プレスリリース:2020年4月8日

隔離は単独で、または他の公衆衛生対策と組み合わせて、コロナウイルス(COVID-19)を抑制するのにどのくらい効果的か?

2020年4月8日、コクランは、COVID-19パンデミック時の隔離の有効性を評価する新しい迅速レビューを発表しました。

このレビューでは、隔離が COVID-19 の拡大にどのように影響するかを示すモデリング研究から得られるエビデンスをまとめています。レビューに含まれる研究では、隔離がコロナウイルス SARS-CoV-2 の拡大を制御する役割を果たすことができると、一貫して結論づけています。隔離を早期に実施し、他の公衆衛生対策と組み合わせることで、効果をより確実としますが、これらの対策をどう採用するのが最善か、またいつ緩和できるかという、重要な不確実性が残っています。

現在、COVID-19の治療や予防に有効な医薬品やワクチンはありません。このため、ウイルスの感染を減らすために、多くの国で、感染者の隔離(isolation)、物理的な距離をとる、隔離(quarantine)などの限られた公衆衛生手段が用いられてきました。感染者の隔離(isolation)とは、症状のある人を他の人から隔離することであり、隔離(quarantine)とは、症状はないが感染が確認された人や疑われる人と接触したことのある人に対する制限です。隔離は任意で実施されることもあれば、当局によって法的に強制されることもあり、個人レベル、集団レベル、コミュニティレベルで適用されることもあります。この迅速レビューは、COVID-19の影響やインパクトに対抗するための意思決定を支援するため最新のエビデンスのまとめを必要とする人のために、コクランの組織的な取り組みの一環として、短期間で行われました。

コクランの研究者は、以下の疑問点をできるだけ早く解決するために、いくつかのステップを省略したシステマティックレビュー法を用いました。

- COVID-19の確定症例または疑い症例と接触した無症状者の隔離は、COVID-19のアウトブレイクを抑制するのに有効か?

- 異なる環境における隔離の有効性には違いがあるか?

- 隔離は、感染者の隔離、学校閉鎖、抗ウイルス薬などの他の介入と組み合わせた場合、感染、発生、死亡の減少にどの程度効果があか?

- COVID-19の発生が宣言されている国から来た個人の隔離は、COVID-19の発生を抑制する上で効果的か?

著者らは29件の関連研究を特定した。そのうち、COVID-19に焦点を当てた研究が10件、SARS(重症急性呼吸器症候群)に関連するエビデンスに焦点を当てた研究が15件、SARSと他のウイルスに焦点を当てた研究が2件、MERS(中東呼吸器症候群)に焦点を当てた研究が2件でしたCOVID-19に焦点を当てた10件の研究は、いずれも中国、英国、韓国での発生シナリオとクルーズ船での発生シナリオをシミュレートしたモデリング研究でした

レビューに含まれているCOVID-19のモデリング研究は、一貫して隔離対策の有益性を報告しており、SARSMERSに関する研究からも同様の知見が得られています

このコクランレビューの著者らは、次のように結論づけています

     - 感染が確定した者と接触した人の隔離は、何も対策を講じない場合と比較して、高い割合で感染と死亡を回避できる可能性がある。

     - 発生が宣言されている国からの旅行者の隔離による感染と死亡を回避する効果は小さかった。

     - 一般的に、学校閉鎖、渡航制限、物理的距離などの他の予防・管理措置と隔離を組み合わせることで、個別の措置と比較して、感染、入院を必要とする重症症例、死亡者数の減少に大きな効果があった

    - COVID-19の発生を抑制するためには、より包括的で厳格な予防・制御対策がより効果的である可能性がある。

研究者たちは、研究に使用されたモデルの開発方法を理由に、結果に対する確信性は低いか、非常に低いと評価しています。これらの研究は感染の真の有病率に基づいていて、COVID-19パンデミックの有病率についての詳しい情報が得られれば更新される可能性があります。

しかし、著者らはまた、隔離などの措置をどのように採用し、いつ解除できるかを決定する際に、地域の状況に関する情報を利用することの重要性を強調しています。主著者であるBarbara Nußbaumer-Streit氏は、「このコクラン・レビューでは、隔離はCOVID-19のアウトブレイクの封じ込めに役立つ可能性があるが、意思決定者は適切な対策の最善のバランスを維持するためにアウトブレイクの状況を現地で絶えず監視する必要があり、有益性と有害性の間には許容可能なトレードオフがあることを示している。」と述べています。

コクラン編集長のKarla Soares-Weiserは、「コロナウイルスの拡大は、世界中の政府にとって大きな課題となっています。コクランには、厳格さと迅速さのバランスをとりながら、政策決定を支える最善のエビデンスを提供する義務があります。このレビューは、私たちが特定した最も優先度の高い課題の1つに対応しているため、迅速に実施しました。このレビューは、隔離措置の実施に関する意思決定に役立つエビデンスを求める意思決定者にとって特に有用なものです。」と付け加えた。

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コクランのCOVID-19への対応についてはこちらをご覧ください: https://www.cochrane.org/coronavirus-covid-19-cochrane-resources-and-news

 

Cochrane Database of Systematic Reviews: https://doi.org/10.1002/14651858.CD013574 

The Effectiveness of Quarantine alone or in Combination with Other Public Health Measures to Control Coronavirus Disease 2019: A Rapid Review

 

このプレスリリースについてのインタビューや詳細についての連絡先:

Katie Abbotts

External Communications and Media Officer, Cochrane 

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