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未熟な状態で生まれた赤ちゃんの複数の感覚(聴覚、触覚、味覚、嗅覚など)を刺激すると、その成長や健全な発達を促したり、死亡するリスクを減らしたりできるのか?

1 day 11 hours ago
要点
  • 多感覚刺激(一度に複数の感覚を刺激すること)は、退院までの体重増加を促すことで、早産児の成長を助ける可能性がある。しかし、入手可能なエビデンスは限られており、不確実な点もあるため、多感覚刺激が長期的な発達を改善するのか、あるいは死亡するリスクを減らすのかはわからない。

  • 多感覚刺激が、単一感覚刺激(触覚のみを刺激する)と比べて、介入期間中の体重増加をより促せるかどうかは、はっきりしない。

多感覚刺激とは何か?また、どのように作用するのか?

多感覚刺激とは、未熟な状態で生まれた赤ちゃんの感覚を、2つ以上刺激することをさす。刺激する感覚やその刺激方法には次のようなものがある:

  • 聴覚 — 親の声、歌声、あるいは穏やかな音楽など;

  • 触覚 — マッサージや受動的な動き;

  • 嗅覚や味覚 — 母親の匂いや母乳;

  • 平衡感覚 — 優しく揺らしたり、体勢を変えたりすること;

  • 視覚 — 周期的に変化する柔らかい照明や、単純な形、色、あるいは動く模様。

新生児期には、脳が急速に成長する。この時期に有意義な感覚体験を与えることは、赤ちゃんの記憶の形成を助けたり、感情のコントロール能力を高めたり、早期の学習や発達を促したりするなど、さまざまな面で役立つ可能性がある。

知りたかったこと

多感覚刺激が、単一感覚刺激や標準的なケアと比べて、未熟な赤ちゃんの生存、成長、健康維持、および健全な発達に役立つかどうかを調べたかった。具体的には、多感覚刺激に以下の効果があるかどうかを明らかにしたかった:

  • 生後18~24カ月の時点で、脳性麻痺、発達の遅れ、知的能力の制限、視覚障害、聴覚障害などの重度の発達障害がある乳幼児の数を減らす;

  • 新生児期または退院前に死亡する乳児の数を減らす;

  • 退院までの期間の乳児の体重増加量を増やす。

また、赤ちゃんの健康状態に関するその他の重要な指標についても調査を行った。すなわち:

  • 病院や新生児集中治療室(NICU)にどのくらいの期間入院していたか;

  • 口だけで(母乳やミルクを)飲めるようになるまで、どれくらいの時間がかかったか;

  • 呼吸の補助が必要だった日数は何日だったか。

実施したこと

赤ちゃんが生まれてから退院までの間に多感覚刺激が始められ、かつ多感覚刺激を以下のいずれかと比べた研究を検索した:

  • 介入なし、または標準的なケア;

  • 単一感覚刺激。

研究の結果をまとめ、研究の規模(対象となった乳児の数)や用いられた方法などの要素に基づき、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

19件の研究(早産児1,544名)を対象とした。これらの研究のうち18件は、多感覚刺激と標準的なケアを比べていた。残る1件の研究は、多感覚刺激と単一感覚刺激(触覚のみ)を比べていた。

10件の研究では、多感覚刺激が赤ちゃんの脳の発達と行動の発達にどのような影響を与えるかを調べることが主な目的であった。

他の9件の研究では、介入期間中の体重増加、退院までの体重増加、NICUでの入院期間、全体の入院期間、口だけで飲めるようになるまでにかかった期間、赤ちゃんが呼吸の補助を必要とした日数、あるいはこれらの指標を組み合わせたものに焦点が当てられていた。

また、進行中の研究が13件、まだ完全に評価されていない研究が4件見つかった。今後、これらの研究がもっと有益な情報を提供してくれるかもしれない。

主な結果

多感覚刺激と無介入を比べた研究のうち、修正年齢18~24か月時点の重度の発達障害という重要な評価項目について報告したものはなかった。関連する評価項目である生後12ヶ月時点の脳性麻痺について評価した研究は1件のみであった。この研究は対象数が非常に少なかったため、多感覚刺激が脳性麻痺のリスクに影響を与えるかどうかについては、その根拠が非常に不確実である。

多感覚刺激をしても、退院前の死亡率にほとんど差が出ない可能性があるが、この結果を報告しているのは1件の大規模研究のみである。退院までの総体重増加量を増やす可能性があるが、実際の増加量は小さく、臨床的に意義があるかどうかははっきりしない。

単一感覚刺激(触覚のみ)と比べて、多感覚刺激が介入期間中に赤ちゃんのの体重増加に寄与したかどうかは判断できなかった。多感覚刺激と単一感覚刺激を比べている唯一の研究では、修正年齢18~24か月時点での重大な発達上の問題、初回入院中の死亡、退院までの総体重増加量といった重要な評価項目について報告されていなかった。

エビデンスの限界

得られた研究結果は、多くの研究が小規模であったり、研究デザインが不十分であったりするため、その信頼性は限定的である。いくつかの研究では、最も関心があった結果が報告されていなかったか、あるいは分析を行うのに十分なデータが提供されていなかった。こうした限界があるため、多感覚刺激の真の影響は、今回の調査結果とは異なる可能性がある。

本エビデンスの更新状況

エビデンスは、2025年11月28日時点のものである。

Wróblewska-Seniuk K, Lenells M, Prescott MG, Fiander M, Soll RF, Bruschettini M, supported by Cochrane Sweden and Cochrane Neonatal

脳卒中発症後の人に対するレジスタンストレーニング(筋肉に負荷をかけて行う筋力トレーニング)の運動プログラムの利益とリスクは何か?

1 day 11 hours ago
主要メッセージ
  • 脳卒中発症後の人でも、レジスタンストレーニングを取り入れた運動プログラムに安全に参加することができる。

  • レジスタンストレーニングを行うことで、脳卒中発症後の人は筋力を高め、バランス能力を向上させることができる。

脳卒中とは何か?

脳卒中は、脳の一部への血液供給が途絶えることで起こり、その結果、脳の特定の領域に損傷が生じる。脳卒中による影響は、脳卒中を経験した人の人生を大きく変える可能性があり、脳の損傷の程度やどの部位で起こったかによって異なる。脳卒中の影響は、身体的、心理的の両面にも見られ、運動機能だけでなく、思考、行動、感情にも影響を与える。こうした影響は、脳卒中後生涯にわたって続くことがある。脳卒中が身体に与える影響の一つに、身体機能や筋力の低下がある。その結果、身体を動かすことがより困難になり、有意義な日常生活への復帰が妨げられる可能性がある。

脳卒中後のリハビリテーションでは、どのようなことが行われるのか?

脳卒中を発症した後、多くの患者は、日常生活における身体的な困難を乗り越えられるよう、理学療法士や他の医療専門職によるリハビリテーションを受けることになる。リハビリテーションには、さまざまな種類の運動が取り入れられ、その中には筋力トレーニングが含まれる場合もある。筋力トレーニングは「レジスタンストレーニング」とも呼ばれ、ウェイト(ダンベルなどの重量物)を持ち上げたり、弾性器具(ゴムバンド)などを利用して負荷をかける運動が含まれる。レジスタンストレーニングは、物を持ち上げる、立ち上がる、歩くといった動作に重要な筋肉を強化することで、身体機能を向上させることができる。また、脳卒中後の人は、自宅でも運動するように指導される場合がある。したがって、脳卒中後の通常のリハビリテーション過程には、レジスタンストレーニングの要素が含まれることがある。

知りたかったこと

脳卒中発症後は、筋力が低下していることが多いため、レジスタンストレーニングを行うことで身体機能を向上させ、脳卒中後の筋力低下によって引き起こされる身体的な困難への影響を軽減することができる。

レジスタンストレーニングが、脳卒中後のどの時期(発症直後、入院中、あるいは退院後)においても有益であるかどうかを調べたかった。 具体的には、脳卒中後のレジスタンストレーニングが安全であるかどうか、筋力の向上や運動機能(歩行やバランス能力を含む)の改善につながるかどうか、脳卒中後の人の心理面(抑うつ、生活の質など)に影響を与えるかどうか、脳卒中の再発リスクを低減させるかどうかを明らかにしたかった。

実施したこと

脳卒中後の人を対象にレジスタンストレーニングの効果を評価した研究を検索した。本レビューでは、運動プログラムがレジスタンストレーニングのみに基づいていた研究を対象とした;有酸素運動(酸素を必要とする運動)など、他の種類の運動を含む研究は除外した。対象とした研究結果を比較および要約し、研究方法や参加者数などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

脳卒中発症後の1,004人を対象とした27件の研究を特定した。参加者の多くは自立歩行が可能であった。対象となった研究のほとんどにおいて、レジスタンストレーニングは、脳卒中発症から6ヶ月以上経過した後に開始され、その多くのトレーニング期間は短期間(12週間未満)であった。ほとんどの参加者がレジスタンストレーニングを無事に完了していた。レジスタンストレーニングの運動プログラムでは、トレーニングマシン、弾性ゴムバンド、あるいは単に自重(自分の体重)など、さまざまなトレーニング方法を利用して負荷をかけていた。

主な結果

参加者は、レジスタンストレーニングによる怪我(転倒)や健康(死亡)リスクを高めることなく、トレーニングに取り組むことができた。レジスタンストレーニングが、短期的または長期的に死亡リスクや脳卒中の再発リスクを低減させるかどうかは不明である。

レジスタンストレーニングは、脚や腕の筋力を明らかに向上させた。また、バランス能力を改善させる可能性がある。これは、脳卒中後の転倒リスクを低減させる可能性があるため重要なことかもしれない。レジスタンストレーニングは、通常の快適な歩行速度にはほとんど影響を与えなかった。これはおそらく、レジスタンストレーニングは脚の筋力を強化するかもしれないが、歩くという動作が含まれていないためと考えられる。レジスタンストレーニングが、全体的な障害指標(日常生活動作の遂行能力)に与える影響については、結論を出すことができなかった。

レジスタンストレーニングの心理的効果は、脳卒中発症後の人にとって重要であるにもかかわらず、その利益についてほとんど知られていない。しかし、対象とした研究結果によると、レジスタンストレーニングが抑うつ症状の軽減をもたらす可能性があることが示唆されている。

エビデンスの限界は何か?

対象となった研究の多くは、歩行可能な人を対象としていた。そのため、身体機能の能力がより制限されている脳卒中後の人についてあまり分かっていない。

研究のほとんどが、高所得国で実施されていた。そのため、その他の国における脳卒中後の人についてはあまり分かっていない。

レジスタンストレーニングの効果については、不確実な点が多く、十分なエビデンスが得られていない。

エビデンスの更新状況

本レビューは、以前のレビュー(3件の別々の運動プログラムの評価を統合したレビュー)から得られたエビデンスを更新するものである(以前のレビューを更新した3件のレビューのうちの1つである)。エビデンスは2024年1月現在のものである。

Saunders DH, Baker G, Cheyne JD, Cooper K, Fini NA, Kilgour AHM, Swinton PA, Williams G, Mead GE

脳卒中になった人に対する有酸素運動プログラムの利点とリスクは何か?

1 day 11 hours ago
主なメッセージ
  • 脳卒中になった人でも、有酸素運動を含む運動プログラムに安全に参加することができる。

  • 有酸素運動トレーニングは、プログラム終了時点で持久力の向上、能力低下の軽減、歩行速度の向上、バランス能力の改善につながるかもしれないが、これらが目に見えるほどの改善であるかどうかは不明である。

  • 有酸素運動トレーニングの効果については十分なエビデンスがなく、さらなる研究が必要である。

脳卒中とは?

脳卒中は、脳の一部への血液の供給が途絶えることで起こり、その結果、脳の特定の領域に損傷が生じる。脳卒中による影響は、人生を大きく変える可能性があり、損傷の程度や脳内のどの部位で起こったかによって異なる。脳卒中は、運動能力に影響を与えるだけでなく、思考、感情、行動にも影響を及ぼすことがある。こうした影響は、脳卒中後生涯にわたって続くことがある。脳卒中による身体的な影響の一つとして、持久力や筋力の低下が挙げられ、これにより身体活動や日常生活への復帰がより困難になる。持久力が低いことも、再び脳卒中を発症するリスク要因となり得る。

脳卒中後のリハビリテーションでは、どのようなことが行われるのか?

脳卒中を発症した後、多くの患者は、日常生活における困難を乗り越えられるよう、理学療法士やその他の医療専門職とともにリハビリテーションを行う。リハビリテーションには、さまざまな種類の運動が含まれることがよくある。その一つが有酸素運動(あるいは「心肺機能」)トレーニングである。これは心拍数を高める継続的な運動であり、歩行のような反復的な活動に必要な持久力を高める可能性がある。

知りたかったこと

脳卒中後のどの時期(入院中か退院後かを問わず)においても、有酸素運動トレーニングが有益かどうかを明らかにしたかった。特に、脳卒中後の有酸素運動トレーニングが以下の点にどのような影響を与えるのかを知りたかった。

  • 安全かどうか

  • 持久力や身体能力(歩行速度やバランスなど)が改善するか

  • 感情(うつ病や生活の質など)が変化するか

  • 脳卒中の再発リスクを低減するか

実施したこと

脳卒中になった人を対象とした有酸素運動プログラムを、通常のケア、プログラムなし、または運動以外のプログラムと比較した研究を検索した。本レビューでは、対象とした運動プログラムが有酸素運動のみに基づいている研究のみを採用し、筋力トレーニングなど他の種類の運動を含む研究は除外した。

各研究の結果を比較、要約し、研究方法や対象者数などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

脳卒中になった2,672人を対象とした53件の研究を特定した。参加者のほとんどは自力で歩くことができた。これらの研究のうち37件は、高所得国で実施された。参加者の平均年齢は61.9歳であった。ほとんどの研究は、脳卒中発症後3か月以内(19件)か、脳卒中発症後少なくとも6か月経過後(29件)に行われた。28件の研究において、有酸素運動グループの参加者は対照グループの参加者よりも多くの対応を受けていた。

49件の研究では、運動する時間は20分から60分の間であり、48件の研究では、運動頻度は週に3日から5日であった。37件の研究において、プログラムの期間は12週未満であった。運動強度は、最大心拍数、予備心拍数(安静時心拍数をもとに算出)、または参加者による自覚的運動強度によって記録された。

53件の研究のうち16件では、参加者に対し追跡調査が行われた。追跡調査期間は、プログラム開始後12週間から12か月までの間であった。ある研究では、6か月間の追跡調査を計画していたが、その結果は報告されなかった。

主な結果
  • 有酸素運動は、プログラム終了時点(36件の研究、1,563人の参加者)や追跡調査時点(10件の研究、713人の参加者)における死亡者数に影響を与えない。

  • 有酸素運動は、プログラム終了時点(8件の研究、544人の参加者)での脳卒中の再発数に影響を与えないほか、追跡調査時点(4件の研究、412人の参加者)でも影響を与えない可能性が高い。

  • プログラム終了時点(9件の研究、535人の参加者)や追跡調査時点(3件の研究、155人の参加者)での血圧の結果については、その信頼度が極めて低い。

  • プログラム終了時点において、有酸素運動は、バランス(18件の研究、772人の参加者)、能力障害(17件の研究、1,073人の参加者)、持久力(13件の研究、608人の参加者)、や快適歩行速度(16件の研究、647人の参加者)にわずかな改善をもたらす可能性があるが、これらの変化が脳卒中になった人にとって実感できるほど十分な大きさであるかどうかは不明である。追跡調査の結果は不明である。有酸素運動による持久力向上の効果は持続する可能性があるが、脳卒中になった人にとって実感できるほど大きな効果ではない可能性がある(5件の研究、237人の参加者)。

エビデンスの限界
  • 研究の多くは、自力で歩行ができる人を対象としており、脳卒中になり移動がより困難になっている多くの人についての知見は、ほとんど得られていない。

  • 研究の多くは、高所得国で行われており、その他の国における脳卒中になった人についての知見は、ほとんど得られていない。

  • 有酸素運動トレーニングの効果については、不明確な点が多く、十分なエビデンスも得られていない。さらなる研究が必要である。

エビデンスの更新状況

このレビューは、脳卒中になった人に対する体力トレーニングに関する以前の単一のレビューを更新した3件の新しいレビューのうちの1つである。このエビデンスは、2025年4月現在のものである。

Kramer S, Cheyne JD, Fawkner S, Hassett L, Johnson L, Mead GE, Rackoll T, Smith J, Wagner V, Saunders DH

脳卒中発症後の人に対する複合トレーニング(有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせた運動プログラム)の利益とリスクは何か?

1 day 11 hours ago
主要メッセージ
  • 脳卒中発症後の人でも、心肺機能と筋力の両方を高めることを目的とした運動プログラム(「複合トレーニング」と呼ばれる)に取り組むことができる。

  • 複合レーニングを行うことで、脳卒中後の人は、身体機能、バランス、歩行速度などの面で、わずかな改善が見られる可能性がある。

脳卒中とは何か?

脳卒中は、脳の一部への血液供給が途絶えることで起こり、その結果、脳の特定の領域に損傷が生じる。脳卒中による影響は、脳卒中を経験した人の人生を大きく変える可能性があり、脳の損傷の程度やどの部位で起こったかによって異なる。脳卒中の影響は、身体的、心理的の両面に見られ、運動機能だけでなく、思考、行動、感情にも影響を与える。こうした影響は、脳卒中後生涯にわたって続くことがある。脳卒中が身体に与える影響の一つに、身体機能や筋力の低下がある。その結果、身体を動かすことがより困難になり、有意義な日常生活への復帰が妨げられる可能性がある。

脳卒中後のリハビリテーションでは、どのようなことが行われるのか?

脳卒中を発症した後、多くの患者は、日常生活における身体的な困難を乗り越えられるよう、理学療法士や他の医療専門職によるリハビリテーションを受けることになる。リハビリテーションには、有酸素運動やレジスタンストレーニングなど、さまざまな種類の運動が含まれる場合がある。有酸素運動(「心肺機能トレーニング」とも呼ばれる)は、持続的な運動を伴うものである。有酸素運動は、心肺機能を高め、ウォーキングのような反復運動に必要な持久力を高めることができる。レジスタンストレーニング(「筋力トレーニング」とも呼ばれる)は、ウェイト(ダンベルなどの重量物)を持ち上げたり、弾性器具(ゴムバンド)などを利用して負荷をかける運動が含まれる。レジスタンストレーニングは、筋肉を強化することで身体機能を向上させることができ、物を持ち上げる、立ち上がる、歩くといった身体動作の回復に役立つ。また、脳卒中後の人は、自宅でも運動するように指導される場合がある。したがって、脳卒中後の通常のリハビリテーション過程には、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方の要素が含まれることがある。

知りたかったこと

脳卒中発症後は、心肺機能と筋力の両方が低下していることがあるため、有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせた複合トレーニングを行うことで、身体機能と筋力の低下の両方を向上させ、脳卒中後の障害に起因する身体的な困難への影響を軽減することができる。

有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方を組み合わせた運動プログラムが、脳卒中後のどの時期(発症直後、入院中、あるいは退院後)においても有益であるかどうかを調べたかった。

具体的には、脳卒中後の有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせた複合トレーニングが安全であるかどうか、身体機能や運動機能(歩行やバランス能力を含む)の向上につながるかどうか、脳卒中後の人の心理面(抑うつ、生活の質など)に影響を与えるかどうか、脳卒中の再発リスクを低減させるかどうかを明らかにしたかった。

実施したこと

脳卒中後の人を対象に運動プログラムの効果を評価した研究を検索した。本レビューでは、運動プログラムに有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方が含まれていた研究のみを対象とした。対象とした研究結果を要約し、研究方法や参加者数などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

脳卒中発症後の1,519人を対象とした30件の研究を特定した。参加者の多くは自立歩行が可能であった。運動プログラムは、脳卒中発症後の最初の数ヶ月間に実施されたものと、脳卒中発症から6ヶ月以上経過した後に開始されたものがあった。ほとんどの複合トレーニングプログラムは、12週間未満のトレーニング期間であり、安全性が高いと考えられ、ウォーキングやウェイトトレーニングなど、さまざまな種類の運動を組み合わせたものであった。

主な結果

複合トレーニングのプログラムは、プログラム期間終了時またはフォローアップ期間終了時においての死亡率や脳卒中の再発率に影響を与えない。しかし、死亡や脳卒中再発例が少なかったため、複合トレーニングが死亡リスクや二次的な有害事象の発生リスクを低下させるかどうかを判断することができない。複合トレーニングは、トレーニング期間終了時にわずかながら血圧に対して有益な効果をもたらし、二次的な有害事象の発生リスクを低下させる可能性を示唆しているが、エビデンスは極めて不確実である。

複合トレーニングを行うと、トレーニング期間終了時点で、身体機能(心肺機能および脚の筋力)、障害、歩行速度、バランス能力をわずかに向上させる可能性がある。これらは脳卒中発症後の人にとって重要な結果であるが、そのエビデンスには多くの不確実性が伴う。12件の研究では、複合トレーニング期間の終了から3~12ヶ月後にトレーニングの効果を再度測定しており、(トレーニング期間終了後も)バランス能力に対する好影響が持続する可能性を示唆する限定的なエビデンスが得られた。

参加者は、重篤な有害事象を経験することなく、複合トレーニングに取り組むことができた。複合トレーニングは、参加者から受け入れられ、良好な忍容性を示した。脳卒中後の人にとって最適な運動療法の設定、その効果、および長期的な影響を評価するためには、より大規模な研究が必要である。

エビデンスの限界は何か?

対象となった研究の多くは、歩行可能な人を対象としていた。したがって、身体機能の能力がより制限されている脳卒中後の人についてはあまり分かっていない。

研究のほとんどが、高所得国で実施されていた。その他の国における脳卒中後の人についてはあまり分かっていない。

有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせた複合トレーニングの効果については、不確実な点が多く、十分なエビデンスが得られていない。

エビデンスの更新状況

本レビューは、以前のレビュー(3件の別々の運動プログラムの評価を統合した形式が異なるレビュー)から得られたエビデンスをアップデートするものである(以前のレビューを更新した3件のレビューのうちの1つである)。エビデンスは、2024年1月までに実施された文献検索に基づいている。

Saunders DH, Carstairs SA, Cheyne JD, Fileman M, Morris J, Morton S, Wylie G, Mead GE

免疫系ががん細胞を認識して攻撃するのを助ける治療(免疫チェックポイント阻害薬)は、進行が速い肺がんの一種である進展型小細胞肺がんの方々の生存期間を延長しますか?

2 days 12 hours ago
要点
  • 免疫チェックポイント阻害薬を化学療法と組み合わせた一部の併用療法は、標準的な化学療法だけの治療と比べて、進展型小細胞肺がんの方々の生存期間を延長します。

  • ただし、免疫チェックポイント阻害薬を含むすべての併用療法が、同程度に有効で安全というわけではありません。

  • 生活の質や治療による長期的な影響について、さらなる研究が必要です。現在では、免疫チェックポイント阻害薬を含むいくつかの併用療法が、初回治療の重要な選択肢となっています。

この要約は、進展型小細胞肺がんの方々、ご家族、介護を担う方、および治療の選択肢についてわかりやすい情報を求めている方のために書かれています。

進展型小細胞肺がんとは何か?

小細胞肺がんは進行が速いタイプの肺がんです。小細胞肺がんは、通常、限局型と進展型の2つの病期(ステージ)に分類されます。進展型では、がんがすでに肺の広範囲に広がっているか、肺以外の部位にまで広がっています。進展型小細胞肺がんの方々の多くは、複数の抗がん薬を組み合わせた化学療法を受けます。通常は、プラチナ製剤とエトポシドが使われ、この治療は一般に「PE療法」とよばれます。しかし、このがんは治療後にしばしば短期間で再発します。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫系ががん細胞を認識して攻撃するのを助けるタイプのがん治療薬です。免疫チェックポイント阻害薬は化学療法とは異なる仕組みで働き、いくつかの種類のがんの治療において重要な治療法となっています。

知りたかったこと

私たちは、標準的な化学療法に免疫チェックポイント阻害薬を加えることで、進展型小細胞肺がんの方々の生存期間やそのほかの治療結果が改善するかどうかを明らかにしたいと考えました。また、これらの治療がどの程度安全か、生活の質に影響するかどうかについても知りたいと考えました。

実施したこと

進展型小細胞肺がんの方々を対象に、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を組み合わせたさまざまな治療と、化学療法だけの治療を比べた、質の高い研究を探しました。各研究の結果を、ネットワークメタアナリシスという方法で統合しました。この方法では、同じ研究の中で直接比べられていない治療も含め、多くの治療を同時に比べることができます。ネットワークメタアナリシスは、複数の臨床試験の結果をつなげて比べます。例えば、研究1で治療Aと治療Bが比べられ、研究2で治療Bと治療Cが比べられている場合、治療Aと治療Cが直接比べられていなくても、AとCの効果の違いを推定することができます。この方法により、さまざまな治療を全体として比較することができ、どの治療の選択肢がより役立つ可能性があるかが理解しやすくなります。

わかったこと

14件の研究が見つかりました。主な評価項目である全生存期間については、7,541人の参加者のデータが得られました。ほとんどの研究では、プラチナ製剤とエトポシドを組み合わせた化学療法に免疫チェックポイント阻害薬を加えることで、治療の結果が改善するかどうかを調べていました。

  • 評価した治療のうち、プラチナ製剤とエトポシドによる化学療法に、ベンメルストバルトとアンロチニブの両方を加えた治療、またはセルプルリマブを加えた治療は、死亡のリスクが最も低いと推定されました。また、デュルバルマブまたはアデブレリマブを加えた治療でも、生存期間の延長がみられました。

  • 一方、化学療法にイピリムマブを加えた治療など、ほかの併用療法では、おそらく生存期間は延長しません。また、副作用が増える可能性があります。セルプルリマブを含む治療や、複数の免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた一部の治療でも、標準的な化学療法と比べて副作用が多くみられました。

  • 無増悪生存期間(がんが悪化するまでの期間)については、一部の治療でがんの進行を遅らせる効果が認められました。しかし、こうした効果は必ずしも全生存期間の延長と一致しませんでした。

  • 奏効率(がんが縮小または消失した参加者の割合)が高くなった治療は少数でした。この結果は、必ずしも生存期間の延長と一致しませんでした。

  • 生活の質については、進展型小細胞肺がんの方々や医療者が治療について判断するために役立つ情報が十分ではありませんでした。

エビデンスの限界は何か?

一部の研究は、参加者数が少なかったり、限られた地域のみで行われたりしていました。そのため、これらの結果がすべての進展型小細胞肺がんの方にそのまま当てはまるとは限りません。また、研究によって結果の報告方法が異なっていました。治療を受けた方々自身の経験や、治療による長期的な影響について報告した研究は少数でした。免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法同士を直接比べた研究は少数でした。そのため、どの治療が最も有効であるかを確実に判断するには、これらの治療を直接比べる臨床試験がさらに必要です。進展型小細胞肺がんの方々は、副作用や期待される治療効果、治療が日々の生活の質に与える影響なども含め、これらの研究結果が自分自身の状況にどのように当てはまるかについて、医療チームと相談するとよいかもしれません。

エビデンスの更新状況

このレビューには、2025年12月までに入手できたエビデンスが含まれています。

Ichimura T, Sugita H, Noma H, Yamaji N, Sunaga T, Sato MT, Maeda M, Toyoda S, Ota E, Hasegawa T

上あごの歯がなく、骨量が大きく減っている人に対する頬骨インプラントを用いた治療の利点とリスクは何か?

2 weeks 4 days ago
要点
  • 上あごの骨を増やしてから埋め込む通常の歯科インプラントと比べると、頬骨インプラント(頬骨に埋め込む長いインプラント)は失敗する確率が低く、固定式の人工歯(上部構造)をより早く装着できる。しかしその一方で、合併症は多くなる。

  • インプラント体を埋め込む(埋入する)穴をあけるには、通常の回転切削ドリルを使う方法と、超音波振動によって骨を削る器具を使う方法(ピエゾサージェリー)がある。インプラント体や人工歯の耐久性や、合併症のリスクについては、2つの方法の間にほとんど、またはまったく差がない可能性がある。しかし、回転切削ドリルの方が恐らく短時間で処置を行える。

  • これらの点について調査した研究は少ない。利益とリスクについて、より確実なことを知るためには、より多くの、より大規模な研究が必要である。

歯がほとんどまたは全てなくなると、何が起こるか?

歯を失うと、物を噛む刺激がなくなるため、歯の埋まっていた骨(歯槽骨)は徐々に減っていく。骨が減る程度には個人差があるが、減りすぎて入れ歯(義歯)のつけ心地が悪くなることもある。そのために食事や会話がしにくくなり、自信やウェルビーイング(心身が健康であり、社会的状態も良好であること)、社会との関わりにも影響する可能性がある。歯科インプラントは、このような問題の改善に役立つ。

歯科インプラントとは何か、またどのように役立つのか?

通常の歯科インプラントでは、人工の歯の根(歯根)の役割を果たす長さ0.5~2 cm程度の短いスクリュー(インプラント体、フィクスチャー)をあごの骨に埋め込み、その上に固定式の人工歯(上部構造)や取り外し式または半固定式の入れ歯を装着する。

頬骨インプラント(zygomatic implants)は、長さ約3~5 cmと、通常のインプラントより長く、上あごの骨(上顎骨)が減りすぎて、通常のインプラントをしっかり支えられるだけの骨が残っていない場合に用いられる。頬骨インプラントには、ほとんどの場合、取り外し式の入れ歯ではなく固定式の人工歯(上部構造)が装着される。

頬骨インプラントの場合、上部構造をインプラント埋入と同じ日に装着できることが多い。これは、インプラントを支えるために、あごの骨に新しい骨(または骨の代わりとなる材料)を移植する手術が不要だからである。骨移植手術は複雑で、費用と時間を要し、複数回の手術が必要になることもあるため、上部構造を装着するまでに1年以上かかる場合もある。

頬骨インプラント埋入のための骨の切削は、回転切削ドリルまたはピエゾサージェリーを用いて行われる。ピエゾサージェリーは超音波振動を利用して骨を切削する方法で、身体への負担が比較的少ない。しかし、頬骨インプラントの処置は合併症を起こす可能性があるため、期待される利益とこうしたリスクを十分に秤にかける必要がある。

何を明らかにしようとしたのか?

頬骨インプラントでは、上顎骨に骨移植を行ってから埋入する通常のインプラントと比較して、以下のリスクが減るかどうか調査した。

  • 上部構造の不具合(破損したり、ゆるんだりする)

  • インプラント体の不具合(インプラント体が不安定になる)

  • 合併症の発生

また、以下の点についても調査したかった。

  • どちらのインプラントの方が患者の満足度が高く、より早く治療を完了できるか。

  • インプラント体の埋入部位を切削する上で、手術の時間がより短いのは、また患者に好まれるのはどの方法か。

何を行ったのか?

以下のものを比較した研究について検索を行った。

  • 上顎骨が大きく減少した患者において、頬骨インプラントを用いた場合と、骨移植をした上顎骨に通常のインプラントを埋入した場合

  • または、頬骨インプラントの埋入部位を切削する際のさまざまな方法

研究結果を比較・統合し、研究方法などに基づき、エビデンスの信頼性を評価した。

何を見つけたのか?

3年間、参加者の追跡調査を行った小規模な研究が2件あり、いずれもヨーロッパで実施された研究であった。1件は頬骨インプラントと骨移植を伴う通常のインプラントを比較した研究で、参加者数は71人であった。もう1件は、インプラント体の埋入部位の切削方法として、ピエゾサージェリーと回転切削ドリルとを比較した研究で、参加者数は20人であった。

主な結果

頬骨インプラントの場合、治療後3年目の状況では、骨移植を併用した通常のインプラントと比べて、

  • 上部構造の不具合は少ない可能性がある。頬骨インプラントの場合、上部構造に問題が生じた患者は通常のインプラントと比較して100人あたりおよそ12人少なかった。

  • インプラント体の不具合も恐らく少ない。頬骨インプラントの場合、問題が生じた患者は100人あたりおよそ22人少なかった。

  • 一方、合併症の発生は恐らく多い。頬骨インプラントの場合、およそ5人中4人に合併症がみられたのに対し、通常のインプラントでは約2人に1人であった。

どちらの方法が患者の満足度が高かったかは不明である。しかし、頬骨インプラントを埋入した人は、上部構造を装着できるまでの期間が1日強と、通常のインプラントの人はおよそ444日かかったのと比べて格段に早かった。

インプラント体の埋入部位を切削するための2つの方法(ピエゾサージェリーと回転切削ドリル)を比較した研究では、3年後において、以下の点でほとんどまたはまったく差がない可能性がある。

  • 上部構造の不具合

  • インプラント体の不具合

  • 合併症の発生

  • 患者の好み

しかしながら、回転切削ドリルを使用した場合、インプラント体の埋入時間が恐らく9分以上短縮される。

エビデンスの限界は何か?

エビデンスに対する信頼性は、「非常に低い」から「中等度」と判断された。理由は、これらの方法を試験した研究は2件しかなく、参加者数も少なかったためである。最も適した方法を明らかにするには、さらに多くの適切に設計された研究を実施する必要がある。

本エビデンスはいつのものか?

2025年11月時点におけるエビデンスである。

Visconti RF, Greco K, Cotticelli C, Ambrosi A, Esposito MAB

早産リスクのある女性に対する硫酸マグネシウムの投与は、赤ちゃんの脳を守るためにプラセボよりも優れているか?

2 weeks 4 days ago
要点

赤ちゃんの脳を保護するために、早産のリスクがある女性に硫酸マグネシウムを投与すると、プラセボと比較して、2歳までの脳性麻痺、および死亡または脳性麻痺のいずれかが起きた割合が減少した。

この分野での今後の研究は、治療の効果に焦点を当てるべきである:

- 子どもたちが思春期や大人になった時はどうか。

- 早産リスクがある異なる女性グループにおける違いや、硫酸マグネシウムの投与方法の違いはどうか。

硫酸マグネシウムとは?

硫酸マグネシウムは、妊娠中のさまざまな合併症に対して世界中でよく使われている薬である。

早産のリスクがある女性とその赤ちゃんにとって、なぜこれが重要なのか?

早産で(妊娠37週以前に)生まれた赤ちゃんは、死亡や脳性麻痺などの障害を含む合併症のリスクが高い。近年、早産になる可能性が高い女性(自然早産、または医学的な理由で早期の陣痛誘発や帝王切開出産を計画する場合)には、赤ちゃんの脳を保護し、これらの合併症を予防するために硫酸マグネシウムが投与されている。

知りたかったこと

早産で生まれる可能性が高い赤ちゃんの脳を保護するために、硫酸マグネシウムがプラセボ(薬を含まないが、試験中の薬と同じように見える "ダミー "の治療法)よりも優れているかどうかを調べたかった。

硫酸マグネシウムが重要な転帰に及ぼす影響には、死亡(乳児期、またはその後の幼児期)、脳性麻痺、主要な「神経発達障害」(脳性麻痺、失明、難聴、全体的な認知障害や知的障害など)が含まれる。また、硫酸マグネシウムの重篤な合併症(死亡、呼吸停止、心停止)、副作用による治療中止など、女性にとって重要な転帰への影響にも関心があった。

実施したこと

硫酸マグネシウムが、プラセボまたは無治療と比較して、女性と早産児に有益か有害かを検討した研究を検索した。その結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

その結果、妊娠34週未満の女性5,917人とその赤ちゃん6,759人を対象とした6件の研究が見つかった。研究はすべて高所得国で実施された。対象となった研究では、硫酸マグネシウムとプラセボが比較された。

主要な結果

早産リスクのある女性において、硫酸マグネシウムはプラセボと比較して:

- 2歳までの小児では、脳性麻痺(6研究、6,107人)および死亡または脳性麻痺のいずれかが起きた割合(6研究、6,481人)が減少した。

- 死亡(6研究、6,759人)、重大な神経発達障害(1研究、987人)、死亡または重大な神経発達障害のいずれかが起きた割合(3研究、4,279人)において、2歳までの小児ではおそらくほとんど差はない。

- 上記の評価項目について、学齢期の子どもでは、ほとんど差がないかもしれない。

- 女性にとって、治療による重篤な合併症にほとんど差はないかもしれないが(4研究、女性5,300人)、副作用のために治療を中止する女性はおそらく増えるだろう(3研究、女性4,736人)。

エビデンスの限界は?

硫酸マグネシウムが2歳までの小児の脳性麻痺、および死亡または脳性麻痺のいずれかが起きた割合を減少させるという知見は、信頼性が高い。

学齢期の子どもたちの結果については、すべての子どもたちのデータが提供されていなかったり、結果について確信できるほど十分な研究やデータがまだなかったりするため、エビデンスに対する信頼性は低い。

1件の研究が1件の合併症を報告しているだけだったため、硫酸マグネシウムが女性の治療における重篤な合併症にほとんど影響を与えないという知見にはほとんど信頼性がない。硫酸マグネシウムが副作用のために治療を中止する女性をおそらく増加させるという知見については、信頼性は中程度である。

信頼性が低い評価項目に関しては、さらなる研究が行われた場合、このレビューの結果と異なる可能性がある。

本レビューの更新状況

2023年3月17日時点のエビデンスである。

Shepherd ES, Goldsmith S, Doyle LW, Middleton P, Marret S, Rouse DJ, Pryde P, Wolf HT, Crowther CA

電子タバコは禁煙に役立つのか?また、禁煙目的で使用した場合、副作用はないのか?

2 weeks 4 days ago
主なメッセージ
  • ニコチンを含む電子タバコ(e-cigarettes)は、少なくとも6か月間は禁煙を続けるのに役立つ。これらはニコチン置換療法よりも効果的であり、おそらくニコチンを含まない電子タバコよりも効果的であると考えられる。

  • 電子タバコは、何の支援もしない場合や行動面での支援のみを行う場合よりも効果的である可能性があり、深刻な副作用とは関連していない可能性がある。

  • しかし、特に旧型よりもニコチンの吸収効率が高い新型の電子タバコの影響については、さらなるエビデンスが必要である。ニコチンの吸収効率が高ければ、より多くの人が禁煙に成功する可能性があるからだ。

電子タバコとは何か?

電子タバコ、いわゆる「ベイプ」とは、通常ニコチンや香料を含む液体を加熱して使用する携帯型の機器である。電子タバコは、煙ではなく蒸気でニコチンを吸い込むことができる。電子タバコはタバコを燃やさないため、従来タイプのタバコを吸っている人の喫煙関連疾患の原因となるのが明らかなレベルと同じレベルの有害物質を吸い込むことはない。

電子タバコを使用することは、「ベイピング」と呼ばれている。電子タバコは、タバコを止めるために使用する人が多い。ここでは主にニコチンを含む電子タバコに焦点を当てる。

知りたかったこと

禁煙は多くの病気のリスクを下げる。多くの人が、タバコを止めるのは難しいと思っている。電子タバコの使用が禁煙の助けになるかどうか、また、電子タバコを使用している人に望ましくない影響がないかどうかを調べた。

実施したこと

あらゆる年齢層の人を対象に、禁煙のための電子タバコの使用について検討した研究を検索した。

以下の点に着目した:

- 何人の人が6か月以上喫煙を止めたか、そして

- 望まない効果(つまり副作用)があった人は何人いたか(少なくとも使用を始めて1週間の時点で報告されている望まない効果)。

わかったこと

喫煙者である成人29,861人を対象とした80件の研究を特定した。研究の多くは、米国(40件)および英国(16件)で実施された。ほとんどの研究では、ニコチン入り電子タバコを以下のものと比較している:

  • ニコチン置換療法(例:パッチやガムなど);

  • 禁煙を支援する医薬品(バレニクリンおよびシチシン);

  • ニコチンを含まない電子タバコ;

  • 加熱式タバコ(タバコを燃焼させたり煙を発生させたりすることなく、蒸気を放出するのに十分な高温まで加熱する製品。これらは、タバコの葉やシートを加熱するという点で電子タバコとは異なる);

  • 経口ニコチンパウチ(タバコを含まないが、口の中に含んでいるとニコチンが放出されるパウチ);

  • その他の種類のニコチン含有電子タバコ(例:ポッド式デバイス、新型デバイスなど);

  • 助言またはカウンセリング(行動支援);または

  • - 禁煙のためのサポートなし。

レビューの結果
  • 電子タバコを使用した場合、ニコチン置換療法よりも多くの人が少なくとも6か月間禁煙を継続している(11件の研究、参加者数4,114人);

  • ニコチンを含む電子タバコは、ニコチンを含まない電子タバコに比べ、少なくとも6か月間禁煙を継続できる可能性が高いと考えられる(7件の研究、参加者数1,918人);

  • ニコチン入り電子タバコは、行動支援のみの場合や支援がない場合と比較して、より多くの人々の禁煙を助ける可能性がある(11件の研究、参加者数7,214人);

  • ニコチン入り電子タバコを使って禁煙を試みる100人のうち、8~10人が禁煙に成功する可能性があるのに対し、ニコチン置換療法を利用する場合は100人中6人、ニコチンを含まない電子タバコを利用する場合は100人中6人、支援を受けないか行動療法のみを受ける場合は100人中5人にとどまる。

  • ニコチン含有電子タバコを使用した場合と、ニコチン置換療法、支援なし、または行動支援のみの場合とを比較して、副作用の発生率に差があるかどうかは不明である(ただし、軽微な副作用については、支援なしまたは行動支援のみのグループに比べ、ニコチン含有電子タバコを使用するグループでより多く見られた)。

  • ニコチン入り電子タバコとニコチン置換療法を比較した研究では、重篤な副作用を含め、副作用の発生件数が少ないことが報告されている。ニコチン入り電子タバコと比較すると、以下の項目にはおそらく差はないであろう:

    • ニコチン置換療法を受けている人の重篤な副作用;

    • ニコチンを含まない電子タバコを使用している人の軽度の副作用。

エビデンスの限界
  • ニコチン入り電子タバコは、ニコチン置換療法よりも多くの人の禁煙を助けるとするエビデンスについては確信を持っているが、ニコチンを含まない電子タバコについては、さらなるエビデンスが必要である。

  • ニコチン入り電子タバコと、行動療法による支援、あるいは支援なしとの比較を行った研究でも、ニコチン入り電子タバコを使用した人々の禁煙率が高いことが示されたが、研究対象者は自分が受けている各治療内容を認識していたため、このデータについては不確実性が高い。

  • 望ましくない影響に関する結果の多くは、さらなるエビデンスが得られれば変わる可能性がある。というのも、報告された症例数が少なく、結果が不明確なケースが多かったためである。

エビデンスの更新状況

本レビューは、2025年に公表された前回のレビューを改訂したものである。新たなエビデンスが得られ次第、改めて更新する。エビデンスは2026年1月1日現在のものである。

Lindson N, Livingstone-Banks J, Butler AR, McRobbie H, Bullen CR, Hajek P, Wu AD, Begh R, Theodoulou A, Ma C, Notley C, Rigotti NA, Turner T, Fanshawe T, Hartmann-Boyce J

高度な精子選別技術を使えば、妊娠を望む女性が受ける生殖補助医療は、より効果的になるのだろうか。

2 weeks 4 days ago
要点
  • 高度な精子選別技術は、生殖補助医療(体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI))による不妊治療を受けている女性に使われる。この高度な技術を使う目的は、より質のいい精子を選別できるようにすることで受精を成功させることであるが、現時点での科学的エビデンスは不明確である。

  • ヒアルロン酸(HA)と呼ばれる体内の天然物質に付着できるかどうかで精子を選別する方法(HA-ICSI:ヒアルロン酸選別精子を使った顕微授精)は、標準的な精子選別法と比べて、流産のリスクをわずかに減らすだろう。HA-ICSIは、生児出産の可能性に何の影響も与えないか、わずかに高めるかもしれない。

  • その他の選別技術に関するエビデンスは、極めて限られている。高度な精子選別技術によって、生殖補助医療が現在使われている標準的な方法よりも効果的になるかどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要である。

生殖補助医療とは何か?

生殖補助医療とは、妊娠するための治療として使われる技術である。体外受精(IVF)とは、女性の卵巣から1つ以上の卵子を取り出し、培養室で精子と受精させる方法であり、不妊と診断され妊娠を望んでいる人によく使われる治療法である。顕微授精(ICSI:細胞質内精子注入法)が併用されることもある。ICSIでは、1個の精子を卵子に直接注入して受精させる。現在、IVFの培養室では、受精に使う健康そうな精子を選別するために、標準的な方法が使われている。質の高い精子を選別することで、妊娠や健康な赤ちゃんの出産の可能性が高まると考えられている。

高度な精子選別技術とは何か?

高度な精子選別技術とは、受精に使う精子のうち、健康で成熟しており、形や大きさが適切なものを選別するための、複雑な方法のことである。これらの技術は、精子数の少なさや精子の運動性の低さなど、男性側の要因による不妊症において、精子選別の精度を高めるために使うことができる。しかし、世界中の多くの生殖補助医療施設で使われているが、その効果は明らかになっていない。

知りたかったこと

生殖補助医療に使われている高度な精子選別技術のうち、以下の可能性を高めるものがあるかどうか、あるとすればどの技術かを明らかにしたいと考えた。

  • 生児出産(生きた赤ちゃんを出産すること)。

  • 流産(妊娠20週未満で赤ちゃんを失うこと)。

  • 臨床的妊娠(妊娠検査で陽性となり、超音波検査によって確認されること)。

  • 胎児の異常(赤ちゃんに何か問題があること)。

このレビューは、2014年に発表され、2019年に最初の更新が行われたレビューの、2回目の更新版である。

実施したこと

オンラインの医学データベースを検索して、IVFにおける高度な精子選別技術を、標準的な方法または他の高度な精子選別技術と比べたランダム化比較試験を選び出した。ランダム化試験とは、比べる対象となる要素(このレビューでは精子選別技術)以外の治療に差が出ないように、参加者を2つ以上の群に無作為に割り当てるものである。関連するすべての研究の結果を統合し、研究の質(研究デザインや参加者数など)に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

合計3,752人の女性を対象とした5件の研究が見つかった。2件の研究では、ICSIの過程においてヒアルロン酸という物質に付着できるかどうかで精子を選別する方法(HA-ICSI)と通常のICSI単独とを比べていた。1件の研究では、より健康な精子を選別できる特別な液体を使う方法(SpermSlow)とHA-ICSIとを比べていた。他の1件の研究では、表面にわずかな電荷(「ゼータ電位」)を帯びた精子を選別する方法とICSIとを比べていた。残る1件の研究では、マイクロ流体精子選別法(Microfluidic Sperm Sorting)と呼ばれる精子選別技術とICSIを比べていた。

これらの5件の研究のうち、4件が生児出産について、4件が流産について、5件が臨床的妊娠について報告していたが、胎児noについて報告した研究はなかった。

主な結果

このレビューに含まれる研究から、HA-ICSIは、ICSIと比べて以下のことが示された。

  • 生児出産の可能性は、差がないかわずかに上がるかもしれない(1件の研究、2,772人の対象者)。

  • 流産の可能性は、わずかに下がるだろう(2件の研究、3,327人の対象者)。

  • 妊娠する可能性は、差がないかもしれない(2件の研究、3,327人の対象者)。

その他の精子選別技術が、生児出産や流産、妊娠の可能性に影響を与えるかどうかは不明である。

胎児の異常について報告していた研究はなかった。

これらの高度な精子選別技術のいずれかを臨床現場で使うことを推奨できるようになるためには、十分な質を備えたさらなる研究が必要である。

エビデンスの限界は何か?

主な限界は、研究に参加した人の人数が少ないことによる。研究に参加した人が。自分がどの治療を受けたかを知っていた可能性があり、それは結果に影響を与えたかもしれない。すべての研究が、生殖補助医療の治療を受ける時に考えるべき大切なことを網羅していたわけではない。たとえば、胎児の異常に関する情報はなかった。高度な精子選別技術が、IVFの治療を受ける女性にとって価値があるものかどうかを明らかにするためには、多くの参加者を含む質の高い研究がさらに必要である。

エビデンスの更新状況

このレビューは、前回のレビューを更新したものである。エビデンスは2025年2月時点のものである。

Garg A, Nakhla O, Steeper M, Afroz A, Lepine S, McDowell SJ, Kroon B, Glujovsky D, Yazdani A, Lensen S

「バイオ医薬品」(免疫系の特定の部分を標的とする薬剤。「生物学的製剤」ともいう。)はクローン病の管理に有用か?

2 weeks 4 days ago
要点
  • 症状を消失させる(寛解)には、ウステキヌマブはプラセボ(偽治療)よりもやや効果が大きい。アダリムマブと免疫調節薬の併用、グセルクマブ、ウパダシチニブは、おそらくプラセボよりもやや効果が大きいが、ベドリズマブとナタリズマブはおそらくプラセボとほとんど差がない。

  • 寛解から1、2年以内に症状が再発するのを防ぐ(病気の再燃を防ぐ)には、アダリムマブはおそらくプラセボよりもやや効果が大きい。

  • 短期的には(約1年)、副作用ゆえにウパダシチニブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブによる治療を中断する人の数は、おそらくプラセボの場合と同程度である。バイオ医薬品の長期的な副作用については、既存のエビデンスを基に確かな判断を下すことはできない。

クローン病とは

クローン病は生涯にわたる(慢性の)炎症性疾患で、消化管のどの部分にも発生しうる。よくある症状としては、血便、下痢、胃の痛み、発熱、体重減少、疲労感その他がある。クローン病の症状が出ていることを「活動期にある」と言い、症状が抑えられていることを「寛解期にある」と言う。実際、何がクローン病を引き起こすのか、よくわかっていないが、遺伝子、免疫系の異常、「悪玉」腸内菌、そして環境的要因が複合的に関与している可能性がある。根治療法は知られていないが、通常、ステロイド剤や免疫調節薬などの薬剤、また必要ならば手術によって、症状を管理する。

バイオ医薬品とは何か?

世紀の変わり目に、バイオ医薬品(または先進治療薬)と呼ばれる新しい種類の薬剤が使用できるようになり、クローン病の治療に広く使われるようになった。これらは従来の治療法と異なり、免疫系の構成部分をより特異的に標的とする新しい治療薬で、有効性がより高く副作用も少ないと考えられている。バイオ医薬品は静脈内投与(静脈注射)、皮下投与、また場合によっては経口投与が可能である。

知りたかったこと

現在使用されている(または試験済みの)バイオ医薬品(免疫系の特定の部分を標的とする薬)または先進治療薬は、いずれもクローン病の治療に使用できるか、副作用があるか、また、それぞれを比べた場合の優劣を調べたいと考えた。探した情報は、いずれかの薬剤を用いると、症状が消失したり、軽くなったり、大腸内視鏡検査(大腸の内部を調べる検査)で消化管が治癒したように見えるようになったりするかどうか、また、これらの薬剤には短期的(1~2年まで)・長期的(2年以上)な副作用があるどうかである。

実施したこと

クローン病を患う成人の治療において、バイオ医薬品をなんらかの医療処置またはプラセボ(偽治療)と比較した研究を探した。研究の参加者の性別は限定しなかった。また、クローン病を発症してからの期間、クローン病に対してなんらかの薬剤を使用したことがあるかも問わなかった。結果をまとめ、研究のデザインと実施の方法に基づき、その結果に対する信頼度を評価した。

わかったこと

27,476人(ほぼ男女同数)が参加した94件の研究をレビューに含めた。参加者の多くは30~40歳前後だったが、中には10代後半の青年から60代の年配者までいた。寛解導入の研究では、参加者の重症度は中等度から重度だった。寛解維持の研究では、参加者の一部はすでに寛解期にあったが、一部はそれまでの治療が奏功しているとはいえ、まだ症状が残っていた。期間は、大半の寛解導入の研究で3~6ヵ月、寛解維持の研究では約1年だった。

主な結果
  • 寛解導入の研究は66件(参加者20,653人)あり、寛解維持の研究は22件(参加者6,823人)あった。

  • 症状を消失させる(寛解)には、ウステキヌマブはプラセボ(偽治療)よりもやや効果が大きい。アダリムマブと免疫調節薬の併用、グセルクマブ、ウパダシチニブは、おそらくプラセボよりもやや効果が大きいが、ベドリズマブとナタリズマブはおそらくプラセボとほとんど差がない。リサンキズマブ、BI695501(アダリムマブに類似する薬剤)、インフリキシマブと免疫調節薬の併用、フィルゴチニブも有効である可能性があるが、これはあまり確かではない。

  • その他の薬は、プラセボ以上に効果があるかどうか不明である。

  • 寛解から1、2年以内に症状が再発するのを防ぐ(病気の再燃を防ぐ)には、アダリムマブはおそらくプラセボよりもやや効果が大きい。

  • 短期的には(約1年)、副作用ゆえにウパダシチニブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブによる治療を中断する人の数は、おそらくプラセボの場合と同程度である。リサンキズマブ、セルトリズマブ、フィルゴチニブなど、それ以外の薬もプラセボと同様かもしれないが、あまり確かではない。

  • バイオ医薬品の長期的な副作用については、既存のエビデンスを基に確かな判断を下すことはできない。

エビデンスの限界

レビューの対象に含めた研究には、バイオ医薬品または先進治療薬を以前使用したことがあるかどうか、病気の重症度、他の治療を併用しているかどうかなどについて、非常に異なる特徴をもつ人々が混ざって参加していた。研究を通じてこれらの特徴が同様でないと、結果を信頼するのは難しい。

入手した情報は主に臨床症状で、大腸内視鏡検査または顕微鏡検査の情報は限られていた。また、レビューに含めた研究が実施された条件と、そこで採用された方法にいくつかの問題点があった。

本レビューの更新状況

本レビューは2025年6月までのものである。

Gordon M, Sinopoulou V, Akobeng AK, Freeman SC, Moran GW, Cherayath R, Masitara M, Sherafat A, Khan MI, Alqusous F, Elleithy A, Phlananthachai S

妊婦の出産を促すために静脈内にオキシトシンを投与する場合、本格的な陣痛が始まったとき、投与の中止と継続のどちらがより良いのか

2 weeks 4 days ago
主なメッセージ
  • 妊婦が陣痛の誘発や促進のためにオキシトシンを静脈注射された場合、出産までオキシトシンの投与を継続するのではなく、陣痛が本格化した段階で投与を中止しても、帝王切開(お腹を切開して行う分娩)が必要になることにほとんど、あるいは全く影響を与えない可能性があり、また、母体と赤ちゃんの両方にとって安全であると考えられる。

  • 陣痛が本格化した時点でオキシトシンの投与を中止すれば、過度な陣痛を避け、不必要な薬物曝露を減らすことができる可能性があるが、その分、分娩時間が長引く可能性がある。もっとも、分娩時間に関する結果は極めて不確実であった。

  • オキシトシンの投与を継続するか中止するかについては、医療従事者と相談の上、臨床的な状態(分娩の進行状況、子宮収縮、母体および胎児の現在の状態など)、利用可能なモニタリング、および妊婦本人の希望を考慮して決定すべきである。

オキシトシンとは何か

妊婦において、出産が近づいた時期(「正期産」、つまり妊娠37週以降)に、人工オキシトシンという薬が、分娩に必要な子宮収縮を誘発したり、その強度を高めたりするために使用されることがある。これは多くの場合、静脈への点滴によって投与される。本格的な陣痛が始まると(子宮口が4cm以上開大し、陣痛が規則的に起こる状態)、体は分娩の進行を維持するのに十分な量の天然のオキシトシンを分泌すると考えられている。陣痛が本格化した後も人工オキシトシンの投与を続けると、陣痛の間隔が短くなりすぎたり、強くなりすぎたりする恐れがあり、それが赤ちゃんに負担をかけるほか、帝王切開(お腹を切開して赤ちゃんを取り出す手術)が必要になる可能性が高まる恐れがある。

知りたかったこと

陣痛が本格化した後にオキシトシンの投与を中止することで、帝王切開のリスクが低下するかどうか、また、それによって母親や赤ちゃんに何らかの利益や害が生じるかどうかを知りたかった。

実施したこと

我々は、分娩誘発または陣痛促進のためにオキシトシンを投与されている、正期産の単胎妊娠(つまり、双子や三つ子ではなく、赤ちゃんが1人の場合)の女性を対象に、これら2つのアプローチを比較した研究を探した。これは、以下のどちらがより優れているかを明らかにするためである:

  • 分娩の活動期が始まったらオキシトシンの投与を中止するか、あるいは

  • 出産までオキシトシンの投与を続けるべきか。

2025年11月17日時点までのエビデンスを検索した。可能な限り研究結果を統合し、最大限の情報を得られるようにした。各研究の信頼性およびその結果に対する確信度について、研究の規模、研究デザインや実施が適切であったか、結果の正確性といった要素に基づき評価した。

わかったこと

4814人の女性が参加した9件の研究が含まれていた。これらの研究は、デンマーク、フランス、インド、イラン、イスラエル、タイ、トルコ、および米国の病院で実施されていた。これらの研究では、陣痛の定義についていくつかの異なる定義が用いられた。

主な結果

分娩の活動期におけるオキシトシンの投与中止:

  • 帝王切開の件数にはほとんど、あるいは全く影響を与えない可能性がある(8件の研究、4710人の女性);

  • 器械分娩の件数にはほとんど、あるいはまったく影響がない(5件の研究、3776人の女性);および

  • 過度に頻繁または過度に強い陣痛(子宮頻収縮または過剰刺激と呼ばれる)のリスクを低減する可能性がある(3件の研究、1371人の女性);しかし

  • オキシトシンの投与を中止した場合、分娩時間は平均で約35分長くなったが、この結果は極めて不確実であった(8件の研究、4141人の女性)。

さらに、分娩の活動期には、次のような症状が見られる:

  • アプガースコア(出生後の赤ちゃんの状態を簡単に評価する指標)については、オキシトシンの投与継続と中止との間に明らかな差は認められなかった(5件の研究、2096人の女性);

  • 出生前の胎児への酸素供給低下を示す兆候について、出生後の臍帯血検査によって測定した結果、オキシトシンの投与継続と中止との間に明確な差は認められなかった(6件の研究、4086人の女性);および

  • 新生児病棟への入院において、オキシトシンの投与継続と中止の間に、おそらくほとんど、あるいは全く差はない(7件の研究、4606人の女性)。

エビデンスの限界は何か

エビデンスの信頼性はまちまちだった。器械分娩、アプガースコア、および出生前の胎児への酸素供給低下に関する結果については確信があり、新生児集中治療室への入院に関する結果についてもかなり確信があった。帝王切開や子宮過剰刺激に関する結果については多少不確かな部分があり、分娩の活動期の持続時間に関する結果については、非常に不確かな部分があった。不確実性の要因としては、次のようなものが挙げられた:

  • 研究参加者は、自分がどのグループに属しているか、すなわちオキシトシンの投与が継続されるか中止されるかを知っており、これが結果に影響を与えた可能性がある;

  • 各研究では、分娩の活動期、子宮頻収縮、子宮過剰刺激など、報告された測定項目について異なる定義が用いられており、また;

  • 各研究によって、妊婦の分娩時間が異なっていた。

エビデンスの更新状況

エビデンスは、2025年11月17日現在のものである。

Boie S, Uldbjerg N, Bor P, Thornton JG, Le Ray C, Glavind J, Goffinet F, Girault A

医療従事者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する感染予防・管理(IPC)ガイドラインに従うかどうかに影響を与える要因にはどのようなものがあるか。

2 weeks 4 days ago
要点
  • 医療従事者が、管理者から十分な支援を受けていると感じ、感染予防・管理(IPC)の研修を受け、IPCガイドラインについて明確かつ分かりやすい形で説明を受けていれば、その指針をより適切に順守することができる。

  • 作業するスペースが不足していたり、忙しかったり、個人用防護具(PPE)やその他の備品が不足していたり、あるいは患者が指示に従わなかったりする場合、医療従事者がIPCガイドラインに従うことはより困難になる。

  • 自分自身や家族、そして患者を守りたいと考える医療従事者は、できる限りガイドラインに従おうとする傾向があるが、手持ちのPPEの品質やフィット感によっては、それが難しくなる場合がある。

  • 医療従事者がガイドラインを順守しやすくするための研修・コミュニケーション・教育、患者との接触を最小限に抑えるための体制の整備、およびパンデミックに備えるための適切なPPEの提供について、さらなる研究が必要である。

背景

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年に世界中に広がった呼吸器系の感染症である。COVID-19のパンデミック期間中、医療従事者は、ウイルスが他の患者や自分たち自身、あるいは一般市民に感染を広げないようにする必要があった。感染予防・管理(IPC)ガイドラインは、医療従事者に対し、マスク、手袋、ガウンなどの個人用防護具(PPE)の使用、COVID-19患者の隔離、およびより厳格な清掃手順に関する情報を提供するために用いられている。しかし、医療従事者がこれらのガイドラインに従うことを容易にする要因もあれば、逆に困難にする要因もある。

知りたかったこと

以下の点について明らかにすることを試みた:

  • 医療従事者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する感染予防・管理(IPC)ガイドラインを順守する上で、何がその順守を容易にし、何が困難にしたのか;

  • COVID-19が他の呼吸器感染症とどのような点で類似しており、どのような点で異なっているかを確認するために、2020年に発表された既存のコクラン・レビューと調査結果を比較する。

実施したこと

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する感染予防・管理(IPC)ガイドラインの順守に関する医療従事者の見解や経験について検討した研究を検索した。

  • ガイドラインは、地域、国内、あるいは国際的なものであり、あらゆる医療現場を対象とする。

  • 研究は、病院、長期介護施設、あるいは地域医療の現場で行われる。

  • 医療従事者には、上記の場所で働く臨床スタッフやサポートスタッフのいずれも含まれる。

次に、データから導き出されるテーマ(重要な要素)を探した:

  • 組織面:安全、コミュニケーション、研修の支援;

  • 環境面:作業スペース、換気、設備、個人用防護具(PPE)の用意;

  • 個人:知識、意識、PPEの使用。

各研究および各知見について、方法の質に基づき、信頼度を評価した。

わかったこと

170件の研究が含まれた。データの取り扱いを容易にするため、すべての研究を最もよく代表する26件の研究を選定した。病院や、人々が生活しケアを受けている介護施設などで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応している看護師、医師、その他の医療従事者の見解や経験について調査を行った。

医療従事者が感染予防・管理(IPC)ガイドラインをどの程度順守するかは、いくつかの要因によって左右される。結果は以下のとおりである:

  • 上司からの支援があり、かつガイドラインが明確かつ分かりやすい形で伝えられている場合、そのガイドラインに従うのはより容易だった。

  • 忙しかったり、人手が不足していたり、あるいは患者や面会者がマスクの着用や社会的距離の確保を拒否したりする場合、ガイドラインに従うことはより困難であった。

  • トレーニングは非常に重要であった。しかし、全員がIPCの研修に参加できたわけではない。

  • IPCガイドラインに従うためには、十分なスペース、個人用防護具(PPE)やその他の備品、手洗い場、シャワー設備が必要である。

  • IPCに関する知識と意識が十分にある人ほど、ガイドラインに従う傾向が強かった。

  • 医療従事者の中には、自分や他の人に感染させてしまうことを心配する人もいたが、ワクチン接種が始まると、その心配が和らぐ人もいた。

  • PPEは長時間着用すると不快であり、サイズが合わなかったり品質が悪かったりすると、IPCを実践するのがより困難になった。

医療従事者がIPCガイドラインに従う意欲や能力には、多くの要因が影響を及ぼしている。本レビューは、一般市民や医療施設を利用する患者にとって、スタッフが支援を受け、研修を受け、かつ十分な物資が確保されている場所では、感染予防・管理の順守状況がより向上することを明らかにしている。ただし、こうした課題(例えば、混雑した場所など)の多くは構造的なものであり、個々のスタッフの責任ではないという点に留意することが重要である。

本レビューでは、調査結果に基づいた一連の質問が含まれている。これは、医療従事者が、世界中に広がり、一度に多くの人々に影響を及ぼす可能性のあるCOVID-19などの疾患について、IPCガイドラインを確実に順守できるよう、医療提供者がIPC戦略の計画、実施、または管理を行う一助となることを目的としている。

エビデンスの限界

いくつかのエビデンスについては非常に信頼できるが、概してエビデンスに対する信頼度は限定的であった。これは、子どものメンタルヘルスや抱える問題について調査した研究がなかったためであり、したがって、調査結果がこうしたグループにどの程度当てはまるのかは定かではない。また、これらの研究のデータは主にパンデミックのピーク時(2020年)に収集されたものであるため、その後の段階で感染予防・管理(IPC)ガイドラインに基づく実践、研修、および個人用防護具(PPE)がどのように変化したかを知る術はない。

このレビューの更新状況

本レビューは、前回のレビュー(2020年)を更新(および拡充)したものである。2024年4月時点におけるエビデンスである。

Houghton C, Meskell P, Delaney H, Sheehan S, O Donoghue C, Glenton C, Booth A, Jorem G, Chan XHS, Devane D, Biesty LM

体外受精を受ける女性において、胚移植の前処置にはどのような効果があるか

1 month ago
主なメッセージ
  • 膀胱を充満させたり、子宮頸部から粘液を取り除いたり、あるいはアフターローディング(子宮内にカテーテルを挿入した後、そのカテーテルに胚を充填すること)を行ったりすることが、妊娠の可能性を高める効果があるかは不明であり、望ましくない影響についてもほとんど報告されていなかった。

  • 胚移植の前処置の効果に関するエビデンスの信頼性を高めるためには、さらに大規模かつ適切に設計された研究が必要である。

体外受精および胚移植とは何か

体外受精(IVF)は不妊治療のひとつである。培養室で卵子と精子を受精させ、できた胚を子宮に移植して、通常通り発育させる。胚は、腟からチューブ(カテーテル)を入れて、子宮頸部を通して子宮内に移植される。これは体外受精の過程における最後の段階であり、問題が生じる可能性が最も高い。妊娠に至るのは1/3に過ぎない。

胚移植の成功率を上げるために、臨床医はさまざまな方法を使う。例えば、女性の膀胱が充満している状態や、医師が子宮頸管粘液を取り除いた場合には、カテーテルの挿入が容易になる可能性がある。使用するカテーテルの種類によっては、まずカテーテルを留置してから胚をカテーテル内に挿入する方法(「アフターローディング」と呼ばれる)、あるいは練習として手順を一度行っておくことも、役立つ場合がある。

知りたかったこと

我々は、胚移植の前処置が、出生率、有害事象、妊娠率、流産率、および移植の難易度に及ぼす影響を明らかにしたいと考えた。

実施したこと

体外受精(IVF)を受ける不妊症の女性を対象に、胚移植の前処置を行う場合と行わない場合を比較した研究を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

胚移植を受けていた不妊症の女性計2,524名を対象とした11件の研究を特定した。これらの研究は、カナダ、米国、アルゼンチン、ブラジル、ベルギー、ギリシャ、イタリア、オランダ、スペイン、英国、トルコ、および日本で実施された。これらの研究のうち6件は、以下の前処置を調査した:

  • 膀胱を充満させる;

  • 頸管粘液を取り除く;

  • アフターローディング。

主な結果胚移植における充満した膀胱と空の膀胱との比較

膀胱が充満している場合と空の場合とでは、妊娠率、流産率、および胚移植の難易度にどのような影響があるかについては、現時点では不確実である。

  • 生児出産率:報告なし。

  • 妊娠率(2件、273名)

  • 流産率(1件、131名)

  • 移植の難易度(1件、142名)

頸管粘液を除去することと除去しないことの比較
  • 生児出産率:ある研究によると、粘液除去群では220周期あたり52例の出生、粘液除去を行わなかった群では205周期あたり42例の出生が報告された。

  • 妊娠率:妊娠率については、群間で差がほとんどないか、あるいは全くない可能性がある(1件、97名)。別の研究では、粘液除去群では220周期あたり65件の妊娠が、粘液除去を行わなかった群では205周期あたり63件の妊娠が報告された。

  • 流産率:ある研究によると、粘液除去群では220周期中15周期、粘液除去を行わなかった群では205周期中20周期であった。

  • 移植の難易度:報告なし。

アフターローディングと直接移植の比較
  • 生児出産率:報告なし。

  • 妊娠率:妊娠率については、群間で差がほとんどないか、あるいは全くない可能性がある(2件、654人)。

  • 流産率:流産率については、群間で差がほとんどないか、あるいは全くない可能性がある(1件、352名)。

  • 移植の難易度:アフターローディングと直接胚移植が移植の難易度に及ぼす影響については、現時点では非常に不確実である。ある研究では、アフターローディングにより移植の難易度が低下する可能性が報告されている(対象:352名の女性)が、別の研究では、両群とも移植の難易度に差は認められなかったと報告されている。

エビデンスの限界は何か

エビデンスの信頼性は低いか、非常に低い。利用可能な研究は限られており、その大半は小規模で、かつ古いものである。つまり、これらの個々の前処置(例:膀胱充満、粘液除去、アフターローディングなど)のうち、どれが(もしあるとすれば)有効かつ安全であるかは定かではないため、この知見は慎重に解釈すべきである。これらの前処置のいずれかが体外受精(IVF)の成果を真に向上させるかどうかを明らかにし、またそれらの潜在的な副作用をより深く理解するためには、さらなる質の高い研究が必要である。

エビデンスの更新状況

このレビューは2009年に出版されたものを2025年10月に更新したものである。

Yamaji N, Akino R, Sasayama K, Yamamoto M, Brown J, Miyamoto S, Noma H, Ota E, Hasegawa T, Farquhar C

アミノグリコシド、バンコマイシン、メトロニダゾールなどの抗菌薬は肝硬変や肝性脳症(慢性肝臓病に関連した脳障害)の人に有効か?

1 month ago
要点
  • これまで肝硬変の人が肝性脳症を発症するリスクを抑えるのに有効と考えられていた抗菌薬は、実は効果がないようである。

  • これらの抗菌薬は、この病気に対する他の治療法より多くの副作用を引き起こす可能性がある。

  • これらの抗菌薬と他の治療法を組み合わせると有用か調べる研究を行う必要がある。

肝硬変とは何か、また肝性脳症とは何か?

肝硬変とは長期的に進行する病気で、肝臓がひどく損傷を受ける。肝臓は通常、血液の浄化、栄養素の処理、感染の防御を助ける。しかし、時を経て損傷が繰り返されると、瘢痕組織(傷が治る過程で生じる、元の状態と異なる組織)が広がり、正常に機能しにくくなる。

肝硬変の人は、脳の機能が低下する肝性脳症になる可能性がある。肝性脳症を発症する仕組みは複雑だが、胃腸からの毒素、特にアンモニアという化合物の血中濃度の高まりが重要な役割を果たす。アンモニアは、主に胃腸内の細菌の活動によって胃腸で発生する。

抗菌薬は肝性脳症においてどのように作用するか?

抗菌薬は細菌が引き起こす感染症の治療に用いられる薬剤で、細菌を殺したり、その増殖を阻止したりする形で作用する。一部の抗菌薬は、胃腸でのアンモニアの生成を減らし、血中アンモニアの値を下げる可能性がある。これら抗菌薬は長年にわたって肝性脳症の治療に使われてきたが、それが実際に効いているかどうかは不明である。本レビューでは、以下の抗菌薬を調べた。

  • アミノグリコシド(ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン)

  • バンコマイシン

  • メトロニダゾール

知りたかったこと

これらの抗菌薬が肝硬変の人において肝性脳症を予防または治療するのに役立つかどうか知りたかった。死亡数、肝性脳症の症状が改善した人または改善しなかった人の数、そして重症の合併症(ある病気が原因で発症する別の病気や症状)または軽症の合併症が起きた人の数への影響を分析した。

実施したこと

アミノグリコシド、バンコマイシン、メトロニダゾールを以下のものと比較した研究を探した。

  • プラセボ、すなわち薬効がない「偽の」薬

  • 非吸収性の二糖類。これは主に消化管内で作用する糖で、消化器と肝臓の病気の治療によく用いられる。

  • 他の抗菌薬

  • 症状を緩和させる可能性のある他の活性物質

研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

参加者1,405人を対象に行われた24件の研究が見つかった。これらの研究のうち、23件は肝性脳症の 治療薬 として評価したもの、1件は発症リスクが高い人における肝性脳症の 予防 について調べたものだった。

以下の比較について、エビデンスが見つかった。

  • アミノグリコシドとプラセボ、非吸収性の二糖類、他の抗菌薬、他の活性物質(合計19件の研究)

  • バンコマイシンと非吸収性の二糖類(2件の研究)

  • メトロニダゾールと他の活性物質(3件の研究)

主な結果

死亡数

  • アミノグリコシドを用いると、他の活性物質と比べて死亡リスクがやや増大する可能性がある。

  • しかし、プラセボ、非吸収性二糖類、他の抗菌薬と比べて死亡リスクに差があるかはわからない。

  • また、以下のものの間で死亡リスクに差があるかも不明である。

    • バンコマイシンと非吸収性二糖類

    • メトロニダゾールと他の活性物質

肝性脳症:肝性脳症が改善した人の数

  • アミノグリコシドを用いても、非吸収性二糖類や他の活性物質と比べて、症状が改善する人の数には、ほとんどまたはまったく差がない可能性がある。

  • メトロニダゾールを用いても、他の活性物質と比べて、症状が改善する人の数には、ほとんどまたはまったく差がない可能性がある。

  • 以下のものを比べた場合、症状が改善する人の数に差があるかどうかわからない。

    • アミノグリコシドとプラセボまたは他の抗菌薬

    • バンコマイシンと非吸収性二糖類

重症の合併症

  • アミノグリコシドは、他の活性物質と比べて、重症の合併症のリスクをやや増大させる可能性がある。

  • 以下のものを比べた場合、重症の合併症について、なんらかの違いがあるかどうかわからない。

    • アミノグリコシドとプラセボまたは他の抗菌薬

    • バンコマイシンと非吸収性二糖類

軽症の合併症

  • アミノグリコシドを用いると、プラセボまたは他の抗菌薬と比べて、軽症の合併症のリスクがやや増大する可能性がある。

  • 以下のものを比べた場合は、軽症の合併症のリスクに差があるかどうかわからない。

    • アミノグリコシドと非吸収性二糖類または他の活性物質

    • メトロニダゾールと他の活性物質

    • バンコマイシンと非吸収性二糖類

健康関連の生活の質(QOL)に関しては、メトロニダゾールを用いた1件の研究でしか報告がなかったため、この結果(評価項目)についてはいかなる結論も出せない。

エビデンスの限界

一部の研究では、参加者がどの治療を受けていたか、参加者自身と研究者が知っており、これが結果に影響した可能性があったほか、われわれが知りたかった評価項目について報告していない研究もあったことから、本レビューの結果はほとんどまたは全く信頼できなかった。研究の規模は概して小さく、実施方法もまちまちだった。また、結果を信頼するには、研究の数が少なすぎた。

エビデンスはいつのものか?

エビデンスは2025年4月15日現在のものである。

Jeyaraj R, Zacharias HD, Vadera S, Low ZY, Gluud LL, Morgan MY

卵管閉塞(卵管がつまっていること)や卵管水腫(卵管の中に水がたまっていること)を診断するための画像検査はどの程度正確か?

1 month ago
要点
  • 超音波を使った子宮卵管造影検査(sono-HSG)、子宮卵管造影検査(HSG)、および経腟的腹腔鏡検査(THL:腟から腹腔内に内視鏡を入れて行う検査)といった画像検査は、卵管が閉塞しているかどうかを確実に確認することができる。

  • HSGは、実際には閉塞していないにもかかわらず、卵管が閉塞していると判断されることが、sono-HSGやTHLに比べて多いようだ。

  • 検査同士を比較する研究、卵管水腫に関する研究、そして磁気共鳴子宮卵管造影法(MR-HSG:MRIを使った検査)に関する研究がさらに必要である。

卵管閉塞を診断することは、なぜ重要なのか?

卵管は、卵子が卵巣から子宮へと移動する通り道である。卵管が閉塞していると、卵子と精子が出会うことができないため、妊娠できなくなる。妊娠するために適切な治療法を選ぶためには、卵管閉塞や卵管水腫の診断が欠かせない。従来、色がついた液体を使った腹腔鏡検査が行われてきたが、この方法は侵襲性が高く、費用もかかる。画像を使った代わりの検査が開発されており、これらは費用が安く、侵襲性も低く、外来診療の場で実施することができる。

どのような画像検査があるか?
  • 超音波子宮卵管造影検査(sono-HSG):子宮内に生理食塩水または泡を注入し、経腟超音波検査を使って、その液体が卵管を通過するかどうかを確認する。

  • 子宮卵管造影検査(HSG):子宮内に造影剤を注入し、X線写真を撮って、造影剤が卵管を通過するかどうかを確認する。

  • 経腟的腹腔鏡検査(THL):腟壁から腹腔内に小さなカメラを入れ、子宮内に生理食塩水を注入し、卵管を通過するかどうかを確認する。

  • 磁気共鳴子宮卵管造影検査(MR-HSG):HSGと同じように、磁気共鳴画像法(MRI)を使って、卵管の詳細な写真を撮る。

知りたかったこと

従来の腹腔鏡検査と比べて、これらの検査が卵管閉塞や卵管水腫をどの程度正確に検出できるかを明らかにしたかった。

実施したこと

これらの画像検査と従来の腹腔鏡検査とを比べた研究を探した。すべての研究結果を統合し、各検査が、卵管閉塞や卵管水腫をどの程度正確に判別できるかを確認した。

わかったこと

レビューには、計1,939人の女性を対象とした21件の研究が含まれた。

  • 超音波子宮卵管造影検査(sono-HSG)に関する8件の研究;

  • 子宮卵管造影検査(HSG)に関する8件の研究;

  • 経腟的腹腔鏡(THL)に関する3件の研究;

  • 核磁気共鳴子宮卵管造影検査(MR-HSG)に関する研究はなかった;

  • sono-HSGとHSGに関する2件の研究。

sono-HSGに関する研究のうち2件と、HSGに関する研究のうち2件だけが、卵管水腫について報告していた。

3件の研究は英語ではなかったため、オンラインで翻訳した。9件の研究では、対象者が卵管閉塞のリスクが低いのか高いのかが明確に説明されていなかった。7件の研究では、検査が訓練を受けた医療従事者によって行われたかどうかについて言及されていなかった。

卵管閉塞

Sono-HSG、HSG、THLは、卵管閉塞の診断に信頼性の高い検査である。HSGは、sono-HSGやTHLに比べて、実際には閉塞していない卵管が閉塞していると誤って判断される可能性が高い。

もし1,000人の女性を対象に、さまざまな画像検査を用いて卵管閉塞の検査を行い、そのうち182人が実際に両側の卵管が閉塞していた場合(この数値は、研究の対象者で実際に卵管閉塞が認められた頻度にもとづく)、

  • sono-HSGでは: 186人の女性が卵管閉塞と診断されるだろう。このうち、実際は卵管が閉塞してない女性が8人いる。また、卵管が閉塞していないと診断される女性は814人であり、そのうち、実際は卵管が閉塞している女性は4人いる。

  • HSGでは: 189人の女性が、卵管閉塞であると診断されるだろう。このうち、実際は卵管が閉塞していない女性が49人いる。また、卵管が閉塞していないと診断される女性は811人であり、そのうち、実際は卵管が閉塞している女性は57人いる。

  • THLでは: 181人の女性が卵管閉塞と診断されるだろう。このうち、実際は卵管が閉塞していない女性が8人いる。また、卵管が閉塞していないと診断される女性は819人であり、そのうち、実際は卵管が閉塞している女性は9人いる。

卵管水腫
  • 1件のsono-HSGの研究では卵管ごとに結果が報告されていたが、もう1件の研究では女性ごとに結果が報告されていたため、両者の結果を統合することはできなかった。

  • 2件のHSG検査では、卵管ごとの結果が報告されていた。実際に水がたまっていた卵管すべてが、正しく卵管水腫であると診断された。一方、実際には水がたまっていなかった卵管では、4%が誤って卵管水腫であると診断された。

エビデンスの限界

対象となった研究では、卵管ごとの閉塞、片側の卵管閉塞、あるいは両側の卵管閉塞について調べられていた。それぞれの検査で、これらの事項ごとに結果を報告した研究はごくわずかであったため、結論を導き出すことは困難であった。また、ある画像検査と別の画像検査を比べた研究はごくわずかであったため、どの検査が優れているかを判断することはできなかった。

エビデンスの更新状況

エビデンスは、2023年11月現在のものである。

Tros R, Kamphuis D, Rosielle K, Koks C, Mijatovic V, Bongers MY, Mol BWJ, Wang R

生殖補助医療において、子宮に移植する前の胚の発育を促すための最も効果的な溶液(培養液)は何か

1 month ago
主なメッセージ
  • 今回のアップデート版レビューでは、自然妊娠が困難な女性を対象とした生殖補助医療(ART)において、胚の発育を促進する上で重要な役割を果たす特殊な溶液(培養液)について評価を行った。現時点では、健やかな赤ちゃんを産む可能性を最も高めてくれる培養液がどれなのかは分からない。G5という胚培養液の方が、HTFという培養液よりも生児獲得率が高い可能性が示唆された研究があったが、他の研究では、異なる培養液間での成功率の差は明確でなかった。

  • 研究ごとに異なる培地が使用されていたため、エビデンスは限定的であり、それらの結果を統合することはできなかった。多くの研究で、参加者が少ないなどの弱点が見られた。どの胚培養液が最も効果的かを明らかにするためには、綿密に設計されたより多くの研究が必要である。

胚培養液とは何か

自然妊娠ができない女性は、体外受精(IVF)など、体外で卵子と精子を受精させる生殖補助医療(ART)を受けることができる。こうして作られた胚の発育を助けること(培養)は、体外受精治療の非常に重要な要素である。胚は胚培養液と呼ばれる特別な溶液に入れられる。この液体は栄養を供給し、子宮に移植されるまで、または将来使用するために凍結されるまでの胚の成長を助ける。胚培養液にはさまざまな種類がある。

どの培地が最も効果的かについて合意が得られていないのはなぜか

どの種類の胚培養液が生児獲得率を最も高めるかについて、現在のところ明確な合意は得られていない。ある培養液を別の培養液と比べて確信をもって選べるような十分に信頼性の高い情報は、現時点で利用できる研究からは得られていない。このため、医師や患者にとって、どの選択肢を選べばよいのか判断が難しい。

知りたかったこと

さまざまな種類のヒト胚培養液が、体外受精(IVF)治療を受けている女性において、赤ちゃんを授かる確率や継続した妊娠(超音波検査で心拍が確認された状態)にどのような影響を与えるのかを調べたかった。

実施したこと

体外受精(IVF)治療において使用可能なさまざまな胚培養液を比較した研究を検索した。重要だと考えるすべての指標について、研究結果を検討した。各研究の信頼性については、その研究のデザインや実施方法に基づいて検討した。各重要指標に関するエビデンスについて、その確実性をどの程度とみなすかについて判断を下した。

わかったこと

関連する研究を26件見つけ、そのうち8件が生児獲得や継続した妊娠といった最も重要な指標を評価していた。さらに進行中の研究が5件、十分な情報が含まれていない短い要約としてのみ公表されているために本調査には含めることができなかった研究が60件ある。どの研究の結果も統合することはできなかった。同じ培地を比較した研究が2つ以上なかったからである。

主な結果

本レビューの対象となった26件の研究のうち、8件(女性3,315名)が、生児獲得または継続した妊娠について報告していた。

ほとんどの研究では、比較対象とした培養液間に明確な違いは見られなかった。しかし、規模が最も大きい2件の研究では、重要な意味を持つ可能性のあるいくつかの違いが確認された。

ある研究によると、G5の場合、HTFと比較して生児獲得率が6%高い可能性が高いことが示された(対象:836人の女性)。別の研究では、GM-CSFを併用したEmbryoAssist(HSA値が低い場合、すなわち血中アルブミン濃度が低い場合)では、GM-CSFを併用しないEmbryoAssist(743名の女性)と比較して、生児獲得率が6%高くなる可能性があることが示されたが、研究期間中に治療法が変更されたことなどから、この結果は非常に不確実である。

同じ研究で継続した妊娠の率にも違いがみられた。ある研究では、G5はHTFと比較して、継続した妊娠の率を高める可能性が高いことが示唆された(対象:836名の女性)。別の研究では、GM-CSF(低HSA)を併用したEmbryoAssistは、GM-CSFを併用しないEmbryoAssist(743人の女性)と比較して、継続した妊娠の率を高める可能性があることが示唆されたが、この結果については非常に不確実である。

エビデンスは非常に限られており、不明確であるため、異なる研究の結果を統合することはできなかった。これらの知見を裏付け、特定の培養液が治療の成功率を向上させるかどうかを明らかにするためには、さらに綿密に設計された研究が必要である。

エビデンスの限界
  • 多くの研究では、対象となった女性の数がごくわずかだった。

  • 一部の研究では、研究デザインの面で問題が見られた。

  • いくつかの研究では、比較対象となる群に(女性ではなく)卵子や胚を割り当てたり、異なる研究群から同じ女性へ胚を移植したりしていた。

  • ほとんどの研究では、培養液の成分について明確に記述されていなかった。

  • 多くの研究では、重要な指標のすべてが報告されていなかった。

全体として、以下の理由により、エビデンスの確実性は概して非常に低かった。

  • これらの研究を互いに統合することはできなかった。

  • 研究結果は正確ではなかった。

  • これらの研究の結果は、必ずしも適切な方法で導き出されたとは限らなかった。

このエビデンスの更新状況

このレビューは2015年に発行されたものを更新したものである。エビデンスは2025年8月28日現在のものである。

Laverde M, Zagers M, van Wely M, Youssef M, Mastenbroek S, supported by the Cochrane Gynaecology and Fertility Review Group

うつ病や不安障害を抱える人の抗うつ薬の長期使用の中止

1 month 4 weeks ago
レビューの論点

抗うつ薬を6か月以上服用しているうつ病や不安障害の人に対して、抗うつ薬を中止することが効果的で安全であるかどうかを調べることを目的とした。

抗うつ薬の長期投与を中止するためのさまざまな方法と投与の継続を比較した。長期投与の中止による利点(成功した中止率など)と悪影響、たとえば、うつ病や不安障害のエピソードの再発(再燃)、副作用、離脱症状(抗うつ薬を中止する際に人々が経験する症状)などを検討した。

背景

抗うつ薬はうつ病や不安障害に広く使われている。ガイドラインでは、気分が良くなってから少なくとも6か月間、うつ病のエピソードを2回以上経験した場合は少なくとも2年間、抗うつ薬を継続することが推奨されている。多くの人がそれよりもはるかに長く抗うつ薬を服用しており、また抗うつ薬が不快な副作用を引き起こす可能性があるため、長期的な使用には利益を上回る害をもたらす危険がある。

研究の特性

2020年1月までの検索では、33件の研究が見つかり、4,995人の成人参加者が含まれていた。これらの研究では、ほとんどの人が再発性うつ病(抗うつ薬を中止する前にうつ病のエピソードを2回以上経験)であり、ほとんどの人が専門の精神医療サービスをとおして募集された。13件の研究では、抗うつ薬は突然中止されており、18件では、数週間かけて徐々に抗うつ薬を中止していた(「漸減」)。4件では、心理療法による支援も提供され、1件では、漸減に関する指導が記載された総合診療医(かかりつけ医)への手紙によって中止が促された。漸減の期間は、ほとんどが4週間以内であった。

主な結果

突然の中止が再発のリスクを高める可能性を示唆する非常に低い確実性のエビデンスが見つかり、抗うつ薬の継続と比較して、副作用の発生に対する影響には十分なエビデンスがなかった。

数週間かけた「漸減」が再発のリスクを高める可能性があるものの、抗うつ薬を継続した場合と比較して、同じく副作用への影響はほとんどないことを示唆する非常に低い確実性のエビデンスが見つかった。

予防的認知療法(PCT)またはMBCTを同時に提供することによって、抗うつ薬を漸減した患者群の40%から75%が抗うつ薬を中止できたことと、抗うつ薬の中止による再発への影響には差がないと考えられることを示唆するエビデンスが得られたが、確実性は非常に低いから低い範囲であった。

低い確実性のエビデンスから、かかりつけ医に送られた漸減を促す手紙や指導は、抗うつ薬を中止する人の数に影響を及ぼさない可能性があることが示唆された。

抗うつ薬を急に中止した場合や徐々に中止した場合の離脱症状については、全般的に評価されていないため、結論を出すことができなかった。

数週間以上の非常にゆっくりとした漸減法を用いた研究や、液状の抗うつ薬を漸減させた研究、テーパリングストリップ(超低用量で漸減させるためのもの)を用いた研究はなかった。

また、オンラインサポートや自助努力などの支持療法を提供しながら中止する方法を検討した研究はなかった。

エビデンスの確実性

全体として、エビデンスの確実性は「低い」から「非常に低い」の範囲にあった。これは、結果に対する信頼性が限られているか、ほとんどないことを意味しており、新たな研究によって結論が変わる可能性がある。エビデンスの確実性がこのように評価された主な理由は、試験がうつ病の再発の症状と離脱症状を区別していなかったことにある。また、ほとんどの研究が漸減を行わないか、非常に「急速な」漸減スケジュール(4週間以下)を採用しており、ほぼすべての研究が再発性うつ病(エピソードを2回以上経験)の人を対象としていた。

結論

抗うつ薬の長期投与の中止を検討した研究はほとんどなかった。これまでに研究された抗うつ薬の長期投与を中止する方法が、再発性うつ病の人に有効で安全であるかどうかは不明である。抗うつ薬をやめたいときは、医師と相談する必要がある。

今後の研究では、プライマリ・ケア(一般内科診療)を受けている人で、うつ病のエピソードが1回しかない、あるいはうつ病のエピソードが以前にはなかった人、高齢者、不安のために抗うつ薬を服用している人などを対象とすべきである。研究では、離脱症状と再発を区別することに注意しながら、抗うつ薬をゆっくりと漸減させる必要がある。

Van Leeuwen E, van Driel ML, Horowitz MA, Kendrick T, Donald M, De Sutter AIM, Robertson L, Christiaens T

心臓のリズムが正常な心不全患者にとって、抗血小板療法と抗凝固療法のどちらがより効果的か?

1 month 4 weeks ago
要点

– 心臓のリズムが正常な心不全患者にとっては、ワルファリン(抗凝固薬:タンパク質を阻害することで血液が固まるのを防ぐ薬)は、アスピリンなどの抗血小板薬(血小板を阻害することで血液が固まるのを防ぐ薬)に比べて有利な点がほとんどまたは全くないようだ。

– ワルファリンによる治療は、アスピリンやクロピドグレル(抗血小板薬)に比べて出血のリスクが高くなる。

抗凝固療法や抗血小板療法は、心不全の患者にどのような効果があるのか?

心不全の患者の中には、心房細動という不整脈が起こる人もいれば、心臓のリズムが正常(洞調律)のままの人もいる。心不全の患者は、心臓内の血流が遅くなることがあり、その場合、血液が固まって血栓ができる恐れがある。血栓は、血が固まるために必要なタンパク質(凝固因子)と粘着性の血液細胞(血小板)によって形成される。

心臓のリズムが正常な心不全患者も多くは心臓の動脈が狭くなっているため、医師はしばしば、血小板の働きを阻害して血栓をできにくくする薬であるアスピリンを処方する。また、心不全の患者は、肺や脚、脳の血管に血栓がつまる(血栓塞栓症、虚血性脳卒中などの)リスクがあり、これは障害や死につながる可能性がある。

ワルファリンのような経口抗凝固薬は、血が固まるために必要なタンパク質を阻害し、血栓をできにくくする働きがある。不整脈を伴う心不全患者においては、ワルファリンがアスピリンよりも有効であることが知られているため、すべての心不全患者(心臓のリズムが正常な患者を含む)に経口抗凝固薬を投与すべきかどうかを明らかにしようと、いくつかの研究が行われた。

知りたかったこと

心臓のリズムが正常な心不全患者において、抗凝固薬と抗血小板薬の効果に差があるかどうかを調べたかった。特に、投与された薬剤の種類によって、死亡、血栓性合併症(心臓発作や脳卒中など)、あるいは重大な出血性合併症のリスクに差があるかどうかを知りたかった。

実施したこと

心臓のリズムが正常な心不全の成人患者に対し、少なくとも1か月の間、抗血小板薬または抗凝固薬を無作為に選んで投与した研究を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や研究規模などに基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

合計4,187人が治療に参加した4件の研究をレビューの対象に含めた。

これら4件の研究では、アスピリンを服用した人とワルファリンを服用した人の間で、死亡リスクにはほとんど差がないことがわかった。また、心臓発作や脳卒中などの血栓性合併症のリスクを低くするという点でも、ワルファリンがアスピリンより優れていることを証明するのに十分なエビデンスは得られなかった。一方で、ワルファリンを服用している人が重度の出血を起こす頻度は、アスピリンを服用している人の2倍だった。1件の中規模の研究では、ワルファリンを別の抗血小板薬であるクロピドグレルとも比較して、同じような結果が出た。すなわち、死亡や血栓性合併症の発生率には差がなかったが、重度の出血を起こすリスクは高かった。

より効果的で安全な新しい薬ができない限り、この結論が今後の研究によって変わる可能性は低い。

エビデンスの限界

ワルファリンとアスピリンを比較したエビデンスは、血栓性合併症や出血の症例が少なく、また死亡リスクに関する結果の確実性を判断するのに十分な数の研究がなかったため、その信頼度は中程度にとどまる。

ワルファリンとクロピドグレルを比較したエビデンスは、ごく少数の症例のみに基づいており、その結果の確実性を判断するのに十分な数の研究がなかったため、その信頼性は非常に低い。

エビデンスの更新状況

これは、以前に発表されたレビューの更新版である。エビデンスは、2025年4月現在のものである。

Kozieł-Siołkowska M, Shantsila E, Shantsila A, Lip GYH

マクロライド系抗生物質を使うと、早産児がかかる慢性的な肺疾患の予防に対してどんな効果があるか?

2 months ago
要点
  • 気管支肺異形成症は、肺の発達が十分でない早産児によく見られる長く続く肺の病気である。生後72時間以内に気管に管を入れて行う人工呼吸を必要とする、妊娠32週未満で生まれた赤ちゃん(超早産児・極早産児)や体重が1500g未満で生まれた赤ちゃん(極低出生体重児)に、気管支肺異形成症を予防するためにマクロライド系抗生物質を使うことの安全性と有効性については、現時点では明らかではない。

  • 今後の研究では、マクロライド系抗生物質が長期的な評価項目に与える影響や、気管支肺異形成症のリスクがあるか気管支肺異形成症になった他の赤ちゃんへの使用について調べることが必要である。また、マクロライド系抗生物質の投与期間についても、もっと研究が必要である。

気管支肺異形成症とは

とても早く生まれた赤ちゃんやとても小さく生まれた赤ちゃんは、気管支肺異形成症になるリスクがある。これは、肺の発達が十分ではない早産児によく見られる長く続く肺の病気である。症状は軽度から重度までさまざまで、肺にある小さな袋(肺胞)が炎症を起こしてふくれ、呼吸がしづらくなる。この病気になった赤ちゃんは、自宅での酸素療法が必要な場合がある。幼児期には、呼吸器感染症をくり返したり、喘息になったりしやすい。とても早く生まれ、気管に管を入れて人工呼吸をする必要があった赤ちゃんは、肺の炎症が長引いたり肺の病気にかかったりするリスクが高くなる。

気管支肺異形成症の予防法

気管支肺異形成症を予防する一つの方法として、生まれてすぐに気管に管を入れる必要がある赤ちゃんに対して、マクロライド系抗生物質を一定期間投与することがある。マクロライド系抗生物質は、肺の炎症を抑えるはたらきを持つ抗生物質の一群である。マクロライド系抗生物質には、アジスロマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどがある。これらの薬は、成人では、肺の組織が硬くなって(線維化)息切れを起こす病気(肺気腫)や息の流れが悪くなって呼吸が苦しくなる病気(慢性閉塞性肺疾患)、子どもでは、肺に粘り気のある粘液がたまる病気(嚢胞性線維症)など、他の肺の病気の治療にも使われていて、呼吸機能の改善や、咳や喘鳴などの胸の症状をやわらげるのに役立っている。

知りたかったこと

マクロライド系抗生物質を使うことが、超早産児・極早産児や極低出生体重児に役立つかどうかを知りたかった。具体的には、マクロライド系抗生物質の静脈内投与や胃内投与が、プラセボ(偽薬)または無治療と比べて、以下の評価項目にどのような影響を与えるかを明らかにしたかった。

  • 気管支肺異形成症

  • 死亡退院(退院できずに亡くなること)

  • 胃腸の不調(下痢や嘔吐)

  • 肝機能障害

  • 不整脈

  • 幽門狭窄(胃から十二指腸へと続く出口が厚くなって狭くなること)

  • 生まれてすぐに肺の炎症を治療するためにステロイドを使う必要性

実施したこと

生まれてすぐに気管に管を入れる人工呼吸が必要だった超早産児・極早産児または極低出生体重児(あるいはその両方)を対象に、気管支肺異形成症の予防を目的として、マクロライド系抗生物質の投与をプラセボまたは無治療と比較検討した研究を検索した。特定した研究結果を比較、要約し、研究方法や質などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

生まれてすぐに人工呼吸を行った早産児を対象に、マクロライド系抗生物質の投与とプラセボまたは無治療とを比べた研究を6件(対象者1,108名)確認した。未発表または未完了の研究が5件進行中である。著者から結果のデータを受け取るのを待っているために、1件の研究が分類待ちの状態である。

対象となった6件の研究のうち5件では、アジスロマイシンを静脈内に投与した。そのうち2件の研究では、6週間投与されていた(完全経口栄養が可能になるまで静脈内投与を行い、その後は胃に入れた栄養チューブを使った胃内投与に切り替え)。他には、10日間、5日間、3日間投与された研究がそれぞれ1件ずつあった。残る1件の研究では、エリスロマイシンを静脈内に7日間投与した。

主な結果

生まれてすぐに人工呼吸を行った早産児を対象に、マクロライド系抗生物質(アジスロマイシン)を使うと、プラセボまたは無治療と比べて、以下の効果が期待される:

  • 気管支肺異形成症の診断にはほとんど、あるいは全く影響を与えない。

  • 退院前の死亡率をわずかに下げる。

  • 胃の不調を減らす。

  • マクロライド系抗生物質によるその他の副作用(肝機能障害、不整脈、幽門狭窄など)には、ほとんど、あるいは全く影響を与えない。

  • 生まれてすぐに肺の炎症を治療するためにステロイドを使う必要性を減らす。

エビデンスの限界

ほとんどのエビデンスの信頼性が低いため、この分野における今後の研究によって、結論が変わるかもしれない。エビデンスの信頼性を下げた主な要因は3つある。まず、厳格な選定基準によって、対象となる研究と赤ちゃんの数が限られてしまった。第二に、最初の研究から最後の研究が行われたまでの期間が30年間にわたっているので、その間に病気の赤ちゃんのケアや肺の病気の定義がとても大きく進歩していて、有意義な結果を得ることは難しかった。最後に、6件の研究のうち5件ではアジスロマイシンが使われ、残る1件ではエリスロマイシンが使われていたため、この結果が他のマクロライド系抗生物質にも当てはまるかどうかは断定できない。

本エビデンスはいつのものか?

エビデンスは、2025年6月現在のものである。

O’Connor KL, Cracknell J, Cooper C, Davies MW

断続的断食、従来の食事指導、あるいは何も治療を受けないこと―これらの中で、過体重や肥満の成人が減量するには、どれが最も効果的か?

2 months ago
要点
  • 従来の食事指導(カロリー制限や食事内容の変更など)と比べると、断続的断食は、過体重や肥満の成人の体重減少や生活の質にほとんど影響を与えないかもしれない。望ましくない事象に関する結果については、確信が持てない。

  • 指導を受けない場合や待機者リストに登録されている場合など何も治療をしないことと比べると、断続的断食は、体重減少にほとんど影響を与えない可能性がある。生活の質や望ましくない事象(疲れやすさや頭痛、体調不良など)に関するエビデンスについては、確信が持てない。

  • 断続的断食に対する人々の満足度、糖尿病の状態、あるいは他の健康問題に関する総合的な指標について報告している研究はなかった。これらを解明するためには、さらなる研究が必要である。

肥満とは何か、そして断続的断食はどのように役立つのか?

肥満とは、体脂肪が多く、健康にとって良くない状態である。体重に関連する合併症を引き起こし、2型糖尿病などの重篤な病気や死亡のリスクを高める可能性がある。世界的に肥満が増加しており、医療制度に大きな負担をかけている。減量は、過体重や肥満による健康リスクや社会への影響を減らすための最も良い手段である。従来の食事指導には、カロリー制限をすることやより健康的な食品を摂取し、タンパク質・炭水化物・脂質の摂取量を調整し食習慣を変えることが含まれる。断続的断食は、減量のための比較的新しい方法である。これは、ほとんど食べない、あるいは全く食べない期間(断食)と、通常通り食べる期間を交互に繰り返すものである。断続的断食には、毎日決まった時間帯にだけ食べる方法(時間制限食)、週の特定の日に断食をする方法(周期性断食)、あるいは通常通りに食べる日とごく少量しか食べない日を交互に行う方法(隔日断食)など、さまざまな種類がある。断続的断食は、一部の身体機能が良くなることで全体的な健康状態を改善する可能性があるが、一方で、疲れやすさや頭痛、吐き気などの望ましくない症状を引き起こすこともある。

知りたかったこと

過体重や肥満の成人にとって、断続的断食が従来の食事指導よりも減量に効果的かどうかを調べたかった。また、人々の生活の質や糖尿病の状態、血中脂質値にどのような影響があるか、そして副作用があったかどうかについても調べたかった。

実施したこと

18歳以上で、過体重または肥満の人を対象に、断続的断食をする・従来の食事指導を受ける・何も治療を受けないか待機者リストに登録されているの各群に、無作為に割りつけた研究を検索した。(待機者リストの群は、治療を受ける予定だが、すぐには開始しない群である。研究では、すぐに治療を受けた群と比べられた)。糖尿病や腎臓病などの肥満に関連した疾患の有無に関わらず、過体重または肥満の人々を研究の対象として含めた。

わかったこと

自宅や地域社会で治療を受けた1,995人を対象とした、22件の研究が見つかった。研究は、ヨーロッパ、北米、中国、オーストラリア、および南米で行われていた。

従来の食事指導と比べて 、断続的断食は、開始時の体重からの変化でみた減量(21件の研究、1,430人)と生活の質(3件の研究、106人)について、ほとんど影響がないかもしれない。体重を5%減少させる効果(4件の研究、472名)や有害事象(7件の研究、619名)への影響については、現時点では明らかではない。

何も治療をしないか待機者リストの群と比べて 、断続的断食は、減量にほとんど影響を与えない可能性がある(6件の研究、427名)。生活の質(1件の研究、60名)や有害事象(2件の研究、189名)への影響については、現時点では明らかではない。

対象となった研究のいずれも、断続的断食に対する人々の満足度、糖尿病の状態、あるいはその他の健康問題に関する総合的な指標については報告していなかった。

エビデンスの限界

断続的断食と何も治療をしないこととを比べた場合の減量効果に対する結果については、中程度の信頼性がある。一方、その他の検討項目については、信頼性は「低い」から「極めて低い」である。これは、対象となった研究の多くが方法論的に弱点があり(最も厳密な方法を使用していない)、研究の対象者数が少なく、報告された結果が決定的ではなかったからである。

レビューの更新状況

エビデンスは、2024年11月5日現在のものである。

Garegnani LI, Oltra G, Ivaldi D, Burgos MA, Andrenacci PJ, Rico S, Boyd M, Radler D, Escobar Liquitay CM, Madrid E
Checked
11 hours 50 minutes ago
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