1 year 5 months ago
薬剤抵抗性焦点てんかんに対するペランパネルのアドオン療法 要点 薬剤抵抗性焦点てんかん患者に対するペランパネルのアドオン療法は、発作頻度減少に有効であり、発作の消失を維持できる可能性がある。ペランパネルの忍容性は、8mg/日以下の用量で良好である。 てんかんとは? てんかんは、一般的な脳疾患のひとつである。てんかん患者の約30%は、抗てんかん薬による適切な治療を受けているにもかかわらず、発作(脳内の過剰な電気的興奮により、脳の働きが短時間変化すること)を繰り返している。このような病態を薬剤抵抗性てんかんといい、通常、抗てんかん薬の組み合わせによる治療が必要となる。ペランパネルは新しい抗てんかん薬で、薬剤抵抗性焦点てんかん(脳の一部から発作が始まるてんかん)へのアドオン療法の研究が行われている。 何を知りたかったのか? 薬剤抵抗性焦点てんかん患者に対するアドオン療法としてペランパネルを使用した場合に、有効性および忍容性があるかどうかを明らかにしようとした。 何を行ったのか? あらゆる年齢の薬剤抵抗性焦点てんかん患者を対象に、ペランパネルのアドオン療法の効果を検討した研究を医療データベースから検索した。 何が見つかったのか? 基準を満たす研究が7件見つかった。合計2,524人を対象とし、全員が12歳以上であった。研究では、ペランパネル(2mg/日、4mg/日、8mg/日、12mg/日...
1 year 5 months ago
成人の緩和ケア患者における「そう痒(かゆみ)」に対する薬物療法の利点とリスクは何か? 「そう痒(かゆみ)」は、進行した完治不能な疾患において最も難解な症状の一つであり、患者に大きな不快感を与える可能性がある。そう痒には多くの原因があり、様々な病態から引き起こされている症状である可能性がある。この10年間における臨床観察や対照試験は、特に肝疾患や尿毒症、その他の慢性疾患によるそう痒の理解と治療に大きく貢献してきた。そこで、本レビューでは、緩和ケア分野におけるそう痒の適切な治療のためのエビデンスを系統的に収集し、評価することを目的とした。 要点 - 腎疾患に伴うそう痒に対して、以下の薬物療法を行った場合、プラセボと比較してそう痒が軽減することがわかった:GABA類似物質(ガバペンチン、プレガバリン)はそう痒を大きく軽減する可能性があり、κ(カッパ)-オピオイド作動薬(ジフェリケファリン、ナルブフィン、ナルフラフィン)はそう痒をわずかに軽減する可能性がある。また、クロモリンナトリウム、魚油/オメガ3脂肪酸、カプサイシン外用薬、およびモンテルカストはそう痒を大幅に軽減する可能性があるが、エビデンスの確実性は非常に低かった。 - 肝疾患に伴うそう痒に対して、リファンピシンとフルメシノールはプラセボと比較してそう痒を軽減する可能性があることがわかったが、エビデンスの確実性は非常に低かった。 ...
1 year 5 months ago
小児期および思春期における注意欠陥多動性障害(ADHD)に対する多価不応和脂肪酸(PUFA) ADHDとは? 注意欠陥多動性障害(ADHD)は、小児や青年によく見られる問題である。集中力に欠け、落ち着きがなく、衝動的に行動することもある。こうした困難の結果、ADHDは長期にわたる社会的、学業的、精神的健康問題を引き起こす可能性がある。薬はADHDの治療法として最もよく使われるが、必ずしも効果があるとは限らず、好ましくない副作用を引き起こすこともある。 多価不飽和脂肪酸(PUFA)とは何か? 多価不飽和脂肪酸(PUFA)は脂肪の一種である。これらは脳の正常な発達に必要で、魚(オメガ3系PUFA)や植物油(オメガ6系PUFA)などの食品に含まれている。 PUFAはADHDにどのように役立つのだろうか? ADHDがPUFA、特にオメガ3系PUFAの低値と関連している可能性を示すエビデンスがいくつかある。したがって、PUFAのサプリメントは、ADHDの症状、行動上の問題、不安や抑うつといった関連する精神衛生上の症状を改善する可能性がある。 何を調べようとしたのか? PUFAサプリメントがADHDの小児および青年のADHD症状を改善するかどうかを知りたかった。 当初のレビューでは、PUFAがADHDの症状を改善することを示唆する限られたデータもあったが、現在のところ、PUFAの補充が有益で...
1 year 6 months ago
肺疾患リスクのある早産新生児における高用量カフェインと標準用量カフェインの比較検討 要点 - カフェインは早く生まれた赤ちゃんによく投与されるが、その最も効果的な投与量は不明である。 - 高用量のカフェインは呼吸を改善し、長期的な発育を促すかもしれないが、好ましくない影響を及ぼす可能性がある。 なぜ早産児にカフェインを与えるのか? 早産、特に妊娠28週以前に生まれた新生児は、臨月または臨月近くに生まれた新生児に比べて、死亡、肺疾患、脳障害のリスクが高い。たとえば、知的障害、失明、難聴になる赤ちゃんもいる。カフェインは、主に呼吸を改善し、無呼吸発作(一時的な呼吸停止)や呼吸器の必要性を減らすために、早産児に広く使用されている。 何を調べようとしたのか? 早生まれの新生児において、以下の点で高用量のカフェインが標準用量のカフェインよりも改善効果が高いかどうかを調べたかった: - 退院前の死亡率 - 生後18か月から24か月と3歳から5歳における長期的発達。 また、カフェインの大量摂取が好ましくない影響と関連しているかどうかも調べたかった。 本レビューで行ったこと 早生まれの赤ちゃんに高用量のカフェインを投与した場合と標準量のカフェインを投与した場合を比較した研究を検索した。 研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 わかった...
1 year 6 months ago
未熟児の動脈管開存症を管理する治療法 論点 未熟児の動脈管開存症(PDA)と呼ばれるよくみられる心臓病の予防や治療には、どのような治療法が有効で安全なのか? 背景 PDAは未熟児や低出生体重児によくみられる合併症である。動脈管は、肺と心臓の間に開いた血液路のことであるが、通常は生後まもなく閉鎖する。未熟児や低出生体重児の場合、動脈管が開いたままになることがあり、生命を脅かす合併症の原因となることがある。私たちは、どのような治療法がPDAとそれに関連する問題を安全かつ効果的に予防・治療できるかを知りたかった。 研究の特徴 16 件のコクランレビューが対象となった。そのうち6件のレビューが、薬物、手術、あるいは薬物や手術を伴わない他の手段によるPDAの予防に関するエビデンスを提供していた。1件のレビューでは、赤ちゃんに症状が出る前にPDAを治療するというエビデンスが示されているが、それ以外のレビューでは、PDAによる症状がある赤ちゃんに、薬物または手術のいずれかを用いて治療するというエビデンスが示されている。 主な結果 この概要では、インドメタシンとイブプロフェンの両方が、PDAによる症状が出る前の未熟児に投与された場合、重度の脳出血とPDA手術の必要性を減少させる可能性があることが明らかになった。赤ちゃんにPDAによる症状がある場合では、インドメタシン、イブプロフェン、アセトアミノ...
1 year 6 months ago
新生児の術後疼痛コントロールと管理における全身性オピオイドの有効性と安全性は? レビューの論点 手術後の新生児の痛みを軽減するための全身性オピオイドの効果と安全性は? 背景 新生児(生後4週間までの乳児)は、手術(オペ)や外科的処置を受けることがある。大人と同じように、乳児も痛みを経験し、手術後はこの痛みを管理(軽減)しなければならない。オピオイドは痛みを和らげる薬である。オピオイドの例としては、コデインやモルヒネがある。オピオイドは、体内のオピオイド受容体と相互作用し、痛みの感覚を抑える。 オピオイドは全身の臓器、機能に影響を及ぼすため、本レビューでは全身性オピオイドと呼んでいる。オピオイドを乳児に投与するには、いくつかの方法や経路がある。静脈に注射針を刺す方法もあり、これは非経口的薬物投与と呼ばれる。もうひとつの方法(またはルート)は、薬を乳児の口の中に入れることで、舌の下に入れたり、チューブを使ったりする。このような薬物投与は経腸投与と呼ばれる。オピオイドは、ほとんどの薬物と同様に、さまざまな強さ(投与量)で投与することができる。オピオイドの投与は、連続的に(止めずに)投与することもできるし、一定期間にわたって間欠的(断続的)に投与することもできる。 オピオイドを乳児に投与する方法、投与頻度、オピオイドの強さ、これらすべてを合わせて、薬物レジメンと呼ばれるものが作られる。 ...
1 year 6 months ago
マッケンジー法は、非特異的(亜)急性腰痛の治療に有効か? 要点 マッケンジー法は、非特異的(亜)急性腰痛に対し、短期(2週間以内)および中期(3か月以内)において、痛みや障害を改善する効果はほとんど、または全くない可能性があり、非特異的(亜)急性腰痛に対する有効な治療法とはいえない。本レビューに含まれた研究では、有害作用について評価されていなかったため、マッケンジー法が有害作用をもたらすかどうかは不明である。 非特異的(亜)急性腰痛とは何か? 非特異的腰痛(NSLBP)は、腰痛の中で最も一般的な種類であり、特定可能な疾患や問題(骨折、がん、感染、神経根痛など)に起因しない腰の痛み、または不快感のことである。NSLBPは、持続期間が12週間までの場合、(亜)急性とみなされる。 マッケンジー法とは何か? マッケンジー法とは、訓練を受けた医療従事者(通常は理学療法士)が、NSLBP患者のケアに適用する治療法であり、評価時に観察された臨床的兆候(痛みの位置や動きの制限の変化)に基づく個別の運動プログラムによって構成される。また、患者が自分で症状をコントロールするための、姿勢やホームエクササイズの指導も含まれる。 何を調べようとしたのか? マッケンジー法が(亜)急性NSLBPに対し有効であるかどうかを調査した。 何を行ったのか? (亜)急性NSLBPに対する最小限の介入(メインとした対象群...
1 year 6 months ago
成人の腰痛に対する薬理学的治療:コクランレビューの概要 要点 急性腰痛について ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)および筋弛緩薬は、痛みに対してわずかな効果をもたらす可能性があるが、筋弛緩薬は有害作用を起こす可能性がある。また、パラセタモール(アセトアミノフェン)は、痛みや有害事象に影響を与えなかった。 慢性腰痛について ・オピオイドは痛みを軽減する可能性があるが、有害作用を起こす可能性がある。一方、NSAIDsは有害作用を起こさずに痛みを軽減する可能性があり、また、抗うつ薬は痛みに対しほとんどまたは全く効果がない可能性がある。 ・ 医師は、腰痛治療のための薬剤を検討する際には、薬剤の痛みに対する効果が少ない可能性、および有害事象のリスクが高まる可能性について議論すべきである。また、資金提供者と研究者は、腰痛患者にとって臨床的に意味のある利益をもたらす薬剤を特定することを優先すべきである。 腰痛とは何か。また、どのように治療されるのか? 腰痛(LBP)は、一般的にみられ、かつ身体を衰弱させやすい健康状態である。腰痛の原因を確実に特定することは、ほとんどの場合困難であり、これらは「非特異的腰痛」と呼ばれる。治療には、一般的に薬剤が使用されるが、これには、オピオイド系鎮痛薬、NSAIDs、パラセタモールなど、多くの種類の薬剤がある。多くの選択肢の中で、どの薬剤が最も良く、最も安...
1 year 6 months ago
痛みを伴う処置を受ける乳児の痛みに対するオピオイド以外の鎮痛剤 要点 - オピオイド以外の鎮痛剤については、痛みを伴う処置を受ける乳児の痛みを管理するのに十分なエビデンスは見つからなかった。鎮痛剤(ケタミン)を別の鎮痛剤(オピオイド)または甘い液体(訳注:甘味が疼痛を緩和するという研究結果があり、ショ糖液が使用されることが多い)と比較したわずか2件の小規模な研究が、異なった方法で管理されていることがわかった。 - さまざまな鎮痛剤の有益性と有害性、そしてそれらを投与する最善の方法についてよりよく理解するためには、さまざまな鎮痛剤に関するより大規模な研究が必要である。 何が知りたかったのか? 特に早産や病気で生まれた乳児は、入院中に多くの痛みを伴う処置を受けることがある。十分かつ安全に痛みを和らげるためには、どの鎮痛剤が最適なのかはまだはっきりしていない。特に、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と、ケタミンなどのN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬を、痛みを伴う処置中の乳児に対して評価した研究に焦点を当てた。これらの鎮痛剤が処置中の乳児の痛みの強さにどのような影響を与えるか、また鎮痛剤が引き起こす副作用について調べたいと考えた。 何を行ったのか? 以下の比較を行った研究を検索した: - NMDA受容体拮抗薬(ケタミンなど)または非ステロイド...
1 year 6 months ago
健康のための現金給付の体験と認識 本レビューの目的は何か? 健康に関連した条件付き、または無条件の現金給付を受けた人々が、それをどのように受け止めたかについて調査することを目的とした。そのために、41件の質的研究について分析を行った。 要点 人々は現金給付を評価し、基本的な要求を満たすために必要なものだと考えている。しかし、現金給付は、良い影響も悪い影響も与える可能性がある。すべての人が現金給付を望んでいるわけではなく、保健行動(健康を保持、増進したり、病気に対処しようとする行動)を変えるには、現金のみでは不十分であると考えている受給者もいる。 本レビューでは何が調査されたのか? 条件付きおよび無条件の現金給付プログラムは、世界中で行われている。条件付き現金給付とは、特定の行動に対してお金(現金)が給付されるというものであり、例として、親が子供を保健所に連れて行った場合に現金を受け取る場合などが挙げられる。無条件の現金給付とは、使用に関する条件や規則がなく与えられる現金給付のことである。政府の施策により現金給付を受けられる場合もあれば、非政府組織や研究プロジェクトを通じて現金給付が行われる場合もある。これらのプログラムの多くは、人々の健康状態を改善することを目的としており、健康への影響を評価する研究では、さまざまな結果が得られている。そこで、受給者がこれらの現金給付プログラムにつ...
1 year 6 months ago
がん患者のうつ病治療における抗うつ薬 要点 本レビューでは、うつ病のがん患者において、抗うつ薬がプラセボ(偽の治療)に対して有益な効果を示す可能性があることが明らかにされたが、エビデンスは不確実であり、明確な結論を出すことは困難であった。そのため、がん患者における抗うつ薬の使用には、個別の検討が必要である。 論点は何か? うつ病は、がん患者において多く見られる。多くの場合、抑うつ症状は、生命を脅かす重篤な疾患に対する正常な反応または直接的な影響である。そのため、抑うつ症状を真の障害と判断し、薬剤による治療の必要性を決定することは困難である。現在の学術文献によると、抑うつ症状は、たとえ軽度であっても、がんの経過に影響を及ぼし、全体的な生活の質(QOL)を低下させ、抗がん剤治療へのコンプライアンス(指示にしたがうこと)に影響を与え、さらに、死亡率を高める可能性があることが明らかになっている。 何を調べようとしたのか? 部位や病期に関わらず、がん患者の抑うつ症状に対する抗うつ薬の有効性および受容性(受け入れやすさ)を評価したいと考えた。 何を行ったのか? がんと診断され、うつ病を有する成人を対象に、抗うつ薬とプラセボ、または抗うつ薬と他の抗うつ薬を比較した適切なデザインの臨床試験について、医学データベースの検索を行った。 何を見つけたのか? 合計1,364人の参加者を対象に、抗うつ薬の...
1 year 6 months ago
早産児の鼻腔内持続陽圧換気(CPAP)の圧力源 要点 気泡発生式(バブル式)持続気道陽圧換気(CPAP)(以後バブルCPAP)は、通常の人工呼吸器やインファントフロードライバー(訳注:CPAP目的以外では人工呼吸に使用できないCPAP専用機器のこと)で供給されるCPAPと比較すると、CPAP治療失敗のリスクを低減できる可能性がある。バブルCPAPは、早産に伴う死亡やその他の合併症のリスクにはおそらくほとんど影響しないが、中等度から重度の鼻の傷のリスクはおそらく増加すると考えられる。 CPAPとは? CPAPは、肺に問題のある早産(未熟児)の赤ちゃんの呼吸を補助するために使用する方法の一つである。水中バブル装置(バブルCPAP)、機械式人工呼吸器、インファントフロードライバーなど、さまざまな種類の機械でCPAPを行うことができる。 何を知りたかったのか? CPAP療法の治療失敗(赤ちゃんの状態が悪化したり、人工呼吸が必要になったりすること)の発生率を下げ、また合併症や害を減らすためには、バブルCPAPと人工呼吸器やインファントフロードライバーを用いたCPAPのどちらが優れているかを示すエビデンスがあるかどうかを調査した。 何を行ったのか? 2023年1月までのランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群のいずれかに無作為に割り当てるタイプの研究)を医学データベースで検索した。 何が...
1 year 6 months ago
生後6か月から12歳までの小児における亜鉛の補給は、死亡や病気の予防、または成長の促進に有効か、あるいは有害事象があるか? 要点 - 生後6か月から12歳の小児における亜鉛の補給は、すべての死因による死亡率についてはほとんど、または全く影響を与えず、下痢による死亡にも差を及ぼさない可能性がある。また、下気道感染症やマラリアによる死亡を減少させる可能性があるが、死亡リスクを増加させるわずかな可能性については否定できない。 - 生後6か月から12歳の小児における亜鉛の補給は、下痢による疾患を予防できる可能性があるが、補給後に嘔吐を引き起こす可能性がある。また、身長の増加に対し、わずかに効果がある可能性がある。 なぜ亜鉛の補給について調査することが重要なのか? 亜鉛は必須微量栄養素である。小児の正常な成長や、健康な免疫系の獲得は重要であるが、亜鉛の不足により、下痢や肺炎、マラリアへの感染を引き起こしやすくなり、さらには死に至る場合もある。食事からの亜鉛摂取量の不足は、貧困と関連していることが多く、低、中所得国ではおよそ半数もの小児が亜鉛欠乏症となっている可能性がある。肉、魚、卵、および乳製品は、亜鉛の良質な天然供給源だが、高価である。清潔な水が不足し、衛生状態が悪い場合、病気に罹患しやすくなるが、亜鉛はその対策に役立つ可能性がある。人体は亜鉛を産生したり貯蔵したりすることができないため...
1 year 6 months ago
分娩誘発における器械的方法 妊娠第三3半期間(妊娠24週以降)において、器械的方法を用いた分娩誘発の有効性と安全性をランダム化比較試験から検討した。子宮頸部(子宮の下端)を伸展するためのバルーンと、プロスタグランジンE2(PGE2)または低用量ミソプロストールまたはオキシトシンとを比較した。 論点 分娩誘発は一般的に、妊娠を継続する利益よりもリスクが上回る場合、または妊婦の希望により行われる。 分娩誘発の為の器械的方法は子宮頸管を伸展させることにより、頸管熟化と陣痛発来(訳注:陣痛が始まること)を促す。これらは陣痛を起こすために用いられる最も古い方法の一つである。PGE2、ミソプロストール、オキシトシンといった薬物療法が、部分的に器械的方法にとって代わったのは、この数十年間のことである。 重要性 より多くの女性が分娩誘発を行うようになっており、その適応はしばしば緊急を要するものではない。これは分娩誘発の方法において、有効性を犠牲にしても、安全性がより重要となることを意味する。器械的方法は広く利用可能であり、安価で、子宮の過度の収縮(過強陣痛)のような副作用が少ない可能性があり、薬物療法に比べて利点があるかもしれない。陣痛が長すぎたり頻繁すぎたりすると、胎児が十分な酸素を受け取れなくなる可能性があるため、過強陣痛が起こらないことは児にとって安全といえる可能性がある。 得られたエビデ...
1 year 6 months ago
嚢胞性線維症の患者が吸入治療を受けるのを助けるための心理的介入 要点 心理的介入は、人々が自分の考え、感情、行動を修正できるように設計されている。 心理的介入は、嚢胞性線維症(CF)患者が吸入治療を行う上で、おそらく通常のケアよりも優れており、治療後6~12か月後に測定した場合、(不安や抑うつなどの)害はほとんどないか、全くないと考えられる。 動機づけ面接(MI)が、教育+問題解決(EPS)よりも、CF患者の吸入治療に対する支援において優れているか劣っているかは不明である。 背景 CFは慢性の遺伝病で、通常、新生児スクリーニングにより出生時に診断される。CF患者は、肺や消化器系に濃厚で粘着性の粘液(または痰)が溜まるため、胸部感染症を繰り返す。吸入治療は通常、痰を薄くする(痰を出しやすくする、咳き込みやすくする)か、肺内の細菌を治療・制御する(感染症を減らす)ために処方される。 長期にわたる(慢性)疾患がある人は、処方された治療薬を飲むのに苦労することが多い。これはCFでも変わらない。 何を調べようとしたのか? 心理的介入は、CF 患者が吸入治療を受けるのを助けることができるのか、また、心理的介入による有害な影響や望ましくない影響(不安や抑うつなど)はあるのか。 CF 患者が吸入治療を行う際に、どのような技術(目標設定、問題解決など)が最も効果的か。 何を行ったのか? 年齢を問わ...
1 year 6 months ago
メチルフェニデートは注意欠如多動性障害(ADHD)の小児や青少年に有効な治療であるか? 要点 - メチルフェニデートは多動や衝動性を抑え、小児が集中力を高める助けになるかもしれない。メチルフェニデートは一般行動の改善にも役立つかもしれないが、生活の質(QOL)には影響しないようである。 - メチルフェニデートは、最長6か月間までの使用では、重篤な(生命を脅かす)望ましくない作用のリスクを増加させないようである。しかし、睡眠障害や食欲減退など、重篤でない副作用のリスクが高まる。 - 今後の研究では、望ましくない影響の報告にもっと焦点を当てるべきであり、より長期間にわたって行われるべきである。 注意欠如多動性障害(ADHD)とは? ADHDは、最も一般的に診断され、治療されている小児期の精神疾患のひとつである。ADHDの小児は集中するのが難しい。多動(そわそわし、長時間じっとしていられない)で衝動的(考える時間をとらずに物事にとりかかる)であることが多い。ADHDの小児は、指示に従ったり集中したりするのが難しいため、学校でうまくやっていくのが難しくなる。行動上の問題は、家族や友人とうまくやっていく妨げになり、他の小児よりも多くの問題を起こすことが多い。 ADHDの治療法は? メチルフェニデート(例えばリタリン)は、ADHDの小児や青年に最もよく処方される薬である。メチルフェニデートは...
1 year 6 months ago
非がん性慢性疼痛の管理におけるオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の高用量投与 要点 がんを原因としない慢性的な痛み(非がん性慢性疼痛)を持つ成人に対して、高用量のオピオイドを使用した場合、どの程度効果があるのか、またどのような副作用があるのかを示す質の高いエビデンスはない。 臨床研究では、通常、カットオフ値(基準とする範囲を区切る値)より低い薬剤の用量が使用されている。非がん性慢性疼痛に対して、高用量のオピオイドがどの程度有効なのか、またどのような副作用があるのかを知る必要がある。 背景 オピオイドは、モルヒネに類似した鎮痛薬の一種であり、長期間(通常は3か月以上)続く中等度または重度の慢性疼痛に対して長年使用されてきた。 研究の特徴 本概要では、非がん性慢性疼痛を持つ成人に対する疼痛緩和のためのオピオイドに関するコクランレビュー、および概要から得られた知見をまとめることを目的とした。さらに、オピオイドを高用量(1日あたりモルヒネ200mg以上に相当)で使用した場合にどの程度効果があるのか、またどのような副作用があるのかを明らかにしたいと考えた。 主な結果 2022年7月までに行われた系統的文献検索からは、目的とした情報は得られなかった。オピオイドに関する研究において、高用量で使用された報告はほとんどない。また、あらゆる用量のオピオイドを使用している人を対象とした研究の一部として用いられ...
1 year 6 months ago
肺高血圧症に対する運動療法に基づいたリハビリテーション 要点 医学的に安定している肺高血圧症患者では、運動療法に基づいたリハビリテーションが最も安全で、かつ最も生活の質(QOL)を向上させる可能性がある。運動療法に基づいたリハビリテーションによって、運動能力を大幅に増加させ、平均肺動脈圧を低下させる可能性がエビデンスによって示唆されている。 肺高血圧症とは何か? 肺高血圧症とは、心臓から肺に血液を送る動脈(肺動脈)の血圧が、正常よりも大幅に高くなった状態である。多くの場合、緩やかに発症し、あらゆる年齢の人々に影響を及ぼし、生活の質を低下させ、時に早世に至ることもある。運動療法に基づいたリハビリテーションは、他の慢性肺疾患や心疾患の患者に対しては推奨されているが、近年まで肺高血圧症の患者に対しての推奨はされていなかった。 何を調べようとしたのか? 運動療法に基づいたリハビリテーションと、通常の治療との比較における、適切にデザインされた臨床研究についてのエビデンスのレビューを試みた。 何を行ったのか? 運動能力、健康関連の生活の質(QOL)、重篤な副作用、肺循環の圧力の変化などの短期および長期の結果が運動療法によって改善されるかどうかを調べるために、医学データベースを用いて、肺高血圧症患者が運動療法を行った場合と通常の治療を行った場合とを比較した臨床研究を検索した。本レビューには、合...
1 year 6 months ago
出生が早すぎた赤ちゃんの脳出血を予防するフェノバルビタールの利益とリスクは? 要点 ・早産で生まれた赤ちゃんにフェノバルビタール(けいれん発作を抑える薬)を投与することは、脳室内出血(脳出血)や死亡を防ぐ効果はほとんど、あるいはまったくないかもしれない。 ・フェノバルビタールによる脳室拡大(脳内の空間の拡大)予防や長期的な神経発達についてのエビデンスは非常に不確かである。 脳出血(脳室内出血)とは何か? 早産で生まれた赤ちゃんの脳の中心に大きな出血があると、障害がおこったり、死亡したりする。不安定な血圧と脳血流が、脳室(脳内の液体で満たされた空間)への出血を引き起こすと考えられている。 何を知りたかったのか? フェノバルビタールは血圧を安定させ、脳出血を防ぐ可能性があると考えられている。フェノバルビタールが、無治療の場合やプラセボ(薬を含まないが、見た目や味は試験に使う薬と同じ「ダミー」の治療法)よりも優れているかどうか調べた。 実施したこと フェノバルビタール投与と無治療を比較した研究を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や試験の規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。 わかったこと 10件の研究(792人の赤ちゃんを含む)を対象とした。 エビデンスは、フェノバルビタールに脳出血を予防する効果はほとんど、あるいはまったくないことを示している。脳室拡...
1 year 6 months ago
エムポックス(サル痘)に対する治療法 本レビューの目的は何か? 現在、エムポックス(サル痘)の治療に特化して認可された薬剤はないが、天然痘など類似したウイルス感染症の治療に認可されている薬剤の中には、感染の集団発生時においてエムポックスの治療に認可されているものがある。これらの薬剤の効果は、エムポックス患者を対象としたランダム化試験ではまだ研究されていない。ランダム化試験では、薬剤投与群とプラセボ(偽の薬)投与群など、少なくとも2つの治療群が設定され、研究参加者は、いずれかの群に無作為に割り振られる。本レビューは、ヒトにおけるエムポックスの治療の安全性と有効性に関するエビデンスを要約したものであり、ランダム化比較試験(RCT)からのエビデンスのレビューと、非ランダム化試験(NRS)からの安全性データのレビューの2部構成となっている。 ランダム化比較試験のレビュー エムポックスの治療法における安全性と有効性の両方に関するランダム化比較試験を検索した。 非ランダム化試験のレビュー エムポックスの治療法における安全性に関する非ランダム化試験のみを検索した。 要点 ランダム化比較試験のレビュー 現在進行中の5件のランダム化比較試験のデータが利用可能になれば、エムポックスの治療を受けた場合と受けなかった場合についての安全性と有効性を比較できるようになる。また、さまざまな治療法について、患者...
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