コロナウイルス (COVID-19) : 感染管理と予防方法
この特別コレクションは、COVID-19に関する2つのコレクションのうちの1つで、感染対策と予防対策に焦点を当てています。別の特集号のCOVID-19:重症管理に役立つエビデンスも見てください。
2019年の新型コロナウイルス感染症のアウトブレイク(COVID -19)は、2020年1月30日に世界保健機関(WHO)によって世界的な公衆衛生の緊急事態として宣言されました。関連すると考えられるコクランレビューへの迅速なアクセスを確保するために、このコクランライブラリー特別号は、感染予防に最も直接的に関連すると特定したコクランレビューを集めました。これには、2019年のコロナウイルスのアウトブレイクに対するWHOの中間指針(2020年1月28日)で参照された介入の効果を評価するレビューのほか、Cochrane Public Health and Health Systems; Cochrane Musculoskeletal, Oral, Skin and Sensory; and Cochrane Acute and Emergency Care.の3つのコクランネットワークから関連する可能性のある他のレビューが含まれます。この特別号に含まれる多くのレビューに関連する Cochrane Clinical Answers (CCAs)のリンクも掲載しています。
病原体の性質や伝播様式がCOVID-19について現在知られているものと異なることから、これらのレビューで要約されているエビデンスの適用は限られている可能性があります。この特集号に含まれているレビューはエビデンスを要約しており、レビューの対象となった介入が有効な予防方法であることが示されていることを意味するものではない点に注意してください。
コクランジャパンでは今回の特集号 Coronavirus (COVID-19): infection control and prevention measures の翻訳を行いました。現場でご対応いただいている医療スタッフの皆様に敬意を込めて。
呼吸器系ウイルスの拡散を阻止または減少させるための物理的介入
10.1002/14651858.CD006207.pub4
インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)のような急性呼吸器感染症の原因となるウイルスの流行やパンデミックは世界的な脅威となっている。抗ウイルス薬やワクチン接種では、感染の拡大を防ぐには不十分である。本レビューでは、呼吸器系ウイルスの拡散を阻止または低減するための物理的介入の有効性を評価する。Associated CCA: Can physical interventions help reduce the spread of respiratory viruses?
患者ケアにおける手指衛生の遵守を改善するための介入
10.1002/14651858.CD005186.pub4
医療関連感染は罹患率と死亡率の主な原因である。手指衛生は有効な予防手段と見なされている。このレビューは手指衛生の勧告への遵守を改善するための短期的及び長期的な戦略の成功を評価し、手指衛生遵守の増加が医療関連感染の割合を減らすことができるかどうかを決定する。Associated CCAs: What are the effects of multimodal campaigns to improve hand hygiene of healthcare workers? and What are the effects of performance feedback, education, and olfactory/visual cues on hand hygiene of healthcare workers?
医療関連感染の感染制御のための標準予防策のアドヒアランスの改善
10.1002/14651858.CD010768.pub2
「標準予防策」 とは、医療従事者が病院や老人ホームなどの医療施設で細菌の拡散を減らすために行う、個人用保護具の使用や針の安全な取り扱いの遵守などの行動の指針である。本レビューは、患者ケアにおける標準予防策のアドヒアランスを改善するために医療従事者を対象とした介入の有効性を評価する。
医療スタッフにおける病原微生物に汚染された体液へ曝露による感染力の高い感染症を予防するための個人用保護具
10.1002/14651858.CD011621.pub3
エボラウイルス疾患や重症急性呼吸器症候群(SARS)のような感染性の高い感染症の流行において、医療従事者は、患者の病原微生物に汚染された体液と接触するため、一般集団よりも高い感染のリスクにさらされている。個人用保護具(PPE)による接触予防策は感染リスクを低減できる。このレビューでは、どのタイプの全身PPEが、また、どのPPE着脱方法が医療従事者の自己汚染または感染の最小のリスクとなるか、およびプロトコルを遵守したPPEの着脱方法を行う医療従事者を増やすための訓練方法を評価する。Associated CCA: Does use of personal protective equipment (PPE), or interventions to increase PPE use by healthcare workers, reduce the spread of highly infectious diseases?
病院でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の伝播を減少させるための手袋、マスク、ガウン
10.1002/14651858.CD007087.pub2
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)は罹患率、死亡率及び医療費を増加させる一般的な院内感染の原因となる病原微生物である。その感染制御は世界中の多くの病院で未解決の問題であり続けている。このレビューでは、MRSAを保菌した、あるいはMRSAに感染した入院患者、あるいは患者周辺の環境に直接接触が予想される場合の手袋、ガウンまたはマスクの着用の効果を評価する。Associated CCA: Do gloves, gowns, and masks reduce transmission of MRSA in the hospital setting?
新生児の罹患と死亡を予防するための新生児室における付き添い者と訪問者のガウン着用
10.1002/14651858.CD003670
ガウンは新生児室および新生児集中治療室で広く使用されている。ガウンは院内感染の拡大を防ぎ、スタッフと訪問者に、乳児と接触する前に手を洗うことを思い出させるのに役立つと考えられる。このレビューでは、新生児室における乳児の感染と死亡の発生率に与える付き添い者と訪問者のガウンの着用の効果を評価する
労働者が呼吸保護具の使用を促進するための行動介入
10.1002/14651858.CD010157.pub2
呼吸器系への危険性は職場でよくみられる。危険性や曝露によるが、健康への影響は、感染性のあるものや、呼吸器への刺激症状から慢性肺状態までの急性の影響、化学物質または毒素の曝露に由来する癌でさえ含む軽度なものから生命を脅かす疾患まで様々あるだろう。呼吸用保護具(RPE)の使用は、多くの職場で重要な予防手段である。RPEは、適切に装着され、安全に取り外され、定期的に交換または保守される場合にのみ保護機能を果たす。労働者へのRPEの使用を促進するために、使用者や組織あるいは個々の労働者に向けられた行動介入の有効性は、依然として重要な未解決の問題である。このレビューでは、介入なし、または代替介入と比較した場合の、労働者における観察されたまたは自己報告されたRPE使用に与える、組織または個々の労働者のどちらかに対する行動介入の影響を評価した。
院内感染予防のための重症患者のクロルヘキシジン入浴
10.1002/14651858.CD012248.pub2
院内感染は、患者治療にいて頻繁生じる有害事象である。集中治療室での入院期間が長くなったり、合併症を併発したり、永久的な障害や死に至ることもある。感染症の有病率は集中治療室で特に高く、重症患者は免疫抑制が起こっており、侵襲的なモニタリングの対象となる。クロルヘキシジンは低価格の製品であり、殺菌剤および消毒剤として広く使用されており、細菌を殺し、院内感染の拡大を減らす目的で重症患者の入浴に使用される。本レビューでは、重症患者の院内感染数に対するクロルヘキシジン入浴の効果を評価する。Associated CCA: What are the effects of chlorhexidine bathing for preventing hospital‐acquired infection in people admitted to intensive care units (ICUs)?
老人ホームにおけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染予防のための感染制御の戦略
10.1002/14651858.CD006354.pub4
老人介護施設は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の獲得と拡散を促進する環境をもち、居住者はコロニー形成と感染のリスクが増加する。MRSA感染の予防と制御には、感染予防と感染制御の戦略が重要であることが認識されている。本レビューは、高齢者のための老人ホームにおけるMRSAの伝播を予防するための感染予防と感染制御の戦略の効果を明らかにすることを目的とする。
※ コクランレビューの版権に関しては、コクラン本部とWiley社の契約があり、その上でコクランジャパンが翻訳活動を行っています。
2020年3月7日
翻訳 増澤祐子(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野/東京医療保健大学)
監訳 井村春樹(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野/尼崎医療生協病院)
Acknowledgements
This Special Collection was developed by Lisa Bero (Senior Editor, Public Health and Health Systems), working with Toby Lasserson (Deputy Editor in Chief), Newton Opiyo (Associate Editor), Robin Featherstone (Information Specialist), and Monaz Mehta (Editor) in the Cochrane Editorial & Methods Department. Colleagues from the Public Health and Health Systems Network, Cochrane China Network, Cochrane Wounds, and Cochrane Acute Respiratory Infections Groups also provided input on the selection of reviews for this Special Collection.
Image credit
Mike Kemp/Getty Images
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Cochrane Editorial and Methods Department (emd@cochrane.org)