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ランダム化比較試験から得られる治療効果の推定値と観察研究から得られる治療効果の推定値はどの程度似ているか

2 months 3 weeks ago
要点

- ランダム化比較試験(RCT)の効果推定値と観察研究の効果推定値には、平均してごくわずかしか差がない。効果推定値とは、臨床試験や研究で検討した2つのグループの結果の差という点で、介入効果の大きさを表す統計的構成要素である。
- さらに多くの研究によって、さまざまな種類の研究の間にみられる効果推定値の類似性や差に影響を与える可能性のある要因を注意深く検討する必要がある。

RCTと観察研究とはどのようなもので、なぜその効果推定値が異なる可能性があるのか

ランダム化比較試験(RCT)とは、参加者を2つ(またはそれ以上)の治療群のいずれかに無作為に割り付ける医療実験の一種である。一方のグループには実験的治療(「介入」とも呼ばれる)が行われ、もう一方のグループは介入を行わない「対照」グループである。RCTは、理想的な条件下で実験的治療にどの程度の効果があるのか、また安全なのかを検証するものである。

観察研究は、実験的ではない「実際の現場(リアルワールド)」で介入の有効性を測定しようとするものである。観察研究のなかでもよくみられるのが、症例対照研究(または後ろ向き研究)とコホート研究の2種類である。症例対照研究では、特定の疾患や疾病がある人と、そうでない人のグループを比較する。コホート研究は、共通の特徴がある人のグループを長期にわたって追跡し、そのうちの何人がある健康上の結果に到達したかを検討するものである。

同じ研究課題を扱ったRCTと観察研究の結果が異なる場合もある。両者の研究は、実施方法と系統的エラーの起こりやすさが異なる。

知りたかったこと

研究の種類(RCTと観察研究)が要約効果推定値に与える影響を評価し、その差が説明される可能性がある方法論的側面を評価したかった。

実施したこと

健康に関する同じ研究課題を扱ったRCTと観察研究で報告された効果推定値を系統的に比較したレビューをデータベースから検索した。発表された言語に制限を設けず、あらゆる医療の結果を含むレビューを探した。1990年1月1日から2022年5月12日までに発表されたレビュー/オーバービューを検索した。そのあとレビューの結果を比較して、エビデンスをまとめた。レビューに用いられた方法やその規模、レビュー間の結果の一貫性などの要因に基づいて、このエビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

関連する47件のレビューを特定し、34件のデータが主な解析に寄与した。対象としたレビューでは、RCTの効果推定値をコホート研究、症例対照研究、またはその両方の効果と比較しており、健康に関するさまざまなトピックが取り上げられていた。レビューは世界各国で実施されていたが、ほとんどが米国であった。12件のレビューでは、レビューの資金源に関する情報は報告されていなかった。8件のレビューが、著者らは資金提供を受けていないと報告している。23件のレビューには、著者らは政府からの資金提供、大学や財団からの資金提供など公的資金を受けたと報告されていた。2件のレビューが欧州連合(EU)の資金援助を受けており、2件のレビューが産業界の資金援助を受けたと報告している。資金提供を受けたレビューのほとんどが、複数の資金源を報告していた。

主な結果

- RCTと観察研究の効果推定値は、ほとんど差がないか、まったく差がないことがわかった。
- (手術や理学療法などの他の医療処置とは対照的に)薬物のみを調査した研究の効果推定値を比較すると、わずかな差があるかもしれない。

また、以下のデータに基づいて推定された効果も、ほとんど差がないことがわかった:
- 統計的にかなりの異質性(異なる研究で評価された介入効果のばらつき)を示した、RCTと観察研究を混ぜたメタアナリシス、
- 介入の有効性に影響を及ぼしうる集団の特徴を考慮する方法(傾向スコアによる調整)を用いていないか、その方法が不明確であった観察研究、
- 研究デザインについて十分な情報を提供しなかった観察研究。

エビデンスの限界

エビデンスの信頼性は低い。というのも、対象としたレビューには、その実施方法による系統的エラーのリスクがある可能性があるためである。さらに、レビューの対象となった人や介入の種類も異なっていたため、レビュー間の個々の結果はかなり異なっていた。

本レビューの更新状況

エビデンスは2022年5月までのものである。

Toews I, Anglemyer A, Nyirenda JLZ, Alsaid D, Balduzzi S, Grummich K, Schwingshackl L, Bero L

重症筋無力症(筋力低下を引き起こす慢性の自己免疫疾患)の治療におけるリツキシマブ(血液中のB細胞を減少させる薬剤の一種)の利益と有害性は何か?

2 months 3 weeks ago
主要メッセージ
  • 重症筋無力症がある成人において、症状(疾患)の重症度、日常生活における動作能力、および深刻な有害性に対するリツキシマブという薬剤の影響については、エビデンスが非常に不確実である。

  • リツキシマブによる治療は、ステロイド使用量を1日10mg以下までに減量できないかもしれないが、9か月以上にわたる治療で、救援療法(静脈内投与の免疫グロブリン療法や血漿交換療法など)を必要とする重症筋無力症の再発(症状悪化)を大幅に減少させる可能性がある。

  • 全タイプの重症筋無力症に対するリツキシマブの治療効果をよりよく理解するには、さらなる研究が必要である。

重症筋無力症とは何か、そしてどのように治療されるのか?

重症筋無力症は、神経と筋肉の接合部の機能に影響を与える自己抗体(通常、感染から体を守るための免疫系が、誤って自分自身を標的として産生される蛋白質)が関与する自己免疫疾患である。この自己抗体により、神経から筋肉への刺激伝達が困難になり、筋力の低下につながる。重症筋無力症は、物が二重に見える(複視)、まぶたが垂れ下がる(眼瞼下垂)、会話障害、噛むこと(咀嚼)や飲み込むこと(嚥下)が困難になる、呼吸困難、手足の筋力低下など、さまざまな症状が現れる。多くの重症筋無力症の人は、これらの症状をコントロールするために、免疫反応を抑制する薬が必要になる。リツキシマブは、B細胞(免疫系の構成要素のひとつ)の数を劇的に減少させる治療薬である。

知りたかったこと

重症筋無力症の治療において、リツキシマブが、無治療、プラセボ(偽薬)、または他の治療薬よりも優れているかどうかを調べたかった。また、リツキシマブと有害事象との関連性についても明らかにしたかった。

実施したこと

重症筋無力症がある成人を対象に、リツキシマブを無治療、プラセボ、または他の治療薬と比較した研究を検索した。参加者が治療群にランダムに割り当てられており、どの治療を受けていたかを認識していない研究(ランダム化比較試験)を対象とした。研究結果を比較および要約し、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

スウェーデンと米国で99人が参加した2件の研究を特定した。

  • 長期的(9ヵ月以上)には、リツキシマブは症状の重症度を軽減し、日常生活における動作を向上させる可能性があるが、エビデンスは非常に不確実である。

  • リツキシマブによる治療は、ステロイド使用量を1日10mg以下までに減量できる可能性がないかもしれない。

  • 9か月以上にわたるリツキシマブ治療で、救援療法を必要とする重症筋無力症の再発を大幅に減少させる可能性がある。98人を対象とした研究結果に基づくと、プラセボ群では1000人中490人が救援療法を必要とする重症筋無力症の再発を経験するに対し、リツキシマブ群では1000人中220人が再発を経験するとされる。

  • リツキシマブは、重篤な有害事象を減少させる可能性があるが、エビデンスは非常に不確実である(プラセボ群では1000人中367人が重篤な有害事象を経験する可能性があるに対し、リツキシマブ群では1000人中298人が重篤な有害事象を経験する可能性がある)。

エビデンスの限界は何か?

調査結果について確信を持つには、研究数が不足している。研究は、主にアセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体を持つ人を対象としており、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)に対する抗体を持つ人は含まれていなかった。リツキシマブは、抗体の生成に関与している免疫細胞(B細胞)と抗体の種類により、AChR抗体陽性の重症筋無力症よりもMuSK抗体陽性の重症筋無力症に高い有効性を示す可能性がある。

このエビデンスはどれくらい最新のものか?

対象とした2件の研究は、どちらも2022年に発表されている。この検索結果は、2024年11月時点のものである。

Dodd KC, Clay FJ, Forbes AM, Handley J, Keh RYS, Miller JAL, Storms K, White LM, Lilleker JB, Sussman J

禁煙、ニコチン吸引、その他のタバコの使用を止めるために使用する場合、経口ニコチンパウチの利益とリスクは何か?

2 months 3 weeks ago
主なメッセージ
  • 3件の小規模研究から得られた限られたエビデンスによれば、喫煙者における経口ニコチンパウチの短期的な深刻な健康被害は認められなかった。

  • 経口ニコチンパウチが、喫煙を通常通り続けるよう指示されたり、禁煙のサポートがない場合に比べ、禁煙に役立つかどうかは不明である。

  • 特に、経口ニコチンパウチと他の積極的治療(ニコチン置換療法や電子タバコなど)との比較など、今後の研究が必要である。

経口ニコチンパウチとは何か?

経口ニコチンパウチは、ニコチンを含む分包されたパウチであり、さまざまなフレーバーとニコチンの強さで販売されている。見た目も使い方もスヌース(無煙タバコの一種)と似ている。スヌースは歯茎と唇の間に挟むタイプの無煙タバコで、北欧諸国で人気があるが、英国とスウェーデンを除く欧州連合(EU)諸国では販売が禁止されている。スヌースとは異なり、ニコチンパウチにはタバコの葉は入っていない。ニコチン入り電子タバコやニコチン補充療法(ニコチンパッチやガムなど)の医薬品と同様、経口ニコチンパウチは、タバコの葉を含まず、電子タバコとは異なり肺に蒸気を吸い込まない製品に置き換えることで、有害な形態のタバコ・ニコチン製品使用からの移行を助けることができるかもしれない。

経口ニコチンパウチの一般的なブランド名には、Zyn、Velo、Nordic Spiritなどがある。

知りたかったこと

経口ニコチンパウチが喫煙、ニコチンベイプ、その他のタバコの使用からの脱却に役立つかどうかを確かめたかった。また、経口ニコチンパウチをこの目的で使用した場合、好ましくない影響が出るかどうかも知りたかった。

実施したこと

禁煙の方法として、喫煙者、電子タバコ吸引者、その他のタバコ製品を使用している人に経口ニコチンパウチを投与した研究を検索した。タバコの使用やニコチン入り電子タバコ(ベイプ)の使用を4週間以上追跡した研究、あるいは血液、呼気、尿中の好ましくない影響や化学的変化を1週間以上調べた研究を対象とした。

わかったこと

試験開始時に喫煙者であった合計284人を含む4件の研究が見つかった。これらの研究は2006年から2023年の間に実施され、人種または民族を報告したものでは、白人が大多数を占める集団で実施された。各研究の平均年齢は34歳から50歳であった。試験開始時の参加者の1日平均喫煙本数は14本から23本であった。最も長い実施期間の研究は8週間行われた。3件の研究は独自に資金提供を受けており、1件はタバコメーカーから資金提供を受けていた。

2件の小規模な研究に基づくと、ニコチンパウチの使用が、喫煙を継続するよう指示した場合や禁煙支援なしの場合と比較して、より多くの人の禁煙に役立つかどうかは明らかではなく、ニコチンパウチ使用者の禁煙率は、ニコチン入り電子タバコ(ベイプ)使用者と比較して低い可能性がある。

この情報を報告した3件の研究では、どのグループでも重篤な健康被害は発生していないため、ニコチンパウチの使用が重篤な健康被害を経験する可能性に影響するかどうかは不明である。

また、血液、呼気、尿から測定される、有害物質への暴露を示す特定の化学物質についても調べた。タバコの使用は、癌を引き起こす化学物質に体をさらす。NNAL(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール)は、これらの癌を引き起こす化学物質が体内に入ると生成される化学物質で、タバコの煙に含まれる有害成分への暴露を測定する。1件の小規模な研究では、禁煙のための特別な治療を受けていない人と比較して、経口ニコチンパウチを使用している人のNNALレベルが低いことが報告されている。2件の研究から得られたエビデンスを統合すると、高用量のニコチンパウチと低用量のニコチンパウチを投与された人の間で、NNAL値に差がないことが示唆された。一酸化炭素はタバコの煙に含まれる有毒ガスである。一酸化炭素が血液中のヘモグロビンと結合すると、カルボキシヘモグロビンと呼ばれる物質が形成される。カルボキシヘモグロビンは、人の血液中の一酸化炭素暴露量を測定する。1件の研究では、経口ニコチンパウチを使用している人のカルボキシヘモグロビン濃度が、喫煙を続けている人に比べて低いことがわかった。高用量のニコチンパウチと低用量のニコチンパウチを比較したところ、同じ研究で、高用量グループのカルボキシヘモグロビン値がごくわずかに低いことがわかった。

エビデンスの限界は?

研究が比較的小規模であり、結果を確信できるほど十分な研究がないため、エビデンスに対する信頼性はほとんどない。また、いくつかの研究では、結果に影響を及ぼす可能性のあるデザイン方法に問題があった。現在、多くの研究が進行中であり、その結果が得られ次第、このレビューを更新する予定である。

このレビューの更新状況

エビデンスは2025年1月現在のものである。

Hartmann-Boyce J, Tattan-Birch H, Brown J, Shahab L, Goniewicz ML, Ma CL, Wu AD, Travis N, Jarman H, Livingstone-Banks J, Lindson N

リラグルチドは、肥満症の成人にとって有効な減量治療薬か、望ましくない影響を生じるか?

2 months 3 weeks ago
要点
  • プラセボ(偽薬)と比較したリラグルチドは、体重を少なくとも5%減少させる人の数を増加させる可能性が高い。一方、望ましくない影響、生活の質(QOL)、主要な心血管イベントに対する影響は、中期(6~24か月)および長期(24か月以上)のいずれにおいても小さいか、不確実であると思われる。

  • 研究の方法や情報の欠落により、エビデンスに対する信頼性は限られている。リラグルチドの製造元が、24件の研究のうち22件に関与しており、結果の信頼性に懸念がある。

  • 今後の研究では、さまざまなタイプの人々における長期的な結果を調べ、リラグルチドの製造元に依存しないようにすべきである。

肥満症とは何か?

肥満症は、長期的に体脂肪が多すぎる状態である。2型糖尿病、心臓や血管の病気(心血管系疾患)、ある種の癌などの健康問題のリスクを高める可能性がある。肥満症は世界的に増加しており、医療制度に大きな負荷をかけている。肥満症の治療には通常、より健康的な食事や運動量を増やすなど、ライフスタイルを変えることが必要である。しかし、多くの人はこのような改善を維持するのが難しいと感じ、医師は減量をサポートする薬を処方することがある。

リラグルチドとは何か?

リラグルチドは、満腹感を早く感じるようにする薬のひとつで、食事の量を減らすことができる。もともとは2型糖尿病の治療薬として開発されたが、多くの国で減量補助薬として承認されている。リラグルチドは、毎日の注射で投与される。リラグルチドを服用している人の中には、気分が悪くなったり、下痢や便秘など望ましくない影響を経験する人もいる。リラグルチドは「GLP-1受容体作動薬」(GLP-1RA)である。類似薬にはセマグルチドやチルゼパチドがある。

知りたかったこと

成人の肥満症患者において、リラグルチドが中期(6〜24か月)および長期(24か月以上)においてどの程度有効であるかを知りたかった。体重、望ましくない影響、肥満に関連した健康問題、QOL、死亡リスクへの影響を調べた。リラグルチドの服用を中止した後のことは調べていない。

実施したこと

肥満症の成人患者を対象としたリラグルチドに関する研究を検索した。リラグルチド(投与量は問わない)をプラセボ(偽薬)、無治療、生活習慣の変更、他の減量薬と比較する研究を対象とした。リラグルチドを6か月以上服用した研究を選択した。結果を比較・分析し、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

31歳から64歳の肥満の男女9,937人を対象とした24件の研究が見つかった。糖尿病や肝臓病など、体重に関連した疾患を持つ人もいた。ほとんどの研究はリラグルチドとプラセボを比較していた。主に高所得国と中所得国で行われた。

リラグルチドをプラセボと比較
  • 体重減少: リラグルチドを服用した人は、中期(18試験、6,651人)および長期(2試験、1,262人)において、プラセボを服用した人よりも体重が5%以上減少する可能性が高かった。しかし、リラグルチドの試験開始から中期までの全体での体重変化率(16試験、6,050人)に対する影響については不明であり、長期的には体重変化率にほとんど差がないかもしれない(2試験、1,262人)。

  • 望ましくない影響: 中期的には、リラグルチドを服用している人は、プラセボを服用している人よりも、何らかの望ましくない影響(16試験、8,147人)および重篤な望ましくない影響(20試験、8,487人)を経験する可能性がある。軽度から中等度の望ましくない影響(17試験、7,440人)、あるいは望ましくない影響のために治療を中止したかどうか(19試験、8628人)については不明である。長期投与(2試験、2,640人)では、リラグルチドは望ましくない影響を増加させる可能性があり、そのために治療を中止する可能性が高い。全体的な望ましくない事象や軽度から中等度の望ましくない影響については不明である。

  • QOL :リラグルチドは、中期(6試験、3,733人)、長期(1試験、863人)ともに、QOLにほとんど影響を与えない。

  • その他の結果: リラグルチドは中期的には主要な心血管イベントにほとんど、あるいは全く影響を及ぼさない(6試験、5,762人)。長期的な主要心血管系イベントや中長期的な死亡に対する影響については不明である。

エビデンスの限界

リラグルチドを服用した人がプラセボを服用した人よりも体重を減らすことに中等度の確信を持っている。しかし、その他のエビデンスについては、研究の進め方の問題や情報不足のために、信頼性は限定的である。長期的な影響を調査した研究や、さまざまな場所のさまざまな人々を対象とした研究はほとんどないため、この結果がすべての人に当てはまるとは限らない。リラグルチドの製造元が、24試験中22試験のデザイン、実施、解析に関与しており、結果の信頼性には限界がある。独立した研究がさらに必要である。

エビデンスの更新状況

2024年12月時点におけるエビデンスである。

Meza N, Bracchiglione J, Escobar Liquitay CM, Madrid E, Varela LB, Guo Y, Urrútia G, Er S, Tiller S, Shokraee K, Alvarez Busco F, Solà I, Ocara Vargas M, Novik A V, Poloni D, Franco JVA

チルゼパチドは肥満症の成人にとって有効な減量治療薬か?

2 months 3 weeks ago
要点
  • プラセボ(偽薬)と比較して、チルゼパチドは中期的(最長2年)に肥満の成人の体重を減らす可能性が高く、この体重減少は長期的(2年以上)に維持される可能性が高い。チルゼパチドは、中長期的には非重篤な望ましくない作用のリスクを高める可能性があるが、チルゼパチドの服用を中止する原因となるような重篤な望ましくない作用にはほとんど影響を与えない可能性がある。生活の質(QOL)、主要心血管系イベント、死亡率にはほとんど影響しないかもしれない。

  • チルゼパチドの製造元は、対象となった9試験すべての資金提供、デザイン、実施、報告に関与した。これは、結果に影響を与えるかもしれない利益相反についての懸念を引き起こす。独立した研究がさらに必要である。

肥満とは何か?

肥満とは、体脂肪が多すぎる状態のことで、2型糖尿病、心臓病、ある種のがんなどの健康問題のリスクを高める可能性がある。肥満の治療には、より健康的な食事や、より積極的に体を動かすなど、ライフスタイルを変えることが必要である。場合によっては、医師が減量をサポートする薬を処方することもある。

チルゼパチドとは何か?

チルゼパチドは、肥満症や体重に関連した健康問題を抱える人々の治療のために開発された薬剤である。チルゼパチドは、食欲、空腹感、満腹感、血糖値、代謝を調整する2種類のホルモンを模倣することで作用する。チルゼパチドは、週1回の注射で投与される。チルゼパチドを服用している人の中には、消化不良、気分不良、下痢、便秘などの望ましくない作用を経験する人もいる。他の類似薬としては、リラグルチドとセマグルチドがある。

知りたかったこと

成人の肥満症患者において、チルゼパチドが中期的(2年まで)および長期的(2年以上)にどの程度有効であるかを知りたかった。体重減少、肥満に伴う健康問題、望ましくない作用、生活の質、死亡リスクに対する効果を調べた。チルゼパチドの服用を中止した後のことは調べていない。

実施したこと

チルゼパチドとプラセボ(偽治療)、無治療、ライフスタイルの変更、または他の体重減少薬を比較した研究を検索した。チルゼパチドとプラセボを比較した研究に焦点を当てた。参加者を少なくとも6か月間追跡した研究を対象とした。結果を分析し、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

主に中・高所得国の36歳~65歳の肥満症成人7,111人を対象とした、9件の研究をレビューに含めた。チルゼパチドとプラセボを比較した研究は8件、チルゼパチドとセマグルチドを比較した研究が1件であった。チルゼパチドは週1回、5mgから15mgの用量で注射された。プラセボとの主な比較(8試験、6,361人)では、次のような結果が得られている。

  • チルゼパチドは中期的(約1.5年まで)に有意な体重減少をもたらし、長期的(約3.5年)にはおそらくこの効果を維持すると思われる。

  • チルゼパチドを服用している人は、重篤でない望ましくない作用を経験する可能性があるが、プラセボを服用している人と比べて、このような作用のために治療を中止する可能性は高くも低くもない。重篤な副作用にはほとんど、あるいはまったく差がないかもしれない。

  • チチゼパチドは心血管イベントにほとんど差をもたらさないかもしれないが、QOLの改善や死亡率の減少をもたらさないかもしれない。

エビデンスの限界は?

いくつかの研究の実施方法に懸念があるため、エビデンスに対する信頼性は限定的である。長期的な結果は、たった1件の研究に基づくものである。チルゼパチドの製造元がすべての研究に資金を提供しているため、結果の信頼性に懸念がある。独立した研究がさらに必要である。

エビデンスの更新状況

本エビデンスは2024年12月時点のものである。

Franco JVA, Guo Y, Varela LB, Aqra Z, Alhalahla M, Medina Rodriguez M, Salvador Oscco EL, Patiño Araujo B, Banda S, Escobar Liquitay CM, Bracchiglione J, Meza N, Madrid E

セマグルチドは肥満症の成人にとって有効な減量治療薬なのか、また好ましくない作用はあるのか?

2 months 3 weeks ago
要点
  • 肥満症の成人では、プラセボ(偽薬)よりもセマグルチドの方が体重が減少する。しかし、24か月後の好ましくない事象がおこるリスクは、おそらくプラセボよりも高いと思われる。セマグルチドは、生活の質(QOL)、主要心血管イベント、死亡に対してほとんど差がないか、あるいは影響が不確実である。

  • セマグルチドの製造元が18件の試験のうち17件に関与しており、結果の信頼性に懸念がある。さまざまな背景や場所の人々に焦点を当てた、より独立した研究が必要である。

肥満症とは何か?

肥満症は、長期的に体脂肪が多すぎる状態である。2型糖尿病、心臓や血管の病気(心血管系疾患)、ある種の癌などの健康問題のリスクを高める可能性がある。肥満症は世界的に増えており、医療制度に大きな負荷をかけている。肥満症の治療には、より健康的な食事や、より積極的に体を動かすなど、ライフスタイルを変えることが必要である。しかし、多くの人はこのような変化を維持するのが難しいと感じ、医師は減量をサポートする薬を処方することがある。

セマグルチドとは何か?
セマグルチドは天然の腸管ホルモンを模倣した薬である。セマグルチドは食欲を減退させ、減量を助ける。セマグルチドには注射薬と飲み薬がある。セマグルチドを服用している人の中には、気分が悪くなったり、下痢や消化不良などの好ましくない作用を経験する人もいる。類似薬にはリラグルチドやチルゼパチドがある。

知りたかったこと
成人の肥満症患者において、セマグルチドが中期(6〜24か月)および長期(24か月以上)においてどの程度有効であるかを知りたかった。体重減少、望ましくない影響、肥満症に伴う健康問題、QOL、死亡リスクに対する効果を調べた。

セマグルチドの服用を中止した後のことは調べていない。

実施したこと
肥満症患者を対象に、セマグルチドとプラセボ(偽薬)、生活習慣の改善、他の減量薬を比較した研究を検索した。結果を比較・分析し、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと
セマグルチドを6か月から4年以上服用した41歳から69歳の男女27,949人を対象とした18件の研究を対象とした。これらの研究は主に高中所得国または高所得国で行われ、そのほとんどが白人とアジア人であった。セマグルチドをプラセボ、リラグルチド、チルゼパチドと比較した。プラセボとの主な比較では、次のような結果が得られた。

  • 中期(16試験、10,041人): セマグルチドはプラセボに比べ、体重の割合でより多くの体重減少をもたらし、より多くの人が体重の5%を減少させた。セマグルチドにより軽度から中等度の副作用を経験する可能性があるが、これらの副作用はおそらく、治療の中止を決定する人々にとってほとんど、あるいはまったく違いのないものであろう。重篤な副作用に対するセマグルチドの効果は不明である。セマグルチドはQOLにほとんど、あるいは全く影響を与えず、主要な心血管イベントや死亡を有意に減少させない可能性がある。

  • 長期(2試験、17,908人): セマグルチドによる体重減少は、体重に対する割合の観点で、また体重が5%減少した人の数の観点で、おそらく継続する。セマグルチドはおそらく重篤な副作用にはほとんど影響を及ぼさず、軽度から中等度の副作用に対する影響については不明である。しかし、このような好ましくない作用があるために、治療を中止する人が増えるのだろう。セマグルチドはQOL、主要心血管系イベント、死亡にほとんど、あるいは全く影響を与えない可能性が高い。

エビデンスの限界は?

セマグルチドを服用している人がプラセボを服用している人よりも体重を減らすことの信頼性は非常に高い。しかし、セマグルチドのメーカーがほとんどの研究に関与しており、その結果に対する信頼性は限定的である。研究の場所や参加者は非常に類似していたので、異なる背景や場所の人々に対してセマグルチドがどのように作用するかはわからない。

本レビューの更新状況
エビデンスは2024年12月17日現在のものである。

Bracchiglione J, Meza N, Franco JVA, Escobar Liquitay CM, Novik A V, Ocara Vargas M, Lazcano G, Poloni D, Rinaldi Langlotz F, Roqué-Figuls M, Munoz SR, Madrid E

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)はがん患者の助けになるか?

2 months 3 weeks ago
主なメッセージ

- 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I、助けにならない思考に気づき、それを疑い、より健康的な考え方や行動を学ぶことを支援するトークセラピーの一種)は、他の治療法と比較して、がん患者において不眠症の重症度をわずかに軽減し、睡眠の質をわずかに改善する可能性があるが、これらの結果については非常に不確かである。
- CBT-Iは、望ましくない有害な事象を引き起こさないようであるが、この結果についても不確かである。
- 今後の研究では、がんの種類や治療段階が異なる人々がCBT-Iにどのように反応するかを理解することに焦点を当てるべきである。

不眠症はなぜがん患者にとって問題なのか?

がん患者の多くは不眠症と闘っている。つまり、眠るべきタイミングになかなか眠れない。がんに罹患している人は、一般の集団よりも不眠症になりやすい。痛み、ストレス、心配事、がん治療による副作用のために眠れないこともある。よく眠れないと、疲労感、不安感、抑うつ感が強くなり、がんやその治療に対処するのが難しくなる。

がん患者の不眠症はどのように治療するか?

不眠症の治療には、薬物療法とCBT-Iや運動などの非薬物療法の2種類の方法がある。CBT-Iは構造化された治療法で、睡眠についての考え方を変え、睡眠がどのように機能するかを理解し、次のような実用的なツールを使えるようになるのを助ける:

- より良い睡眠習慣を作る
- ベッドと睡眠を結びつけるよう脳を訓練する;
- 睡眠の質を高めるために、ベッドにいる時間を制限する。

CBT-Iは、一般集団における不眠症治療の第一選択として広く認知されているが、がん患者におけるその有効性については、徹底した最新の詳細な評価が必要である。

知りたかったこと

CBT-Iが、(1)積極的治療なし、または(2)他の治療法よりも、不眠症の重症度、睡眠の質、睡眠日誌のパラメーター(いつベッドに入ったか、眠りにつくまでどのくらい時間がかかったか、夜中に何回目が覚めたか、など)の改善において優れているかどうかを知りたかった。また、CBT-Iが重大な望ましくない出来事や有害な出来事を引き起こしたかどうかも知りたかった。

実施したこと

がん患者に対するCBT-Iと他の治療法を比較した研究を探した。研究結果を比較、要約し、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

その結果、乳癌と診断された2,431人(主に成人女性)を対象とした21件の研究が見つかった。21件の研究のうち17件は北米で行われたものである。本レビューでは、5種類の比較を特定した。この要約では、以下の2種類の主な比較結果を紹介する:

- CBT-Iと積極的治療なしとの比較;
- CBT-Iと有酸素運動の比較。

主な結果

CBT-Iと積極的治療なしとの比較

がん患者において、CBT-Iは、追加の望ましくない、あるいは有害な事象を引き起こすことなく、不眠症の重症度、睡眠の質、およびほとんどの睡眠日誌パラメータをわずかに改善する可能性がある。しかし、不眠症の重症度、入眠後どれくらいの頻度で、あるいはどれくらいの時間で目覚めるか、重篤な望ましくない有害事象についての結果は非常に不確かである。

CBT-Iと有酸素運動との比較

CBT-Iは、追加の望ましくない、あるいは有害な事象を引き起こすことなく、不眠症の重症度と睡眠の質をわずかに改善する可能性がある。しかし、CBT-Iでは、ほとんどの睡眠日誌パラメータにほとんど差がない可能性がある。重篤な望ましくない有害事象、睡眠日誌に記録された総睡眠時間についての結果は非常に不確かである。

エビデンスの限界

結果に確信がない。というのも、研究に参加した人々は、自分がどの治療を受けているかを知っていた可能性があり、それが治療への反応に影響を与えた可能性があるからである。加えて、研究数が少なすぎて、興味あるアウトカムについての結果を確かめることができなかった。

エビデンスはいつのものか?

本エビデンスは2025年4月現在のものである。

Cai Z, Tang Y, Liu C, Li H, Zhao G, Zhao Z, Zhang B

子宮頸癌やその他のHPV関連疾患を予防するための、さまざまなヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの利益とリスクは何か?

2 months 3 weeks ago
要点

HPVワクチン接種は:

- 16歳以前にワクチン接種を受けた人の子宮頸癌罹患率を約80%減少させる;

- 悪性度が高い子宮頸部前癌病変や尖圭コンジローマの罹患率を減少させる;

- 長期的な副作用や不妊症のリスクの増加とは関連していない;

- 性行為を経験する前、16歳以下で投与するとより効果的である。

HPVとは?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、腟性交や肛門性交、オーラルセックスを含む性的接触によって人と人の間で感染する。HPVには多くの種類がある。無害なタイプもあるが、癌を引き起こすタイプもある。子宮頸癌は、HPVが引き起こす可能性のある癌の中で最も一般的なものであるが、腟癌、外陰癌、陰茎癌、肛門癌、頭頸部癌、さらには尖圭コンジローマ(特定の型のHPVによって引き起こされる性感染症)の原因にもなる。HPVに感染してから子宮頸癌が発症するまでには通常10年以上かかり、他の癌はもっと長くかかる。

HPVワクチンはどのように有益なのか?

女児と男児のHPVワクチンは、時に癌や尖圭コンジローマの原因となるHPV感染を予防することを目的としている。HPVワクチンは、すでにHPVに感染している人には効果がない。このため、ほとんどの予防接種プログラムは、性的に活発になる前の若者にワクチンを接種することを目的としている。

知りたかったこと

ランダム化比較試験(2種類以上の治療群に無作為に割り付けた試験)では答えられない、長期的で稀な結果に関する以下のような疑問について、より多くの情報を求めていた:

- HPVワクチン接種の導入は、子宮頸癌、腟癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌の地域別罹患率、および癌発症の前癌病期にどのような影響を及ぼすか?

- HPVワクチン接種の導入は、尖圭コンジローマを発症する人の数やHPV関連疾患の治療を受ける人の数にどのような影響を与えるか?

また、HPVワクチンが有害な影響、特にソーシャルメディア上で最も頻繁に議論されている影響と関連しているかどうかを知りたかった。

実施したこと

HPVワクチン接種が、子宮頸癌およびその他の癌、高悪性度前癌病変(高リスクHPV持続感染後に発生し、治療しなければ癌に発展する可能性のある細胞異常)、尖圭コンジローマ、治療率、HPV感染、望ましくないまたは有害な事象について、集団レベルに及ぼす影響を評価した研究を検索した。これには、HPVワクチン接種後の集団を追跡調査した研究や、HPVワクチン接種の国家レベルでの導入後のこれらの疾患の変化を観察した研究が含まれる。

また、HPVワクチン接種に関連する有害事象について、ソーシャルメディア(WebMDとX(旧Twitter))を検索した。これらの事象に対するHPVワクチン接種の影響を評価した研究を検索し、組み入れた。

わかったこと

HPVワクチン接種の有益性と有害性について報告した、1億3,200万人以上を対象とした、世界各地からの225件の適切な研究が見つかった。

HPVワクチン接種は、16歳以前に接種した人の子宮頸癌発生率をおそらく約80%減少させる。予防接種を受けた時期が遅いほど、その減少率は低くなる。

HPVワクチン接種は、おそらく高悪性度の子宮頸部前癌病変(CIN3+、CIN3、CIN2+、CIN2)や尖圭コンジローマの罹患率を低下させる。この場合も、16歳以前にHPVワクチンを接種した人ほど減少率が高い。

非浸潤性腺癌、その他の前癌病変、HPVに関連するその他の癌(腟癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌など)など、発症に時間がかかるまれな疾患に対するHPVワクチン接種の効果に関するエビデンスは、確実性が低かった。これらの結果に関する研究は少なかった。

体位性頻脈症候群、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎、麻痺、複合性局所疼痛症候群、ギラン・バレー症候群、不妊症など、具体的に検討した有害事象のほとんどについて、HPVワクチン接種が発症リスクを高めることはないだろうという中等度の確実性のエビデンスがあった。HPVワクチン接種によって性的活動が増加することもなかった。

また、HPVワクチン接種はHPV関連疾患の治療を受ける人の数を低下させ、子宮頸がん検診プログラムへの参加率を高め、HPV感染を減少させるようである。

エビデンスの限界

子宮頸癌、高悪性度子宮頸部疾患、尖圭コンジローマおよび特定の有害性についての結果に関しては、中等度の確実性がある。しかし、より良い、より大規模な研究がなされれば、予防できる割合についてより信頼できる正確な結果を示すことができるだろう。

本レビューの更新状況

エビデンスは2024年9月までの最新のものである。

Henschke N, Bergman H, Buckley BS, Crosbie EJ, Dwan K, Golder SP, Kyrgiou M, Loke YK, McIntosh HM, Probyn K, Villanueva G, Morrison J

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性の排卵を促すのに最もいいゴナドトロピン製剤はどれか?

3 months 2 weeks ago
要点
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性では、更年期女性の尿から抽出されたゴナドトロピン製剤と遺伝子組換え卵胞刺激ホルモン(遺伝子組み換え技術を用いて生成されたもの)を比べても、生児出産率、多胎妊娠率(双子や三つ子など)、妊娠率、流産率にほとんど差がないかもしれない。

  • 更年期女性の尿から抽出されたゴナドトロピン製剤のうち、ゴナドトロピンを抽出した製剤(HMG)とより精製して卵胞刺激ホルモンだけにした製剤との比較では、生児出産率、多胎妊娠率、妊娠率、流産率に差があるかどうかは分からなかった。

  • クロミフェンクエン酸塩を服用しても妊娠しない女性では、ゴナドトロピン製剤は、クロミフェンクエン酸塩による治療を続ける場合と比べて、双子や三つ子のリスクは増やさず、生児出産や妊娠がより多いだろう。ゴナドトロピン製剤は、流産のリスクを高めるかもしれない。

論点

世界中の7組に1組のカップルは、不妊症かもしれない。不妊症とは、妊娠を望んでから1年以上たっても妊娠しないものを言う。月経周期の中で排卵(卵子が放出されること)に問題があることによる不妊 は、女性がカウンセリングや治療を受ける理由として最もよくあるものである。このような女性には、薬を使って卵巣から卵子が放出されることを促す、いわゆる「排卵誘発」という治療が行われる。治療の第一選択は、通常、クロミフェンクエン酸塩の飲み薬である。クロミフェンクエン酸塩を服用しても効果が出ない場合、最も一般的な治療の第二選択は、注射薬であるゴナドトロピン製剤による排卵誘発である。

どのような治療法があるか?

更年期女性の尿を処理することによって、さまざまな種類のゴナドトロピン製剤が開発されてきた。これらのゴナドトロピン製剤には、精製および高純度のヒト更年期ゴナドトロピン製剤、および精製および高純度卵胞刺激ホルモン製剤が含まれる。その後、さらに高い純度を得るために、遺伝子組換えの技術を用いて人工的に生成した卵胞刺激ホルモンが開発された。排卵はするが、クロミフェンクエン酸塩による治療を6回しても妊娠しない女性は、クロミフェンクエン酸塩による治療を続けるほか、ゴナドトロピン製剤に切り替えることがある。ゴナドトロピン製剤は、複数の卵胞を発育させる可能性がある。その場合、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という重篤な状態を防ぐために、その周期の治療をやめる必要がある。

医師や女性が十分な情報を得た上で治療方針を決めるためには、どの薬が最も効果的かを知ることが重要である。

何が知りたかったのか?

クロミフェンクエン酸塩を服用しても排卵しない、あるいは妊娠しないPCOSの女性において、排卵を促すにはどのゴナドトロピン製剤が最もいいかを調べたかった。

何を行ったのか?

PCOSの女性において、排卵を促すためのさまざまなゴナドトロピン製剤を比べた研究を検索した。レビューに含んだ研究の結果を要約し、研究方法や研究規模などの要因にもとづいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

何を見つけたのか?

このレビューには、PCOSの女性2,348人を対象とした15件の研究が含まれた。遺伝子組換え卵胞刺激ホルモンと尿から抽出されたゴナドトロピン製剤を比べた研究は10件あった。3件の研究では、ヒト更年期ゴナドトロピン製剤と精製された尿由来卵胞刺激ホルモン製剤を比べていた。また、ゴナドトロピン製剤とクロミフェンクエン酸の継続とを比べた研究が1件あった。

主な結果

尿から抽出されたゴナドトロピン製剤と遺伝子組換え卵胞刺激ホルモンの間には、生児出産、多胎妊娠、臨床的妊娠、流産率においてほとんど差がないかもしれない。ヒト閉経期ゴナドトロピン製剤が、尿から抽出された卵胞刺激ホルモン製剤と比べて、PCOSの女性の妊娠転帰を改善するかどうかは不明である。どの治療法も、OHSSや子宮外妊娠のリスクを減らすかどうかは分からない。

クロミフェンクエン酸塩による治療を続けた場合と比べると、ゴナドトロピン製剤はおそらく、多胎妊娠率を増やさず、生児出産と妊娠がより多くなるだろう。ゴナドトロピン製剤は、クロミフェンクエン酸より流産が多いかもしれないが、OHSSの症例はなかった。

エビデンスの限界は何か?

エビデンスに対する信頼性は、非常に低いものから中程度のものまでさまざまあった。対象者の数が少ない研究が多く、またかなり昔に実施されたものも多かった。そのため、研究方法に関する重要な情報が不足していた。レビューに含んだ15件のうち10件の研究は、企業による支援があると報告されていた。費用や利便性については考慮されていない。治療を受ける時には、費用や利便性、望ましくない影響について医療従事者と相談することが勧められる。

このエビデンスはどれくらい最新のものか?

このレビューは、更新版である。エビデンスは、2024年3月現在のものである。

Weiss NS, Kostova EB, Mol BWJ, van Wely M

骨盤底筋の体操は、フィードバックやバイオフィードバックを使った方が、女性の尿失禁に対して効果があるか?

3 months 2 weeks ago
主な結果

- 尿失禁(尿漏れ)のある女性において、骨盤底筋トレーニングとともにバイオフィードバック装置(筋肉の収縮を測って、音声または視覚的なフィードバックをくれるセンサー付きの装置)を使っても、尿失禁に関連したQOL(生活の質)、尿失禁の頻度、症状が治癒または改善したと感じる頻度にほとんど差はない。ほとんどのエビデンスは、腹圧性尿失禁(咳やくしゃみ、歩行、ランニング、ジャンプなどによって起こる尿漏れ)のある女性から得られている。

- 副作用を調べた研究はほとんどなく、調べた研究でも、副作用は軽微で短時間であったか、あるいは全くなかったというものであった。

- どのバイオフィードバックが他のものより優れているのか、バイオフィードバックの方がフィードバックより優れているのか、は不明である。

尿失禁とは何か

尿失禁とは、自分の意思とは関係なく、尿が漏れてしまうことである。女性によく見られる症状で、加齢、妊娠、出産、太り過ぎ、アルコールやカフェインの飲み過ぎなどが原因となる。尿失禁には、咳やくしゃみ、歩行、ランニング、ジャンプなどの体に力が入った時に尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁」と、尿意を強く感じてがまんできずに尿が漏れてしまう「切迫性尿失禁」がある。両方の尿失禁が重なる場合もあり、「混合性尿失禁」という。

骨盤底筋トレーニング、フィードバック、バイオフィードバックとは?

多くの場合、尿失禁の最初の治療法は「骨盤底筋トレーニング」で、骨盤底筋体操やケーゲル体操ともいう。骨盤底筋は骨盤の底にある筋肉で、腸や膀胱を支えている。女性の場合は、子宮と腟も支える。これらの筋肉を鍛えれば、女性が自分の膀胱をよりコントロールできるようになるかもしれない。トレーニングでは、これらの筋肉を収縮させる(締めて持ち上げる)。多くの女性にとって、このトレーニングをうまくできているかを判断するのは難しい。フィードバックやバイオフィードバックは、女性がどの程度うまくいっているのか、より多くの情報を与えることができる。「フィードバック」とは、医療従事者が筋肉に触れたりつまんだりして、女性にうまくできているか伝える方法である。「バイオフィードバック」はセンサー付きの装置を使う。この装置は、腟や直腸に入れ、筋肉が収縮する時の変化を測定し、画面やスピーカーに信号を送るので、女性はそれを見たり聞いたりすることができる。

知りたかったこと

骨盤底筋トレーニングにフィードバックやバイオフィードバック、あるいはその両方を使うことで、以下の効果が得られるかを知りたかった。

- 尿失禁に関連する生活の質を改善する;

- 尿失禁の回数を減らす;

- 尿失禁の量と頻度を減らす。

また、女性が尿失禁が治った、あるいは改善されたと感じているかどうか、治療に満足しているかどうか、フィードバックやバイオフィードバックによる好ましくない影響があるかどうかについても知りたいと考えた。

実施したこと

尿失禁の女性に対する骨盤底筋トレーニングにフィードバック、バイオフィードバック、またはその両方を使ったものとそれらを使わなかった骨盤底筋トレーニングとを比べた研究を検索した。また、いずれかのバイオフィードバックを他のものと比べた研究も探した。その結果を比較し、要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスにおける信頼性を評価した。

わかったこと

3,483人の尿失禁の女性を対象とした41件の研究が見つかった。ほとんどの女性が腹圧性尿失禁で、年齢は18~80歳、平均年齢は約55歳であった。ほとんどの研究は3ヶ月間の期間で、高所得国で行われた。バイオフィードバック装置を作っている会社のような、商業的資金提供者がいる研究もいくつかあった。

33件の研究では、バイオフィードバックを使った骨盤底筋トレーニングと骨盤底筋トレーニング単独とを比べていた。バイオフィードバックを受けた女性では、生活の質にはほとんど差がなく、尿失禁の頻度もわずかに減少したが、これは顕著な差とは言えないだろう。バイオフィードバックを受けた女性は、自分の症状が治った、または改善したとまでは言えないだろうが、自分の治療や治療結果に対してより大きな満足感を感じるかもしれない。

フィードバックまたはバイオフィードバックを受けた女性と骨盤底筋トレーニング単独をした女性、フィードバックを受けた女性とバイオフィードバックを受けた女性、なんらかのバイオフィードバックを受けた女性と他のバイオフィードバックを受けた女性の間に差があるかどうかは不明である。

多くの研究では、治療による好ましくない影響は報告されていない。また、好ましくない影響を調べた研究では、深刻なものや持続するものはなかったと報告している。

エビデンスの限界

女性の尿失禁治療において、骨盤底筋トレーニングにバイオフィードバックを使った場合と、骨盤底筋トレーニング単独の場合の差はほとんどないことには、確信が持てる。

その他のエビデンスについては、研究の数が少なく、規模も小さく、知りたかった評価項目を測定していないために確信が持てない。

本レビューの更新状況

エビデンスは、2023年9月27日現在のものである。本レビューは、2011年に発表されたコクラン・レビューを更新したものである。

Fernandes ACNL, Jorge CH, Weatherall M, Ribeiro IV, Wallace SA, Hay-Smith EJC

コンピューターやロボットを使った歩行トレーニング機器は脳卒中後の歩行能力の改善に役に立つか?

3 months 2 weeks ago
主なメッセージ

・コンピューター機器やロボットと理学療法を組み合わせることは、脳卒中後に再び自立して歩けるようになるのに役に立つだろう。特に、脳卒中発症後3ヶ月以内の患者には有効であろう。

・どのくらいの頻度や期間で、これらの機器を使用すべきかについて明らかにするためには、さらなる研究が必要である。

脳卒中とは?

脳卒中は、脳の一部分への血流が遮断され、脳細胞に酸素と栄養が行き渡らなくなることで起こる。そして多くの場合、左もしくは右半身の脱力を伴う突然の発作が起こる。脳への血流が止まると、脳細胞は死滅し始める。その結果、脳損傷や能力障害、さらには死に至ることもある。

脳卒中になった人は、脳損傷による後遺症に長い間悩まされることが多い。片側または両側の脚の筋力が弱くなったり、関節が硬くなったり、動きがぎこちなくなることで歩きにくくなるなど、身体活動が困難になるかもしれない。以前のような自立した生活を取り戻すまでには、理学療法を含む長時間のリハビリテーションが必要となるだろう。理学療法には、運動療法やマッサージ、日常生活場面での練習、電気治療が含まれ、人々が動きを取り戻すサポートを行う。

脳卒中後の歩行

脳卒中後の最も重要な目標のひとつは、再び歩けるようにすることである。ロボット(特定のタスクを自動的に実行するようにプログラムされているもの)やコンピューター制御された(電気機械的)機器が、歩行練習に役立つように開発されている。脳卒中の後遺症で歩行が困難になった人は、良くなるまでに多くの練習が必要である。これらの歩行トレーニング機器が効果的かどうかは不明である。

知りたかったこと

歩行トレーニング機器と理学療法を組み合わせることで、そのような機器を使用しない場合と比べ、脳卒中後の歩行能力が改善されるかどうかが知りたかった。

実施したこと

脳卒中になった人々がもう一度歩けるようにサポートしてくれるような歩行トレーニング機器の使用を検討した研究を検索した。以下の点に着目した。

・何人が自立して歩けるようになったか

・どれだけ速く歩けるようになったか

・6分間でどれだけの距離を歩けるようになったか

・何人が研究の途中で脱落したか

・何人死亡したか

無作為に治療群に割り付けられた研究を検索した。このような研究の方法(ランダム割り付け)は、治療効果について最も信頼性の高いエビデンスが得られるとされている。

わかったこと

脳卒中を発症し、再び歩けるようになった成人4,224人(平均年齢47~76歳)を対象とした101件の研究があった。研究では、歩行練習における電気機械的な機器またはロボットと理学療法の組み合わせの効果と、理学療法のみもしくは通常ケアの効果が比較された。ほとんどの研究では、トレーニング期間は3~4週間で、最短は10日間、最長は8週間であった。

理学療法または通常ケアと比べて、理学療法に歩行トレーニング機器を組み合わせると、トレーニングの終了時点で、

・より多くの人が自立して歩けるようになるだろう(51件の研究、2,148人の参加者)。

・平均の歩行速度は速くならないだろう(73件の研究、3,043人の参加者)。

・6分間で歩くことができる距離は増えない(42件の研究、1,966人の参加者)。

・研究の脱落者や死亡者数は増加も減少もしない(死亡は稀であった)(101件の研究、4,224人の参加者)。

もし9人の人が理学療法と機器を組み合わせた治療を受けると、トレーニング終了時点で自立して歩けるようになる人が(理学療法のみもしくは通常ケアのみを受けるのと比較して)さらに1人多くなるだろう。

追跡調査においては、歩行トレーニング機器と理学療法を併用しても、理学療法のみや通常ケアと比べて、歩行が自立する助けにはならないかもしれない。また、平均歩行速度や6分間で歩ける距離は増加しないだろう。

エビデンスの限界は?

結果の確実性は低から高程度である。多くの研究は、参加者数が少なく、質が低いものであった。そのため、いくつかの研究では、これらの機器の利点が実際よりも大きく感じられたかもしれない。

このレビューの更新状況

エビデンスは、2023年12月現在のものである。

Mehrholz J, Kugler J, Pohl M, Elsner B

月経前症候群(PMS)を治療するためのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログ製剤

3 months 2 weeks ago
レビューの論点

月経前症候群(PMS)を治療するのに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)作動薬および拮抗薬を使うことの利点とリスクは何か?

要点

- GnRH作動薬はプラセボと比べて、PMSの症状を改善するという信頼できるエビデンスがある。しかし、副作用として更年期障害のような症状がよく出るため、GnRH作動薬を服用している女性はプラセボを服用している女性よりも治療を中止する可能性が高かった。

- アドバック療法を加えたGnRH作動薬はプラセボと比べて、PMS症状が改善する可能性がある(中程度の信頼性)。アドバック療法を加えたGnRH作動薬はGnRH作動薬単独と比べて、PMS症状が改善するかどうか、あるいはアドバック療法で使うホルモンの投与量がPMS症状に影響を与えるかどうかについて判断するには、十分なエビデンスがなかった。

- GnRH作動薬に関して、アドバック療法を加え、長期間追跡した、ランダム化比較試験が必要である。

月経前症候群とは何か?

月経前症候群(PMS)は、卵巣から卵子が排卵された後に始まり、月経が終わるまでに消失する不調で、仕事、学校、社会活動、趣味、対人関係などの日常生活に大きな苦痛や障害をもたらす。さまざまな身体的、心理的、行動に関する症状からなる。GnRHアナログ製剤を使って排卵を止めれば、そのような症状は抑えられるかもしれない。一方、ホットフラッシュなどの更年期障害のような副作用や、長期的には骨粗鬆症を引き起こす可能性があるという欠点がある。これらの副作用を抑えるために、別のホルモン(多くの場合、エストロゲンまたはプロゲストーゲン)を治療に追加することができる。これをアドバック療法という。

知りたかったこと

ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログ製剤は、GnRHに似た構造を持つペプチドで、排卵を止めるために広く使われている。脳にある視床下部や下垂体に影響を与える薬である。GnRHアナログ製剤には、作動薬と拮抗薬の2種類がある。GnRH作動薬は、初めGnRHの産生を促すが、長く使うとGnRH産生を抑える。GnRH拮抗薬は、GnRH産生をすぐに抑える。これらの薬が効果的で安全かどうかを確かめたかった。ランダム化比較試験(RCT)という種類の研究を検索した。このタイプの試験では、人々は無作為に2つかそれ以上の群のいずれかに割り付けられ、結果のバイアスのリスクが少ない。

研究の特徴

PMSの治療にGnRHアナログ製剤を使った11件の研究(RCT)が見つかった。臨床的にPMSと診断された女性265人が登録されていた。これらのRCTを4つの比較に使った:アドバック療法なしのGnRH作動薬対プラセボ(9件、女性173人)、アドバック療法ありのGnRH作動薬対プラセボ(1件、女性31人)、GnRH作動薬で治療中のアドバック療法追加対プラセボ(2件、女性60人)、異なる用量のアドバック療法の比較(1件、女性15人)。QOLや骨粗鬆症などの長期的リスクを報告した研究はなかった。

主な結果

GnRH作動薬は、プラセボと比べて、PMSの症状全般を改善するという信頼できるエビデンスが得られた。しかし、GnRH作動薬を使った女性は、よくない副作用(更年期障害のような症状など)のために治療を中断する可能性が高い。

アドバック療法を加えたGnRH作動薬は、プラセボと比べて、全般的な症状が改善する可能性があることを示す、信頼度の低いエビデンスが得られた。一方、よくない副作用に関するエビデンスは不十分であった。

GnRH作動薬で治療中のアドバック療法の追加とプラセボとの比較、およびアドバック療法で使うホルモンのさまざまな用量に関するエビデンスは、 、最も効果があるのはどれかを判断するにはあまりにも不確実であった。

QOLや骨粗鬆症などの長期的リスクについて報告した研究はなかった。

エビデンスの限界

エビデンスの主な限界は、ほとんどの研究で対象となった女性の数が少ないことと、いくつかの研究で対象となった女性が自分がどの治療を受けているか分かっていたことである。GnRH作動薬については、アドバック療法なしとプラセボとを比べた結果は信頼できるが、他の3つの比較の結果はほとんど不確実である。

このエビデンスはどれくらい最新のものか?

このエビデンスは、2023年5月までに行われたデータベースの検索に基づいている。

Naheed B, Kuiper JH, O'Mahony F, O'Brien PMS

大麻使用障害の治療薬

3 months 2 weeks ago
主な結果

現在の研究によれば、大麻使用障害に対するさまざまな医薬品の効果については不明である。

大麻使用障害とは何か?

大麻使用障害とは、大麻が健康、仕事、人間関係など生活に問題を引き起こしているにもかかわらず、大麻の使用をなかなかやめられない状態をいう。大麻の使用は比較的よくみられ、世界中に広まっている。大麻使用障害の治療に対する需要は、世界のほとんどの地域で増加している。いくつかの国では、大麻使用を犯罪とみなさない、または合法化する動きがあるため、この傾向は今後も続く可能性が高い。

大麻依存症はどのように治療されるのか?
  • 現在、大麻使用障害の治療法として推奨されているのは心理療法だけである。

  • 現在、大麻使用障害の治療に特化した治療はない。

知りたかったこと

大麻依存症の治療にどのような薬が有効で安全なのかを評価したかった。

実施したこと

多くの科学データベースを検索し、大麻使用障害の治療薬に関する臨床研究を探した。参加者が大麻使用障害を持っていると記述されている研究を対象とした。2種類以上の治療群のいずれかに無作為に割り付けられた研究を対象とした。その結果にどれだけ自信が持てるかを知るために、研究方法がどれだけ優れているかを評価した。使用された薬剤の種類によって研究をグループ分けして分析した。

わかったこと

3,201人が参加した37件のランダム化比較試験を特定した。

成人を対象とした研究では、参加者の平均年齢は22歳から41歳であった。追加の4件の研究では若年層のみを対象とした。ほとんどの研究(32件の研究)では、参加者のほとんどが男性であった。ほとんどの研究では、大麻依存症の参加者を一般集団から募集しているが、5件の研究では、うつ病(2件)、注意欠陥多動性障害(2件)、双極性障害(1件)など、大麻依存症と同時に精神疾患を有する参加者に焦点を当てている。ほとんどの研究(29件)は米国で行われ、オーストラリアで4件、イスラエルで2件、カナダで1件、イギリスで1件であった。

この研究では、大麻の禁断症状を軽減し、大麻使用の中止または減少を促進するために、以下のような幅広い医薬品が試験された:Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC、精神作用のある大麻の主成分)を含むカンナビノイド製剤、カンナビジオール(CBD、高揚感をもたらさない大麻の化合物)、「抗けいれん薬および気分安定薬」に属する医薬品(発作を予防し、てんかんを治療する薬)、N-アセチルシステイン(呼吸器障害やパラセタモール中毒の治療に使われる薬)、オキシトシンというホルモンやPF-04457845という薬(カンナビノイドが体内で分解される方法に影響を与える)。ほとんどの研究では、これらの薬の効果はプラセボ(有効な薬と同じように見えるが、有効成分を含まない見せかけの治療)の効果と比較された。

11件の研究は製造会社から薬剤の提供を受けており、製薬会社から資金提供を受けている研究はなかった。3件の研究では資金提供の報告がなかったか、資金提供の有無が不明であった。

主な結果

治療終了までに大麻使用を止めるには、THC製剤、CBD、N-アセチルシステイン、オキシトシン、PF-04457845はおそらく効果がなく、抗けいれん薬や気分安定薬の効果については不明である。

治療を完了するためには、CBD、抗けいれん薬、気分安定薬、N-アセチルシステイン、PF-04457845は効果がない可能性があり、THC製剤の効果については不明である。

THC製剤、カンナビジオール、N-アセチルシステイン、PF-04457845は、おそらくプラセボに比べて副作用(頭痛、吐き気、睡眠障害など)を引き起こす可能性は高くない。抗痙攣薬と気分安定薬で治療された参加者は、プラセボで治療された参加者よりも早期に試験を終了する可能性が高い。検査されたどの医薬品も、重篤な副作用(すなわち、医師の診察が必要なもの)の可能性を増加させるものではなかった。

エビデンスの限界

このレビューにおける結果の3分の1以下のエビデンスの質は中等度(30%)であり、いくつかのものについては低い(37%)または非常に低い(31%)であった。これは、各薬剤に関する研究が数件(1件から7件)しかなかったためである。各研究は参加者数が少なく、研究間の結果に矛盾があり(すなわち、介入による有益な効果を認めたものもあれば、効果なしまたは有害な効果を認めたものもある)、研究参加者が治療から脱落したことによるバイアスのリスクがあった。

このエビデンスの更新状況

このレビューは、以前のレビューの更新版である。エビデンスは、2024年5月現在のものである。

Spiga F, Parkhouse T, Tang VM., Savović J, Le Foll B, Nielsen S

集中治療室における混乱(せん妄)を管理するための運動療法にはどのような利益とリスクがあるか

3 months 2 weeks ago
要点
  • せん妄を管理するための運動療法については、信頼性の高いエビデンス(科学的根拠)がないことから、無治療または通常の手当てと比べてどのような利益やリスクがあるかわからない。運動療法を行うとせん妄の持続期間が短縮され、集中治療室滞在期間の短縮につながることがあり、有害な副作用もない可能性がある。しかし、この分野ではさらなる研究が必要である。

  • 今後の研究では、これらの結果を裏付けることを目指すと共に、運動療法により、生活の質 (QOL)を向上させ、せん妄の重症化を抑え、認知機能(情報を学習、記憶、理解する能力)を高めることができるかどうかを調べるべきである。また、運動療法を投薬など他の治療と比較するべきである。

せん妄とは?

せん妄は、多くの患者が集中治療室において経験するありふれた症状である。発症に至る真の原因は完全には解明されていない。集中治療室にいる患者は、平常と異なる精神状態を見せることがあり、注意力が低下したり、思考回路が乱れたり、覚醒のレベルが変わったりする。これらはすべて、通常、集中治療室に入室してから数時間または数日以内に起こり、いずれも医学的な理由もなく、急激に変化したり、悪化したりする。集中治療室でせん妄が起こると、患者の治療や回復に影響することがある。また、患者の家族は、集中治療室でせん妄が起こると、不安、恐怖、無力感を覚えたり、動揺したりするため、せん妄がこの状況ではよくある症状で、一次的なものに過ぎないことを伝え、安心させる必要がある。

集中治療室におけるせん妄の管理方法

集中治療室におけるせん妄は、薬を使わない方法と投薬を併用して管理することができる。薬を使わない方法は、患者の回復を促すような支援的な環境を整えることに重点を置いている。これには、患者が今何時で自分がどこにいるかわかっているか確かめる、家族に面会に訪れるよう働きかける、患者が十分な睡眠を取るよう計らう、痛みがあればこれを管理する、患者の活動量の維持と自立回復に役立つゆるやかな運動を奨励するなどが含まれる。また、症状を悪化させる可能性があるため、身体的拘束を行うことは避け、鎮静剤の使用を制限することも重要である。投薬が必要なとき、医師は激しい興奮や苦痛を抑えるために抗精神病薬を処方することがある。しかし、こうした薬は、慎重に、必要な場合に限って使用される。

知りたかったこと

以下の項目を改善する上で、運動療法が通常の手当て、無治療、または投薬治療より優れているかを調べたかった。

  • 集中治療室でせん妄が続く期間

  • せん妄があって運動療法を受けている患者の生活の質 (QOL)

  • 全入院期間、集中治療室入室期間を短縮し、死亡率を下げるのに役立つかどうか

  • 運動療法による有害な副作用の有無

実施したこと

集中治療室に入室してせん妄が起こった人に対する運動療法と、通常の手当て、無治療、または投薬治療を比較調査した研究を探した。

研究結果を比較してまとめ、研究の方法や規模などの要素に基づいてエビデンス(科学的根拠)の信頼性を評価した。

わかったこと

集中治療室に入室してせん妄が起こった491人を対象とする4件の研究が見つかった。これらの研究は運動療法の利益を通常の手当てまたは無治療の場合と比較したものだった。運動療法と投薬治療を比較した研究はなかった。

運動療法はせん妄の発症期間を短縮する可能性があり、恐らく集中治療室入室期間が短くなる。運動療法には有害な副作用はないかもしれない。しかし、生活の質 (QOL)やせん妄の重症度を調べた研究はなかった。また、レビューの対象に含められた研究の中には運動療法と投薬治療を比較したものはなかった。

エビデンスの限界

すべての研究が本レビューで関心があったすべての事項についてデータを提供したわけではないこと、研究に参加した人がどの治療を受けているか知っていた可能性があること、またエビデンスはごく少数の症例に基づいていることから、運動療法を行うとせん妄の続く期間が短縮され、副作用もないことに関するエビデンスはあまり信頼できない。。

集中治療室入室期間の短縮を目指すせん妄管理において、運動療法の活用を支持するエビデンスの信頼性は中等度に留まる。ここでは、研究に参加した人は自分がどの治療を受けているか知っていたかもしないという懸念が信頼性レベルに影響した。それに加え、すべての研究が本レビューで関心があったすべての側面のデータを提供していたわけではない。

本エビデンスの更新状況

本エビデンスは2024年7月12日現在のものである。

Garegnani L, Ivaldi D, Burgos MA, Varela LB, Díaz Menai S, Rico S, Giménez ML, Escobar Liquitay CM, Franco JVA

頭頸部がん患者における放射線治療の有害事象のリスク予測にはどのような正常組織合併症確率(NTCP)モデルが利用可能か、またその質や予測性能はどの程度か?

3 months 2 weeks ago
要点

° 頭頸部がん患者における放射線治療の有害事象を予測するために、多くのNTCPモデルが開発されているが、そのほとんどは十分に外部検証されていない。すなわち、元のモデル開発研究に含まれていない患者による試験がなされていないため、それらの実際の有害事象に対する予測精度については不明である。

° 元のモデル開発研究に加え、2件以上の研究によって検証されたモデルに関しても、その試験の質と報告された結果は不十分である。したがって、それらがどの程度有用であるかを判断することは困難である。

° 頭頸部がん領域におけるこの問題を調査するためには、より多くの、より良くデザインされた研究が必要である。

治療による有害事象発生の可能性は、どのようにして判断されるのか?

放射線治療により有害事象が発生する確率は、正常組織合併症確率(NTCP)モデルを用いて計算することができる。NTCPモデルは、患者、疾患、および治療に関する情報に基づいて、放射線治療による副作用のリスクを計算する。

何を調べようとしたのか?

放射線治療は、頭頸部がんの主要な治療方法である。しかし、放射線治療は頭頸部領域の健康な、時には重要な部位をも被曝させ得る。正常な臓器が損傷した結果、例えば唾液の分泌が阻害されるなど、頭頸部がん患者のQOL(生活の質)に重要な影響を及ぼす可能性がある。腫瘍の制御と放射線治療による有害事象の予防との最適なバランスを達成するためには、NTCPモデルが有用である。NTCPモデルは、患者、疾患、および治療に関する情報に基づいて、放射線治療による有害事象のリスクを予測する。頭頸部がん患者を対象としたNTCPモデルは相当数存在する。本レビューでは、研究デザイン、試験の実施、および解析(すなわち、バイアスのリスク)の質、そしてこれらのモデルの放射線治療による有害事象リスク予測の正確性についての評価を行った。

何を行ったのか?

頭頸部がん患者におけるNTCPモデルの開発や検証を行った研究について検索を行った。

何を見つけたのか?

レビューに含まれた合計143件の論文中、140,767人の参加者から開発された592モデルの質のほとんどは不十分であった。また、これらのモデルの81%において、新たな患者を対象にした予測性能が試験されていなかった。残りの19%のモデルについては、合計41件の論文、34,304人の参加者に対して152件の外部検証が行われていた。外部検証が2回以上行われたモデルはわずか9つであった。これらのモデルは、参加者における結果(評価項目)の有無を識別するのは容易であった。しかし、実際の結果の評価や報告がされていないものもあったため、モデルによる予測が実際の結果と一致しているかどうかは、多くの場合不明であった。全体として、ほとんどの研究の質は低かった。

本エビデンスはいつのものか?

2024年1月8日時点におけるエビデンスである。

Takada T, Tambas M, Clementel E, Leeuwenberg A, Sharabiani M, Damen JAAG, Dunias ZS, Nauta JF, Idema DL, Choi J, Meijerink LM, Langendijk JA, Moons KG, Schuit E

SARS-CoV-2の異なる検査方法による発症、入院、および死亡を防ぐ上での利点と欠点は何か?

3 months 2 weeks ago
要点
  • 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の検査が、疾病の予防、入院の回避、あるいは死亡の防止に寄与するのか、または妨げになるのかについて検討した研究はほとんどない。

  • エビデンスが弱いため、検査が発症の予防に効果的かどうかは不明である。

  • 異なる種類のSARS-CoV-2の検査方法が、発症や、入院、あるいは死亡を防止することに対しての有益性や有害性を明確に示す研究は不十分である。

SARS-CoV-2とは何か?

2019年12月にSARS-CoV-2と呼ばれる新しいウイルスが中国で発見され、2024年5月までに7億7,500万人がCOVID-19に感染し、700万人以上が死亡した。このウイルスの検査を行うことで、感染者の増加時期を医療従事者が把握し、他者を守るための迅速な対応を行うことができる。

知りたかったこと

異なるSARS-CoV-2検査法が、発症や入院、あるいは死亡数の減少にどの程度有効かについて調査を行った。また、SARS-CoV-2検査による有害事象についても評価を行った。

実施したこと

参加者の症状の有無を問わず、異なるSARS-CoV-2の検査方法を比較した研究を検索し、結果をまとめた。主要な比較項目を事前に決定し、それらの結果を提示した。また、研究の実施方法や参加者数などを基に、エビデンスの確実性を評価した。

わかったこと

合計13,312,327人の参加者を対象とした21件の研究が見つかり、これらの研究では様々なSARS-CoV-2検査の利益と有害性を検討した。そのうち設定された結果を評価していたのは合計190,821人の参加者を含む4件の研究のみであった。

主な結果

イスラエルの長期療養施設で実施された1件の研究では、週1回のSARS-CoV-2検査が入院者数や死亡者数に及ぼす影響を、検査群と非検査群、標準治療群、通常診療群とで比較を行った。しかしこの研究では、COVID-19が回避された数や、検査に関連した重大な有害事象については評価していなかった。また、検査方法間の比較において、これらの結果を評価した研究は存在しなかった。

検査群に対する非検査群、標準治療群または通常診療群における利益と有害性

週1回のSARS-CoV-2検査の効果を非検査群と比較した1件の研究に基づくと、入院者数および死亡数に関する結果は非常に不確実である。

エビデンスの限界

発見された研究は少数であり、検査群と非検査群を比較した2種類の結果からのエビデンスは、1件のみの研究に基づいていたが、この研究は実施方法に問題があり、研究目的との整合性も十分ではなかったため、結果の妥当性や正確性には疑念が残る。他の要因が交絡して結果に影響を及ぼした可能性や、結果の測定方法に欠陥があった可能性もあり、結果は完全に公平または正確ではないかもしれない。したがって、今後の研究によって今回の結論は変わることと思われる。

本エビデンスはいつのものか?

2024年10月7日時点におけるエビデンスである。

Saif-Ur-Rahman K, Nurdin N, Movsisyan A, Kothari K, Gleeson C, Conway T, Tierney M, Taneri PE, Mulholland D, Tricco AC, Dinnes J, Devane D

薬物療法と非薬物療法は、パーキンソン病をもつ人々の衝動的・強迫的行動の軽減に役立つか?

3 months 2 weeks ago
要点
  • 薬物療法や非薬物療法がパーキンソン病患者の衝動的・強迫的行動の軽減に役立つかどうかは、現在利用可能なエビデンスが限られており不確かであるため、わかっていない。

  • 最良の治療法について結論を出すためには、より多くの対象者について、生じうるさまざまな行動を含めた調査研究が必要である。

衝動的・強迫的行動(ICBs)とは何か?

パーキンソン病をもつ人々の中には、衝動的・強迫的行動(ICBs)をおこす人がいる。ICBsは、コントロールが難しく、問題を引き起こしても繰り返される行動である。ICBsの例としては、以下のようなものがある:

  • 過度なギャンブル;

  • コントロールできない浪費や買い物;

  • 過食やむちゃ食い;

  • 性欲の亢進(性的思考や性的行動の増加);

  • その他、物を分類したり分解したりするといった、反復的で、過剰で、一般的でない行動。

ICBsはどのように治療されるのか?

パーキンソン病患者におけるICBsの最良の治療法については、十分な明確なエビデンスがない。パーキンソン病の治療に使われる薬の中には、ICBsを悪化させるものがあるため、医師はしばしば投与量を減らすが、それはパーキンソン病患者が有する運動障害の再発や悪化につながる可能性がある。

パーキンソン病をもつ人々のICBsを改善する治療法には、薬物療法と非薬物療法がある。薬物療法は、脳のさまざまな部位のドーパミンレベルのバランスをとることで、役立つ可能性がある。ドーパミンは脳の報酬系に関与しているため、「気分の良い」化学物質と呼ばれることもある。認知行動療法(CBT)や非侵襲的脳刺激療法などの非薬物療法は、衝動性を管理する脳の能力を強化することによって、自己コントロールや意思決定を改善することを目的としている。

知りたかったこと

パーキンソン病患者において、ICBsの頻度と重症度を減少させ、QOLを改善し、ICBsに関連するその他の症状を改善する薬や薬以外の治療法(生活習慣の改善、運動、カウンセリング、行動介入を含む)があるかどうかを知りたいと考えた。

実施したこと

パーキンソン病患者において、上記のいずれかの積極的治療(薬物療法または非薬物療法)とプラセボ治療(すなわち不活性薬または「ダミー(偽の)」の薬)または無治療を比較した研究を検索した。

研究結果を比較・要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

合計151人の参加者を対象とした4件の研究が見つかった。研究に参加した人々の平均年齢は、約58歳から61歳であった。参加者の24%から32%が女性だった。3件の研究ではそれぞれ、アマンタジン、ナルトレキソン、クロニジンという3種類の薬について、プラセボ治療と比較試験を行っていた。1件の研究では、認知行動療法(CBT)について検討していた。

これらの研究は異なる治療法について検証しており、参加者の数も少なかったため、結果を組み合わせて、より信頼性の高い結論を得ることはできなかった。

主な結果

アマンタジン 対 プラセボ

- この比較を行った1件の研究では、本レビューで関心を持っていたアウトカムのほとんどが測定されていなかった。 - しかし、プラセボと比較して、治療が望ましくない有害な事象を引き起こしたかどうかは評価していた。2群間に差があるかどうかについてのエビデンスは、非常に不確かであった。

ナルトレキソン対プラセボ

・ プラセボと比較して、ナルトレキソンはICBsの重症度に対して、ほとんどあるいは全く差がないかもしれない。 ・ 望ましくない有害事象に対するナルトレキソンの効果についてのエビデンスは、非常に不確かであった。

クロニジン対プラセボ

・ ICBsの頻度と重症度、望ましくない有害事象、QOLの変化、抑うつや不安など、本レビューで関心のあるすべてのアウトカムについて、クロニジンの効果に関するエビデンスは、非常に不確かであった。

認知行動療法(CBT) 対 治療なし

- CBTはICBsの頻度や重症度に、ほとんどあるいは全く変化を与えないかもしれない。

エビデンスの限界

参加者数の少ないいくつかの研究に限られていたため、ほとんどのエビデンスについて確信をもつことができなかった。また、すべての研究が、本レビューのテーマに関する情報を提供しているわけでもなかった。

本エビデンスはいつのものか?

2025年6月13日までに発表されたエビデンスを検討した。

Mantovani E, Martini A, Purgato M, Tamburin S

妊娠中や授乳中の女性または乳幼児にビタミンD療法を行うと小児喘息を予防できるか?

3 months 2 weeks ago
要点

・妊娠中に高用量のビタミンDを処方された女性の子どもは、ビタミンDを服用しなかった母親の子どもと比べて、喘鳴(下気道のむくみ、炎症、または収縮ゆえに、息を吐くときにヒューヒュー音がすること)が起こりにくい。

・乳幼児期にビタミンD療法を行っても喘息や喘鳴を予防する効果はほとんどない可能性があるが、これらの結果は確かではない。

・妊娠中や授乳中の女性または幼児へのビタミンD療法の望ましくない作用に関するエビデンス(科学的根拠)も非常に不確かである。

背景

喘息は小児期によく見られる肺疾患である。喘息のある子どもは、呼吸器に炎症が起こり、粘液が分泌されて、気道が狭くなるために、息苦しさ、喘鳴、咳の発作を繰り返し経験する。アトピー性皮膚炎(慢性の炎症性皮膚疾患)、アレルゲン(アレルギーの原因物質)への感作(過剰な反応)、頻発する呼吸器感染症は、喘息の発症につながる可能性がある。ビタミンDは免疫系に影響を与える必須栄養素である。これまでの研究で、ビタミンDの不足とアレルギー疾患のリスク上昇の間で関連性が示唆されている。

知りたかったこと

出生後の早い時期にビタミンD療法を行うと、(a)小児喘息、喘鳴またはその両方、そして(b)アトピー性皮膚炎、呼吸器感染症、アレルゲンへの感作、気道の炎症など、小児喘息のリスク要因を予防するのに役立つかどうかを調べたかった。

また、ビタミンD療法がなんらかの望ましくない作用に関与したかも調べたかった。

実施したこと

以下のいずれかを比較した研究を探した。

・妊娠中や授乳中の女性に対するすべてのビタミンD療法とプラセボ(不活性な「偽薬」)または無治療
・乳幼児に対するすべてのビタミンD療法とプラセボまたは無治療
・妊娠中や授乳中の女性への高用量のビタミンDと低用量または標準用量のビタミンD(400 IU/日またはそれより少ない量)の投与
・乳幼児への高用量のビタミンDと低用量または標準用量のビタミンD(400 IU/日またはそれより少ない量)の投与

本レビューで関心のあるアウトカム(評価項目)は、小児喘息、喘鳴、アトピー性皮膚炎、呼吸器感染症、アレルギー感作、気道の炎症だった。

研究結果を比較、要約し、研究方法や参加人数などの要素に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

合計10,611人の妊婦、乳児、母親と乳児のペア、5歳以下の幼児が参加した18件の研究が見つかった。4件の研究で妊婦へのビタミンD投与とプラセボまたは無治療を、5件の研究で乳幼児へのビタミンD投与とプラセボまたは無治療を、4件の研究で妊婦への高用量と低用量のビタミンD投与を、また7件の研究で乳幼児への高用量と低用量のビタミンD投与を比較していた。研究は世界各地で実施されたが、多くは高所得国において行われた。最も規模の大きい研究では3,046人、最も規模の小さい研究では50人が対象となった。ビタミンD治療の期間は28日から2年までで、大半の研究では6カ月以下である。

主な結果

妊娠中のビタミンD療法はいずれも小児喘息の予防に役立つ可能性があり(236人が参加した研究1件)、妊娠中の高用量のビタミンD療法は小児の喘鳴を予防するのに役立つ可能性が高い(1,439人が参加した3件の研究)。

乳幼児期にビタミンD療法を行っても、用量や比較の対象に関わらず、喘息や喘鳴への効果はほとんどないかもしれないが、これらの結果は確かではない。乳幼児期に高用量のビタミンD療法を行うと、呼吸器感染症の防止に役立つ可能性がある(2,385人が参加した6件の研究)。

アトピー性皮膚炎、アレルギー感作、気道の炎症のバイオマーカーについては、妊婦または乳幼児にビタミンD療法を行っても、その用量や比較の対象に関わらず、ほとんど効果はないかもしれない。

妊婦や乳幼児にビタミンD療法を行うとなんらかの望ましくない作用があるかどうかは、研究にはこうした作用について限られた情報しか報告がなかったため、不明である。

エビデンスの限界

妊娠中の介入では、喘鳴と喘息に対する高用量ビタミンD療法の効果についての信頼性は中等度である。(プラセボや無治療と比較した)あらゆるビタミンD療法の喘息への効果については、エビデンスを裏付けるのが1件の小規模な研究の結果のみであるため、信頼性はより低い。いずれにせよ、これらの結果は出産前の妊娠中期および後期に行われたビタミンD療法に限られ、女性が受胎した時期や妊娠初期については明らかではない。

乳幼児への介入では、用量に関わらず、いかなるビタミンDのいかなる評価項目への効果についても、レビュー結果の信頼性は低い。

望ましくない作用に関するレビューの結果は、エビデンスがごく少数の症例にしか基づいておらず、主な望ましくない作用を評価した研究が十分にないことから、信頼性が極めて低い。

本エビデンスはいつのものか?

エビデンスは、2023年10月現在のものである。

Patchen BK, Best CM, Boiteau J, Solvik BS, Vonderschmidt A, Xu J, Cohen RT, Cassano PA

母親と新生児がすぐに、あるいは早期に母子接触を行うことの利点について、どのようなことが知られているか?

4 months 2 weeks ago
要点
  • 生後1時間以内に新生児と早期母子接触を行った母親は、1ヵ月後まで完全母乳育児であり、6週間後から6ヵ月後までの期間、母乳のみで育てる可能性が高い。

  • 母親と新生児の早期母子接触は、新生児の体温を安定させ、血糖値を上昇させることで、新生児が胎外の生活に適応するのを助けると考えられる。また、呼吸や心拍数にも効果がある可能性がある。

  • 母子接触を行うことで、胎盤娩出までの時間にほとんど差はない。経腟分娩後の出血量への効果は不明である。

レビューの論点

世界保健機関(WHO)や国連児童基金(ユニセフ)などの世界的な主要な保健団体は、出生直後の新生児は母親の素肌の胸の上で直接抱くべきだと勧告している。新生児は裸で、少なくとも1時間、理想的には最初の授乳が終わるまで、中断することなく母親の素肌の素肌の上で抱かれるべきである。これを早期母子接触という。しかし、多くの医療現場では、新生児を母親から離したり、タオルで包んだり、服を着せたり、ベビーベッドやインファントウォーマーの下に寝かせたりするのが一般的である。低所得国や低中所得国では、早期母子接触は一般的ではない。これは母親の母乳育児を成功に導く実践であり、早期母子接触の実施割合が低いことが、母乳育児の実践状況が国により異なる理由の一つかもしれない。

知りたかったこと

出生直後の早期母子接触が、母乳育児の期間や完全母乳育児、そして新生児の胎外生活への移行にどのような影響を与えるかについて検討したい考えた。特に、早期母子接触が標準的なケアよりも以下のアウトカムについて改善する効果があるかどうかを知りたかった:

  • 完全母乳育児;

  • 児の体温;

  • 児の血糖値;

  • 児の呼吸数と心拍数;

  • 胎盤娩出までの時間;

  • 経膣分娩後の母体出血

実施したこと

主要なデータベースにて、出生直後(出生後10分未満に開始)の早期母子接触および早期(出生後10分~24時間の間)の母子接触に関するランダム化研究を検索した。ランダム化比較試験では、研究参加者を無作為に2つ以上のグループに分け、そのグループが類似していることを確認した。結果を要約し、研究規模や方法などの要因に基づいて、その結果に対する信頼性を評価した。

わかったこと

7,290組の母子を対象とした69の研究を特定した。ほとんどの研究では、健康な正期産児を出産した母親を対象に、出生直後(出生後10分未満に開始)の早期母子接触と標準的な病院でのケアを比較していた。15件の研究では、母親は帝王切開で出産し、10の研究では、新生児は健康であったが早産(妊娠34週から37週以前)であった。32件の研究が高所得国で、25件の研究が高中所得国だった。12件の研究がインド、ネパール、パキスタン、ベトナム、ザンビアを含む低中所得国で実施された。低所得国で実施された研究はなかった。

主な結果

出生直後に早期母子接触を行った母親は、退院時および出生後1ヵ月までに完全母乳育児(12件の研究、1,556組の母子)であることや、出生後6週間から6ヵ月まで(11件の研究、1135組の母子)母乳のみで育てる可能性が高い。

出生直後に早期母子接触を行った新生児は、出生後30分から2.5時間で体温が高くなる可能性があるが、その差は臨床的に意味のあるものではない(11件の研究、1,349人の新生児)。早期母子接触は、児の血糖値を上昇させ(3件の研究、144人の新生児)、呼吸と心拍数を改善する(2件の研究、81人の新生児)可能性がある。早期母子接触は、胎盤娩出までの時間(4件の研究、450人)や経膣分娩後の母体出血(2件の研究、143人)には、ほとんど効果はないかもしれないが、それらの母体出血に関する結果は非常に不確実である。

エビデンスの限界は?

多くの結果については、中等度のエビデンスの確実性であり、呼吸と心拍数、胎盤娩出までの時間についてはほぼ確実性がなく、母体出血については確実ではない。早期母子接触、母乳育児、その他の介入、標準的なケアに関する記述や定義は、研究間で一貫していなかった。さらに、母親とスタッフは、どの母親が早期母子接触を受けているかが分かっており、結果に影響した可能性もある。最後に、多くの研究は小規模で、参加した母親と新生児は100人未満であった。

エビデンスの更新状況

本レビューは、前回のレビューを更新したものである。2025年3月7日時点のエビデンスである。

Moore ER, Brimdyr K, Blair A, Jonas W, Lilliesköld S, Svensson K, Ahmed AH, Bastarache LR, Crenshaw JT, Giugliani ER J, Grady JE, Zakarija-Grkovic I, Haider R, Hill RR, Kagawa MN, Mbalinda SN, Stevens J, Takahashi Y, Cadwell K

軽症高血圧に対する薬物療法の有益性と有害性は何か?

4 months 2 weeks ago
要点
  • 心血管疾患(心筋梗塞など)やその他の関連リスク(糖尿病など)を有さない軽症高血圧患者において、降圧薬は死亡リスクや主要な心血管(心臓や血管)疾患のリスクを低減しない可能性がある。

  • 降圧薬は脳卒中のリスクを低減する可能性があるが、一方で試験からの途中離脱につながる有害事象のリスクを増加させる可能性がある。

  • 軽症高血圧はあるが心血管疾患や糖尿病などのその他の健康関連リスクを有さない人々における降圧薬の効果を明らかにするためには、さらなる研究が必要である。

高血圧とは何か?

高血圧とは、持続的に血圧が高い状態を指す。

高血圧はどのように治療されているか?

高血圧の治療は、その重症度および併存疾患によって異なるが、生活習慣の改善(食事の改善や定期的な身体活動など)が基本であり、薬物療法も一般的に行われる。

知りたかったことは何か?

軽症高血圧(収縮期血圧140〜159mmHg、拡張期血圧90〜99mmHg)で、主要な心血管疾患やその他の関連リスクを有さない人における降圧薬の利益とリスクを明らかにすることを目的とした。

何を行ったのか?

軽症高血圧患者における降圧薬の有効性を検討した研究を系統的に検索し、死亡および主要な心血管疾患(脳卒中や心筋梗塞など)のリスクが低減するかについて検討を行った。また、有害事象のリスクについても評価を行った。研究結果を比較、要約し、研究の方法や規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

何を見つけたのか?

合計9,124人の参加者を対象とした5件の研究が含まれた(降圧薬群4,593例、プラセボまたは無治療群4,531例)。結果として、降圧薬は死亡や主要な心血管疾患のリスクを低減しない可能性が示された。降圧薬は脳卒中のリスクを低減する可能性があるが、一方で試験からの途中離脱につながる有害事象のリスクを増加させる可能性がある。

主な結果

軽症高血圧で、他の心疾患や心血管疾患リスクを増大させる併存疾患を有さない参加者おける降圧薬の使用は、脳卒中のリスク低下という利益と、有害事象の発生という不利益を天秤にかけて考慮する必要がある。

エビデンスの限界は何か?

対象としたい集団全体を十分にカバーしていないこと、各研究の規模や数が小さいことから、本結果の確実性に限界がある。脳卒中リスクの低下を示した1件の研究では腎疾患患者を対象としていたため、軽症高血圧患者全体に適用できるかは不明である。降圧薬の有害事象に関して報告されていたのは1件の研究のみであった。

本エビデンスはいつのものか?

2024年6月現在におけるエビデンスである。

Wang D, Wright JM, Adams SP, Cundiff DK, Gueyffier F, Grenet G, Ambasta A
Checked
10 hours 1 minute ago
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