Latest Japanese Reviews

成人の糖尿病性腎臓病の患者における低たんぱく質食

11 months ago
成人の糖尿病性腎臓病の患者における低たんぱく質食 何が問題なのか? 透析を必要としない糖尿病性腎臓病(DKD)の患者には、慢性腎臓病の進行を遅らせるために、食事中のたんぱく質の量を制限することが推奨される場合がある。しかし、たんぱく質の摂取量については依然として不明な点がある。 何を行ったのか? 透析を受けていない成人のDKD患者において、低たんぱく質食が腎臓病の進行に及ぼす影響に関するエビデンスについて検索を行った。検索したエビデンスは2022年11月17日までのものである。低たんぱく質食(0.6~0.8g/kg/日)と通常食、または非制限食(1.0g以上/kg/日)について12か月以上比較を行った研究を検索し、すべての研究の結果を統合した。 何が見つかったのか? 異なる病期の慢性腎臓病を持つ計486人のDKD患者を対象とした8件の研究が見つかった。研究には、1型糖尿病と2型糖尿病が含まれていた。その結果、低たんぱく質食の糸球体濾過率の減少を遅らせる効果については不確実であった。通常食、または非制限食と比較した場合、低たんぱく質食は死亡、または透析が必要な腎不全への進行に対し、ほとんど影響を及ぼさない可能性が示唆された。ほとんどの研究で栄養状態が報告されており、低たんぱく質食群において栄養不良の可能性を示した研究は1件のみであった。健康に関連した生活の質(QOL)にはほとんど、...

早産・低出生体重児の動脈管開存症(PDA)に対するパラセタモール(アセトアミノフェン)の効果と危険性は何か?

11 months 3 weeks ago
早産・低出生体重児の動脈管開存症(PDA)に対するパラセタモール(アセトアミノフェン)の効果と危険性は何か? 背景 早産児や未熟児、低出生体重児によく見られる合併症に、動脈管開存症(PDA)がある。赤ちゃんが生まれる前は、肺がまだ機能していないため、肺への血液循環は必要ない。その代わり、胎盤が胎児の血液に酸素を供給している。PDAは、肺動脈(生まれた後には、心臓から肺に酸素が少ない血液を運ぶ血管)と大動脈(肺静脈を通って肺から心臓へと戻された、新鮮な酸素を多く含んだ血液を、心臓から全身へと送り出す血管)をつなぐ胎児の仮設の血管である。言い換えれば、PDAは肺を通る胎児の血液循環を「ショートカット」させるものである。子宮の中にいる時は生命を維持するために必要で、出まれた後は閉じるべき血管であるが、児の発達が未熟な場合に動脈管が開いたままになってしまうことがある。 早産児のPDAは、生命を脅かす合併症と関連している。PDAの治療には、プロスタグランジンの生成を抑制してPDAの閉鎖を促すインドメタシンやイブプロフェンという薬剤が一般的に使われてきた。プロスタグランジンは、特定の臓器に限らず全身で作られる化学物質で、特に軟部組織が損傷した場所で作られる。その合成は、治癒の過程において重要な役割を担っている。この物質は、動脈管が開いている状態を維持するのに重要な役割を果たすことが知られてお...

かぜ予防のためのワクチン

11 months 3 weeks ago
かぜ予防のためのワクチン レビューの論点 ワクチンはかぜの予防になるか? 背景 かぜは、主に上気道のウイルス感染によって引き起こされる。かぜをひいた人は、体調が悪くなり、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みの有無にかかわらず咳をし、体温が少し高くなる。しかし、通常、自己の免疫システムがウイルス感染による影響をコントロールすることで、回復する。かぜに対する治療は、症状を和らげることを目的としている。世界的に見ると、かぜは広く病気を引き起こし、大きな経済的損失をもたらしている。米国では、かぜによる経済的損失は年間400億ドルを上回ると推定され、これには数百万日もの欠勤日数や学校での欠席日数が含まれる。欧州では、1回の発症あたりの総費用は最大1,102ユーロとなる可能性がある。また、不適切な抗菌薬処方による支出も大きい。かぜの原因ウイルスは複数存在するため、予防のためのワクチンを製造することは困難であった。健康な人に対するかぜ予防のためのワクチンの効果はまだ不明である。 検索日 エビデンスは2022年4月26日現在のものである。 研究の特性 今回の更新では新規の試験は見つからなかった。このレビューには、過去に確認されている、1965年に実施されたランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群のうちの1つに無作為に割り当てるタイプの試験)が含まれている。この研究は、米国海軍の訓練施設に所属...

小児の急性呼吸器感染症の予防と治療における経口ホメオパシー薬の利点とリスクは何か?

11 months 3 weeks ago
小児の急性呼吸器感染症の予防と治療における経口ホメオパシー薬の利点とリスクは何か? 要点 ホメオパシーは、補完代替医療の一種である。これは、健康な人に病気や症状を引き起こす可能性のある物質が、ごく少量であれば、病気や症状を治療できるということ、そして、高度に希釈された物質の分子は、元の物質の記憶を保持しているという2つの主要な考え方に基づいている。明確なエビデンスが存在しないために、小児の急性呼吸器感染症(ARTI)の予防と治療に対する経口ホメオパシー薬の利点とリスクは、未だ不明である。研究デザインや報告の質が低い研究においては、しばしば経口ホメオパシー薬の有益性の可能性が示唆されているが、質の高い研究においては有益性を示す報告はない。 呼吸器感染症とは何か? 風邪やインフルエンザに代表される呼吸器感染症は、一般的にウイルスの感染によって引き起こされるが、肺や耳においては細菌の感染によって引き起こされるものも存在する。これらの感染症は同時に発症することもあり、見分けるのが困難な場合がある。これらの感染症の多くは、治療を行わなくても改善するが、最初の感染が治まった後にも症状が続くことがある。そのため、治療は症状の緩和が目的となる。 なぜ小児における呼吸器感染症が重要なのか? 小児は、年間で平均3回から6回の呼吸器感染症にかかる。ほとんどは軽症で、治療が可能だが、急性(症状が重く、急...

根管治療(歯の神経の治療)は、1回で完了すべきか、複数回に分けて行うべきか?

11 months 3 weeks ago
根管治療(歯の神経の治療)は、1回で完了すべきか、複数回に分けて行うべきか? 要点 歯の中心部にある神経や血管を含む柔らかい組織(歯髄)が、生きているか死んでいるかに関わらず、単回治療でも、複数回による治療でも、歯内療法(根管治療)は同程度に効果的である。 また、どちらの治療法を用いたとしても、治療後の短期的な痛みを伴うことがある。 根管治療とは何か? 根管治療とは、歯髄が回復不可能なほど損傷している場合に必要となる、歯科における一般的な処置(いわゆる「神経の処置」)である。根管治療は、治療後、痛みなどの症状がなく、レントゲン上で骨や歯の支持組織への損傷が見られず、また、歯肉の腫れや、ろう孔(膿の通路)の形成などの感染の兆候が見られない場合に「成功」とみなされる。 根管治療はどのように行われるのか? 根管治療は、1回または複数回の治療で行われる。まず、治療する歯にゴム製のシート(ラバーダム)を装着し、唾液から隔離した後、ドリルで歯冠(歯の口の中に見える部分)を歯髄に到達するまで削り、歯髄を除去する。そして根管(歯髄の入っていた管)内を消毒した後、最後に詰め物(根管充塡材)を用いて根管内を密封する。 以前は、これらの処置は2回以上に分けて行われ、次回の治療との間に少量の薬剤(根管貼薬剤)を根管内に入れておくことで、残存した細菌の殺滅を図っていたが、現在は薬剤(根管貼薬剤)を使用せず...

成人における末梢静脈穿刺に超音波ガイドは有効か?

11 months 3 weeks ago
成人における末梢静脈穿刺に超音波ガイドは有効か? 末梢静脈穿刺とは? 末梢静脈内への投与経路の留置は、医療において最も必要とされる処置の1つである。(カテーテルまたはカニューレと呼ばれる)細い柔軟な管を針を使って静脈に入れる方法である。この手技は「カニュレーション(穿刺)」と呼ばれる。末梢静脈路は輸液や薬物の投与、採血の際に必要となる。 通常、末梢静脈カニュレーションは手や腕の標的とする静脈を見たり触れたりして行われる。この手法を「ランドマーク法」と呼ぶ。末梢静脈路の留置が困難な場合があり、医療従事者が適切な静脈を見つけられない場合は何度も針を刺す必要がある。ランドマーク法で末梢静脈カニュレーションが失敗した場合、次の方法として頸部や胸部に中心静脈路を留置することが多い。しかし、中心静脈路の留置は感染症、血栓症(血の塊)、気胸(肺の虚脱)などの重大な合併症を引き起こす可能性がある。また、末梢静脈路に比べてより時間や費用がかかる。したがって、中心静脈路の挿入は最後の手段とされるべきである。 超音波ガイド(USG)はどのように役立つのか? 超音波は目には見えない標的にする静脈を見つけることができる。また、超音波により医療従事者は管を挿入する際、針や傷つけてはならない重要な周囲の構造を見る事ができる。中心静脈カニュレーションには超音波ガイドがよく使われるが、末梢静脈カニュレーションへの...

COVID-19を予防するためのワクチンの効果とリスクは何か?

11 months 4 weeks ago
COVID-19を予防するためのワクチンの効果とリスクは何か? 要点 - ほとんどのワクチンは、COVID-19患者やCOVID-19の重症患者を減少させるか、減少させる可能性がある。 - 多くのワクチンにおいて、発熱や頭痛などの事象を経験する人の数が、プラセボ(薬の成分は入っていないが、見かけ上本物のワクチンと同様に見える偽のワクチン)と比較して増加する可能性がある。これは、主にワクチンに対する体の反応によるもので、予期される事象である。通常、軽度かつ短期間である。 - 多くのワクチンは、プラセボと比較して、重篤な有害事象の発生率にはほとんど、または全く差がみられなかった。 - 研究における死亡者数が少なかったため、死亡率に関してワクチンとプラセボの間に差があったかどうかを判断するためのエビデンスは不十分であった。 - ほとんどの研究では、ワクチンの短期間における効果が評価されており、懸念される変異株に対する効果は評価されていなかった。 SARS-CoV-2、およびCOVID-19とは何か? SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2、新型コロナウイルス)は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の原因となるウイルスである。SARS-CoV-2に感染したすべての人が、COVID-19の症状を発症するわけではない。症状は軽度なもの(発熱や頭痛など)から、生...

透析を必要とする慢性腎臓病患者に対するカルニチン補充療法の効果

11 months 4 weeks ago
透析を必要とする慢性腎臓病患者に対するカルニチン補充療法の効果 レビューの論点 カルニチン欠乏症は、透析を必要とする慢性腎臓病(CKD)患者にみられる重要な問題である。透析に伴うカルニチン欠乏によって、透析中の症状(例:筋肉のけいれん(こむら返り)や筋力低下など筋肉症状や低血圧)および腎不全の慢性合併症(例:貧血)が悪化する可能性がある。しかし、カルニチンを補充すれば、透析に伴うカルニチン欠乏の症状を改善できるかどうかは不明である。 本レビューで実施したこと 透析を要するCKD患者に対するカルニチン補充に関して実施された全ランダム化比較試験について、医学文献を検索した。目的は、カルニチン補充が生活の質(QOL)およびカルニチン欠乏による症状を改善するかどうかを明らかにすることにあった。また、有害事象の観点から、カルニチン補充が安全かどうかも評価した。エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて評価した。 わかったこと 透析を受けているCKD患者計3,398人を対象とした研究52件が見つかった。L-カルニチンがQOLおよび透析に伴うカルニチン欠乏による症状に与える影響については、明らかにすることができなかった。一方、L-カルニチンによってこのような...

3剤併用吸入療法とは何か、どのような場合に使用され、喘息にどのような効果をもたらすのか。

11 months 4 weeks ago
3剤併用吸入療法とは何か、どのような場合に使用され、喘息にどのような効果をもたらすのか。 喘息の管理に吸入はどのように使用されるのか。 喘息の管理には、重症度に応じて段階的な一連の治療が必要である。初期治療は、通常、必要に応じて短時間作用型吸入薬を使用し(ステップ1)、必要に応じて喘息のコントロールを改善するために低用量から中用量の吸入ステロイド薬を毎日追加する(ステップ2)。その後、必要に応じて吸入ステロイドに加え、気道の通路を拡張・弛緩させて呼吸の苦しさを軽減する長時間作用型β(ベータ) 2 刺激薬(LABA)と呼ばれる気管支拡張薬を使用するのが一般的である(ステップ3、4)。 吸入ステロイドとLABAの併用で喘息がコントロールできない場合、どのような選択肢があるか。 現在のガイドラインでは、中用量吸入ステロイドとLABAの2剤併用吸入療法で喘息がコントロールできない場合、高用量の吸入ステロイドを使用するか、または長時間作用型抗コリン薬(LAMA)という別の気管支拡張薬の追加(すなわち3剤併用吸入療法)を行うことが推奨されている(ステップ5)。 本レビューにおける疑問に、どのように答えたのか。 コントロールされていない喘息を抱えた青年と成人の計17,161人を含む17件の研究からデータを収集し、ネットワークメタ解析という特殊な方法を用いて、複数の吸入療法の群を同時に比較するこ...

妊娠37週以前の単胎児出産を防止するための膣頸部支持器具

1 year ago
妊娠37週以前の単胎児出産を防止するための膣頸部支持器具 早産とは? 早産とは、妊娠37週未満での出産をいう。早産は新生児の主な死因である。多くの場合、早産は子宮頸管(子宮の下の細い部分)の弱さ(訳注:子宮口が閉鎖した状態を保つ力のことをいい、専門用語では頸管無力とされる)が原因である。 早産を防ぐために、子宮頸管の弱さはどのように治療すればよいのか。 子宮頸管の脆弱性を治療する方法としては、子宮頸管縫縮術(子宮頸管に糸を通して縫い縮めることで、子宮口が早期に開くのを防ぐ)、待機的管理(問題が生じるまで介入せずに経過観察)、女性ホルモンのプロゲステロンによる内科的治療(経膣投与) または子宮頸管ペッサリー(子宮頸管を閉じておくためのシリコンリング)の使用が挙げられる。子宮頸管ペッサリーは、妊娠12週から24週の間に膣の上部に挿入され、37週で取り外される。麻酔を必要としない簡便な低侵襲術で、子宮頸部縫縮術に取って代わる可能性がある。 知りたかったこと 1人の赤ちゃんを妊娠し(単胎妊娠)、子宮頸管が弱くなるリスクがある女性の早産予防において、子宮頸管ペッサリーが、他の治療または無治療よりも優れているかどうかを知りたかった。 本レビューで実施したこと 子宮頸管が弱くなるリスクのある単胎妊娠の女性を対象に、子宮頸管ペッサリーを他の治療法、または無治療と比較検討した研究を検索した。研究結...

心臓手術患者における血圧目標値について

1 year ago
心臓手術患者における血圧目標値について レビューの論点 心肺バイパス術(CPB)による心臓手術を受ける患者で、高い血圧目標値は、低い血圧目標値と比較してどのような効果をもたらすか? 要点 高い血圧目標値は、低い目標値と比較して、腎障害、認知(学習し理解する能力)障害、および生存においてほとんど差がない結果かも知れない。 血圧目標値を高くした場合、入院期間がわずかに長くなる可能性がある。 心臓手術とは? 心臓手術は、世界中でよく行われている手術である。ほとんどの術式の心臓手術は、CPBを使用して行われる。CPBは、心臓や肺の働きに代わり、血液を循環し、血液に酸素を取り込み、血液から二酸化炭素を排除する医療機器である。心臓手術を受ける患者は血圧が高い(高血圧症と呼ばれる)ことが多い。高血圧症の患者は、脳や腎臓などの重要な臓器への血流を維持するために、より高い血圧を必要とする。しかし、心臓手術時における最適な血圧目標値に関するエビデンスは乏しい。 何を調べたかったのか? 血圧目標値をより高くした場合とより低くした場合における、腎臓、脳、生活の質(QOL)、および入院中に起こる合併症に及ぼす影響を評価したかった。 何を行ったのか? CPBによる心臓手術において、高い対低い血圧目標値の比較を行った臨床研究を医学データベースで検索した。 何を見つけたか? 心臓手術を受けた737人を対象とした...

頭蓋照射を受けた成人における認知障害の予防および改善に関する介入

1 year ago
頭蓋照射を受けた成人における認知障害の予防および改善に関する介入 背景 原発性または続発性(転移性)脳腫瘍に対して、あるいは体の他の場所から脳への腫瘍の転移を防ぐために、脳への放射線照射を受けた人に、精神/認知能力/スキルの問題(認知の副作用)がよくみられる。脳への放射線照射によるこの毒性の副作用は、急性(治療中)または治療後早期(1~6か月)に発生し、可逆的である場合もある。しかし、晩期の毒性は何か月も何年も経ってから発生することがあり、発生した場合は一般的に不可逆的で、多くの場合ゆっくりと進行する。記憶障害、作業計画の問題、行動の変化などの後期認知障害は、生活の質(QOL)や通常活動を行う能力に深刻な影響を与える可能性がある。これらの晩期放射線障害の予防や治療を支援する介入は、患者の幸福を向上させる可能性がある。ここでは、脳への放射線照射に伴う認知機能の副作用を予防または治療することを目的とした薬理学的(医療用医薬品)および非薬理学的(心理学的)介入に関するすべての研究をレビューする。 研究の特性 2014年8月に発表されたオリジナルレビューでは、査読付き雑誌などの定期刊行物の論文を特定するために使用される4種類の文献データベースを検索した。介入群または比較群(対照群)に無作為に割り付けられた6件のランダム化比較試験を組み入れることができた。各試験はそれぞれ異なる介入策を評価...

腸管熱(腸チフス)治療用のセファロスポリン系抗菌薬

1 year ago
腸管熱(腸チフス)治療用のセファロスポリン系抗菌薬 要点 - セフトリアキソン(セファロスポリンの一種)は、成人および小児の腸チフスに対するアジスロマイシン、フルオロキノロン、クロラムフェニコール(他の抗菌薬)と比較して、性能に差がない可能性がある。 - セフィキシム(別の種類のセファロスポリン)も成人および小児の腸管熱の治療に使用できるが、フルオロキノロン系抗菌薬ほど有効でない場合がある。 - 政策立案者と臨床医は、腸熱の治療法を検討する際に、地域の薬剤耐性パターンを考慮する必要がある。 腸管熱とは? 腸管熱とは、腸チフスとパラチフスと呼ばれる2つの類似した病気の総称である。これらの病気は、 Salmonella typhi (腸チフスの原因微生物の名称)や Salmonella paratyphi A 、B、C(パラチフスの原因微生物の名称)と呼ばれる細菌によって引き起こされ、水や衛生環境が十分でない低・中所得国で最もよく見られる病気である。腸管熱は通常、発熱や頭痛に加え、下痢や便秘、腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振などを引き起こす。放置しておくと、人によっては重篤な合併症を引き起こし、死に至ることもある。 セファロスポリンとはどのようなもので、どのように作用する可能性があるのか? セファロスポリン系抗菌薬は、様々な感染症の治療によく使われる大きな抗菌薬のグループである。セファロ...

単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝子検査での5日目と3日目における胚生検の比較

1 year ago
単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝子検査での5日目と3日目における胚生検の比較 背景 嚢胞性線維症などの単一遺伝子疾患の既往歴や家族歴を持つ夫婦は、同じ遺伝子疾患を持った子どもを出産する確率を減らすために生殖補助医療(ART)を受けられるようになった。これは、単一遺伝子疾患の着床前遺伝子検査(PGT-M)と呼ばれるものである。PGT-Mでは、受精卵から細胞を採取し(生検)、遺伝子疾患について分析が行われた後、疾患を持たない受精卵が女性の子宮に戻される。生検は、胚発生後の3日目または5日目に行うことができ、現在は5日目における生検が最も広く用いられている。胚の生検を3日目に行うか、5日目に行うかによって、胚の発生の進展や着床、ならびに妊娠および周産期の結果に異なる影響を及ぼす可能性がある。 主な結果 ARTを受けている合計20人の女性を対象として、PGT-Mのために行われた5日目と3日目における胚生検を比較した1件のランダム化比較試験が見つかった。この研究からは、生児出生または流産の確率に違いがあるかどうかを示すのに十分なエビデンスが得られず、結果については非常に不確実であった。 エビデンスによると、3日目に胚生検を行った場合の生児出生率を40%と仮定した場合、5日目に行った場合の生児出生率は15%から85%の間であることが示唆されていた。 その他の妊娠および周産期の結果に関するエビ...

統合失調症がある人に対する抗精神病薬の減量

1 year ago
統合失調症がある人に対する抗精神病薬の減量 要点 抗精神病薬の投与量を減らすと、より多くの試験参加者が再発し、早期に試験から離脱する可能性がある。 生活の質(QOL)、機能、副作用に関する情報はほとんどなかった。 レビューテーマの紹介 統合失調症は、薬物治療(抗精神病薬)が必要な重い病気である。抗精神病薬の使用は副作用と関係があり、その副作用は投与量が多いほど悪化するようである。一方、症状に対する効果を発揮するためには、十分な量を投与する必要がある。 知りたかったこと 以下に示す項目の改善のために、抗精神病薬の量を減らすことが、同じ量を維持するよりも良いのかどうかを知りたかった。 – 生活の質(QOL); - 再入院した参加者の数; - 副作用のため早期に試験を終了した参加者の数; - 機能; - 再発; - 何らかの理由で研究を早期に終了した参加者の数; - 少なくとも1つの副作用があった参加者の数。 実施したこと 統合失調症患者において、抗精神病薬の量を減らすことと、同じ量の抗精神病薬を維持することを比較検討した研究を検索した。 研究結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 わかったこと 合計2,721人の統合失調症患者を対象とした25件の研究が見つかった。22件の研究(2,635人)のデータを解析のために使用した。研究期...

急性腎障害に対する腎代替療法(透析)の開始時期について

1 year ago
急性腎障害に対する腎代替療法(透析)の開始時期について レビューの論点 急性腎障害(AKI)は集中治療室(ICU)に入室した患者に非常に多く、腎機能が急速に低下することが特徴であり、死亡率が高い。AKI患者では、血清尿毒症毒素(クレアチニンや尿素)、血清カリウム値、代謝酸の値が上昇し、体液が蓄積され、ほとんどの場合、尿量の減少が認められる。この患者集団では、このような化学物質と体液過多が死亡率の上昇に関係する。理論的には、血液中の毒素や過剰な水分を早期に除去することで患者の予後(死亡率や腎機能の回復など)を改善できる可能性がある。 腎代替療法(KRT)は透析とも呼ばれ、過剰な水分や毒素を除去できる血液浄化技術である。腎代替療法は、カテーテル(静脈内に留置する中空で柔軟な管)を介して患者から脱血し、過剰な水分や毒素を除去する濾過システムに通し、浄化された血液をカテーテルから返血する。腎代替療法の早期開始は毒素や過剰な水分の除去を改善する。 本レビューの目的は、AKIの重症患者に対する腎代替療法の開始時期の違い(早期または標準)が、死亡、腎機能の回復、有害事象に及ぼす影響を詳しく調べることにあった。 本レビューで実施したこと 2022年8月4日までの文献を検索し、AKIを発症した重症患者4,880人を登録した研究12件を対象として評価を行った。 わかったこと 腎代替療法の早期開始は、...

心臓手術に伴う出血治療におけるプロトロンビン複合体濃縮製剤

1 year ago
心臓手術に伴う出血治療におけるプロトロンビン複合体濃縮製剤 このレビューの目的は、プロトロンビン複合体濃縮製剤を心臓手術に伴う出血を予防するため安全に使用できるか最近のエビデンスについて評価を行うことであった。また、他の治療法と比較した場合、死亡および他の重篤な合併症を減少させることができるかについても評価を行った。 背景 複雑な心臓手術に伴う出血は、管理することに挑戦し続けることができる。血液凝固経路は複雑で、心臓バイパス装置を使用されていると、血液中の特定の成分の減少が起きる。バイパス時間に依存して凝固因子が著しく減少することがある。新鮮凍結血漿とプロトロンビン複合体濃縮製剤が、これらの凝固因子を代替えする唯一の認識された方法である。新鮮凍結血漿は250から300mLがバッグに入っており、使用することで総血液量を増やすことができるが、心臓に余分な負担をかける可能性がある。プロトロンビン複合体濃縮製剤は粉末製剤であり、より少ない容量で溶解し投与する。希釈された新鮮凍結血漿はゆっくりと注入されるのに対し、この製剤は凝固因子が濃縮され迅速に投与されて速かに作用する。遺伝子組換え血液凝固第Ⅶa因子(rFⅦa)は、ヒトから得られたものではなく、人工的に作製されたもう一つの血液凝固因子である。出血が血液製剤で止めることができない程酷い時に用いられる。プロトロンビン複合体濃縮製剤がrFⅦa...

生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ

1 year ago
生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ レビューの論点 不妊治療のうち生殖補助医療(ART)を受けている女性において、採卵の一環として行われる卵胞フラッシュの安全性と有効性を評価しようとした。 背景 自然に妊娠するのが困難なカップルは、妊娠するための介入(治療)を受けることを選択するかもしれない。これらの介入は、生殖補助医療(ART)と呼ばれる。ARTのひとつに体外受精(IVF)がある。体外受精では、ホルモン剤を用いて卵巣を刺激し、それぞれの卵巣にある卵胞の中で卵を複数発育させる。この卵巣刺激に続き、これらの卵を採取するために、超音波ガイド下で卵胞内に針を挿入する。卵胞内を吸うだけでその内容物を回収する吸引法の代わりに、吸引後に卵胞内をフラッシュすることで、卵の回収率があがり、その結果、妊娠・出産の可能性が高くなるのではないかという提案がなされてきた。この方法は、卵胞フラッシュと呼ばれる。 研究の特性 合計1,643人の女性が、卵胞吸引単独群または卵胞吸引後フラッシュ群に無作為に割り付けられた15件の研究を対象とした。この2 つの手法に差があるかを見るため、主要な結果として出生率 (女性1000人あたり生まれた赤ちゃんの数)および流産率 ( 女性1000人あたりの流産数) について調査した。この分野で2021年7月に利用可能なすべての関連した研究を同定するため、包括的な検索を...

慢性非特異的腰痛に対するヨガ

1 year ago
慢性非特異的腰痛に対するヨガ 主要な結果 原因不明の腰痛(慢性非特異的腰痛)が長期間持続する人において、3カ月間ヨガをした場合としなかった場合では、疼痛と腰や背中の機能改善において、改善は小さいものの、ヨガは運動をしないよりもおそらく良いと考えられる。 腰や背中の機能改善について、ヨガと腰や背中に重点を置いた他の運動との間におそらくほとんどまたは全く差はないが、疼痛の改善についてはヨガと他の運動との間の差は明らかにされていない。 腰や背中の痛みは、ヨガの試験で最もよく報告された有害性であった。有害性のリスク(危険)は、ヨガをしない場合と比べてヨガによって高くなったが、ヨガと他の運動では同程度であった。ヨガが重篤な有害性のリスクと関連しているという示唆はなかった。 慢性非特異的腰痛とは何か? 腰痛はよく起こる健康問題である。多くの場合、痛みの原因は不明で、「非特異的」腰や背中の痛みと呼ばれる。人によっては、痛みが3カ月以上持続することもあり、この時点で「慢性」と呼ばれる。 非特異的な腰痛は通常、市販の鎮痛薬と運動で治療され、手術などの侵襲的な処置は必要としない。ヨガは腰痛の治療や管理に使われることがある。 わかったこと ヨガが腰痛に関連する機能(例えば、歩行、家の周りの仕事、着替えなど)、疼痛、生活の質(Quality of Life:QOL)を改善するかどうかを検証したいと考えた...

脳卒中後の感情的傾向に対する薬物療法

1 year ago
脳卒中後の感情的傾向に対する薬物療法 レビューの論点 脳卒中後の情緒不安定な人に対する薬の利益と害を評価すること。 背景 脳卒中後は、情動不安定になることがよくある。情動不安定とは、感情的行動をコントロールすることが難しい状態を意味する。脳卒中後の患者は突然泣き出したり、稀ではあるが明らかな理由もなく笑ったりすることがある。この傾向は特定の人々や介護者を困らせる。うつ病がある人に効果がある抗うつ薬は脳卒中後の情動不安定に対する効果的な治療薬かもしれない。しかしながら、この分野でのランダム化比較試験(RCT)はほとんどなかった。(*RCTは、参加者を2つ以上の治療集団群に無作為に割り当てる研究デザインである。これは、参加者のグループが類似しており、調査員と参加者が誰がどのグループに入っているかを知らないようにするための最良の方法である。) 検索日 2022年5月26日に実施した検索により、研究を特定した。 研究の特性 情動不安定性を持つ239人が参加した7件のランダム化比較試験をレビューに含め、感情的傾向の治療に対する抗うつ薬の使用について報告した。研究対象者の人数は10人から92人であった。研究対象者の平均年齢/中央値は57.8歳から73歳であった。試験はヨーロッパ(イギリス:1件, デンマーク:1件, スコットランド:1件, スウェーデン:1件); アジア(韓国:1件, 日本:...
Checked
20 hours 28 minutes ago
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