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低・中所得国の人々に、条件を付けずにお金を与えることは、健康やその他の生活の向上につながるか?

3 years 8 months ago
低・中所得国の人々に、条件を付けずにお金を与えることは、健康やその他の生活の向上につながるか? レビューの論点 低・中所得国(LMICs)の中には、政府やその他の組織が、貧しい人々や弱い人々(例えば、高齢者や孤児)に、お金を受け取るために特に何かを要求することなくお金を渡すことがある(「無条件現金給付」)。また、医療サービスを利用したり、子どもを学校に通わせるなど、必要な行動をとった場合にのみお金を受け取ることができるプログラムもある(「条件付現金給付」)。このレビューは、無条件の現金給付を受けることで、無条件の現金給付を受けない場合、無条件の金額を少なくする場合、条件付きの現金給付を受ける場合と比較して、人々の保健サービスの利用や実際の健康状態が改善するかどうかを調べることを目的としている。また、学校への出席、家畜の所有、仕事の有無、極度の貧困など、保健・医療支出を左右する日常生活条件に対する無条件現金給付の効果を評価することも目的としている。 背景 無条件現金給付は、所得に対処する社会的保護介入の一種である。無条件現金給付が条件付き給付と比較して、より効果的なのか、効果的でないのか、あるいは同等なのかは不明である。無条件現金給付が LMICs の子どもと成人の医療サービス利用と健康に関する結果に与える効果に関するエビデンスをレビューした。 本レビューの結果 LMICsの全年齢...

低血糖の新生児に対する経口ブドウ糖ゲルの投与

3 years 8 months ago
低血糖の新生児に対する経口ブドウ糖ゲルの投与 レビューの論点 低血糖症を起こした新生児に対して、経口ブドウ糖ゲル(ゲル状の砂糖を口から飲ませること)は、無治療や他の積極的治療と比較して、低血糖の是正や長期の神経発達障害の軽減に有効か。 背景 新生児の低血糖はよく見られる問題であり、特定のリスクグループ(糖尿病の母親の乳児、早産児、出生体重の小さい児および大きい児)で頻繁に発生する。血糖値の低い新生児は、幼少期の発達障害のリスクが高くなる。この状態を改善させるために、一般的には積極的な治療が行われ、しばしば粉ミルクの使用や、新生児集中治療室に入院して輸液療法を受ける必要があり、結果として母親から一時的に引き離されることになる。口の中に塗る砂糖のゲルの利用は、血糖値の低い新生児の初期ケアとして、簡単かつ低コストで行える方法である。新生児の低血糖を是正し、神経発達への長期的影響を軽減するために、経口ブドウ糖ゲルが無治療や他の積極的治療よりも有効であるかどうかを調べた。 研究の特徴 高所得国で行われた2件の研究では、合計312人の新生児を対象に、低血糖を回復させるための 経口ブドウ糖ゲルの使用を評価した。このうち157人の新生児には経口ブドウ糖ゲルを頬の内側にすり込み、155人の新生児にはプラセボゲルをすり込むかまたはゲルをすり込まず、その後通常の授乳を行った。 主な結果 経口ブドウ糖ゲ...

生後6カ月から5歳の小児における罹病率および死亡率を低下させるためのビタミンA補充

3 years 8 months ago
生後6カ月から5歳の小児における罹病率および死亡率を低下させるためのビタミンA補充 背景 ビタミンA欠乏症(VAD)は低・中所得国における重大な公衆衛生問題であり、5歳未満の小児1億9千万人が罹患している。VADにより小児の呼吸器疾患、下痢、麻疹、視力障害などさまざまなリスクが増加しやすくなり、死に至ることもある。過去の研究では、VADのリスクがある生後6カ月から5歳までの小児に合成ビタミンAを補充すると、死亡や複数の疾患のリスクが低下する可能性が示されている。本レビューは以前のレビューの更新版である。 レビューの論点 本レビューでは、生後6カ月から5歳までの小児の疾患や死亡の予防において、合成ビタミンAの補充の効果をプラセボ(偽薬)や非介入と比較して評価することを目的とした。 レビューの方法 医学研究の結果が公表されているものと公表されていないものの両方が含まれている異なるデータベースを検索した。文献検索は2021年3月に更新された。ランダム化比較試験(RCT:参加者を1つ以上の治療群に無作為に割り付ける研究)のみを選択した。研究文献において、RCTは最善の実験的研究方法と考えられている。結果を数学的に統合し、疾患や死亡に対するビタミンAの補充の有効性について全般的な推定値を算出した。 研究の特性 今回の更新では、新たな試験は同定されなかった。本レビューでは小児1,223,85...

婦人科がん患者に対する手術後の周術期回復強化プログラム

3 years 8 months ago
婦人科がん患者に対する手術後の周術期回復強化プログラム 背景 婦人科領域のがんは、罹患率と死亡率が著しく高い。婦人科がんの治療では、腹腔鏡(鍵穴手術)または開腹による手術療法が最も重要な治療法の一つである。手術後の回復には、十分に計画された周術期医療(手術時またはその前後のケア)が不可欠である。 近年、複数の研究者や医師により、従来の周術期医療の多くの側面が不要であり、有害でさえあるのではないかと指摘されている。たとえば、経口下剤や浣腸を使用すると、脱水症状が起きるうえに、術前のナトリウム、カリウム、カルシウム値が異常になる可能性がある。術後の回復強化(ERAS)プログラムは、手術のストレスを軽減し、従来の周術期医療の有害な面を避けることを目的としており、さまざまな分野の手術、特に消化器外科の手術に徐々に導入されている。ERASプログラムは、手術後の回復を助け、入院期間を短縮し、患者本人を大きな危険にさらすことなく病院経費を節約できる可能性がある。しかし、婦人科がんの患者に対するERASプログラムの効果はあまり知られていない。本レビューは、婦人科がん治療での周術期のERASプログラムの有益性と有害性を評価することを目的とする。 研究の特性 中国語および英語のデータベースを検索し(2020年10月現在まで)、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、子宮内膜がんを含む婦人科がんの女性747...

腹腔鏡手術時に腹腔内に送気する各種の気体について

3 years 8 months ago
腹腔鏡手術時に腹腔内に送気する各種の気体について レビューの論点 腹腔鏡手術(鍵穴手術)で臓器への手術操作を容易にすることを目的とした、腹腔(お腹の中の空間)の気腹(気体で膨らますこと)に用いる各種気体の有益性および有害性は何か。 背景 現在、腹腔鏡手術は広くさまざまな腹部疾患の治療に用いられている。手術に必要な空間や視野を確保するために、腹腔内に送気する理想的な気体は安価で無色、引火性および爆発性がなく、体内から容易に排出され、患者および手術スタッフへの害が皆無のものである。この条件から、現在は二酸化炭素が最も多く使用されている。しかし、二酸化炭素の使用は心臓や肺の合併症を引き起こす可能性がある。そこで、二酸化炭素の代替となる他の気体が提案されている。 研究の特徴 2021年10月までの関連する全研究を検索した。 参加者583人を対象とした臨床試験10件を特定した。そのうちの3件(260人)は亜酸化窒素(笑気ガス)と二酸化炭素の比較、5件(177人)はヘリウムと二酸化炭素の比較、1件(146人)は室内気と二酸化炭素の比較であった。研究は、米国、オーストラリア、中国、フィンランド、イラン、オランダで実施された。試験参加者の平均年齢は19歳から62歳であった。 研究の資金源 対象となった10件の研究のうち、2件は非営利的な助成金による資金提供を受けていた。残りの8件の資金源は明記さ...

医療機関に通院中のHIV持続感染者の高ウイルス量を検出するベッドサイドの迅速検査

3 years 9 months ago
医療機関に通院中のHIV持続感染者の高ウイルス量を検出するベッドサイドの迅速検査 高HIVウイルス量を検出する診断技術を改善することがなぜ重要なのか? それは、抗レトロウイルス療法(ART)を受けているHIV持続感染者(PLHIV)のHIVウイルス量を監視するのに役立つ。高ウイルス量は薬でウイルスを抑えることができていないことを示し、ART治療無効状態である。この状態では重症化や死亡の危険性がある。患者を診察するベッドサイド(point-of care)で素早くHIVウイルス量を検査できるベッドサイドの迅速診断検査は、必要時にARTの早期変更を可能にする。 レビューの目的 医療機関に通院するPLHIVにおいて、高HIVウイルス量診断のためのベッドサイドの迅速検査(POC)の精度を明らかにする。 検討した内容 ウイルス量を検出するための迅速検査の測定結果と中央検査室における検体検査(基準となる検査)の測定結果を比較した。検査を実施した医療機関にかかわらず、ウイルス量を測定するすべての種類のベッドサイドの迅速検査を対象とした。 主な結果 8,659人の参加者を含む20の比較評価を完遂した14件の研究においては、臨床的に推奨する閾値、1000コピー/mL以上で高ウイルス量陽性と診断する分子学的現場検査を比較していた。 レビューの強みと限界 このレビューには、HIV/AIDSケアセンター...

吸入コルチコステロイドは、軽度のCOVID-19の人に有効な治療法なのか?

3 years 9 months ago
吸入コルチコステロイドは、軽度のCOVID-19の人に有効な治療法なのか? 要点 経口の吸入経路で投与される吸入コルチコステロイド(抗炎症薬)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として評価されている。 軽症者を対象に実施して、発表された3件の研究を特定した。吸入コルチコステロイドは、おそらく、病院に行く、または死亡(入院や入院前の死亡)に対するリスクを減少させる。吸入コルチコステロイドは、軽度のCOVID-19の症状がある日数を減らす可能性があり、おそらく14日目のCOVID-19の症状を消失させる。あらゆる原因による死亡にはわずかから全く差がない可能性があり、重大な害を引き起こすかどうかを知るには十分なエビデンスがない。 症状のない(無症状)COVID-19患者、中等症から重症のCOVID-19患者のデータは存在しない。 10件の進行中の研究と4件の終了した未発表の研究が特定された。その結果が発表され次第、本レビューを更新する予定である。 吸入コルチコステロイドとは何か? 吸入コルチコステロイドは、吸入器を使って下気道に吸入することで、肺の炎症を抑える薬である。この薬は、喘息や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器系疾患の治療に通常は使用される。長期間の使用や誤った吸入方法によって、鵞口瘡と呼ばれる口の感染症、声の変化、肺炎のリスク増加などの副作用が発生することがある。...

高齢者の生活の質を向上させるための住宅介護における物理的環境デザイン

3 years 9 months ago
高齢者の生活の質を向上させるための住宅介護における物理的環境デザイン このレビューの目的は何か 世界的に高齢者の人口が増加し、認知症の患者が増加している。生活空間のデザインを改善することで、高齢者のQOL(生活の質)、気分、日常生活動作の能力が向上する可能性が示唆されている。このレビューは、住宅介護におけるさまざまな物理的環境デザインの変更が、入居者の生活の質(QOL)に及ぼす影響を検討した。この疑問に関連するすべての研究を収集し、分析した結果、20件の研究を特定した。 要点 住宅介護における設計変更による入居者のQOL向上の効果については、より質の高い研究が必要な状況であり、確信が持てない。 レビューでは何が検討されたか? このレビューでは、QOL(生活の質)向上を目的とした住宅介護における物理的な環境デザインの変更について検討した。それは、大規模な変更である場合もあれば、小規模な変更の場合もある。大規模な変更としては、現在使われている居住区間設計から、少人数で共同生活する家庭的な設計に変更するなどの変更が考えられる。小規模な変更としては、生活空間の改装や、照明など生活空間の一部分を変更することがある。我々は、住宅介護における異なる大規模または小規模の設計変更を比較、あるいは設計変更を現在使われている居住区間設計と比較し、設計変更が入居者のQOL(生活の質)、行動、日常生活動作...

分娩時の定期的な内診

3 years 9 months ago
分娩時の定期的な内診 レビューの論点 このコクラン・レビューの目的は、分娩進行を評価するための定期的な内診が有効で、女性に受け入れられるものなのかを調べることと、これらをその他の分娩進行の評価法と比較することである。 重要性 分娩は通常、予想通りに進行しているか、母体や赤ちゃんに害となるような異常な進行の兆候がないかを確認するために監視される。最も一般的な方法は定期的な(一定の間隔ごとに行う)内診であり、母体の子宮頸管の開き具合や赤ちゃんの位置についての情報が得られる。非常にゆっくりとした進行の分娩は、出産を早めるための介入(分娩促進)が必要であることを示す兆候である可能性がある。しかしながら、ゆっくりな分娩進行が正常な進行のバリエーションである可能性もあり、近年のエビデンスからは母体と赤ちゃんが元気であれば、分娩の所要時間や子宮頸管の開き具合だけで分娩の進行が正常かどうかを決めるべきでないことが示唆されている。 その他の分娩進行の評価法として、超音波の使用、母体の様子、外診による兆候(母体のおしりの間にできてくる紫色の線など)がある。しかしながらこれらの方法は標準的ではない。分娩進行の評価法として最も有効な方法は確立されていない。 内診は不快感や痛み、苦痛を伴うことがある。ゆっくりでも正常な分娩を異常であると誤診した場合、分娩促進や帝王切開といった不必要な介入につながる可能性が...

高ビリルビン血症の満期および早産新生児における光線療法中の周期的な体位変換(一定時間ごとに体の向きを変えること)

3 years 9 months ago
高ビリルビン血症の満期および早産新生児における光線療法中の周期的な体位変換(一定時間ごとに体の向きを変えること) レビューの論点 黄疸のある満期産新生児および未熟児において、体位を変えた方が光線療法の結果を改善するか? 要点 この系統的レビューでは、黄疸に対して光線療法を受けている満期産児と未熟児において、計画的な体位変換とそうでない体位変換を比較した研究を評価した。計画的な体位変換の有無では、光治療の持続時間やビリルビン値の低下率にほとんど差が生じなかった。ビリルビンは、皮膚や白目が黄色くなる黄疸の原因となる物質である。 レビューに含まれるどの研究も、新生児の体位変換が乳幼児突然死症候群などの好ましくない事象に及ぼす影響を報告していない。 今後の研究では、超未熟児やあらゆるタイプの黄疸の新生児を含め、光線療法中の新生児の計画的な体位変換を調査する必要がある。 黄疸とは何か? 黄疸(高ビリルビン血症ともいう)は、新生児によく見られる症状で、血液中のビリルビンが増えすぎて、皮膚や白目が黄色くなるものである。ビリルビンは、赤血球が壊れる時にできる黄色い物質である。新生児の肝臓は血液中のビリルビンを効率よく除去できないため、血中ビリルビン濃度が高くなる。場合によっては、新生児の血液中のビリルビン濃度が非常に高くなり、脳障害を引き起こすこともある。生後2週間くらいになると、肝臓がビリルビ...

心的外傷後ストレス障害に対する薬物療法

3 years 9 months ago
心的外傷後ストレス障害に対する薬物療法 このレビューの重要性 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、重大なトラウマにさらされた後に発症し、個人的にも社会的にも多大な犠牲を生じることになる。従来は心理療法で治療されてきたが、PTSDの治療には薬物療法が有効であることが証明されている。 このレビューに関心をもつ人は誰か? - PTSDの人。 - PTSDに悩む人の家族、友人。 - 開業医、精神科医、心理士、薬剤師。 このレビューでわかることは何か? - 成人のPTSDの症状軽減に薬物療法は有効か? どのような研究がレビューに含まれたか? 成人のPTSDの治療において、薬物療法とプラセボまたは対照薬、あるいはプラセボと対照薬の両方を比較した研究を対象とした。 66件の試験がレビューに含まれ、合計7,442人が参加した。 レビューの結果、どのようなことがわかったのか? 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がプラセボと比較してPTSD症状を改善するという有益な効果が、中等度の確実性のエビデンスに基づいて確認された。また、ノルアドレナリン・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)ミルタザピンと三環系抗うつ薬(TCA)アミトリプチリンは、確実性の低いエビデンスに基づき、PTSD症状の改善において有益であることが示された。また、抗精神病薬投与後にプラセボと比較して改善した参加者の数に...

シンバイオティクスは超早産児や超低出生体重児の壊死性腸炎を予防するか?

3 years 9 months ago
シンバイオティクスは超早産児や超低出生体重児の壊死性腸炎を予防するか? 背景 超早産児(予定日より8週以上早く生まれた児)や極低出生体重児(1,500g未満で生まれた児)は、腸の一部が炎症を起こして感染し、死に至る重度の腸疾患(壊死性腸炎:NECと呼ばれる)を発症するリスクがある。壊死性腸炎には、死亡、重篤な感染症、長期的な障害や発達障害を伴う。 何を知りたかったのか? 壊死性腸炎を予防する一つの方法として、シンバイオティクス(プロバイオティクス細菌または酵母と、プロバイオティクスの増殖とコロニー形成をサポートする難消化性糖類の組み合わせ)をミルク(母乳も人工乳も含まれる)に添加することが考えられる。そのためシンバイオティクスが超早産児や超低出生体重児に有効かどうかを調べようと思った。関心のあるアウトカムとして壊死性腸炎、あらゆる原因による死亡、重篤な感染症、出生後の入院期間、神経発達の評価項目などが対象となった。 本レビューで実施したこと コクランレビューでは、いくつかの重要なデータベースを検索し、超早産児および超低出生体重児における壊死性腸炎の予防にシンバイオティクスを使用することを検討したランダム化比較試験を特定した。標準的なコクラン方法論に基づきレビューと分析を行った。GRADEアプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。 レビューの結果 対象者計925人を含む6件の...

心血管疾患の一次予防のためのグルテン低減食またはグルテンフリー食の効果

3 years 9 months ago
心血管疾患の一次予防のためのグルテン低減食またはグルテンフリー食の効果 背景 循環器疾患は、心臓や血管の障害で、急性冠症候群や脳血管障害(心筋梗塞や脳卒中など)を含む。心血管疾患に起因する障害の約50%は、最適でない食事と関連している。特に、食事性グルテン(特定の穀物に含まれるタンパク質)は、さまざまな健康被害と関連があるとされている。例えば、グルテン関連疾患に罹患した人々には、異なる胃腸症状(吸収不良や下痢など)がしばしば見られ、これらの人々に対する唯一の有効な治療法は、生涯にわたってグルテンを減らした食事やグルテンフリーの食事療法を行うことである。また、グルテンを減らした食事やグルテンフリーの食事は、一般集団においても大人気を得ている。しかし、一般集団におけるグルテン低減食やグルテンフリー食の利益と有害性に関するエビデンスは、矛盾している。グルテンの回避は病気の予防につながる可能性はあるが、グルテンフリーやグルテン制限の食事は(食事の主要成分である全粒粉の摂取量が減るため)最適でない可能性があることも懸念されている。 レビューの論点 一般集団における心血管疾患の一次予防のためのグルテン低減食またはグルテンフリー食の効果(すなわち健康関連の利益とリスク)を明らかにするために、利用可能な研究を検討した。 研究の特徴 エビデンスは2021年6月までのものである。1件のランダム化比較...

病院からの退院計画

3 years 9 months ago
病院からの退院計画 このレビューの目的は何か 個人に応じた退院計画が、退院の時期が遅れることの減少、再入院の減少、患者の健康状態の改善によって、提供されるヘルスケアの質を向上させるかどうかを検証した。また、介入にどれくらいの費用がかかるのかも検証した。これらを検証するために、関連する全ての研究を集めて解析した。本レビューは、初回から5回目の更新である。 要点 個人に応じたの退院計画を立てて退院する場合、入院期間はおそらく少し短縮され、退院後に入院する可能性も少し低くなる可能性がある。患者の健康状態や、受けたケアに対する患者の満足度に与える影響については、ほとんどエビデンスがない。退院計画にかかる費用は不明である。 レビューで検討された内容 退院計画とは、退院前に患者の健康と社会的ケアのニーズを評価し、病院から自宅あるいは他の場所へ適切な時期に移れるように支援し、退院後のサービス体制を改善するための個別計画をたてることである。 レビューの主な結果は何か 個人に応じた退院計画と標準的な退院ケアを比較した33件の試験が特定された。個人に合わせた退院計画は、おそらく入院期間をわずかに短縮し、病状が悪化して入院する再入院率をおそらくわずかに下げ、患者の満足度を高める可能性があることが示された。健康状態や、医療サービスにおける退院計画にかかる費用については、ほとんどエビデンスがない。 このレ...

成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)のためのメチルフェニデート徐放製剤

3 years 9 months ago
成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)のためのメチルフェニデート徐放製剤 レビューの論点 このレビューは、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された成人を対象に、メチルフェニデートのプラスとマイナスの効果を調べ、プラセボまたは他の薬剤と比較したものである。特に、欠勤日数などの生活機能への影響、患者さん自身や医師・研究者が評価するADHDの症状や生活の質(QOL)への影響に注目した。 背景 ADHDは、集中力の欠如、多動性、衝動的な行動を特徴とする精神医学的診断で、社会生活、仕事での能力、人間関係の維持などに影響を及ぼすことが多い。ADHDと診断され、薬物治療を受ける成人が増えている。ADHDの治療は、心理療法、社会的介入、他の種類の非内科的治療、薬物療法など、さまざまな異なるアプローチで構成される必要がある。メチルフェニデートとアンフェタミンは、ADHDの第一選択薬として推奨されている。メチルフェニデートは、中枢神経系(CNS)の活動を活発にする薬物である。このレビューでは、1日に1~2回だけ飲む錠剤として与えられるメチルフェニデート、いわゆる「徐放性製剤」に焦点を当てている。メチルフェニデートは、成人のADHD患者を対象とした多くの臨床試験が行われているが、これらの試験がどのように計画され、どのように結果が報告されたかが懸念されるため、全体的なプラスとマイナスの効果は不確かである...

赤ちゃんの速い呼吸(新生児一過性多呼吸)に対処するための治療法

3 years 9 months ago
赤ちゃんの速い呼吸(新生児一過性多呼吸)に対処するための治療法 レビューの論点 呼吸が異常に速い赤ちゃん(新生児一過性多呼吸と呼ばれる)に対する薬物やその他の治療は、肺機能を改善し、呼吸補助(つまり人工呼吸)の必要性や症状の持続時間を減らすことができるか? 背景 新生児の一過性多呼吸(異常に速い呼吸)(TTN)は、呼吸数の増加(1分間に60回以上)と呼吸が苦しそうに見える(呼吸困難)の兆候が特徴である。たいていは、妊娠34週目以降に生まれた赤ちゃんの生後2時間以内に現れる。新生児の一過性多呼吸は、通常、治療をしなくても改善するが、小児期後半になると肺の喘鳴を伴うことがある。このコクランオーバービューレビュー(系統的レビューを対象としたレビュー)は、新生児の一過性多呼吸の管理に対するさまざまな治療の有益性と有害性に関する利用可能なエビデンスを報告し、批判的に分析したものである。 研究の特徴 6 件のコクランレビューを対象とした。そのうち4件は薬物(サルブタモール、エピネフリン、副腎皮質ステロイド(薬)(以下,ステロイド)、利尿剤)とプラセボを比較し、残りの2件は肺に管を挿入せずに少ない量の輸液と呼吸(呼吸器)サポートを与えることの効果を評価したものである。サルブタモール、エピネフリン、ステロイドは肺の余分な水分を取り除き、利尿剤は肺の水分を尿に排出するのを促進する薬である。 エビデ...

卵巣がんの初回治療でのパクリタキセル投与を週1回にすると、3週に1回よりも生存期間が改善するか

3 years 9 months ago
卵巣がんの初回治療でのパクリタキセル投与を週1回にすると、3週に1回よりも生存期間が改善するか 背景 卵巣がんは世界で6番目に多いがんである。治療は外科手術と化学療法(パクリタキセルとカルボプラチンがもっとも一般的)が併用される。併用の目的はがんの再発の確率を減少または再発を遅延させること(無増悪生存期間(PFS)の延長)と、延命(全生存期間(OS)の延長)である。パクリタキセルの投与スケジュール(頻度)が治療効果に与える影響を検討した臨床試験が複数あるが、報告されている結果は相反するものである。 本レビューの目的 卵巣がんの新規診断患者に対するパクリタキセルの投与頻度の差が生存期間に与える影響について、エビデンスのレビューを行った。 研究の特性 エビデンスは2021年11月15日現在のものである。計3,699人が参加した4件の研究をレビュー対象とした。いずれの研究も18歳以上の卵巣がんの新規診断患者を対象としたランダム化比較試験(患者が2群以上の治療群のいずれかにランダムに割り付けられる試験)である。各試験は、カルボプラチンと併用するパクリタキセルについて週1回投与と3週に1回投与を比較している。 主な結果 カルボプラチンと併用するパクリタキセルを3週に1回投与した場合に比べ、週に1回投与した場合、全生存期間にはほとんど差がないものの、無増悪生存期間がわずかに延長する可能性が高...

体圧分散型椅子は褥瘡予防に有効か?

3 years 9 months ago
体圧分散型椅子は褥瘡予防に有効か? 要点 包括的な検索を実施したが、体圧分散型椅子が褥瘡の予防や管理に役立つかどうかを調べた研究は見つからなかった。これは重要なテーマであり、このような椅子が褥瘡を発症するリスクのある人々に有益かどうかを判断するために、質の高い研究が必要である。 褥瘡とは何か? 褥瘡は、長時間の圧迫により皮膚やその下の組織に生じる傷である。座ることは回復の過程で重要な役割を果たすが、長時間座ることは褥瘡の発生リスクを高める。 褥瘡はどのように管理されているのか? 長時間座っているときにかかる皮膚への圧力を分散させることを目的としたクッションや表面素材が使用される。車いすに体圧分散クッションを使用した場合の効果については、一般的な椅子よりも研究が多く存在する。 現在、体圧分散型椅子が標準的な椅子と比較して、リスクのある人々の褥瘡を予防または管理するためにどの程度効果的であるかは分かっていない。 体圧分散型椅子には、クッションや手動または機械で動かす機能がない一般的な病院用椅子や住宅用椅子から、体圧分散をする素材を使用し、人が座るとリクライニング、起き上がり、チルトの機能があるものまで、さまざまなものがある。これらは、標準的なデザインで製作するか、または、その人のニーズに合わせたオーダーメイドのデザインも可能である。 何を知りたかったのか? 医療、リハビリテーション、...

PARP阻害薬は卵巣がん患者の生存率を改善するか、またその副作用は何か

3 years 9 months ago
PARP阻害薬は卵巣がん患者の生存率を改善するか、またその副作用は何か 要点 化学療法終了後の治療(維持療法)として毎日服用する錠剤のPARP(ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ)阻害薬については、有効成分を含まない「ダミー」の薬(プラセボ)と比較すると、次のことが言える。 - 進行上皮性卵巣がん患者の全生存期間を延長する効果はほとんどないと思われる(ただし、この結果はさらに多くのデータが出てくれば変わる可能性がある) - 新たに上皮性卵巣がんと診断された患者では、病勢進行を遅らせる可能性が高い - プラチナ製剤感受性の上皮性卵巣がんの再発患者では、病勢進行を遅らせる可能性が高い - 重度の副作用のリスクを増加させる可能性が高い 病勢進行を遅らせることでQOLに有益な影響を及ぼすかどうかは、報告されたデータに矛盾がみられるため非常に不確かである。しかし少量のデータから、PARP阻害薬が病勢進行を遅らせることにより病気の症状を改善する可能性があることが示唆される。 上皮性卵巣がんとは何か 上皮性卵巣がんは、卵巣、卵管、腹腔(腹膜)の内膜(上皮)から発生するがんである。がん細胞が腹腔内に入りやすいため、多くの場合、上皮性卵巣がんは進行期で発見される。初期治療は手術(理想的には目に見える病変をすべて切除する)と化学療法の組み合わせである。しかし、ほとんどの患者は再発するため、さらに治療...

成人の人工股関節置換術

3 years 10 months ago
成人の人工股関節置換術 このレビューでは、成人の大腿骨近位部骨折の治療に用いられる様々なタイプの人工股関節置換術の有益性と有害性に関して、ランダム化比較試験(RCT)および準RCTにおけるエビデンスを評価した。 背景 大腿骨近位部骨折は、足の骨の付け根が折れることである。このような骨折は、骨粗鬆症という状態で骨がもろくなっている高齢者によく見られる。治療法のひとつに、折れた股関節を人工股関節に置き換えるという方法がある。これは、股関節の一部(関節のボール部分)を置き換える半関節形成術(HA)で実施することができる。これらの人工関節には、ユニポーラ(単一の人工関節)とバイポーラ(追加の関節を持つもの)がある。また、手術によって股関節全体(股関節の球が収まる受け皿の部分も含む)を置き換えることもある。これが全人工股関節置換術(THA)である。これらの人工関節は、いずれも骨セメントを使用して固定することも、使用せずに固定することも可能である。 検索日 2020年7月6日までのRCT(治療群に無作為に割り付ける臨床研究)、および準RCT(生年月日や病院の記録番号など無作為化されていない方法で群に入れる)を検索した。 研究の特徴 10,654人の成人、10,662の大腿骨近位部骨折を対象とした58件の研究を対象とした。研究参加者の年齢は63歳から87歳で、71%が女性であったが、これは、こ...
Checked
18 hours 38 minutes ago
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