3 years 3 months ago
輸血の回数を減らすために、血球数(ヘモグロビン値)の低下を輸血の判断に使用しても良いのか? 要点 ・血球数の少ない患者(ヘモグロビン値が7.0g/dL~8.0g/dL)に輸血を行うことが、血球数の多い患者(9.0g/dL~10.0g/dL)に比べて、死亡、心臓発作、心筋梗塞、脳卒中、肺炎、血栓、感染症のリスクに影響を与えるというエビデンスはない。 ・血球数の少ない患者(7.0g/dL~8.0g/dL)にだけ輸血をすることで、輸血量を大幅に減らすことができる。また、輸血における不必要なリスクを減らすことができる(輸血は有害な影響を与えることがある)。 ・更なる研究が以下のような理由で必要である: - 心筋梗塞や脳梗塞、またはがん患者にとって輸血が必要となる血球数を決定するため - QOL(生活の質)を含む、死亡以外の転帰はどうであるかを知るため 輸血が必要な人はどのような状態か? 医師や医療従事者は、手術や出血、病気などで血液を失った人に輸血を行うことが多い。例えば、輸血は貧血の患者の手術後の回復を促進するかもしれないが、それは病状の改善に役立つ場合にのみ行われるべきである。血液は限られた資源であり、輸血はリスクを伴う。特に低所得国の人々にとっては、輸血に使用される血液がHIVや肝炎などの有害なウイルスの検査を受けていない可能性がある。 知りたかったこと 血球計算は血液中のヘモグロ...
3 years 3 months ago
早産で生まれた赤ちゃんの血中のブドウ糖(グルコース)濃度を持続的に測定する装置 レビューの論点 皮下センサーを用いて持続的グルコースモニタリング(CGM)を行い、血糖値が高すぎたり低すぎたりした時に補正するアルゴリズムを使用する、あるいは使用しない場合と、 血糖値を間欠的に測定し、血糖値が高すぎたり低すぎたりした時に補正するアルゴリズムを使用する、あるいは使用しない場合とを比較した時のそれぞれにおける利益と有害性は何か?1.血糖値が高すぎたり低すぎたりする危険がある早産児2.血糖値が低すぎることがわかっている早産児3.血糖値が高すぎることがわかっている早産児 背景 早産で生まれた新生児は、血糖値が高すぎたり低すぎたりする傾向がある。このような血糖値の異常を持つ早産児のほとんどは、完全に回復するか、あるいはごく軽度の問題にとどまる。血糖値が極端に高い、または低い(または異常値が長期間続く)早産児の中には、これが原因で死に至ったり、後に問題が生じることがある。 このレビューの目的は、CGMの使用が早産児の長期的な発育を改善したり、死亡率を低下させたりするかどうかを評価することであった。CGMデバイスは皮下に挿入され、リアルタイムで血糖値のデータを示す。血糖値の測定は、一般的に、少量の血液を採取(多くの場合、かかとの穿刺による)して間欠的に行う方法がと...
3 years 3 months ago
疾患による栄養不良の成人に対する食事へのアドバイス レビューの論点 経口栄養補助食品(ONS)を用いた場合と用いない場合の食事へのアドバイスは、成人の疾患による栄養不良を改善できるか? 背景 病気の人は、食欲がなかったり、薬やその他の治療のために気分が悪くなり、いつもより食べる量が少なくなることがよくある。食べる量が少ない状態が長く続くと、体重が減り、栄養失調になり、さらに健康に悪影響が生じて、死に至ることもある。医療従事者は、適切な食事摂取を取り戻すために、食事の変更についてアドバイスを行うことがある。また、体重を増やして栄養状態や健康状態を改善できるように、高タンパク、高エネルギーの食品を推奨するかもしれない。病気の人に対して、経口栄養補助食品(ONS)を提供することが一般的であるが、その際に、食事摂取内容を変えることへのアドバイスをする場合もあればしない場合もある。 本レビューの疑問に対する最良の答えを見つけるために、次の5つの異なる治療法を比較した研究を検索した:食事へのアドバイス vs アドバイスなし、食事へのアドバイス vs 経口栄養補助食品(ONS)の提供、食事のアドバイス+ONS vs 食事へのアドバイス、食事へのアドバイス+適切な場合にONSの提供 vs 食事へのアドバイスなし、食事へのアドバイス+ONS vs 食事へのアドバイスもONSの提供もなし。研究での比...
3 years 3 months ago
子宮内膜症の手術を受けた女性の痛みを緩和するためのレボノルゲストレル放出子宮内装置(LNG-IUD)の使用について 子宮内膜症とは何か 子宮内膜症は子宮内膜(子宮のような)組織が子宮の外側、多くは骨盤内に存在し、不妊や骨盤痛(臍より下の痛み)を引き起こす。 子宮内膜症の治療法 子宮内膜症はしばしばホルモン薬、手術、またはその組み合わせで管理される。プロゲストーゲン(訳注:黄体ホルモン)の一種であるレボノルゲストレルは、子宮外での子宮内膜組織の増殖を止めるとされるホルモン薬の一種である。 このレビューの目的 このレビューの目的は、子宮内膜症の手術を受けたばかりの女性において、LNG-IUDが関連する疼痛症状の管理や生活の質(QOL)や患者満足度の向上に有益か否かを評価することである。 このレビューからわかったこと 現段階では、手術後のLNG-IUDの使用が子宮内膜症による痛みを緩和するかを十分に支持するエビデンスは無い。 手術後にLNG-IUDを使用することで、生理痛の軽減、生活の質(QOL)と患者満足度の向上に役立つというエビデンスがあったが、研究の数や研究参加者が少なく、研究デザインにも欠陥があったため、エビデンスの確実性は低度から非常に低度であった。このため、LNG-IUDの使用を推奨するにはさらなる研究が必要である。 訳注: 《実施組織》内藤未帆、小林絵里子 翻...
3 years 3 months ago
女性の慢性骨盤痛に対する外科的管理 コクランレビューを行った理由 慢性的な骨盤の痛みがある女性に対し、有効で安全な外科的治療があるかどうかを調べた。外科的治療が他の治療法やまったくの無治療と比べて、どの程度有効か検討した。 背景 女性の慢性骨盤痛は、よくみられる心身を消耗させる状態である。さまざまな定義があるが、一般的には6か月間以上の骨盤の痛みと定義される。慢性骨盤痛の原因にはいろいろあるが、特定するのが難しい場合がある。原因が特定できるできないにかかわらず、治療は症状の軽減を目的とする。時には、診断のための腹腔鏡による手術(お腹にカメラを挿入して骨盤内の様子を目で見て確かめる検査)が行われる。子宮内膜症(子宮の内膜に似た組織が別の場所で増殖するもの)や子宮腺筋症(子宮の内膜が子宮の筋肉内の深いところに認められるもの)のような、慢性骨盤痛の原因が明らかな場合には、明らかな問題がない場合と異なる治療戦略が必要になるかもしれない。慢性骨盤痛があるにもかかわらず診断的腹腔鏡手術で病気が見つからない場合、感染や以前の手術による瘢痕組織を取り除いたり(癒着剥離術)、骨盤から脳へ痛覚を伝える神経を焼灼または切除したり(仙骨子宮靱帯焼灼/切除術)するといったさまざまな手術を検討する。これらの外科的治療はどの程度有効かわかっていないが、提案され、実施されている。 わかったこと 原因が特定できな...
3 years 3 months ago
口腔がんおよび咽頭がんに対する化学療法 論点 早期に発見された口腔がん(口のがん)および中咽頭がん(喉のがん)の治療法は主に手術や放射線療法である。いずれの治療法もがんの治癒や延命に有効である。しかし、手術や放射線療法のみではがんが再発する可能性があり、患者の余命が短くなることがある。手術または放射線療法に化学療法を追加することによって余命が長くなる場合がある。 重要である理由 化学療法は、がん細胞のような急速に分裂する細胞を殺すことによって作用する薬剤である。体内には、皮膚や腸内など他にも分裂の早い細胞がある。化学療法はそのような健康な細胞にも影響を与える可能性があるため、不快な副作用が生じることがある。 がんの治療では、化学療法は手術または放射線療法の前、放射線療法中、手術または放射線療法による治療の後に行われることがある。また化学療法には、錠剤として内服するものと静脈から投与するもの(静脈内投与)がある。このような化学療法の投与方法や種類の差によって、余命にさまざまな影響を及ぼす可能性がある。現時点では、最善の方法はわかっていない。 本レビューは2011年に公表されたレビューの更新版である。 知りたかったこと 化学療法に手術または放射線療法を併用することによって生存期間が改善されるかを知りたかった。また、化学療法を手術または放射線療法と併用することによって、がんが縮小する可...
3 years 3 months ago
原発性月経困難症(生理痛)に対するニフェジピンの効果 レビューの論点 原発性月経困難症(生理痛、月経痛としても知られる)に伴う痛みの緩和にニフェジピンは有効か? 背景 原発性月経困難症は、月経(生理)に伴う痛みであり、子宮の痙攣が原因である。生殖可能な年齢にある女性によくみられる症状で、日常の活動に大きな影響を与える可能性がある。ニフェジピンは、早産の妊婦の子宮の収縮を減らすのに効果的な薬である。このレビューでは、ニフェジピンが月経時の子宮の収縮の緩和にも効果的かどうかということを取り上げている。 研究の特徴 3つのランダム比較試験(参加者が治療を受けるか、比較対象になるか、同等の確率で選ばれる研究)を特定した。原発性月経困難症に対するニフェジピンとプラセボ(偽薬)の使用を比較した。合計で106人の女性が試験に参加したが、解析に利用できた情報は、合計66人の女性が参加した2つの試験からのもののみであった。これらの試験のうちの1つでは、ランダム化がグループ間で非常に偏っており、19人の女性がニフェジピンを投与されたのに対し、わずか5人がプラセボを投与されていた。文献の検索は、2019年1月31日に行われ、2020年6月5日と2021年11月25日に繰り返し行われた。1つの試験は別の著者と検討して特定された。 主要な結果 原発性月経困難症に伴う痛みの緩和に対するニフェジピンの有効性は...
3 years 3 months ago
抗精神病薬は、アルツハイマー病や血管性認知症の人の興奮行動や精神病症状を軽減するか? 要点 ハロペリドールのような旧来の第一世代の「定型」抗精神病薬が、興奮した行動(例えば、落ち着きのなさや攻撃性)に効果があるかどうかは不明であり、その効果は良くても中程度である。代表的な抗精神病薬は、認知症の人の妄想や幻覚をわずかに減少させる可能性がある。 リスペリドンのような新しい第二世代の「非定型」抗精神病薬は、おそらく興奮行動をわずかに減少させる。非定型抗精神病薬は、おそらく精神病症状には影響しない。 第一世代と第二世代の抗精神病薬ともに、眠気やその他の望ましくない事象のリスクを高める。抗精神病薬が処方された後に患者の症状が改善した場合、それは時間の経過とともに自然に症状が改善したことが大きいと思われる。 抗精神病薬とはどんな薬か? 抗精神病薬は、統合失調症、双極性障害、重度のうつ病など、一部の精神疾患における精神症状や重度の不穏行動を治療するために処方される薬である。精神病症状は、妄想(事実ではないことを強く信じること)と幻覚(存在しないものが見えたり聞こえたりする感覚)である。 抗精神病薬は、よく2つのグループに分けられる。 1. ハロペリドールなどの第一世代(旧型)または「定型」抗精神病薬 2. リスペリドンなどの第二世代(新型)または「非定型」抗精神病薬 どちらのタイプも、眠気、運...
3 years 3 months ago
冠動脈疾患患者のうつ病に対する治療法 このレビューでは、冠動脈疾患とうつ病を持つ人を対象に、心理的治療と抗うつ薬に関する臨床試験を調べた。目的は、これらの治療法が、うつ病、死亡率、再度の心臓発作や心臓手術などの心臓イベントに及ぼす影響を調べることであった。 その結果、37件の試験がレビューに関連するものとして確認された。15件の試験では心理的治療が検討され、21件の試験では抗うつ薬を含む薬物的介入が検討された。 一般的に、心理療法を対照薬と比較したり、抗うつ薬をプラセボ(非活性薬)と比較したりすることで、治療終了時にうつ病の症状が軽減される可能性があるが、そのエビデンスは確実性が低い。心理的治療を対照薬と比較して、また抗うつ薬をプラセボと比較して、死亡率や心血管イベントを減少させるかどうかについては、エビデンスが非常に不確かである。 エビデンスは2020年8月までのものである。 訳注: 《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳 [2022.02.01]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲...
3 years 3 months ago
重篤な合併症を併発した慢性大動脈解離タイプB型に対する血管内治療と開腹による血管再建術との比較 背景 大動脈は人体にある主要な動脈で、心臓から出て、全身に血液を供給している。大動脈解離とは、この大動脈の壁に亀裂が入り裂けてしまう疾患のことである。大動脈解離には2つのタイプがある。大動脈の心臓に近いところ(上行大動脈と大動脈弓)で起きるA型と、心臓から遠いところ(左鎖骨下動脈より遠位)で起きるB型である。B型の大動脈解離が起きた後、すぐに手術が必要でない場合には、解離は経時変化し、(6週間以上経過したものは)慢性解離と呼ばれるようになる。その後6週間以上経ってから合併症が起きることがあり、その合併症の重症度と外科的な手術によるリスクとを比較して、必要に応じて外科的手術がとられることがある。解離した血管壁の経時的変化とともに、治療の必要な複数の合併症が組み合わさって併発してくることから、この状態を「複雑な(重篤な合併症を併発した)」B型慢性大動脈解離と呼ぶ。 長年にわたって、その治療の選択肢は開胸手術による血管修復しかなかった。この方法は広く用いられてきたが、それにともなって起きる腎不全、運動麻痺(対麻痺=下肢の麻痺)、再手術、死亡などの大きな問題が残されたままである。 最近になって、医用生体工学の進歩により、ステントグラフト(人工血管(グラフト)に針金状の金属を編んだ金網(ステント...
3 years 3 months ago
下肢を膝から切断することは、膝から上で切断することに比べて、手術後の回復やリハビリテーションの向上につながるのか? 背景 世界では毎年、何千人もの人々が、血管の詰まり(血管病)や糖尿病、怪我などの理由で、手術によって下肢を切断(下肢切断)しなければならない状況にある。下肢切断を計画する場合、外科医は脚をどのくらいの高さで切るか、つまり脚をどのくらい残すかを決める必要がある。この判断は、義足(プロテーゼ;ここでは人工の脚)をつけて歩く能力を向上させるために脚をできるだけ長く残すことと、壊死してしまう部分や治らない部分を取り除くというバランスに基づいている。可能であれば、歩行機能を最大限に発揮できるように、外科医は膝を残すように(膝より下で切断)する。それができない場合には、現在、ほとんどの人が太ももの中央部(膝より上)を切断することになる。しかし、別の選択肢として、膝関節そのものにおいて切断することがある。これは、大腿骨の動きをコントロールするすべての筋肉を損傷しないという利点がある。残っている脚が長ければ、歩行時に義足を振り出す力を軽減するテコとして働き、座位バランスやベッドから椅子への移乗を助けることが期待できる。筋肉を切らないことで、手術による身体的外傷を最小限に抑えることができ、出血を減らし、手術時間を短くすることができる。また、大腿骨の端の部分や、場合によっては膝蓋骨が残...
3 years 3 months ago
血圧コントロールのための歯周病治療 レビューの論点 歯周病治療は、高血圧の予防や、高血圧の人の血圧を下げることができるのか? 背景 歯周炎は、歯肉炎(歯周病)が重症化したもので、高血圧に大きな影響を及ぼす動脈硬化性プラーク(脂肪、コレステロール、カルシウムなどが血管内に蓄積したもの)にも含まれるいくつかの特定の細菌が原因となっている。複数の研究により、歯周炎と高血圧の関連が示されている。歯周病治療が高血圧の予防や治療につながるかどうかを評価することは重要である。 検索期間 エビデンスは2020年11月までのものである。 研究の特性 8件のランダム化比較試験(2つ以上の治療群のいずれかに参加者を無作為に振り分ける臨床研究)を対象とし、894人が参加した。研究では、年齢・性別を問わず、また、高血圧の有無にかかわらず、歯周炎と診断された参加者を対象に、歯周病治療の予防・治療効果による血圧の変化を調べた。 主な結果 心血管疾患(高血圧を除いたもの)の有無に関わらず歯周炎と診断された人を対象に、歯周病治療と無治療で血圧の変化を比較した研究が4件見つかった。その結果、治療を受けた人と受けていない人の比較では、どの期間においても、血圧に差が出ないことが示された。 慢性歯周炎の人を対象に、歯周病治療と歯肉縁上スケーリング(目に見える歯石を取り除くだけで、歯周炎への治療効果は限定的)を比較した研究...
3 years 3 months ago
教育現場や職場での乾燥症状や上気道感染症を予防、または軽減するための介入方法 本レビューは、教育現場や職場において、室内の空気を加湿することで、乾燥症状や上気道感染症を予防、または軽減できるかどうかを検討した。 暖房の使用中は、室内の空気の湿度が低くなるため、目や鼻、喉、肌の乾燥などの不調を引き起こす可能性がある。さらに、粘膜が乾燥して炎症を起こすと、上気道感染症にかかりやすくなる。これらの症状は、仕事や学校に行かないことにも関連する可能性がある。加湿器を設置して室内の湿度を上げることで、乾燥症状や上気道感染症を予防、または軽減できる可能性がある。 特定した研究 4,551名が参加した13件の研究を特定した。7件の研究は職場(病院やオフィス)で行われ、5件の研究は教育現場(幼稚園や学校)で実施された。1件の研究のデータは、本レビューの目的に対して分析ができなかった。 室内の空気を加湿する場合 対 加湿しない場合 本レビューに含まれた研究では、職場に加湿器を設置して室内の湿度を上げても効果がないことが示されたが、いくつかの研究では目や皮膚、上気道の乾燥の症状が減少することが示された。しかし、エビデンスの確実性は低度~非常に低度であった。 不登校に対しても、研究の結果(そのほとんどが教育現場で実施された)は一貫していない。そのエビデンスの確実性は非常に低度であった。 エビデンスの質 ...
3 years 3 months ago
マインドフルネスによる医学生および若手医師の精神的健康状態(ウェルビーイング)の改善 なぜこのレビューが重要なのか? 医療の専門職は、そのやりがいと過酷さが認識されている。医学生や若手医師は、研修期間中に個人的・職業的なストレス要因が増加することが知られている。その結果、彼らの精神的健康(ウェルビーイング)への負担は大きくなる。医学生や若手医師の精神的な健康をサポートすることは、彼らの健康全般のバランスを確保し、また患者のケアや患者の安全という彼らの責務を支援するために、重要である。さらに、医学生や若手医師は時間に余裕がないことが多い。したがって、マインドフルネス(今の心に意識を向けること)がその時間的な拘束を正当化できるほど効果的な介入であるかどうかを検証することが重要である。今回の対象者に対するマインドフルネスを検証したコクランレビューは、これまでなかった。 このレビューに関心をもつ人は誰なのか? 医学生や若手医師、研修レベルや専門性の異なる他の医療従事者、医学生の教育や研修に携わる大学や病院などの機関である。 このレビューでわかることは何か? マインドフルネスに基づく心理的介入は、医学生や若手医師の精神的健康状態にどのような効果をもたらすか? このレビューにはどのような研究が含まれたか? 2021年10月までに発表された、医学生と若手医師を対象としたマインドフルネスに関する...
3 years 3 months ago
出血傾向がある、または出血性疾患のキャリアである女性における、出産後の母児のアウトカムに関する自然経腟分娩と帝王切開分娩の比較 レビューの論点 出血性疾患やそのキャリアである女性における、自然経腟分娩あるいは帝王切開分娩で出産した後の母児のアウトカムに関するエビデンスを調べた。これは、以前に公開されたレビューの更新版である。 背景 出血性疾患がある女性とそのキャリアの女性の最も安全な出産方法を検討し、それぞれの方法で出産時に母児に起こりうる問題を評価したいと考えた。 検索日 このレビューにおけるエビデンスは、2021年6月21日現在のものである。 主な結果 出血性疾患の女性における、最も安全な出産方法(自然経腟分娩と帝王切開との比較)や出産時に母児に起こりうる問題を検討した、ランダム化または準ランダム化比較試験は見つからなかった。出血性疾患の希少性や妊娠中に試験を行うことの難しさを考えると、将来的にもランダム化比較試験が行われる可能性は低いと思われる。そのため、臨床医は低レベルのエビデンスを用いて治療法を決定しなくてはならないだろう。 訳注: 《実施組織》 杉山伸子、小林絵里子 翻訳 [2022.02.16]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連...
3 years 3 months ago
急性痛風発作に対する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の効果 急性痛風発作とは何か、NSAIDsとは何か? 痛風は、尿酸一ナトリウム結晶が関節の内部またはその周辺に沈着したために起こり、通常、自然に治癒する急性関節炎のエピソード(発作)として現れる。 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は痛みと炎症を抑える薬だが、胃腸の潰瘍や出血のリスクを高める恐れがある。シクロオキシゲナーゼ(COX)‐2選択的阻害薬(COXIBs)はNSAIDsの一種だが、胃潰瘍を起こしにくい。 研究の特徴 本レビューは、2014年に初めて公表され、2020年8月28日に更新されたコクラン・レビューのアップデート版で、28件の試験(参加者3,406人)の結果を反映している。参加者の大半(69%から100%)は男性で、年齢は44~66歳、急性痛風発作の持続時間は48時間未満だった。 これら試験のうち、1件(参加者30人)はプラセボ(偽薬)とNSAIDを、13件(参加者518人)は1つのNSAIDと別のNSAIDを、6件(参加者1,244人)はNSAIDsとCOXIBsを、5件(参加者772人)はグルココルチコイドとNSAIDsを、1件(参加者225人)はインターロイキン‐1阻害薬とNSAIDsを、1件(参加者163人)は鍼治療と赤外線照射を併用した場合とNSAIDsを、そして1件(参加者399人)はコルヒ...
3 years 3 months ago
臨床試験における新しいモニタリング戦略 論点 新しいモニタリング戦略が、モニタリングの所見、参加者の募集、参加者のフォローアップ、臨床試験における資源の使用などに及ぼす影響に関するエビデンスをまとめた。また、検証された戦略のさまざまな構成要素と、プロセス評価から得られた質的なエビデンスをまとめた。 背景 臨床試験のモニタリングは、参加者の安全性と結果の信頼性を確保するために重要である。診療のモニタリングのために新しい方法が開発されているが、患者の権利と安全、試験結果の品質保証の観点から、既存の方法に劣ることなく有効性が向上するかどうか、これらの新しい方法についてさらなる評価が必要である。臨床試験においてこの疑問を検証した研究、すなわち、臨床試験で使用される様々なモニタリング戦略を比較した研究のレビューを実施した。 研究の特性 国内試験や大規模な国際試験を含む幅広い臨床試験において、様々なモニタリング戦略を対象とした8件の研究を対象とした。これらは、一次(一般)、二次(専門)、三次(高度専門)医療施設で行われたものである。研究規模は32人から4371人、施設数は1施設から196施設であった。 主な結果 本レビューでは、5つの比較を特定した。1つ目の比較として、リスクベース(試験の質や安全性に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定し、評価をすること)のモニタリングと広範な現場でのモニタ...
3 years 3 months ago
精神病性うつ病の薬物療法 精神病性うつ病とは、精神病的な特徴(妄想や幻覚など)を伴う重度のうつ病のことである。精神病性うつ病に対する最も効果的な薬物治療は、抗うつ薬単独、抗精神病薬単独、あるいは抗うつ薬と抗精神病薬の併用のいずれかであり、不確実性が高い。 このレビューの目的は、精神病性うつ病の治療に用いられてきたさまざまな形態の薬物治療の有効性を比較することである。そのために、すべてのランダム化比較試験(RCT)を分析した。12件のRCTが組み入れ基準を満たした。これらの試験には、合計929人が参加した。 これらの試験から、精神病性うつ病に対して、抗うつ薬と抗精神病薬の併用が、どちらか一方の治療のみの場合よりも有効であるというエビデンスが得られた。しかし、これらの情報は少数のRCTから得られたものであり、少数の人を対象としたものであるため、この結論に対する確信は限られている。さらに、RCTによって対象者のタイプが異なり、これらの試験はデザインも異なるため、自信を持って結果を一般化することはできない。 訳注: 《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳 [2021.12.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコ...
3 years 3 months ago
根治目的の手術後または放射線治療後の I~III期 非小細胞肺がんに対する免疫療法の延命効果 レビューの論点 生体の免疫システムはがん細胞を攻撃する。免疫システムを助ける治療法(免疫療法)は 、根治を目的とした手術または放射線治療を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者の生存期間を延長するか。 背景 根治を目的とした手術または放射線治療を受けたNSCLC患者の多くが、もともとあったがんが肺に再発するか、あるいは体の別の部位に転移して最終的には死に至る.。免疫療法によって患者の余命が長くなるかどうかを検討した試験は長年の間に数多くあり、効果を示した試験もあれば、示さなかった試験もあると思われる。 研究の特性 4つのコンピュータデータベースと5つの臨床試験登録から2021年5月19日までの試験を検索した。患者が異なる治療法に無作為に割り付けられており(ランダム化比較試験、RCT)、腫瘍検体検査により確定診断された早期NSCLC(I ~III期)の成人(18歳以上)を対象としたあらゆる試験を検索した。その結果、手術または根治的放射線治療を受けた計5,000人を超える患者が免疫療法群あるいは無治療群のいずれかに無作為に割り付けられたRCT 11件が抽出された。 主な結果 免疫療法は主にワクチンをベースとする(宿主の免疫システムを活性化して、腫瘍特異抗原に対するヒト免疫応答の誘導を目的とす...
3 years 3 months ago
軍人や第一線の救急隊員が実際の配備前に行うレジリエンス構築プログラムは、どのような効果があるか 軍人や第一線の救急隊員は、トラウマになりそうな出来事を目撃すると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やその他のトラウマに関連した心理的困難に陥る危険性がある。このような出来事には、けがや死亡を目撃したり、隊員がけがや死亡の危険にさらされる状況を経験することが含まれる。理論的には、このような種類のイベントに直面する前に、これら隊員の心理的な回復力を高めることで、心的外傷後の苦痛の発生と重症度を軽減することができるかもしれない。本レビューでは、この種のレジリエンス構築プログラムのエビデンスを特定し、照合した。実験群と対照群を比較するデザイン(ランダム化比較試験(RCT)/クラスターRCT)を用いた研究のみをレビューの対象とした。6,774件以上の記録がスクリーニングされ、28件の研究がレビューの対象として選ばれた。このレビューの対象となったプログラムは、それぞれ異なる理論(「理論的方向性」)に基づいており、提供方法も異なっていた(例:オンライン/オフライン、グループベース/個人ベース)。このようなプログラムが、心理的ストレスの症状に対する回復力を高め、重大事件後のPTSDの診断を防ぐことができるという主張を裏付けるには、まだ十分なエビデンスがない。とはいえ、既存のエビデンスの基盤には限界が...
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3 hours 47 minutes ago
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