3 years 2 months ago
手術前の剃毛は手術後の感染症を予防できるか? 要点 剃毛しない場合と比較して: - かみそり(剃刀)で毛を剃った場合の方が、手術部位感染の発生が多い可能性がある。 - サージカルクリッパー(バリカン)での剃毛やクリームを用いての除毛は、感染の発生にほとんど差はない。 サージカルクリッパー(バリカン)での剃毛や除毛クリームを用いての除毛は、かみそりで毛を剃るよりも、おそらく感染の原因になりにくい。 手術前日ではなく、手術当日に剃毛または除毛をすることにより、感染症の発生を少し抑制することができる。 なぜ手術前に剃毛するのか? 外科手術の前には、手術を受ける部位の毛を剃毛することが一般的である。サージカルクリッパー(バリカン)、カミソリ、除毛クリームなど、毛の処理は、さまざまな方法で行うことができる。 例えば、傷口を縫うときや包帯を巻くときなど、手術中や手術後のトラブルを避けるために毛を処理する。しかし、毛を剃ったり抜くことにより、術後の感染症が引き起こされる可能性があるので毛の処理は避けた方が良いとする研究もある。 何を知りたかったのか? 手術の前に剃毛することによって以下がどうなのかを知りたかった。 - 感染症の原因となるのか、予防となるのか; - 皮膚の切り傷や縫合した傷口が開くなどの合併症を防ぐのか; - 手術後の入院期間への影響はどうか; - 費用面での影響はどうか。 また...
3 years 2 months ago
肩の痛みに対するグルココルチコイドの画像ガイド下注射とブラインド注射(画像ガイドなし注射)の比較 背景 肩の痛みは、回旋筋腱板損傷もしくは癒着性関節包炎(「凍結肩」)に起因することが多い。回旋筋腱板は(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の回旋筋群からなる4つの)腱で構成されており、肩関節を良い位置で安定させ、腕を上げる動作を可能にする。肩の痛みは、腱板の損傷や炎症、そして、腕を上げたときに腱の上部にある骨が腱を圧迫すること(インピンジメント)が関与している。いずれの状態も、動作時に痛みが生じたり、夜間や患側を下にしての就寝時にしばしば痛みが生じる。また、癒着性関節包炎は肩関節のこわばりも引き起こす。 グルココルチコイド注射は肩の痛みを和らげるが、その効果は通常6~8週間で消失する。従来、注射は肩周辺の解剖学的ランドマーク(目印)を目印にして行われている。また、肩への注射をより正確に行うために、超音波などのイメージング(画像)技術が使用されることもある。画像ガイド下での注射が画像ガイドなしの注射と比べて、効果的に肩の痛みを和らげるかどうかは分かっていない。 研究の特徴 このコクランレビューは2021年2月15日現在のものである。19件の試験(参加者1035人)で、超音波ガイド下注射と「ブラインド」注射(画像ガイドなしの注射)を比較した。試験の参加者の病態は、14件は回旋筋腱板損傷、4...
3 years 2 months ago
慢性肝疾患に対するビタミンDの補給 レビューの論点 慢性肝疾患の成人にビタミンDの補給は有益か有害か? 背景 成人におけるビタミンDと慢性肝疾患に関する利用可能なエビデンスには結論が出ていない。このシステマティックレビュー(入手可能な医学試験の結果をまとめたもの)の目的は、慢性肝疾患患者におけるさまざまな形態のビタミンDの有益性と有害性を分析することであった。 試験の特徴 1979人の成人参加者を対象とした27件の試験が本レビューにデータを提供した。今回のレビュー更新では、12試験、945名の参加者が追加された。1979人の試験参加者は、プラセボ(偽薬)または無治療と比較するビタミンDに無作為に割り当てられた。高所得国では11本、中所得国では16本の試験が行われた。参加者の年齢は28歳から61歳で、平均して44%が女性であった。C型慢性肝炎患者を対象とした試験が10件、肝硬変患者を対象とした試験が5件、非アルコール性脂肪性肝疾患患者を対象とした試験が11件、肝移植患者を対象とした試験が1件あった。B型慢性肝炎や遺伝性肝疾患の方を対象とした試験はなかった。対象となったすべての試験で、参加者のベースラインのビタミンDの状態が報告された。ビタミンDの投与期間は平均6ヶ月で、ほとんどの試験でコレカルシフェロール(ビタミンD3)が使用された。 資金調達 14件の試験は、試験結果に偏りをもた...
3 years 2 months ago
子宮内膜症女性に対するペントキシフィリン レビューの論点 子宮内膜症と診断されている女性にペントキシフィリンを投与することで、痛みの症状や妊娠の転帰が改善するかどうか、有効性と安全性を検討した。ペントキシフィリンは免疫調整薬(免疫系に作用する物質)であり、この病態の治療に異なるアプローチを提供する可能性がある。ペントキシフィリンを無治療、プラセボ(偽の治療)、別の内科的治療、外科的治療と比較することを目的とした。 背景 子宮内膜症は、子宮内膜(子宮の内側を覆う組織)に似た組織が子宮の外で成長して痛みを引き起こす状態であり、女性の妊孕能に影響する可能性がある。最近の研究ではこの病気に対する免疫系の影響が支持されている。ペントキシフィリンは免疫調整薬であり、抗炎症(炎症を抑える)作用も持つため、排卵を抑制することなく病気の症状を和らげられるかもしれない。 研究の特性 5件のランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群にランダムに振り分ける試験)を対象とし、合計415人の女性を対象に、ペントキシフィリンとプラセボ、無治療、その他の内科的治療を比較した。このエビデンスは2020年12月16日現在のものである。 主な結果 子宮内膜症の女性における妊孕性や痛みの緩和に関するペントキシフィリンの有効性と安全性について、結論を出すのに十分なエビデンスはなかった。主要評価項目である出産率や有害事象...
3 years 2 months ago
超低出生体重児の壊死性腸炎を予防するために行うゆっくりとした授乳量調整 レビューの論点 生後数週間の間に、超低出生体重児への授乳量の増加率を制限すると、重度の腸障害のリスクが減少するか? 背景 超早産児(予定日よりも8週以上早くうまれた児)や超低出生体重児(出生時の体重が1,500g未満)の新生児は、壊死性腸炎(腸が炎症を起こして死ぬ)と呼ばれる重度の腸疾患を発症するリスクがある。この症状を防ぐには、生後数週間の乳児の授乳量を制限することが一つの方法ではないかと考えられている。 研究の特徴 超早産または超低出生体重の新生児の授乳量を、ゆっくりとしたペースで増加させる場合と、速いペースで増加させる場合とを比較したランダム化比較試験(2つ以上の治療群のいずれかに参加者をランダムに割り当てる研究)を検索した。対象とした試験は14件で、合計4,033人の乳児が含まれていた(1つの大規模試験には2,804人の乳児が参加していた)。検索は2020年10月現在のものである。 主な結果 対象となった試験を総合的に分析した結果、授乳量をゆっくりと増やしても、壊死性腸炎や死亡のリスクにはおそらく影響しない(中等度の確実性)。 結論とエビデンスの確実性 授乳の量をゆっくりと増やしても、超早産児や超低出生体重児の壊死性腸炎や退院前の死亡のリスクはおそらく減らない。 訳注: 《実施組織》 榛葉...
3 years 3 months ago
COVID-19患者の終末期に対して、どのような治療法が最適か? COVID-19患者の終末期における厄介な症状と緩和的な治療法について COVID-19患者は、終末期に息苦しさやせん妄などの症状を示すことがある。緩和医療の目的は、そのような症状に対して適した治療法でその症状を緩和することである。治療には、例えばオピオイドをはじめとする麻薬などの薬物療法と、呼吸法やリラックス法などの非薬物療法がある。 本レビューの目的 終末期にあるCOVID-19患者の苦痛を伴う症状の治療において、様々な介入方法(薬物療法および非薬物療法)がどの程度効果があるかを調査した。すべての年齢層、すべての併存疾患(合併している医学的状態)を持つ患者を対象とした。 どのようなタイプの研究を探したか? 2021年3月23日まで、選択した医療データベースと臨床試験登録のレジストリを検索した。終末期におけるCOVID-19関連の症状を緩和するために、様々な緩和的な治療法がどの程度有効かを調べた研究を対象とした。異なる薬剤や治療法で介入した研究を比較したかったが、比較群のない研究しか見つからなかった。個々の症状に対して使用した特定の薬剤を報告した研究は1件のみであった。 主な結果 5つの論文に掲載された4件の研究が見つかった。個々の論文で61人から2105人の参加があり、2つの論文では一部同じ参加者について報告し...
3 years 3 months ago
超早産児の授乳における短い間隔と長い間隔の比較 レビューの論点 超早産児の定期的な授乳において、短い間隔(例えば、2時間以下)は、長い間隔(3時間以上)に比べて許容性が良いか? 背景 出生時に在胎32週未満の超早産児への授乳は大きな課題である。腸が未熟なため、軽度(摂食不耐性)から中等度(胃からミルクが逆流)、重度(壊死性腸炎(NEC)など)の問題が発生する可能性がある。壊死性腸炎は、腸の一部が修復不可能な状態にもなりうる感染性の合併症である。授乳間隔が重要そうであるが、適切な間隔を決めることが大きな課題となる。短い間隔(典型的には3時間以内)でも、長い間隔でも、それぞれにリスクがある。間隔が短い場合は、少量のミルクをより頻繁に与えることができる。乳児はミルクの量がより少ない方が全量飲めるかもしれないが、授乳の間隔が短いと胃腸が休まる時間が十分に取れない可能性がある。 研究の特徴 2020年6月25日までの医学データベースを検索した。4件の研究(417人の乳児を対象)が見つかったが、いずれも中所得国で実施されたものであった。4件の研究はすべて、2時間ごとの授乳間隔と3時間ごとの授乳間隔を比較していた。すべての試験は、妊娠29週から妊娠35週の極低出生体重児を対象としていた。 結果 これらの研究結果を総合すると、2時間ごとの授乳間隔と3時間ごとの授乳間隔では、ほとんどあるいはまった...
3 years 3 months ago
慢性閉塞性肺疾患患者において、呼吸リハビリテーション後の監督下における維持療法は通常の治療と比較して有効か? 背景 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方には、呼吸リハビリテーションが有効である。呼吸リハビリテーションを行うことで、症状、生活の質、運動耐容能が大きく改善し、入院回数が減る可能性がある。このレビューでは、維持リハビリテーションプログラムが有用かどうかを検討する。維持リハビリテーションとは、呼吸リハビリテーションプログラムが終了した後に行われる、監督下の運動トレーニングである。典型的な維持リハビリテーションプログラムは監督下で実施される。 検索日 エビデンスは2020年3月31日現在のものである。 研究の特徴 このレビューには、1799人のCOPD患者を対象とした21件の研究が含まれた。維持リハビリテーションプログラムは、月1回またはそれ以下の間隔で監督されていたが、2つの研究ではセッションの間隔がそれ以上に長かった。すべてのプログラムは監督されていたが、電話で監督されたもの、対面で監督されたもの、その両方が混在しているものもあった。このレビューでは、すべての維持プログラムで、監督付きの運動トレーニングが行われた。また、一部のプログラムでは教育セッションも行われた。ほとんどのプログラムは6ヶ月から12ヶ月の間継続された。 結果 6~12ヵ月後の追跡調査では、通常のケアと比較...
3 years 3 months ago
褥瘡の予防と治療のためのベッド、交換マットレス、上敷マットレスのメリットとリスクとは? この概要では、ランダム化比較試験から得られた多くのデータを示して、「ネットワーク・メタアナリシス」と呼ばれる高度な分析を含む。この分析では、褥瘡の予防や治療のためのあらゆるタイプの体圧分散用具を比較する。この相互作用のある分析手法は、データを一定の方向に導くことに役立つかもしれない。 https://stopthepressure.shinyapps.io/Cochrane_support_surface_reviews/. 要点 静止型エアマットレスまたは上敷マットレス、圧切替型エアマットレスまたは上敷マットレス、手術台に使用されるゲル素材のパッドは、褥瘡予防において、フォームマットレスよりも優れている場合がある。 フォームマットレスと比較して、圧切替型エアマットレスや上敷マットレスは、おそらく褥瘡予防において費用を上回る健康上の利点があると考えられる。 静止型エアマットレスや上敷マットレスは、フォームマットレスよりも潰瘍治癒に優れている場合があるが、費用がかかる可能性がある。 褥瘡の予防や治療にはどのような治療法が最適なのか、それらの治療法が人々の快適さや生活の質にどのような影響を与えるのか、また、望ましくない影響があるのかどうかは不明である。 褥瘡とは何か? 褥瘡(床ずれとも言われる)と...
3 years 3 months ago
副腎皮質ステロイド(抗炎症薬)を経口または注射で投与することは、COVID-19に罹患している人に有効な治療法か? 要点 - 副腎皮質ステロイド(抗炎症薬)(以下、ステロイド)の経口投与や注射(全身投与)は、COVID-19に罹患して入院している人に有効な治療法であろう。望ましくない効果を引き起こすかどうかはわからない。 - どのステロイドが最も効果的かはわからない。症状のない人や軽症のCOVID-19で入院していない人についてのエビデンスは見つからなかった。 - 現在進行中の研究が42件、完了したが結果が公表されていない研究が16件見つかった。新たなエビデンスが見つかった場合は、このレビューを更新する。 ステロイド(副腎皮質ステロイド)とは? ステロイドは、赤みや腫れを抑える抗炎症薬である。また、病気や感染症から体を守る免疫系の活動も低下させる。ステロイドは、喘息、湿疹、関節の歪み、関節リウマチなどさまざまな症状の治療に使用される。 ステロイドは、飲んだり(経口投与)、注射したりして、全身を治療する。高用量のステロイドを長期にわたって服用すると、食欲増進、睡眠障害、気分の変化などの望ましくない作用が生じることがある。 COVID-19の治療にステロイドが使用されるのはなぜか? COVID-19は、肺や気道に影響を与える。免疫系がウイルスを攻撃することで、肺や気道が炎症を起こし、...
3 years 3 months ago
クループの子どもに対するヘリウム・酸素(ヘリオックス)療法 レビューの論点 ヘリウムと酸素の混合ガス(ヘリオックス)を吸入することが、偽薬による治療法(プラセボ)や、30%の加湿酸素、エピネフリン(アドレナリン、気道を広げる薬)を添加した100%の酸素などの治療法と比較して、子どものクループの治療に安全で有用であるかどうかを調べた。 背景 クループは、上気道が塞がれてしまう短期の病気である。生後6ヶ月から3歳までの子供に多く、ウイルス感染が原因で、秋から冬にかけて多発する。症状としては、犬が吠えるような咳、嗄れ声、異常な呼吸音、胸壁の引き込み(吸気時に胸壁の皮膚や胸骨が内側に動くこと)などがある。 コルチコステロイド薬は、クループの子どもたちに対する標準的な治療法だが、この治療法の限界は、薬の効果が出るまでに時間がかかることである。重症のクループの子どもたちには、気管チューブや機械的な呼吸補助など、追加の緊急治療が必要になる場合がある。重度のクループの子供には、酸素とアドレナリンを細かい霧状にして吸入する(ネブライズと呼ばれる処置)必要がある。アドレナリンは一般的に安全だが、心拍数が速くなったり、不安になったりする副作用がある。安全で、効果的で、即効性のある治療法を特定することは、子どもとその家族にとって重要である。 ヘリオックス(ヘリウムと酸素の混合ガス)は、空気の流れを良くし...
3 years 3 months ago
重度の認知症の人への経腸経管栄養 重度の認知症の人に経管栄養を行うことの利点と問題点は? 要点 重度の認知症の人に経管栄養を行っても、経管栄養を行わない場合と比較して、生存期間は延びない可能性がある。褥瘡(床ずれ)が発生するリスクは、経管栄養を使用している場合の方が、経管栄養を使用していない場合よりも高いと思われる。生活の質(QOL)を調べた研究はなかった。重度の認知症の人への経管栄養を調査するためには、より多くの優れた研究が必要である。今後の研究では、疼痛、生活の質(QOL)、介護者への影響など、より広範なアウトカムに焦点を当てる必要がある。 経管栄養とは何か? 口から食べたり飲んだりできない人には、胃に管を入れて流動食を入れることがある。これを経腸経管栄養という。管は、鼻から胃の中に通すか(経鼻胃管)、お腹に小さな切り込みを入れて胃の中に挿入する(経皮的内視鏡下胃瘻造設術)。 認知症の人にとってなぜ重要なのか? 認知症の人は、食べたり飲んだりすることに困難を抱えていることが多い。認知症の初期段階では、食事を忘れたり、食べ物を噛んでも飲み込まなかったり、食事の際に混乱したりすることがある。人によっては、食べ物の味や匂いが変わることもある。認知症の後期になると、飲み込みが困難になることが多くなる。 適切な食事や水分を確保するのは難しいことがある。 重度の認知症の人は常に介護が必要...
3 years 3 months ago
生後18ヶ月以下の乳幼児においてHIVのウイルス分子を検出する迅速検査 なぜHIV感染症の診断方法の改善が重要なのか? 今でも、毎年150万人もの乳幼児がHIV感染のリスクにさらされていると言われている。HIVに感染しても治療を受けずにいると、およそ50%~60%の乳幼児は2歳になるまでに死んでしまう。生まれる前に感染した子どもは、特に死亡のリスクが高い。HIVは、完治が難しい病である。しかし、抗レトロウイルス薬(ART)と呼ばれる薬を使えば、HIVを抑制できる。HIVが早期に発見された場合、この薬を服用することで、HIV関連の感染症による重篤な状態や死亡を防ぐことができる。したがって、HIVのウイルス遺伝子分子を患者のそばで迅速かつ正確に検出する検査は、早期に適切な治療を受ける機会を増やし、HIVが検出されないまま治療の機会を逃す人を最小限に抑えることができる。 レビューの目的 生後18ヶ月以下の乳幼児における、HIVの主要なタイプ(HIV-1/HIV-2)の感染を検出するための分子学的迅速検査の精度を調べる。 検討した内容 検査室で行われたウイルス学的な検査を基準として、分子学的迅速検査の測定結果を比較して報告した論文の精査 主な結果 15,120人の参加者を対象とし、15の評価を終えた12件の研究で、HIV感染を診断するための分子学的迅速検査を比較検討していた。 このレビュ...
3 years 3 months ago
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の人が夜間に使用する非侵襲的人工呼吸器(ベンチレーター) 背景: 非侵襲的人工呼吸(NIV)とは、鼻または鼻と口の両方に装着したマスクを用いて、人工呼吸器と呼ばれる機械の助けを借りて自発的な呼吸(または正常な呼吸)を補助または代替する方法である。血中の二酸化炭素濃度が高い状態が続く場合には、自宅で慢性的(長期的)に非侵襲的人工呼吸(NIV)を使用することができる。二酸化炭素濃度が上昇した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、標準治療と並行して夜間に自宅で長期間非侵襲的人工呼吸(NIV)を使用することが、標準治療のみを行う場合と比較して良いか悪いかを調べた。2002年と2013年に、これを調査したコクラン・レビューが出版された。最初のレビューにおける既存の研究に加えて、調査結果を変えるような新しい研究が行われていないかどうかを確認することが重要である。 参加者個人データとは何か今回のレビューでは、参加者個人のデータ(IPD)を使用した。つまり、それぞれの研究に参加した各個人のデータを、その研究を行った研究者に依頼して収集しようとした。個人のデータ(IPD)は、参加者のグループ間の変化を検出する可能性が高く、追加の仮説を検討することができるため使用した。個人のデータ(IPD)を使って解析を行った レビューの論点:COPD患者に長期間非侵襲的人工呼吸(N...
3 years 3 months ago
限局性前立腺がんに対し後壁補強RALPと標準RALPのいずれを実施すべきか レビューの論点 ロボット機器を活用した前立腺摘出術(ロボット支援前立腺全摘出術、RALP)によって前立腺を切除する前立腺がん患者に対して、尿道の背中(後ろ)側の組織の縫合(いわゆる後壁補強)を実施する手術を、実施しない場合(標準RALP)と比較する。 背景 前立腺がん患者の前立腺を摘出する際に泌尿器科医はロボット機器をしばしば用いる。手術後しばらくの間、大半の患者に尿の漏れが発生する。この問題は尿失禁と呼ばれ、多くの場合は術後6~12カ月で改善するが、それまでの間は非常に煩わしいことがある。 研究の特性 後壁補強を実施するRALPと実施しない標準のRALPのいずれかに患者をランダムに割り付けて比較した8件の研究を対象とした。研究参加者の合計は1,085人で、平均年齢は60~67歳であった。参加者のPSA(前立腺特異抗原)の平均値は8.15ng/mLであった。PSAが高いほど前立腺がんが悪化している可能性を示す。 主な結果 後壁補強を実施したRALPは標準RALPと比較してカテーテル抜去後1週間の時点での尿失禁の状態を改善する可能性がある(差がない可能性もある)ことがわかった。一方、術後3カ月時点または12カ月時点での差はわずかであるか、差がないと考えられる。後壁補強を実施したRALPによる重篤な有害事象は...
3 years 3 months ago
腱板損傷に対するキネシオテーピング レビューの論点 インピンジメント症候群(関節付近で骨や筋肉が衝突することで組織が損傷して起こる痛み)、腱板炎、石灰沈着性腱板炎(腱板の表層などに石灰が生じる病気)等の肩に痛みを持つ成人を対象に、キネシオテーピング(KT)の有効性と有害性を明らかにする。 背景 KTは腱板損傷の保存的治療法の一つとして提案されている。KTは綿から作られた弾力のある、粘着性のあるラテックスフリーのテーピングであり、薬理作用のある成分は含んでいない。臨床家は痛みを伴う疾患に対するリハビリテーション治療の際にKTを採用しているが、効果に関する確固たるエビデンスはない。 研究の特徴 1054人の参加者を含めた23件の研究を取り込んだ。9件の研究(312人の参加者)ではKTと擬似治療(偽のKT)との有効性の比較を行い、14件の研究(742人の参加者)ではKTと他の保存的治療法(例えば従来のテーピング、理学療法、運動、グルココルチステロイド注射、内服薬など)と有効性の比較を行った。ほとんどの研究の参加者は年齢が18歳から50歳であった。女性の割合は52%を占めている。 主な結果 比較1:KTと擬似治療 全般的な痛み(スコアが低いほど痛みが少ない): 0.7%の悪化(9%の悪化~7.7%の改善)もしくは0~10点満点において0.07点の悪化となった。 ・擬似治療を受けた参加者の...
3 years 3 months ago
胃食道逆流症に対する持続的経管栄養法と間欠的経管栄養法の比較 レビューの論点 継続的また間欠的な経管栄養は、食道へのミルクの逆流を減少させるか? 背景 早産児や低出生体重児は、効果的に吸ったり飲み込んだりできないため、適切に経口摂取できないことが多い。そのため胃の中にチューブを入れて栄養補給(経管栄養)をしなくてははらない場合がある。経管栄養には、短時間(15~30分)でミルクを与える注入法と、数時間かけてミルクを与える連続注入法がある。ミルクの食道への逆流を抑えるには、どの方法が良いのかは不明である。 研究の特徴 検索は2020年7月時点での最新情報である。進行中の試験はなかった。 主な結果 このレビューに含めることができる研究は見つからなかった。早産児や低出生体重児の胃食道逆流を抑制するために、どの方法で栄養摂取を行うのがより効果的かを評価する研究が必要である。 エビデンスの確実性 ランダム化比較試験は見当たらなかったため、どちらの方法がより適切であるかを明らかにするため、十分にデザインされたランダム化試験を実施することを推奨する。 訳注: 《実施組織》 小林絵里子、冨成麻帆 翻訳[2021.10.19]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連...
3 years 3 months ago
低・中所得国における精神障害や悩みを抱える人々のケアのためのプライマリーレベルのワーカーによる介入 このコクラン・レビューの更新は、プライマリ-ケア・ワーカーや教師といった地域で働く人々が、精神障害や苦痛を抱える人々を支援することの効果を評価することを目的としている。今回のレビューでは、低・中所得国の研究に焦点を当て、95件の研究を対象とした(前回のレビューの23件を含む)。 要点 プライマリーヘルスの専門家、レイヘルスワーカー(専門職ではない保健医療に関わる人)、教師、その他のコミュニティワーカーは、訓練を受けていれば、メンタルヘルスの問題を抱える人々を支援することができるかもしれない。しかし、さらなるエビデンスが必要である。 本レビューで検討された内容 低・中所得国では、精神疾患を持つ多くの人々が、偏見やサービスへのアクセスの困難さのために、必要なケアを受けられないでいる。一つの解決策は、「プライマリーレベルのワーカー」を通じてサービスを提供することである。「プライマリーレベルのワーカー」とは、メンタルヘルスの専門家ではないが、何らかのメンタルヘルスのトレーニングを受けている人たちで、プライマリーヘルスの専門家(医師、看護師など)、レイヘルスワーカー(専門職ではない保健医療従事者)、コミュニティボランティア、その他のコミュニティメンバー(教師、ソーシャルワーカーなど)が含まれ...
3 years 3 months ago
早産児・低出生体重児の間欠的な経管栄養に対するプッシュ注入と重力による注入との比較 レビューの論点 経管栄養を受けている早産児または低出生体重児において、重力を利用した栄養注入(訳注:イルリガートルのようにシリンジを垂直方向にぶら下げた場合)と比較して、プッシュ注入(訳注:シリンジをもちいて押す圧力で注入する場合)では有害事象(低酸素飽和度、低心拍数、完全な吸上げまでの時間)が増加するか。 背景 早産児(37週以前に出生した児)は、吸啜、嚥下、呼吸の調整ができず、経管栄養が必要となる場合がある。その場合には、鼻や口から胃の中にチューブを入れて、栄養を与えることになる。間欠的な栄養の注入(訳注:24時間の持続注入ではなく、3時間ごとなどの授乳を指す)は、シリンジを使って母乳やミルクを乳児の胃の中に静かに押し込むことで行える(プッシュフィード)。また、チューブに取り付けたシリンジにミルクを注ぎ、重力で滴下させる方法もある(グラビティフィード)。 研究の特徴 検索は2020年7月時点での最新情報である。今回のアップデートでは、1件の研究(乳児31人)を対象とした。 主な結果 間欠的な経管栄養を必要とする早産児または低出生体重児、あるいはその両方において、重力による注入法と比較してプッシュ注入を用いることで、有害事象を増加させることなく、より迅速に完全経管栄養を確立できるかどうかを示すエ...
3 years 3 months ago
進行上皮性卵巣がん患者に、手術前の化学療法を行うことによって生存期間または生活の質が改善するか 論点 卵巣の表面や卵管の内皮(内側)から生じる上皮性卵巣がんは、世界の女性で9番目に多いがんであり、卵巣がんの中で最も多い(卵巣がんの約90%)。残念ながら卵巣がん患者の大半が、腹部全体にがんが拡がっている進行した段階で見つかる。これは、卵巣がんが卵管の末端から生じることが多く、原発腫瘍(はじめに生じたがん)が顕微鏡レベルの大きさであってもがん細胞が腹腔内に脱落しうるためである。このような腫瘍細胞は腹水に混じって腹腔内を循環し、他の部位の表面に定着して時間をかけて増殖し、症状を引き起こす。この場合でも、引き起こされる症状は腹部膨満感や消化器障害(最も多いのは便秘)であって特異的なものではないため、よくある良性疾患に起因する症状と考えられやすい。欧州および英国では、卵巣がんと診断された患者のうち、診断から5年後に生存しているのは3分の1超にすぎない。 卵巣がんの通常の治療には、手術と化学療法の2つを用いる。手術の目的は病期を決定し(がんがどこまで拡がっているか評価する)、肉眼的な(目に見える)がんをできる限り減らすことである(腫瘍縮小手術または減量手術として知られる)。腹腔内に肉眼的な腫瘍が残らないようにするのが望ましい。しかし、大半の患者では、がんが拡がっているために手術だけでがんを治...
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3 hours 21 minutes ago
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