プレスリリース

若年男女に対する異なるHPVワクチンおよび接種スケジュールを評価した新たなコクランレビュー

コクラン・ライブラリーで本日発表されたエビデンスにより、若年男女に対する異なるヒトパピローマウイルスHPVワクチンおよび接種スケジュールに関する利益と害について、さらなる情報が明らかになった。  

HPV はもっとも一般的な生殖器官のウィルス感染で、世界中の男性、女性に見られるものである (WHO 2017)。性的接触を持つほとんどの人は、一生のどこかの時点でHVPに曝露する。大多数の人は自らの免疫系によってHPV感染を除去する。

免疫系がウィルスを排除できない場合、時にHPV 感染が持続することもある。いくつかの「高リスク」HPV型の感染が続くと、がんに進展する可能性もある。高リスクHPV型が、ほとんどすべての子宮頸がんと肛門がん、またいくつかの膣がん、外陰がん、肛門がん、陰茎がん、頭頚部がんの原因となる。他の「低リスク」HPV型は尖圭コンジローマの原因となるが、がんを生じさせることはない。HPVによるがんは、数年にわたり、上皮内腫瘍と呼ばれるいくつかの前がん段階を経て徐々に進行する。子宮頸部におけるこうした変化は、子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia CIN)と呼ばれる。高度のCINは、3件に1件の割合で子宮頸がんに進展する恐れがあるが、多くのCIN病変は消退してがんにならない。2012年において、HPV関連のがんは、推計で世界中のがんの4.5%を占めている(de Martel 2017)

ワクチンは、将来のHPV感染および高リスクHPV感染で生じるがんの予防を目的とする。もっとも多いHPV関連がんは子宮頸がんであるため、ワクチンは若年女性をターゲットにしている。子宮頸がん予防として世界保健機構では、9歳から14歳の女子に2回接種(06カ月)スケジュールで、HPVワクチン接種を行うことが最も効果的であると推奨している。15歳以上の女性、あるいはヒト免疫不全ウィルス(human immunodeficiency virus HIV)またはその他の免疫不全要因を持つ人には、3回接種が推奨されている(WHO 2017)

現在、3種類のHPVワクチンが使われている。もっとも一般的な2つの高リスクHPV型を標的とした2価ワクチン、4つのHPV型をターゲットとした4価ワクチン、9つのHPV型を標的とした9価ワクチンである。2価ワクチンと4価ワクチンは、女性がHPVに自然感染する前に接種すれば、ワクチンに含まれる型のHPV型で発生する子宮頚部の前がん病変を防ぐことが示されている(Arbyn 2018)

本コクランレビューでは、全大陸で31,940人が参加した20件のランダム化比較試験の結果を集約した。ほとんどの試験で、ワクチン被接種者の免疫系によるHPV抗体の産生が、転帰として報告された。HPV抗体反応により、ワクチンにより防ごうとするHPV関連のがんおよび疾病の予防を予測する。HPVワクチン臨床試験では、しばしば抗体反応を代理として使用する。これはHPV感染後に前がん病変が発生するのに何年もかかり、長期間にわたり試験参加者を追跡するのが困難なためである。さらに、試験参加者にはHPV感染検査と治療が提供されるため、HPV関連の前がん病変が発見され、たとえワクチン接種を受けなかったとしても、試験参加集団では前がん病変が子宮頸がんに進展する可能性は極めて低いという理由もある。

2,317人の若年女子における2回接種スケジュールと3回接種スケジュールを比較した試験が4件、また2,349人の若年男女を対象とする3回接種スケジュールにおいて、最初の2回の接種間隔が異なる場合を比較した試験が3件あった。女子に対する2回接種あるいは3回接種の後の抗体反応は同等だった。最初の2回のHPVワクチン接種の間隔が長い方が、接種を受けた男子、女子ともに抗体反応が強かった。

一つの試験で、16歳から26歳の男性における4HPVワクチン接種群は、非接種群と比較して外性器病変および尖圭コンジローマの発生が低減するというエビデンスが示された。

また16歳から26歳の女性で、9価および4価ワクチンを比較した試験では、子宮頚、膣、外陰における前がん病変の予防力はどちらも同等というエビデンスがあった。

HIV感染者に対するHPVワクチン接種に関する7つの試験から、エビデンスが示された。2価または4価ワクチン接種を受けた後のHIV感染のある子どものHPV抗体反応は、非HPVワクチンを接種した対照群と比べて高かった。これらのHPVに対する抗体反応は、最長で2年間維持できる可能性があった。HIV感染者におけるHPVワクチンの臨床転帰および害に関するエビデンスは非常に限られていた。

エビデンスは、HPVワクチン接種を受けた最大で90%の男女が、注射部位の赤み、腫れ、痛みなど、局部的な軽度の有害事象を経験していることを示唆した。4価ワクチンおよび9価ワクチン接種群で重篤な有害事象発生率が低いこと、複数の試験で広義による有害事象の定義が使われていることから、異なる接種スケジュールにおける相対的な安全性を見極めることはできない。

「接種間隔、接種スケジュール、HPV関連がんに対するワクチンの効果に関するデータを提供し、また、まれに生じる害についてより完全に理解するには、長期的な集団レベルの研究が必要となる。しかしながら、少ない接種回数で同等の抗体反応が得られること、また男子における研究でもより広範なエビデンスが示されていることで、今や政策立案者はそれぞれの地域でのワクチンプログラムを設定しやすい状況にあると言える。異なるワクチンおよび接種スケジュールが、ワクチン接種率にどのような影響を与えるかは興味深いところだが、本レビューおよびレビュー対象となった試験は、その問いに答えられる設計にはなっていない」と、本レビューのリード・エディターで、英国サマセットのMusgrove Park病院・婦人科腫瘍学のコンサルタントでもあるJo Morrison医師は述べた。

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Editor’s notes: 

Bergman H, Buckley BS, Villanueva G, Petkovic J, Garritty C, Lutje V, Riveros-Balta AX, Low N, Henschke N. Comparison of different human papillomavirus (HPV) vaccine types and dose schedules for prevention of HPV-related disease in females and males. 

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013479/full

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