することを目的とした。 研究の特徴 このレビューは2021年1月現在のものである。抗うつ薬とプラセボ(ダミー治療)および非ステロイド性抗炎症薬(痛みを和らげ、炎症を抑えるために広く使用されている)を比較した2,122人の参加者による9件の臨床試験を対象とした。参加者の多くは女性(70%)で、平均年齢は54.4歳から65.9歳であった。7件の試験は変形性膝関節症のみを検討したものである。また、2件には変形性股関節症がある人も含まれていた。すべての試験で、非ステロイド性抗炎症薬の併用または非併用で、抗うつ薬とプラセボが比較された。 主な結果 プラセボと比較して、抗うつ剤はわずかな利益をもたらす結果となった。 痛み 抗うつ剤を投与した場合、プラセボと比較して0点から10点の範囲の値を示すスケールでさらに0.59点の痛みが軽減された。 - プラセボ群では、1.73点の痛みの減少がみられた。 - 抗うつ剤投与群では、2.32点の痛みの軽減がみられた。 レス...

ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か?

1 year 6 months ago
ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か? ドライアイとは何か? ドライアイとは、涙が目を十分に潤すことができないときに起こる、よく見られる症状である。さまざまな理由により、涙の量が不十分になったり不安定になったりする。例えば、涙の分泌量が減少したり、涙の質が悪くなったりする場合に、ドライアイになることがある。涙の量が不安定になることで、目の表面に炎症が起きたり、傷がついたりする。ドライアイの症状は不快であり、しばしばチクチクする、あるいは焼け付くような痛みを感じたり、時には視界がぼやけることもある。 ドライアイの治療方法は? ドライアイには、多くの治療法がある。涙の水層が相対的に不足しているために起こるドライアイに対しては、人工涙液、分泌刺激薬、血清点眼、涙点プラグ(涙の出口に栓をする)などの治療法がある。涙の油層の分泌が阻害されたドライアイに対する治療法としては、抗菌薬、温湿布、あるいは副腎皮質ホルモンやシクロスポリンAなどの抗炎症薬を使用する方法がある。副腎皮質ステロイドの点眼薬は、炎症を抑え、短期間に症状を緩和することを目的に使用されるが、長期的な使用により、眼圧の上昇あるいは白内障が発生することが懸念されている。 何を調査したのか? 副腎皮質ステロイド点眼薬が、単独使用、または他の薬との併用により、ドライアイの症状や、ドライアイの診断あるい...

炎症の検査は、医師が呼吸器感染症に抗生物質を使うかどうかの判断に役立つのか?

1 year 6 months ago
炎症の検査は、医師が呼吸器感染症に抗生物質を使うかどうかの判断に役立つのか? 要点 1.呼吸器感染症の症状で受診した患者に対して、診察時に医師がC反応性蛋白(CRP)の迅速検査(ポイントオブケア検査)を行うと、患者の回復に影響を与えることなく、抗生物質の処方をする患者の数をおそらく減らすことができる。 2.プロカルシトニンのポイントオブケア検査が、抗生物質の使用や患者の回復に影響を与えるかどうかはわからない。 3.今後は、小児、免疫系の疾患を持つ人、併存疾患(現在かかっている別の疾患)を持つ80歳以上の人に焦点を当てた研究を行う必要がある。抗生物質処方の指針となる、プロカルシトニンや新しいバイオマーカーを評価する研究が推奨される。 ポイントオブケア検査とは何か? ポイントオブケア検査では、診察時に数滴の血液を採取するだけで、3~20分以内に結果が出る。そのため、採血した血液を検査室に運ぶ必要がなく、診察の際に結果をすぐに治療法の選択に役立てることができる。炎症に反応して体内で作られる血液中のさまざまな物質を検出することができるポイントオブケア検査がある。このような物質をバイオマーカーと呼ぶ。 炎症とバイオマーカーとは何か? 炎症とは、細菌やウイルス感染などの傷害に対する反応である。体は、炎症に反応して自然に物質を作り出すが、それは血液中で検出され、バイオマーカーと呼ばれている。バ...

乗り物酔いの予防および治療のための抗ヒスタミン薬

1 year 6 months ago
乗り物酔いの予防および治療のための抗ヒスタミン薬 本レビューの目的は何か? 乗り物酔いは、船酔い、車酔いなどとも呼ばれ、一連の症状(通常は吐き気と嘔吐)を伴う。これらの症状は、現実の動き(例えば、車の運転や船に乗っているとき)、または仮想の動き(例えば、仮想現実シミュレーション)や動く視覚環境(例えば、動いている電車の窓から外を見ているとき)にさらされたときの動きの錯覚に反応して、無意識的に体が動くことによって引き起こされる。抗ヒスタミン薬は、乗り物酔いの予防または治療のために一般的に用いられてきた薬の一つである。この研究の目的は、抗ヒスタミン薬が乗り物酔いに有効であるかどうかを調査することである。 要点 乗り物酔いを起こしやすい成人において、抗ヒスタミン薬は、プラセボ(偽の薬)と比較して、自然に発生する動きのある状況下(船や飛行機など)で、乗り物酔いを起こすリスクを低減する可能性があることがわかった。また、プラセボと比較した場合、抗ヒスタミン薬は眠気を起こしやすいことがわかった。なお、既に起こってしまった乗り物酔いの治療に抗ヒスタミン薬が有効かどうかを調査した研究はなく、18歳未満の小児等に対する影響についてはほとんど情報がなかった。その他、調査を行ったすべての知見について、他の薬を使用した場合や薬を使用しない処置を行った場合と比較した抗ヒスタミン薬の真の効果、他の副作用の有無...

変形性股関節症または変形性膝関節症に対する運動療法と並行して行う追加の治療

1 year 6 months ago
変形性股関節症または変形性膝関節症に対する運動療法と並行して行う追加の治療 本レビューの目的 変形性関節症は、股関節や膝関節によくみられる慢性の変性疾患であり、痛みを生じ、歩行などの日常生活に支障をきたす。陸上での運動療法とは、水中ではなく陸上で行われる運動療法のことで、治療の第一選択とされる。このレビューの目的は、陸上での運動療法に別の治療を追加することによって、変形性股関節症または膝関節症を抱える人の痛みや身体機能、生活の質(QOL)、患者自身が思う全体的な変化、レントゲン上の所見が改善するかどうかを明らかにすることにある。追加の治療には、徒手療法(身体の上に軽く手をあてるもの)、心理療法、食事療法、物理療法(患部を温めたり、冷やしたり、神経を刺激したり、超音波やレーザーをあてるものなど)や鍼治療などがある。陸上での運動療法に別の治療を追加した場合と、1)陸上での運動療法に偽の治療を加えた場合を比べた研究、もしくは 2)陸上での運動療法のみを比べた研究をレビューの対象とした。 検索日 このシステマティックレビューは2021年6月10日現在のものである。 わかったこと ランダム化比較試験 62件(24か国、6,508人の参加者、ほとんどが女性)が見つかった。平均年齢は52~83歳、症状の継続期間は9か月から12年であった。変形性膝関節症の人を対象とした研究が59件、変形性股関節...

集団的リーダーシップは医療従事者の行動、患者の健康、および職員の幸福度を向上させるか?

1 year 6 months ago
集団的リーダーシップは医療従事者の行動、患者の健康、および職員の幸福度を向上させるか? 要点 集団的リーダーシップには、複数の医療従事者が観点や知識を共有することが含まれる。利用可能なエビデンスからは、集団的リーダーシップにより、医療従事者の行動、患者の健康、または職員の幸福度に大きな違いをもたらされるかどうかについての確信性は得られなかった。また、研究の結果に対する信頼性は、「中等度」から「非常に低い」であり、研究の質が低く、数も少なかったために大きく制限されていた。 何を調べたかったのか? 本レビューの目的は、集権的で階層的なリーダーシップとは対照的な、集団的リーダーシップの経験が、医療従事者としての専門的な行動、患者の医療、職員の幸福度を向上させるかどうかを調査することである。そのために、集団的リーダーシップと集権的リーダーシップを比較した研究について検索が行われた。 何を行ったのか? 医療従事者間での共同意思決定と意思疎通を特徴とする集団的リーダーシップの介入に関連したすべての研究について検索し、解析を行った。 何が見つかったのか? 合計955人の参加者を対象とした、3件の研究が見つかった。これらの研究は、カナダ、イラン、米国の病院で実施されていた。集団的リーダーシップの介入は、リーダーシップを改善し(合計955人の参加者を対象とした3件の研究より)、加えてチームワークを...

早発卵巣不全の女性には、どのホルモン療法がより効果的か?

1 year 6 months ago
早発卵巣不全の女性には、どのホルモン療法がより効果的か? 要点 さまざまなホルモン療法を比較検討した研究は、3つの異なる内容で実施されたものが3件しか見つからなかった。 これらの小規模な研究のデータに基づいた結果、明確な結論を出すことはできなかった。 早発卵巣不全の女性が健康な妊娠をする可能性を高めるために、最適なホルモン療法を調べることを目的とした、適切に実施され、十分に大規模な試験が必要である。 早発卵巣不全とは何か? 卵巣は、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなどのホルモンに反応し、またこれらのホルモンを生成する性腺であり、左右に一対ある。骨、心臓、生殖に関する健康にとって、重要な役割を担っている。早発卵巣不全は、卵巣が正常なホルモンを分泌できなくなる状態で、女性の約1%が罹患する。その結果、骨折や心臓病、不妊症のリスクが高まる。16歳までに初経(初潮)を迎えなかったり、40歳までに6ヶ月以上月経(生理)が来なかったりすると、早発卵巣不全と診断されることがある。また、卵巣の働きに関係する各種ホルモンの値に異常があるかどうかを確認するために、血液検査が必要になる。 早発卵巣不全はどのように治療するのか? 早発卵巣不全は、一般的に、正常に働いている卵巣から分泌されるホルモンを模倣したホルモンを用いたホルモン療法で治療される。治療の目的は、骨、心臓、血管および生殖機能へ...

性的虐待と性暴力に対する介入に関するサバイバー、家族、専門家の体験談

1 year 6 months ago
性的虐待と性暴力に対する介入に関するサバイバー、家族、専門家の体験談 このレビューの目的は何か? このレビューの目的は、性的虐待や性暴力のサバイバーを支援し、健康と幸福を向上させるための介入を受けたサバイバーの経験、およびその家族やそのような介入を提供した専門家の経験を探ることであった。そのために、介入に対する見解や経験を記述した37件の研究を分析した。 要点 - サバイバー、その家族、専門家は、介入が行われる組織の環境(例えば、その場所や組織内の全スタッフのアプローチ)が、介入の経験やそこから得られる利益にとって非常に重要であることを強調していた。 - 参加者は、セラピーや介入によって、心身の健康、気分、対人関係、トラウマの理解、生活の幅広い領域で再活動できるようになったなど、ポジティブな結果(評価項目)を得たと話した。 - 参加者は、介入の恩恵を最もよく受けることができる介入とその設定の特徴は、しばしば障害となりうる特徴であると説明した。例えば、セラピストとの関係がオープンで温かいものであれば利益となるが、そのような関係が実現できない場合は障害となる。 - サバイバーのサブグループに関連する介入(例:信仰に基づく介入)、およびすべてのサバイバー(例:男性、障害者、その他の少数民族出身のサバイバー)に包摂されているという感覚を与える程度も、各サバイバーがそれらから最大の利益を得...

心臓と血管(心血管)の病気を予防するための慢性的歯肉炎症(歯周炎)の治療

1 year 6 months ago
心臓と血管(心血管)の病気を予防するための慢性的歯肉炎症(歯周炎)の治療 レビューの疑問 このレビューの主な疑問は、慢性歯周炎(歯肉炎症)に対する治療により、心血管(心臓と血管)の病気を予防または管理できるかどうかということであった。 背景 慢性歯周炎は歯ぐきの腫れや痛みを引き起こし、歯を支えている歯槽骨の喪失をも引き起こす。「慢性」とは、治療がなされないで一定期間病気が続いていることを意味する言葉である。「慢性歯周炎」という用語は、歯肉疾患の異なる病型を分類する新体系がつくられ廃止されつつあるが、本レビューに含まれた研究は古い体系に基づており、この用語を使用した。 歯周炎と心血管病とには関連があるかもしれない。慢性歯周炎の治療は細菌や感染を除去し、炎症を抑え、心臓と血管の病気の発生や再発を防ぐことができるかもしれないと考えられている。歯周病治療が死亡を防いだり、脳卒中や心臓発作などの心血管「発作」の可能性を低下することにつながるかどうかを明らかにしたかった。 研究の特徴 主要な電子データベースを利用して、2021年11月までに発表された「無作為化比較試験」として知られる研究を検索した。この種類の研究では、参加者は無作為に実験群と対照群に割り付けられる。実験群の人々には試験される治療が行われ、対照群の人々には、通常は治療を受けないか、プラセボ(偽の治療)、別の種類の治療、または定...

抗精神病薬と併用して投与される薬剤は統合失調症患者における体重増加の予防にどの程度有効か?

1 year 6 months ago
抗精神病薬と併用して投与される薬剤は統合失調症患者における体重増加の予防にどの程度有効か? 要点 ‐ メトホルミンは抗精神病薬による体重増加の予防に有効である可能性がある ‐ H2受容体拮抗薬とモノアミン調節薬は、抗精神病薬による体重増加の予防にわずかに有効である可能性がある ‐ 今後の研究では、より多くの人を対象とし、より長期間の評価を行う必要がある。 抗精神病薬とは何か? 抗精神病薬とは、幻覚、妄想、興奮などの精神疾患の症状を治療するために用いられる薬で、統合失調症の患者の治療によく使用される。抗精神病薬の例として、ハロペリドール(ハルドール)、クロルプロマジン(ソラジン)、オランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスパダール)などが挙げられる。 統合失調症と体重増加 統合失調症の患者は一般人より2倍太りやすいと言われているが、これはおそらく食生活の乱れや運動不足が原因と思われる。体重増加は、心疾患、脳卒中、糖尿病などにつながる可能性がある。 残念ながら、体重増加は抗精神病薬の好ましくない作用でもある。統合失調症の患者には、この体重増加を防ぐために、抗精神病薬と一緒に薬(追加薬)が投与されることがある。これらの薬には空腹感を抑えたり、満腹感を得やすくさせたりする作用がある。追加薬として通常使用されるのは、糖尿病の治療薬であるメトホルミンや抗うつ薬であるフルオキセチンなど、他...

腎不全患者における動静脈瘻成熟に上肢運動プログラムは有効か?

1 year 6 months ago
腎不全患者における動静脈瘻成熟に上肢運動プログラムは有効か? 問題は何か? 動静脈瘻(AVF)は動脈と静脈を特別に連結したもので、血液透析の際に繰り返し穿刺可能な丈夫な血管を作成する。一度作成すると、通常6週間から8週間で発達(成熟)し、使用可能となる。成熟により連結した静脈は太くなり、血流が増加することで血管の壁はより厚く丈夫になる。運動プログラムは、AVFとその機能を成熟させるまでの時間を短縮する可能性があるが、運動プログラムの種類や運動プログラムを実施する時期(AVFの作成前か後か)についてはまだ不明である。 本レビューで実施したこと 腎不全患者でAVF成熟に上肢運動の活用が記載された研究を見つけ出すため文献検索を行った。研究から情報を集め、介入が有用であるかどうかを特定するために情報を統合した。観察された効果がどの程度確かなものであるか判断するために、介入の質を調べた。 何が分かったか? 579人の患者を含んだ9件の研究が見つかった。2件の研究は、AVF作成前に行った運動を検討し、7件の研究では、AVF作成後に行った運動を検討していた。残念ながら、AVF作成後に運動を実施した7件の研究しか分析できなかった。運動プログラムの種類として、等張性(筋肉に一定の重量をかけながら関節を動かす運動)と等尺性(周囲の関節を動かすことなく筋肉を収縮させる運動)が使用されていた。 等張性運...

自閉スペクトラム症と診断された就学前の子どものうち、1年以上経っても診断が継続するのはどの程度の割合なのか?

1 year 6 months ago
自閉スペクトラム症と診断された就学前の子どものうち、1年以上経っても診断が継続するのはどの程度の割合なのか? 要点 - 研究において自閉症と診断された就学前の子どもの10人中9人は、1年以上経っても診断基準を満たし続ける可能性がある。 - 確実なエビデンスが不足しているため、今回の結果を含まれた研究の環境以外の環境に適用することはおそらくできないであろうし、また、診断が継続されるかどうかに影響するような、子どもや調査研究の要因を特定することはできない。 - 今後の研究としては、臨床の場において、ある子どもが長期間にわたって自閉症診断を維持し得るかどうか、また、他の要因があれば、どのような要因がその診断を維持する可能性を変えるかを探る頑健な研究の設計に焦点を当てる必要がある。 自閉症とは? 自閉症(自閉スペクトラム症)は、一般的に生涯続くと考えられている神経発達障害である。社会的なコミュニケーションの難しさや、興味の制限、反復的な行動などが特徴である。これらの領域がどの程度の課題であるかは、個人によって大きく異なる。 自閉症はどのように診断されるのか? 自閉症は、標準化された一連の診断基準を満たすかどうかを評価することで診断される。 子どもの場合、自閉症の診断には、小児科医、児童精神科医、言語聴覚士、作業療法士、心理士が関与することがある。これらの医療専門家の1人または複数が、子ど...
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13 hours 7 minutes ago
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