2 years 8 months ago
医療機関に通院中のHIV持続感染者の高ウイルス量を検出するベッドサイドの迅速検査 高HIVウイルス量を検出する診断技術を改善することがなぜ重要なのか? それは、抗レトロウイルス療法(ART)を受けているHIV持続感染者(PLHIV)のHIVウイルス量を監視するのに役立つ。高ウイルス量は薬でウイルスを抑えることができていないことを示し、ART治療無効状態である。この状態では重症化や死亡の危険性がある。患者を診察するベッドサイド(point-of care)で素早くHIVウイルス量を検査できるベッドサイドの迅速診断検査は、必要時にARTの早期変更を可能にする。 レビューの目的 医療機関に通院するPLHIVにおいて、高HIVウイルス量診断のためのベッドサイドの迅速検査(POC)の精度を明らかにする。 検討した内容 ウイルス量を検出するための迅速検査の測定結果と中央検査室における検体検査(基準となる検査)の測定結果を比較した。検査を実施した医療機関にかかわらず、ウイルス量を測定するすべての種類のベッドサイドの迅速検査を対象とした。 主な結果 8,659人の参加者を含む20の比較評価を完遂した14件の研究においては、臨床的に推奨する閾値、1000コピー/mL以上で高ウイルス量陽性と診断する分子学的現場検査を比較していた。 レビューの強みと限界 このレビューには、HIV/AIDSケアセンター...
2 years 8 months ago
吸入コルチコステロイドは、軽度のCOVID-19の人に有効な治療法なのか? 要点 経口の吸入経路で投与される吸入コルチコステロイド(抗炎症薬)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として評価されている。 軽症者を対象に実施して、発表された3件の研究を特定した。吸入コルチコステロイドは、おそらく、病院に行く、または死亡(入院や入院前の死亡)に対するリスクを減少させる。吸入コルチコステロイドは、軽度のCOVID-19の症状がある日数を減らす可能性があり、おそらく14日目のCOVID-19の症状を消失させる。あらゆる原因による死亡にはわずかから全く差がない可能性があり、重大な害を引き起こすかどうかを知るには十分なエビデンスがない。 症状のない(無症状)COVID-19患者、中等症から重症のCOVID-19患者のデータは存在しない。 10件の進行中の研究と4件の終了した未発表の研究が特定された。その結果が発表され次第、本レビューを更新する予定である。 吸入コルチコステロイドとは何か? 吸入コルチコステロイドは、吸入器を使って下気道に吸入することで、肺の炎症を抑える薬である。この薬は、喘息や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器系疾患の治療に通常は使用される。長期間の使用や誤った吸入方法によって、鵞口瘡と呼ばれる口の感染症、声の変化、肺炎のリスク増加などの副作用が発生することがある。...
2 years 8 months ago
高齢者の生活の質を向上させるための住宅介護における物理的環境デザイン このレビューの目的は何か 世界的に高齢者の人口が増加し、認知症の患者が増加している。生活空間のデザインを改善することで、高齢者のQOL(生活の質)、気分、日常生活動作の能力が向上する可能性が示唆されている。このレビューは、住宅介護におけるさまざまな物理的環境デザインの変更が、入居者の生活の質(QOL)に及ぼす影響を検討した。この疑問に関連するすべての研究を収集し、分析した結果、20件の研究を特定した。 要点 住宅介護における設計変更による入居者のQOL向上の効果については、より質の高い研究が必要な状況であり、確信が持てない。 レビューでは何が検討されたか? このレビューでは、QOL(生活の質)向上を目的とした住宅介護における物理的な環境デザインの変更について検討した。それは、大規模な変更である場合もあれば、小規模な変更の場合もある。大規模な変更としては、現在使われている居住区間設計から、少人数で共同生活する家庭的な設計に変更するなどの変更が考えられる。小規模な変更としては、生活空間の改装や、照明など生活空間の一部分を変更することがある。我々は、住宅介護における異なる大規模または小規模の設計変更を比較、あるいは設計変更を現在使われている居住区間設計と比較し、設計変更が入居者のQOL(生活の質)、行動、日常生活動作...
2 years 8 months ago
分娩時の定期的な内診 レビューの論点 このコクラン・レビューの目的は、分娩進行を評価するための定期的な内診が有効で、女性に受け入れられるものなのかを調べることと、これらをその他の分娩進行の評価法と比較することである。 重要性 分娩は通常、予想通りに進行しているか、母体や赤ちゃんに害となるような異常な進行の兆候がないかを確認するために監視される。最も一般的な方法は定期的な(一定の間隔ごとに行う)内診であり、母体の子宮頸管の開き具合や赤ちゃんの位置についての情報が得られる。非常にゆっくりとした進行の分娩は、出産を早めるための介入(分娩促進)が必要であることを示す兆候である可能性がある。しかしながら、ゆっくりな分娩進行が正常な進行のバリエーションである可能性もあり、近年のエビデンスからは母体と赤ちゃんが元気であれば、分娩の所要時間や子宮頸管の開き具合だけで分娩の進行が正常かどうかを決めるべきでないことが示唆されている。 その他の分娩進行の評価法として、超音波の使用、母体の様子、外診による兆候(母体のおしりの間にできてくる紫色の線など)がある。しかしながらこれらの方法は標準的ではない。分娩進行の評価法として最も有効な方法は確立されていない。 内診は不快感や痛み、苦痛を伴うことがある。ゆっくりでも正常な分娩を異常であると誤診した場合、分娩促進や帝王切開といった不必要な介入につながる可能性が...
2 years 8 months ago
高ビリルビン血症の満期および早産新生児における光線療法中の周期的な体位変換(一定時間ごとに体の向きを変えること) レビューの論点 黄疸のある満期産新生児および未熟児において、体位を変えた方が光線療法の結果を改善するか? 要点 この系統的レビューでは、黄疸に対して光線療法を受けている満期産児と未熟児において、計画的な体位変換とそうでない体位変換を比較した研究を評価した。計画的な体位変換の有無では、光治療の持続時間やビリルビン値の低下率にほとんど差が生じなかった。ビリルビンは、皮膚や白目が黄色くなる黄疸の原因となる物質である。 レビューに含まれるどの研究も、新生児の体位変換が乳幼児突然死症候群などの好ましくない事象に及ぼす影響を報告していない。 今後の研究では、超未熟児やあらゆるタイプの黄疸の新生児を含め、光線療法中の新生児の計画的な体位変換を調査する必要がある。 黄疸とは何か? 黄疸(高ビリルビン血症ともいう)は、新生児によく見られる症状で、血液中のビリルビンが増えすぎて、皮膚や白目が黄色くなるものである。ビリルビンは、赤血球が壊れる時にできる黄色い物質である。新生児の肝臓は血液中のビリルビンを効率よく除去できないため、血中ビリルビン濃度が高くなる。場合によっては、新生児の血液中のビリルビン濃度が非常に高くなり、脳障害を引き起こすこともある。生後2週間くらいになると、肝臓がビリルビ...
2 years 8 months ago
心的外傷後ストレス障害に対する薬物療法 このレビューの重要性 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、重大なトラウマにさらされた後に発症し、個人的にも社会的にも多大な犠牲を生じることになる。従来は心理療法で治療されてきたが、PTSDの治療には薬物療法が有効であることが証明されている。 このレビューに関心をもつ人は誰か? - PTSDの人。 - PTSDに悩む人の家族、友人。 - 開業医、精神科医、心理士、薬剤師。 このレビューでわかることは何か? - 成人のPTSDの症状軽減に薬物療法は有効か? どのような研究がレビューに含まれたか? 成人のPTSDの治療において、薬物療法とプラセボまたは対照薬、あるいはプラセボと対照薬の両方を比較した研究を対象とした。 66件の試験がレビューに含まれ、合計7,442人が参加した。 レビューの結果、どのようなことがわかったのか? 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がプラセボと比較してPTSD症状を改善するという有益な効果が、中等度の確実性のエビデンスに基づいて確認された。また、ノルアドレナリン・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)ミルタザピンと三環系抗うつ薬(TCA)アミトリプチリンは、確実性の低いエビデンスに基づき、PTSD症状の改善において有益であることが示された。また、抗精神病薬投与後にプラセボと比較して改善した参加者の数に...
2 years 8 months ago
シンバイオティクスは超早産児や超低出生体重児の壊死性腸炎を予防するか? 背景 超早産児(予定日より8週以上早く生まれた児)や極低出生体重児(1,500g未満で生まれた児)は、腸の一部が炎症を起こして感染し、死に至る重度の腸疾患(壊死性腸炎:NECと呼ばれる)を発症するリスクがある。壊死性腸炎には、死亡、重篤な感染症、長期的な障害や発達障害を伴う。 何を知りたかったのか? 壊死性腸炎を予防する一つの方法として、シンバイオティクス(プロバイオティクス細菌または酵母と、プロバイオティクスの増殖とコロニー形成をサポートする難消化性糖類の組み合わせ)をミルク(母乳も人工乳も含まれる)に添加することが考えられる。そのためシンバイオティクスが超早産児や超低出生体重児に有効かどうかを調べようと思った。関心のあるアウトカムとして壊死性腸炎、あらゆる原因による死亡、重篤な感染症、出生後の入院期間、神経発達の評価項目などが対象となった。 本レビューで実施したこと コクランレビューでは、いくつかの重要なデータベースを検索し、超早産児および超低出生体重児における壊死性腸炎の予防にシンバイオティクスを使用することを検討したランダム化比較試験を特定した。標準的なコクラン方法論に基づきレビューと分析を行った。GRADEアプローチを用いてエビデンスの確実性を評価した。 レビューの結果 対象者計925人を含む6件の...
2 years 8 months ago
心血管疾患の一次予防のためのグルテン低減食またはグルテンフリー食の効果 背景 循環器疾患は、心臓や血管の障害で、急性冠症候群や脳血管障害(心筋梗塞や脳卒中など)を含む。心血管疾患に起因する障害の約50%は、最適でない食事と関連している。特に、食事性グルテン(特定の穀物に含まれるタンパク質)は、さまざまな健康被害と関連があるとされている。例えば、グルテン関連疾患に罹患した人々には、異なる胃腸症状(吸収不良や下痢など)がしばしば見られ、これらの人々に対する唯一の有効な治療法は、生涯にわたってグルテンを減らした食事やグルテンフリーの食事療法を行うことである。また、グルテンを減らした食事やグルテンフリーの食事は、一般集団においても大人気を得ている。しかし、一般集団におけるグルテン低減食やグルテンフリー食の利益と有害性に関するエビデンスは、矛盾している。グルテンの回避は病気の予防につながる可能性はあるが、グルテンフリーやグルテン制限の食事は(食事の主要成分である全粒粉の摂取量が減るため)最適でない可能性があることも懸念されている。 レビューの論点 一般集団における心血管疾患の一次予防のためのグルテン低減食またはグルテンフリー食の効果(すなわち健康関連の利益とリスク)を明らかにするために、利用可能な研究を検討した。 研究の特徴 エビデンスは2021年6月までのものである。1件のランダム化比較...
2 years 8 months ago
病院からの退院計画 このレビューの目的は何か 個人に応じた退院計画が、退院の時期が遅れることの減少、再入院の減少、患者の健康状態の改善によって、提供されるヘルスケアの質を向上させるかどうかを検証した。また、介入にどれくらいの費用がかかるのかも検証した。これらを検証するために、関連する全ての研究を集めて解析した。本レビューは、初回から5回目の更新である。 要点 個人に応じたの退院計画を立てて退院する場合、入院期間はおそらく少し短縮され、退院後に入院する可能性も少し低くなる可能性がある。患者の健康状態や、受けたケアに対する患者の満足度に与える影響については、ほとんどエビデンスがない。退院計画にかかる費用は不明である。 レビューで検討された内容 退院計画とは、退院前に患者の健康と社会的ケアのニーズを評価し、病院から自宅あるいは他の場所へ適切な時期に移れるように支援し、退院後のサービス体制を改善するための個別計画をたてることである。 レビューの主な結果は何か 個人に応じた退院計画と標準的な退院ケアを比較した33件の試験が特定された。個人に合わせた退院計画は、おそらく入院期間をわずかに短縮し、病状が悪化して入院する再入院率をおそらくわずかに下げ、患者の満足度を高める可能性があることが示された。健康状態や、医療サービスにおける退院計画にかかる費用については、ほとんどエビデンスがない。 このレ...
2 years 8 months ago
成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)のためのメチルフェニデート徐放製剤 レビューの論点 このレビューは、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された成人を対象に、メチルフェニデートのプラスとマイナスの効果を調べ、プラセボまたは他の薬剤と比較したものである。特に、欠勤日数などの生活機能への影響、患者さん自身や医師・研究者が評価するADHDの症状や生活の質(QOL)への影響に注目した。 背景 ADHDは、集中力の欠如、多動性、衝動的な行動を特徴とする精神医学的診断で、社会生活、仕事での能力、人間関係の維持などに影響を及ぼすことが多い。ADHDと診断され、薬物治療を受ける成人が増えている。ADHDの治療は、心理療法、社会的介入、他の種類の非内科的治療、薬物療法など、さまざまな異なるアプローチで構成される必要がある。メチルフェニデートとアンフェタミンは、ADHDの第一選択薬として推奨されている。メチルフェニデートは、中枢神経系(CNS)の活動を活発にする薬物である。このレビューでは、1日に1~2回だけ飲む錠剤として与えられるメチルフェニデート、いわゆる「徐放性製剤」に焦点を当てている。メチルフェニデートは、成人のADHD患者を対象とした多くの臨床試験が行われているが、これらの試験がどのように計画され、どのように結果が報告されたかが懸念されるため、全体的なプラスとマイナスの効果は不確かである...
2 years 8 months ago
赤ちゃんの速い呼吸(新生児一過性多呼吸)に対処するための治療法 レビューの論点 呼吸が異常に速い赤ちゃん(新生児一過性多呼吸と呼ばれる)に対する薬物やその他の治療は、肺機能を改善し、呼吸補助(つまり人工呼吸)の必要性や症状の持続時間を減らすことができるか? 背景 新生児の一過性多呼吸(異常に速い呼吸)(TTN)は、呼吸数の増加(1分間に60回以上)と呼吸が苦しそうに見える(呼吸困難)の兆候が特徴である。たいていは、妊娠34週目以降に生まれた赤ちゃんの生後2時間以内に現れる。新生児の一過性多呼吸は、通常、治療をしなくても改善するが、小児期後半になると肺の喘鳴を伴うことがある。このコクランオーバービューレビュー(系統的レビューを対象としたレビュー)は、新生児の一過性多呼吸の管理に対するさまざまな治療の有益性と有害性に関する利用可能なエビデンスを報告し、批判的に分析したものである。 研究の特徴 6 件のコクランレビューを対象とした。そのうち4件は薬物(サルブタモール、エピネフリン、副腎皮質ステロイド(薬)(以下,ステロイド)、利尿剤)とプラセボを比較し、残りの2件は肺に管を挿入せずに少ない量の輸液と呼吸(呼吸器)サポートを与えることの効果を評価したものである。サルブタモール、エピネフリン、ステロイドは肺の余分な水分を取り除き、利尿剤は肺の水分を尿に排出するのを促進する薬である。 エビデ...
2 years 9 months ago
卵巣がんの初回治療でのパクリタキセル投与を週1回にすると、3週に1回よりも生存期間が改善するか 背景 卵巣がんは世界で6番目に多いがんである。治療は外科手術と化学療法(パクリタキセルとカルボプラチンがもっとも一般的)が併用される。併用の目的はがんの再発の確率を減少または再発を遅延させること(無増悪生存期間(PFS)の延長)と、延命(全生存期間(OS)の延長)である。パクリタキセルの投与スケジュール(頻度)が治療効果に与える影響を検討した臨床試験が複数あるが、報告されている結果は相反するものである。 本レビューの目的 卵巣がんの新規診断患者に対するパクリタキセルの投与頻度の差が生存期間に与える影響について、エビデンスのレビューを行った。 研究の特性 エビデンスは2021年11月15日現在のものである。計3,699人が参加した4件の研究をレビュー対象とした。いずれの研究も18歳以上の卵巣がんの新規診断患者を対象としたランダム化比較試験(患者が2群以上の治療群のいずれかにランダムに割り付けられる試験)である。各試験は、カルボプラチンと併用するパクリタキセルについて週1回投与と3週に1回投与を比較している。 主な結果 カルボプラチンと併用するパクリタキセルを3週に1回投与した場合に比べ、週に1回投与した場合、全生存期間にはほとんど差がないものの、無増悪生存期間がわずかに延長する可能性が高...
2 years 9 months ago
体圧分散型椅子は褥瘡予防に有効か? 要点 包括的な検索を実施したが、体圧分散型椅子が褥瘡の予防や管理に役立つかどうかを調べた研究は見つからなかった。これは重要なテーマであり、このような椅子が褥瘡を発症するリスクのある人々に有益かどうかを判断するために、質の高い研究が必要である。 褥瘡とは何か? 褥瘡は、長時間の圧迫により皮膚やその下の組織に生じる傷である。座ることは回復の過程で重要な役割を果たすが、長時間座ることは褥瘡の発生リスクを高める。 褥瘡はどのように管理されているのか? 長時間座っているときにかかる皮膚への圧力を分散させることを目的としたクッションや表面素材が使用される。車いすに体圧分散クッションを使用した場合の効果については、一般的な椅子よりも研究が多く存在する。 現在、体圧分散型椅子が標準的な椅子と比較して、リスクのある人々の褥瘡を予防または管理するためにどの程度効果的であるかは分かっていない。 体圧分散型椅子には、クッションや手動または機械で動かす機能がない一般的な病院用椅子や住宅用椅子から、体圧分散をする素材を使用し、人が座るとリクライニング、起き上がり、チルトの機能があるものまで、さまざまなものがある。これらは、標準的なデザインで製作するか、または、その人のニーズに合わせたオーダーメイドのデザインも可能である。 何を知りたかったのか? 医療、リハビリテーション、...
2 years 9 months ago
PARP阻害薬は卵巣がん患者の生存率を改善するか、またその副作用は何か 要点 化学療法終了後の治療(維持療法)として毎日服用する錠剤のPARP(ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ)阻害薬については、有効成分を含まない「ダミー」の薬(プラセボ)と比較すると、次のことが言える。 - 進行上皮性卵巣がん患者の全生存期間を延長する効果はほとんどないと思われる(ただし、この結果はさらに多くのデータが出てくれば変わる可能性がある) - 新たに上皮性卵巣がんと診断された患者では、病勢進行を遅らせる可能性が高い - プラチナ製剤感受性の上皮性卵巣がんの再発患者では、病勢進行を遅らせる可能性が高い - 重度の副作用のリスクを増加させる可能性が高い 病勢進行を遅らせることでQOLに有益な影響を及ぼすかどうかは、報告されたデータに矛盾がみられるため非常に不確かである。しかし少量のデータから、PARP阻害薬が病勢進行を遅らせることにより病気の症状を改善する可能性があることが示唆される。 上皮性卵巣がんとは何か 上皮性卵巣がんは、卵巣、卵管、腹腔(腹膜)の内膜(上皮)から発生するがんである。がん細胞が腹腔内に入りやすいため、多くの場合、上皮性卵巣がんは進行期で発見される。初期治療は手術(理想的には目に見える病変をすべて切除する)と化学療法の組み合わせである。しかし、ほとんどの患者は再発するため、さらに治療...
2 years 9 months ago
成人の人工股関節置換術 このレビューでは、成人の大腿骨近位部骨折の治療に用いられる様々なタイプの人工股関節置換術の有益性と有害性に関して、ランダム化比較試験(RCT)および準RCTにおけるエビデンスを評価した。 背景 大腿骨近位部骨折は、足の骨の付け根が折れることである。このような骨折は、骨粗鬆症という状態で骨がもろくなっている高齢者によく見られる。治療法のひとつに、折れた股関節を人工股関節に置き換えるという方法がある。これは、股関節の一部(関節のボール部分)を置き換える半関節形成術(HA)で実施することができる。これらの人工関節には、ユニポーラ(単一の人工関節)とバイポーラ(追加の関節を持つもの)がある。また、手術によって股関節全体(股関節の球が収まる受け皿の部分も含む)を置き換えることもある。これが全人工股関節置換術(THA)である。これらの人工関節は、いずれも骨セメントを使用して固定することも、使用せずに固定することも可能である。 検索日 2020年7月6日までのRCT(治療群に無作為に割り付ける臨床研究)、および準RCT(生年月日や病院の記録番号など無作為化されていない方法で群に入れる)を検索した。 研究の特徴 10,654人の成人、10,662の大腿骨近位部骨折を対象とした58件の研究を対象とした。研究参加者の年齢は63歳から87歳で、71%が女性であったが、これは、こ...
2 years 9 months ago
乳歯の齲蝕予防を目的とするシーラント レビューの論点 乳臼歯の噛み合わせ面にシーラントを塗ると、そこに虫歯ができるのを防げるか? 背景 虫歯は、小児の健康全般に影響を及ぼす小児期の代表的な病気の一つである。最もよく影響を受けるのは奥歯で、噛む面が平らでなく、溝(ピット(小孔)やフィッシャー(亀裂))があるため、食べ物のカスや細菌を留めてしまい、虫歯(齲蝕)の形成につながる。また、これらの溝の開口部は非常に小さく、歯ブラシの毛が完全に入らないため、清掃が困難である。溝を塞ぐことは、奥歯の虫歯を防ぐ方法の一つである。シーラントは、食べ物や細菌に対する防護壁の役割を果たし、歯の表面に有害な作用が及ぶのを防ぐ。 研究の特徴 1,120人の小児(18か月から8歳まで)が参加した9件の研究を対象とした。乳歯の虫歯予防のために、さまざまなシーラントを使った研究が行われている。結果(評価項目)を測定している歯科専門家は、シーラントが適用されているかどうかを見ることができ、また、シーラントの材料を識別できたため、ほとんどの研究は、全体的にバイアスのリスクが高いと評価した。 主な結果 3件の研究ではシーラントとシーラントなしを比較し、6件の研究では歯の表面をシールする異なる材料やプロセスを比較した。シーラントの種類、試験開始時の子どもの年齢、追跡期間の長さなど、研究デザインに重要な差があったため、デ...
2 years 9 months ago
高齢者の大腿骨近位部(股関節)外側骨折の治療には、どのようなものがあるのか? 要点 - このタイプの股関節の骨折には、「最善な治療法」はない。 - コンジロセファリックネイル(condylocephalic nails:膝から股関節に向かって上向きに釘を刺す方法)や静的固定アングルプレート(ピンやネジで骨折した骨にプレートを取り付ける方法)による治療後に、骨折した股関節の再手術が必要になった人が多かった。 - ショートセファロメデュラリーネイル(short cephalomedullary nail:股関節から膝に向かって下向きに釘を刺す方法)と動的固定アングルプレート(骨折した骨にプレートを取り付けるピンやネジがスリーブの中でスライドできる方法)に違いがない可能性がある。 - しかし、どの治療法も術後のQOL(生活の質)を向上させるのに優れているかどうかを知るには、研究数が少なすぎた。 高齢者における大腿骨近位部(股関節)の骨折 大腿骨近位部骨折は、足の骨の付け根が折れることである。大腿骨近位部骨折には2つのタイプがあり、今回のレビューでは、股関節のすぐ外側で骨折(大腿骨転子部骨折)した人を対象とした。大腿骨近位部骨折のもう一つのタイプは、骨頭(ボール)と骨盤の窪み(ソケット)の関節のすぐ下の骨折(大腿骨頚部骨折)である。この骨折については、別のレビューで紹介した。どちらの骨折...
2 years 9 months ago
心的外傷後ストレス障害(PTSD)を予防するための薬 このレビューの重要性 心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic stress disorder: PTSD)は、心的外傷(トラウマ)となるような出来事を経験した人が発症する可能性のある、重度で障害のある状態である。このような出来事は、それを経験した人だけでなく、彼らの大切な人の人生にも長期にわたって悪影響を及ぼす。 研究の結果、PTSDの人の脳の働きには変化があることがわかっている。そのため、心的外傷となる出来事の直後に、この脳の変化を標的とした薬を使うことで、PTSDの発症を予防することを提案する研究者もいる。しかし、心的外傷となるような出来事を経験しても、大多数の人はPTSDを発症しない。したがって、心的外傷となるような出来事のすぐ後に投与できる薬は、副作用のリスクとPTSD発症のリスクのバランスを含めて、その有効性を慎重に評価する必要がある。 誰が利益を得るか? - 心的外傷になるような出来事にさらされた人とその家族、友人、恋人。 -精神保健サービスに携わる専門家。 - 外傷・救急医療に携わる専門家。 - 心的外傷の被害者や軍隊の退役軍人をケアする人々。 このレビューで明らかにしたいことは? 心的外傷(トラウマ)をもたらすような出来事にさらされた人にとって、心理的な症状の有無にかかわらず、ある薬は他の薬やプラ...
2 years 9 months ago
脳卒中後のてんかん発作を予防するための抗てんかん薬の効果 レビューの論点 脳卒中後のてんかん発作を一次的あるいは二次的に予防するために抗てんかん薬(AEDs:antiepileptic drugs)の日常的な投与を支持するエビデンス(科学的根拠)はあるのだろうか?(一次予防:一度も発作のない状況での予防的な投薬、二次予防:一度発作があり、それ以降の再発作を予防するための投薬) 背景 脳卒中後のてんかん発作は臨床上重要である。成人脳卒中患者のてんかん発作予防に抗てんかん薬が有効かどうかは明らかではない。 結果 脳卒中後のてんかん発作の一次予防に関する抗てんかん薬を評価した、2件の前向きランダム化二重盲検プラセボ(偽薬)対照試験を見つけた。一件目は72人の成人を対象にバルプロ酸とプラセボとを比べた研究で、バルプロ酸のグループとプラセボのグループの間に脳卒中後のてんかん発作に差は見られなかった。二件目の研究は784人の成人を対象にジアゼパムとプラセボとを比べており、ジアゼパムのグループとプラセボのグループとの間に脳卒中後のてんかん発作に差は見られなかった。一方で、前方循環系(前大脳動脈や中大脳動脈など)の皮質性梗塞に限定したサブグループ解析では、脳卒中発症から3か月間は予防的なジアゼパムが有効である可能性を認めた。全体的にみると、脳卒中後のてんかん発作の予防を目的として抗てんかん薬を日...
2 years 9 months ago
手術後の深部静脈血栓症や肺塞栓症の予防に膨張式スリーブや薬は有効か? 要点 - 足に装着する膨張式スリーブ(間欠的空気圧迫法)と薬剤の併用により、膨張式スリーブのみの場合と比較して、肺や脚に血栓が新たに発生する割合が減少する可能性がある。 - 膨張式スリーブと投薬を併用することで、投薬のみの場合と比較して、脚の血栓の新規発生率が減少し、肺塞栓の新規発生も減少する可能性がある。 - 膨張式スリーブに薬剤を追加すると、膨張式スリーブのみの場合に比べて出血のリスクが高まる可能性がある。 なぜこの疑問が重要なのか? 深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症は、総称して静脈血栓塞栓症と呼ばれ、脚の静脈内で発生した血栓が肺に移動することで発症する。手術や外傷後の入院中、あるいはその他のリスク要因によって起こりうる合併症である。これらの合併症は入院期間を延長し、長期的な障害や死亡につながる。股関節や膝関節の全置換術(整形外科の手術)や大腸がんの手術を受ける患者さんは、静脈血栓塞栓症のリスクが高いと言われている。血流が悪くなったり、血が固まりやすくなったり、血管壁が傷ついたりすると、血栓ができやすくなる。これらの要因のうち2つ以上を治療することで、予防効果が高まる可能性がある。機械的な間欠的空気圧迫法では、膨張式スリーブで足を包んだり、フットポンプを使用する。脚とその静脈に優しく圧をかけることで血液の...
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