2 years 2 months ago
傷口の洗浄に水または他の液体を使用した場合における効果の比較 背景 感染は、創傷の正常な治癒過程を妨げる可能性がある。感染のリスクを減らすために、慣例的に創傷の洗浄が行われ、汚れや汚染物、あるいは異物が除去される。このレビューでは、創傷を皮膚の損傷と定義している。 このレビューの目的は何か? 本レビューの目的は、異なる種類の水(水道水、蒸留水、煮沸水など)による創傷洗浄の効果を、洗浄を行わなかった場合、または他の液体(生理食塩水など)を用いた場合とを比較して調査することである。創傷に関連した感染率と、創傷の治癒について調べることにより、洗浄効果の評価が行われた。 コクランの研究者により、関連するすべての無作為化比較試験(RCT)が検索され、その結果、13件の研究が見つかった。RCTとは、被検者が無作為に選ばれ、それぞれに異なる治療を受ける研究方法である。この方法に基づいて被検者が割り当てられることで、治療方法と、報告された治療結果との関連性について、最も信頼できるエビデンスを得ることができる。 要点 水道水、蒸留水、煮沸後に冷ました水、または生理食塩水による創傷洗浄を行った場合のそれぞれの比較と、洗浄を行わなかった場合とにおける比較が行われた。結果、これらの介入が創傷に感染を起こした数に影響したかどうかは不明であった。また、創傷の治癒(創傷が治癒した数、創傷の大きさの変化、創傷の...
2 years 2 months ago
COVID‐19の治療におけるフルボキサミンの効果 レビューの論点 フルボキサミンはCOVID-19に対する治療薬として有効か、また、有害な作用はあるか? 要点 軽度から中等度のCOVID-19患者の治療に対し、フルボキサミンの使用が有効かどうかは不明である。これは、現在、明確な判断を下すのに十分な研究が行われていないためである。 COVID-19の治療薬として、フルボキサミンを調査している進行中の研究が5件、さらなる情報が必要な研究が2件見つかった。その結果として結論が変更される場合、このレビューを更新する予定である。 フルボキサミンとは何か? フルボキサミンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)として知られる薬剤の一種で、錠剤の形で使用されている。最近の研究により、フルボキサミンがCOVID-19に対し効果がある可能性があることが明らかになった。免疫系がウイルスと戦う際に、肺や気道が炎症を起こし、呼吸困難を引き起こすことがあるが、フルボキサミンはこの炎症を軽減し、抗炎症作用および抗ウイルス作用により、重度のCOVID-19と、それに伴う肺の症状を発症するリスクを減らすことができる可能性がある。フルボキサミンは、抗うつ剤として服用した時でも、ほとんどの場合には重篤な副作用を起こさないことがわかっている。しかし、特に服用を開始したときに、次のような副作用を起こす場合があ...
2 years 2 months ago
原発性脳腫瘍がある成人患者における倦怠感の管理に対する介入 要点 原発性脳腫瘍と高度の倦怠感がある患者の管理に有効な治療法があるかどうかは、参加者数が少ない3件の研究しか見つからなかったため、分からない。 原発性脳腫瘍とは? 原発性脳腫瘍は、体の他の部分から広がったのではなく、脳で発生した癌である。脳腫瘍は、高悪性度と低悪性度に分類され、高悪性度腫瘍は異型度の高い細胞で構成され、急速に増殖するのに対し、低悪性度腫瘍は異型な細胞で構成され、ゆっくりと増殖する。原発性脳腫瘍の患者には、倦怠感(疲労感)がよくみられる。これは、腫瘍やその治療、あるいは抗てんかん薬(発作の治療に用いられる)など、他の医薬品の使用が原因である可能性がある。また、睡眠障害、思考障害、精神的苦痛など他の症状を伴うこともある。 知りたかったこと 倦怠感を管理するための治療が、その人の生活の質(QOL)、癌治療に耐える能力(それ自体が疲労と関連している)、社会生活や日常生活を営む能力を改善するかどうかを検討した。 本レビューで実施したこと 2022年4月、4件の医学データベースを検索した。その結果、対象となる臨床試験が3件見つかった。この3件の試験は、原発性脳腫瘍で高度の倦怠感を有する成人患者を対象に、3種類の医薬品(モダフィニル、アルモダフィニル、デキサムフェタミン硫酸塩)の使用を調査した。これらの薬は、覚醒を促...
2 years 2 months ago
固形臓器移植後の免疫抑制剤の服薬アドヒアランスを向上させるための介入 論点 固形臓器移植とは、心臓、肺、腎臓、膵臓、肝臓のいずれかを移植することである。固形臓器移植後、免疫抑制剤は免疫系を抑制し、臓器移植の短期および長期の生存を確保するために働く。免疫抑制剤を正しい時期に正しい量で服用することは、移植後のケアにおいて非常に重要なことである。しかし、免疫抑制剤の服用を守らないことは頻繁にあり、移植失敗の一般的な理由となりえる。固形臓器移植後の免疫抑制剤の服薬アドヒアランスを向上させる効果的な介入方法を特定するための明確なエビデンスが必要である。 本レビューで実施したこと 心臓、肺、腎臓、膵臓、肝臓のいずれかの移植後に免疫抑制剤の服薬アドヒアランスを高めるための介入を記述した研究を見つけるために文献を検索した。研究から情報を集め、これを組み合わせて、ある介入が有用であるかどうかを特定した。観察された効果がどの程度確かなものであるかを判断するために、これらの介入の質を調べた。 レビューの結果 その結果、3,718人の成人と178人の青年を対象とした40件の研究が見つかった。大半の研究では、腎臓移植を受けた参加者を対象としていた。介入の種類は研究によって異なり、27件の研究では免疫抑制剤の服薬アドヒアランスを向上させるための複数のアプローチが含まれていることがわかった。薬の正しい服用量を...
2 years 2 months ago
地域におけるマラリア治療プログラムに迅速診断検査を取り入れることで、マラリアや発熱に対する治療内容が改善されるか? 要点 ・マラリアが深刻な問題となっている地域(マラリア流行地域)では、多くの人が必要な治療を受けることができない。 ・マラリアを診断するための迅速診断検査(mRDT)は、指を刺して、血液を小さな検査用のカセットに滴下するという簡単なものである。 ・マラリア流行地域におけるマラリア治療プログラムというのは、医療の専門資格を持たない人々が、身体所見や症候に基づく診断(身体所見による診断)を行うのではなく、mRDTを利用することで、マラリアの治療状況が改善される。 ・抗菌薬の処方頻度に対するmRDTの影響を知るには、さらなる研究が必要である。 地域ごとの治療プログラムにおいて、マラリアはどのように診断され、治療されるのか? マラリアには有効で安全な治療薬(抗マラリア薬)があるが、特に医療施設から遠く離れた場所に住んでいる場合は、多くの人はいまだに治療薬が必要な時であっても治療薬を入手することが難しい状況である。この状況を改善するため、正規の医療資格を持たない地域の住民が、マラリアかどうか徴候や症状の確認を行ったり、mRDTを使用したりして、マラリアを診断、治療するための訓練を受けている。これらを担うのは、地域保健に従事する医療者や、調剤薬局ではないドラッグストアの販売員な...
2 years 2 months ago
成人における大腿骨近位部骨折手術後のモビリティストラテジー(より良い動きをすることを目的とした治療法)は歩行能力を改善・回復させるか? 要点 移動能力とは、立ち上がりや歩行など、動く能力のことである。モビリティストラテジーとは、より良い動きをすることを目的とした治療法である。 大腿骨骨折から4か月後に、病院で行われる運動療法が移動能力を中等度改善する可能性がある。その他の主な結果(評価項目)に対する運動療法の効果は不明であった。大腿骨近位部骨折後の退院後に行う運動療法 により、移動能力が向上し、おそらく歩行速度が上がり、機能がわずかに改善され、転倒が減少する。 今後は、どのような治療法が最も効果的なのか、また、その治療法が低所得の国でも有効なのかに焦点を当てた研究が必要である。 大腿骨近位部骨折の後、移動能力を向上させるためにできることは何か? 大腿骨近位部骨折の手術後のケアの主な目的は、安全に自分の足を動かし、再び歩けるようにすることである。初めはベッドで安静にし、体重負荷を制限する場合もある。そして、歩行の再訓練、運動プログラム、電気刺激など、移動能力を改善するためのさまざまな戦略が、入院中やしばしば退院後に用いられる。 何が知りたかったのか? 以下の内容を検討した: - 病院や退院後に行われる運動療法が、より良い動きの獲得に役立つかどうか; - 大腿骨近位部骨折の後、どのよ...
2 years 2 months ago
成人の肺炎に対する胸部理学療法 レビューの論点 胸部理学療法は成人肺炎の支持療法として有効かつ安全か? 背景 肺炎は、世界中のあらゆる年齢層が罹患する最も一般的な健康問題の1つである。肺炎の治療は抗生物質が中心であるが、酸素供給などの支持療法も患者の予後を改善するために有効な場合がある。気道浄化の手技である胸部理学療法は、信頼できるエビデンスがないまま、成人の肺炎の支持療法として広く用いられてきている。 検索日 エビデンスは2022年5月までのものである。 研究の特性 合計974人の参加者を含む8件の研究を対象とした。今回の更新では、新たに2件の試験(540人)を組み入れた。すべての研究は、入院患者を対象としている。研究では次の5種類の胸部理学療法を検証した:従来の胸部理学療法(痰の排出を助ける徒手的手技)、アクティブサイクル呼吸法(痰の排出を助ける一連の呼吸法)、整骨的徒手療法(呼吸機能と痰の排出を改善するために理学療法士が手の力で誘導する治療法)、呼気陽圧(気流抵抗を増加させて痰の排出を改善する装置の使用)、高周波胸壁振動(特殊装置による胸壁振動で痰の排出促進) 主な結果 1. 死亡 従来の胸部理学療法、整骨的徒手療法、高周波胸壁振動療法(理学療法なし、またはプラセボ療法との比較)は、死亡を減らす効果はほとんど、または全く無い可能性があるが、エビデンスの確実性は非常に低い。 ...
2 years 2 months ago
オピオイド系鎮痛薬の依存症に対するオピオイド維持療法 要点 1.メサドンはブプレノルフィンよりも多くの人を治療にとどめるかもしれない。 2.オピオイドの使用については、メタドンの方がブプレノルフィンより少ないという報告があったが、尿検査では両群間に差はなかった。 3.ブプレノルフィンによる維持療法は、おそらく非オピオイド治療よりも多くの人に治療を続けさせ、オピオイドの使用を減らすのに役立つと思われる。 オピオイド系鎮痛薬の依存性とは? 1990年代半ば以降、世界の一部地域で医薬品オピオイド(疼痛治療薬)の使用量が急激に増加している。利用の増加に伴い、医薬品であるオピオイドの依存症(アディクション)の治療を希望する人が増えている。現在、ほとんどの治療ガイドラインは、ヘロイン(依存性の高いオピオイド)に依存した人々を対象に行われた研究に基づいている。医薬品のオピオイドを使用する人は、慢性疼痛や精神症状の有病率が高いなど、ヘロインを使用する人とは重要な点で異なる可能性がある。 知りたかったこと このレビューは、医薬品オピオイド依存症の治療において、異なるオピオイド作動薬維持療法(すなわち、メタドンやブプレノルフィンなどの治療薬を少なくとも30日間投与し、その人が無許可の薬の使用を減らせるようにすること)を比較しようとしたものである。また、維持療法の結果を、解毒(体内から薬物を取り除くこ...
2 years 2 months ago
COVID-19後の持続的な嗅覚障害(嗅覚機能障害)の予防のための介入 なぜこれが重要なのか? COVID-19は、嗅覚に問題を生じることがわかっている。匂いを感じる能力が低下することもあれば、完全に嗅覚が失われることもある。多くの人は短期間で回復するが、数週間から数か月間続く人もいる。このレビューでは、嗅覚を失ってからすぐに(症状が始まってから4週間以内に)、長期的な問題にならないようにするための治療法があるかどうかを検討する。 どのようにしてエビデンスを特定し、評価したか 結果をまとめるために、医学文献から関連するすべての研究を検索した。また、研究の規模や実施方法などを考慮して、エビデンスの確実性を評価した。これらの評価に基づいて、エビデンスの確実性を「非常に低い」、「低い」、「中等度」、「高い」に分類した。 どのような研究が見つかったか? その結果、5件の研究が完了していることがわかった。 副腎皮質ステロイド(薬)(以下、ステロイド)の点鼻と無治療の比較 この治療法については、3件の研究が行われた。 ステロイドの点鼻用スプレーは、特定の検査で測定すると(嗅覚について人に尋ねるよりも)、嗅覚にほとんど、あるいは全く影響を与えないかもしれない。 その他のエビデンスは確実性が非常に低いため、以下の指標に関してステロイド点鼻用スプレーが無治療よりも優れているか劣っているかはわからな...
2 years 3 months ago
肝細胞がんの診断における造影超音波検査はどれ程正確か? 要点 慢性肝臓病を患う成人の場合、造影超音波検査(CEUS)は肝細胞がんがある人の約22.2%を見逃し、適時にまたは適切な治療を受けられない。一方、6.2%の人は肝細胞がんと誤診され不必要な精密検査や治療を受ける可能性がある。 手術で切除可能な肝細胞がんに限っても、CEUSは肝臓の一部を切除する手術を受けられる患者の22.5%で肝細胞がんを見逃し、一方、7.3%の人が誤ってがんと診断され不必要な精密検査や治療を受ける可能性がある。 研究の実施方法に問題があったために、CEUSによる肝細胞がん検出の精度は、実際より高く見えているかも知れない。 なぜ肝細胞がんの診断能向上が重要なのか? 肝細胞がんは肝臓に発生するがんで、世界のがん発症数では6位、がん関連死亡数では4位である。また、正確な原因を問わず、慢性肝臓病を患っている人に多く発生する。血液検査または超音波検査の結果から肝細胞がんが疑われる人は、さらに画像検査や生検(肝臓の小片を採取して検査する)などの精密検査を受けることになる。がんが早期に発見されれば、肝臓の一部を切除したり、肝臓移植を受けたりすることができる。進行した肝細胞がんでは、化学療法が必要となるだろう。診断検査で肝細胞がんが見逃されると、患者は適切な治療を受けないままとなる。しかし、実際にはないのに、誤って肝細胞...
2 years 3 months ago
女性の尿失禁に対する保存的介入:コクランレビューのオーバービューレビュー 尿失禁とは何か 膀胱の問題は女性に多い。頻繁にトイレに行きたくなったり、急にトイレに行きたくなったり、時には間に合わなくなったりすることを切迫性尿失禁と呼んでいる。切迫性尿失禁は、何らかの理由で脳からの排尿(膀胱を空にする)信号がかなり強くなり、その信号が必要以上に頻回に発信されると起こる。くしゃみや運動で漏れる場合はストレス性尿失禁と呼ばれ、膀胱からの出口を制御する筋肉が正常時よりも弱ってくると起こる。女性はこの2つのタイプが混在していることもあり、その場合を混合性尿失禁と呼ぶ。 膀胱の問題による症状が多くの心労を生じることがある。たとえば、外出に気が進まないことが多くなり、散歩や運動教室に参加するのが怖くなってしまう恐れがある。そのような女性は孤独感を感じていることが多く、膀胱症状のない女性よりもQOLが有意に低下している。 尿失禁の治療法 尿失禁の治療法には、主に「保存的治療」(侵襲的な方法を避ける)、薬物療法、手術がある。まずは保存的治療を行うべきである。これには、(電気刺激などの付加的治療の有無に関係なく)骨盤底筋(尾てい骨(尾骨)と恥骨の間にある、膀胱、腸、腟、子宮を支える筋肉)のトレーニング、膀胱訓練、器具を利用する治療があげられる。通常、専門的な訓練を受けた理学療法士や看護師が治療を実施する...
2 years 3 months ago
進行性卵巣がん女性患者における腫瘍を取り除く超根治(拡大)手術と標準手術との比較 レビューの論点 卵巣がんの治療において、超根治(拡大)手術と標準的な手術の利点と弊害は何か? 背景 卵巣は子宮の両側にある小さな臓器で、卵子をつくり、貯蔵し、月経(生理)を制御するホルモンを作っている。卵巣がんは、生殖器系のがんの中で、女性の死因として最も多いがんである。進行した卵巣がんの女性が、標準的な手術よりもはるかに広範囲に腫瘍を取り除く「超根治」手術を受けた方が予後が良いかどうかについては、意見が分かれている。進行したがんにおける標準的な手術は、根治的な要素を持ちながら、さらに根治的な手術のうちの最低限必要とされる多くの外科的処置で構成される。超根治(拡大)手術は、標準的な手術の延長線上にあり、少なくとも1つ以上の広範囲にわたる処置が追加される場合がある。 レビューの方法 進行した卵巣がんの女性に対する超根治手術と標準的な手術を比較した研究を科学文献で検索した。最も優れた研究手法とされるランダム化比較試験と、異なる種類の手術を受けた女性のグループ間の差異を許容する方法を用いて分析された非ランダム化試験を検索した。 主な結果 3件の非ランダム化研究を同定した。女性は無作為に割り付けられたのではなく、それぞれの治療を受けるように選ばれたので、この種の研究ではバイアスのリスクが非常に高く、すべての...
2 years 3 months ago
統合失調症患者に対する抗精神病薬の減量 要点 - 抗精神病薬の数を減らすと、薬効が無くなるなどの理由で早期に試験から離脱する参加者が増える可能性がある。 - 研究数や参加者の数が少ないため、確実な結論を出すことはできない。 背景 統合失調症は深刻な精神疾患である。この病気の人は、自分の考えや信念、思いと現実を区別するのに苦労している。例えば、頭の中で声が聞こえていても、本当に誰かに話しかけられているように感じられることがある。 主に抗精神病薬と呼ばれる薬で治療する。統合失調症の患者には、効果的な治療を実現するために、複数の抗精神病薬による治療が提供されることがよくある。抗精神病薬の使用は副作用と関係があり、異なる抗精神病薬が相互に作用して副作用を悪化させる可能性がある。 知りたかったこと 抗精神病薬の数を減らすことが、同じ数の抗精神病薬を使い続けることと比較して、以下の指標を改善するかどうかを調べたかった: - 生活の質(QOL) - 再入院者数 - 副作用により早期に試験を終了した人の数 - 日常生活動作 - 再発 - あらゆる理由による早期に試験を終了した人の数 - 副作用が1つでもある人の数 実施したこと 統合失調症患者において、抗精神病薬の数を減らすことと、同じ数の抗精神病薬を維持することを比較検討した研究を検索した。 研究方法や研究規模のような要因に基づいて、研究結果を...
2 years 3 months ago
生徒の健康を向上させるための学校ベースの方針と実践の改善 要点 - 学校やその職員は、支援する戦略が用いられた場合、生徒の健康的な食事、身体活動、肥満、タバコやアルコールの使用に対処するための介入をより適切に実施することができる。 - 実施が支援されている学校ベースの介入は、生徒の健康的な食事、身体活動、肥満またはタバコの使用を改善する上で、わずかに効果が高い可能性がある。 - ほとんどの研究では、学校での介入策の実施を支援する戦略の経済的評価の報告や、考えられる有害作用の評価はなされていない。 知りたかったこと 生徒の食事、身体活動、不健康な体重増加、タバコやアルコールの使用に対処するための学校ベースの介入策の実施を支援するために、どのような戦略が有効であるかを知りたかった。また、費用対効果はあるのか、有害作用はないのか、などを知りたかった。戦略の例としては、品質向上のための方法、教育や訓練、学校の様子に関するフィードバック、注意書きや注意喚起、教育資源(マニュアルなど)などがある。 実施したこと 介入の実施を支援する戦略の使用したものとしていないものを比較した研究、あるいは2つ以上の異なる実施戦略を比較した研究について、以前に実施した検索を更新した。これらの研究は、生徒の栄養、身体活動、肥満、タバコやアルコールの使用に対処するための学校での介入策の実施を支援するための戦略につ...
2 years 3 months ago
避妊のために用いる子宮内避妊用具(IUD)に関連した、月経過多や月経痛に対する薬 背景 女性が子宮内避妊用具(IUD)の使用を中止する最も多い理由は、月経時の出血量が多いことと痛みである。痛み止めやその他の薬、または他の方法で、IUDの使用に関連する出血や痛みを軽減できるかどうかを調べるためにレビューを行った。 研究の特徴 本エビデンスは2021年1月現在のものである。IUD使用に関連する月経過多や月経痛の治療や予防について調べた研究を対象とした。治療法は、その他の薬、無治療あるいはプラセボ(偽薬)と比較された。 主な結果 このレビューには、計3,689人の女性を対象とした21件の研究が含まれている。11件の研究では月経過多や痛みの治療について検討し、10件の研究ではその予防について検討していた。ほとんどのエビデンスは、参加者の少ない単独の研究から得られたものである。得られた研究結果は、確実性が乏しい。確実性が限定的になったのは、非常に少ない人数しか参加していない研究があったり、介入内容が多様であったり、研究の実施方法について明確な報告がなかったりするためである。 月経過多の治療 銅付加IUD ビタミンB1は、月経の出血がある期間、少量でも出血が認められる日数、1日あたりのナプキン使用枚数を減少させるかもしれない。メフェナム酸はトラネキサム酸と比較して、出血量を減らせるが、出血す...
2 years 3 months ago
入院中の高齢者の身体拘束を予防・軽減するための介入 検討した内容 身体拘束とは、人が動く自由を奪う道具のことである。ベッド柵、ベッドや椅子からの転落を防ぐベルト、椅子やベッドのベルト、固定テーブル、両手を自由に使えないようにするミトンなどである。国によっては、一般病棟で高齢者に身体拘束がごく普通に行われている。主な理由は、転倒や転落によるケガを防ごうとするため、あるいは点滴やチューブを抜かれるのを防ごうとするためである。また、身体拘束は、興奮状態や攻撃的な行動をとる人、人目を避けて病棟内を徘徊する人など、医療スタッフにとってケアを困難にし、危険を伴う可能性のある行動への対応として行われる。移動に問題がある高齢者や、認知症やせん妄による認知機能障害を持つ高齢者の入院治療で最もよく使用される。 身体拘束の使用が転倒やチューブ抜去の防止に有効かどうかは不明であるが、その使用は恐怖、怒り、不快の感情を増大させ、幸福感を低下させる可能性がある。身体拘束の使用によるその他の予期せぬ結果には、運動機能の悪化、褥瘡や失禁のリスクの増加、身体拘束の使用に直接関連する傷害などがある。そのため、身体拘束は入院中の高齢者の回復やリハビリテーションに悪影響を及ぼす可能性がある。ガイドラインでは、その使用を減らすか停止することが推奨されており、国によってはほとんどの状況で違法とされている。身体拘束の防止と削...
2 years 3 months ago
認知症治療薬(メマンチン)は自閉スペクトラム症の人に効くか? 背景 自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder: 自閉症)は、幼少期に発症する疾患である。主な症状は、社会的コミュニケーションの持続的な困難(例:前後の会話、言葉を使わないコミュニケーション、人間関係の構築・維持の困難)、反復的で制限された興味や行動(例:反復的な物言い、制限された興味や行動、変化に対する抵抗、感覚過敏など)である。およそ1%から2%の子供が自閉症である。自閉症の患者は、注意欠陥多動性障害(ADHD)、不安、言語障害(例:文法の理解や使用が困難)、知的障害など、他の疾患を抱えていることが多い。自閉症は、生活の質、学業成績、社会的関係に悪影響を及ぼす可能性がある。メマンチンは従来から認知症の治療に使われている薬であるが、一部の研究では、中核となる自閉症症状を減少させる可能性が示唆されている。もし、メマンチンが自閉症の中核的な症状を変えるために使われるのであれば、その効果と安全性を評価することが重要である。このレビューは、自閉症におけるメマンチンの使用に関する研究のエビデンスをまとめたものである。 レビューの論点 メマンチンは自閉症と関連行動の中核症状を変えるか? 検索日 エビデンスは2022年2月14日までのものである。 研究の特徴 自閉症におけるメマンチンの有効性を評価した2...
2 years 3 months ago
プロバイオティクス(生きた微生物)は、風邪などの上気道感染症を予防することができるか? 要点 プロバイオティクスは、急性の上気道感染症(URTI)の1回以上の発症を予防するのに有益かもしれない。また、3回以上のURTIの発症を予防するのに有益であると考えられる。高齢者を対象としたより多くの研究が必要である。プロバイオティクス使用の有益性と潜在的な有害性をより良く推定するためには、より大規模でよりよくデザインされた研究が必要である。 急性上気道感染症とは? 急性の上気道感染症(URTI)には、風邪、インフルエンザ、および咽喉や鼻、副鼻腔の感染などがある。症状としては、発熱、咳、痛み、頭痛などがある。急性のURTIの多くはウイルスの感染によるもので、通常は3日から7日で回復する。 プロバイオティクスとは? プロバイオティクスは一般的に、適切な量を摂取することで体に有益な効果をもたらす生きた微生物と説明されている。代表的なものとして乳酸菌やビフィズス菌があり、ヨーグルトや豆乳ヨーグルトなどの発酵食品や栄養補助食品として一般的に摂取されている。 レビューの目的は何か? 健康な免疫系を持つあらゆる年齢層の人々において、プロバイオティクスが急性の上気道感染症を予防するかどうかを調べたいと考えた。 何を行ったのか? 上気道感染症に対するプロバイオティクスの効果を調査した研究を検索した。比較およ...
2 years 3 months ago
人工授精やタイミング療法による妊娠を希望する、不妊症の女性における黄体補充療法は、安全で有効か。 背景 黄体期は、月経周期の一部であり、排卵(卵子が卵巣から放出されること)から月経が始まるまでの期間をさす。この時期には、プロゲステロンというホルモンが卵巣から体内に分泌され、妊娠の可能性に備える。卵巣刺激(排卵誘発剤の使用)は、黄体期のプロゲステロン産生に影響を与える可能性がある。黄体期のプロゲステロン濃度が低い場合、12週以上継続する妊娠や生児出産などの妊娠転帰の可能性が低下することが知られている。プロゲステロン、およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG、妊娠すると産生されるホルモンで、プロゲステロン産生を増やす)や排卵後のプロゲステロンの値を増やすゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストなどの薬剤を用いた黄体補充療法は、妊娠の転帰を改善させると考えられている。 研究の特徴 25件のランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群のうちの1つに無作為に割り当てるタイプの試験)を組み込み、合計5,111人の参加者を対象とした。プロゲステロンとプラセボ(ダミーの治療)または無治療との比較、腟に挿入するプロゲステロン剤の異なる用量、異なる経路で補うプロゲステロン、GnRHアゴニストとプラセボまたは無治療との比較、腟に挿入するプロゲステロン剤とGnRHアゴニストとの比較、hCGと無治療...
2 years 3 months ago
成人の不眠症に対する音楽の効果 レビューの論点 本レビューでは、成人の不眠症(睡眠障害)に対する音楽鑑賞の効果と、その効果に影響を与える可能性のある要因について評価が行われた。 要点 音楽が睡眠の質に対して有益な効果を与えることが分かった。しかし、他の結果(評価項目)については、十分な被検者がいなかったことと、データの評価者があらかじめについて治療法を知っていたことにより、質の高いエビデンスを見つけることができなかった。 不眠症とは何か? 世界中で何百万人もの人が不眠症を経験している。不眠症では、寝つきが悪かったり、眠りが浅かったり、あるいは睡眠の質が低下したりすることがある。 睡眠不足は、心身の健康に影響を及ぼす。睡眠不足がもたらす結果は、個人および社会の両方に負担をもたらす。睡眠を改善するために音楽を聴く人は多いが、その効果については明らかではない。 何を行ったのか? 電子データベースの検索により、関連する研究が特定された。1,007人の参加者を含む13件の研究が対象となった。これらの研究では、音楽を聴くことによる効果を、通常の治療、または無治療と比較していた。通常の治療とは、睡眠衛生教育(睡眠を促進する一連の行動について学ぶこと)、または慢性疾患に関連した不眠症を持つ参加者に対する標準的治療のことである。これらの研究では、参加者は毎日25分間から50分間、3日から3か月間、...
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