Latest Japanese Reviews

統合失調症がある人に対する磁気けいれん療法の利益とリスクは?

10 months 1 week ago
統合失調症がある人に対する磁気けいれん療法の利益とリスクは? 要点 統合失調症がある人に対する磁気けいれん療法(MST)の利益とリスクを評価するには、データが不足している。 これを調査するにはさらに多くのより良い研究が必要である。 統合失調症とは? 統合失調症は、最も一般的で障害を伴う精神疾患の1つである。統合失調症がある人は、現実にもかかわらず歪んだ信念を持ったり、自分の心が作り出した声を聞いたり、他人や自分自身を思いやることに関心がなかったりするなど、病気のために普通の生活を送ることが困難になることがある。 統合失調症がある人にとって、なぜこのことが重要なのか? ほとんどの統合失調症がある人は抗精神病薬による治療を受けている。抗精神病薬にうまく反応しない患者や代替療法を希望する患者には、電気けいれん療法(ECT)が効果的で安全な選択肢となりうる。この治療法は、麻酔をかけた人の脳に電流を流してけいれんを起こさせるもので、こうすることで精神症状が改善または緩和される。しかし、ECTには一時的な記憶喪失や治療後の混乱といった副作用があり、そのため使用には制限がある。磁気けいれん療法は新しい非侵襲的脳刺激法の一つで、ECTのようにけいれんを誘発するが、電流ではなく磁場エネルギーで作用するため、理論的には治療後の記憶喪失や混乱のリスクは少ない。 調べたかったこと MSTが統合失調症があ...

多発性硬化症に対するアレムツズマブ

10 months 1 week ago
多発性硬化症に対するアレムツズマブ 要点 - アレムツズマブは、再発寛解型多発性硬化症(MS)、つまり症状が悪化(再発)した後で回復(寛解)するタイプのMS患者に対して、インターフェロンβ-1a皮下投与と比較して、再発および病勢進行のリスクを低下させる可能性がある。 - 今後、生活の質(QOL)や疲労などの患者関連アウトカムを評価するために、十分にデザインされた研究が必要である。 論点 多発性硬化症(MS)は、若年成人および中年成人が発症する神経系の慢性疾患である。ミエリン鞘(神経を覆って保護する膜)や神経の他の部分に繰り返し損傷を受けると、重篤な障害につながる可能性がある。MSは免疫系の問題に関連している可能性がある。アレムツズマブは生物学的製剤(抗体の一種)であり、すでに他の疾患にも使用されている。 知りたかったこと あらゆるタイプのMS患者に対して、アレムツズマブ単独使用または他の治療薬に起因する利点と望ましくない影響(有害事象と呼ばれる)を調査することを目的とした。アレムツズマブが、MSがある人に対して他の治療薬よりも優れているかどうかを調べたかった。 実施したこと MSの病型を問わず、アレムツズマブに関する研究を検索した。2020年10月までの文献を検索した。レビューに組み入れた研究の結果を分析・比較し、利用可能なエビデンスにどれだけの信頼性があるかを評価した。 わかっ...

小児・青少年における性的虐待の影響を治療するために用いられる心理的介入は、どの程度効果的なのか。

10 months 1 week ago
小児・青少年における性的虐待の影響を治療するために用いられる心理的介入は、どの程度効果的なのか。 要点 - 小児や若者が性的虐待の影響を克服するのを助けるために、多くの心理療法が用いられている。 - 小児や若者が性的虐待から立ち直る上で、特定の介入が通常の管理よりも優れていることを示すエビデンスはほとんどない。 - 性的虐待のさまざまな影響に対処するうえで、ある介入が他の介入よりも優れているかどうかを立証するために、介入に関するより多くの、より良い研究を必要としている。 心理的介入とは何を意味するのか? 心理学的介入とは、人々に変化をもたらそうとするものである。これらはしばしば「トーキングセラピー」と呼ばれるが、セラピストと患者のコミュニケーションが遊びや芸術などの活動に基づいて行われるセラピーも含まれる。 性的虐待を受けた小児や若者が、虐待の結果として生じるさまざまな困難、たとえば心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安、抑うつ、さまざまな行動上の問題などを克服できるように、さまざまな心理的介入が行われている。 性的虐待を受けた小児や若者にとって、なぜこれが重要なのか? これまでの系統的レビューでは、心理療法が小児における結果(評価項目)を改善することが示唆されているが、特定の療法が他の療法よりも効果的かどうかはわかっていない。 調べたかったこと 性的虐待の後に起こりうるさまざ...

中高年における認知症の複数のリスク因子の存在を評価するツールはどのようなものがあり、将来の認知症を正しく予測することができるのだろうか?

10 months 2 weeks ago
中高年における認知症の複数のリスク因子の存在を評価するツールはどのようなものがあり、将来の認知症を正しく予測することができるのだろうか? 要点 - 中高年を対象に、将来の認知症を予測する14種類のツールが見つかった。 - 7件の研究では、「心血管リスク因子、加齢、認知症:Cardiovascular Risk Factors, Ageing, and Dementia(CAIDE)」と名付けられた予測ツールがテストされた。 - これらのツールを用いて認知症を予測することの利益は、質の高いエビデンスがほとんどないため、不明である。 認知症とは? 認知症とは、一般的に高齢者が罹患し、記憶、問題解決、日常生活動作に進行性の問題を引き起一連の脳疾患を指す。高血圧、過度のアルコール摂取、喫煙、うつ病、運動不足、食生活の乱れなど、中年期に特定の健康状態や行動をとっている人は、その後の人生で認知症を発症する可能性が高い。生活習慣を改善するなどの対策で、これらの健康状態や行動を軽減することができるため、これらの健康状態や行動を認知症の「修正可能なリスク因子」として分類している。 予測ツールとは何か? 予測ツールを開発するために、研究者たちは、そのようなリスク因子を持つ人々の何割が認知症になるかを何年にもわたって観察する。このツールは、中年期のリスク因子の有無に基づいて、晩年認知症になる可能性の高...

インターロイキン-6(身体の免疫系が過剰に反応する際に関与するタンパク質)を阻害する薬は新型コロナウイルス感染症の治療薬として有効か?

10 months 2 weeks ago
インターロイキン-6(身体の免疫系が過剰に反応する際に関与するタンパク質)を阻害する薬は新型コロナウイルス感染症の治療薬として有効か? 主要な結果 トシリズマブ(インターロイキン-6(IL-6)を阻害する薬)が、治療後28日以内に新型コロナウイルス感染症で死亡する入院患者数を減少させることを確信している。しかし、おそらく臨床的改善(退院または新型コロナウイルス感染症の症状の改善と定義)にはほとんど差がない。 サリルマブによる臨床的改善効果は、おそらくほとんど差がない。 他のIL-6遮断薬を評価した研究はほとんど見つからなかった。したがって、その効果については不確かである。 少数の研究は結果を発表していない。これらの研究で扱われた人数は比較的少なく、その結果が現在の結果を変えることはないだろう。 IL-6とは何か、そして新型コロナウイルス感染症におけるIL-6の役割とは何か? IL-6はサイトカインと呼ばれるタンパク質の一種で、体の免疫系を調整する働きがある。特にIL-6は、ウイルスなどの有害物質から体を守るために、体が感染症を認識し、それと闘うのを助けるために炎症を誘発する。 新型コロナウイルス感染症に罹患すると、免疫系の反応が乱れ、過剰反応を引き起こす可能性がある。身体がこの反応の一部としてIL-6を作り続けると、身体にダメージを与える高レベルの炎症が生じる可能性がある。その結...

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、自閉スペクトラム症に関連する中核的障害を軽減するか?

10 months 2 weeks ago
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、自閉スペクトラム症に関連する中核的障害を軽減するか? 要点 現在のところ、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が自閉症の中核的特徴の治療に有効かどうかは不明である。というのも、ほとんど研究が行われていないからだ。特定した2件の研究は小規模で、結果もあまり報告されていなかった。しかし、この分野では現在進行中の研究が数多くある。 自閉スペクトラム症とは何か? 自閉スペクトラム症(自閉症)は、人の考え方、感じ方、他者との関わり方、環境の体験の仕方に影響を及ぼす疾患である。自閉症の中核的な行動には、興味の共有の減少、非言語的コミュニケーションの困難(例えば、アイコンタクトの少なさ)、人間関係の形成と維持の困難、制限された、あるいは反復的な行動や興味が含まれる。これらの行動の程度はさまざまだが、日常生活や活動への参加を妨げることに変わりはない。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(神経伝達物質の正常な分解を阻害する化学物質)と呼ばれる薬は、アルツハイマー病の治療に使用されてきた(例えば、ドネペジルやガランタミン)。最近では、この薬剤が自閉症の人たちに見られる困難を軽減する可能性も示唆されている。 調べたかったこと アセチルコリンエステラーゼ阻害薬単独あるいは他の薬との併用は、プラセボ(偽薬)と比較して、自閉症の中核的特徴(社会的コミュニケーションと相互作用、制限...

早産児の壊死性腸炎予防のためのプレバイオティクス

10 months 2 weeks ago
早産児の壊死性腸炎予防のためのプレバイオティクス レビューの論点 超早産児や超低出生体重児にプレバイオティクスを投与すると壊死性腸炎を予防できるか? 背景 超早産児(予定日より8週以上早く生まれた児)および超低出生体重児(1.5kg未満で生まれた児)は、腸の粘膜の一部が炎症を起こして死に至る重篤な疾患である壊死性腸炎を発症するリスク(危険)がある。この疾患は、死亡、重篤な感染症、長期にわたる障害や発達障害を伴う。壊死性腸炎を予防する1つの方法として、プレバイオティクス(健康な「プロバイオティクス」細菌による腸内コロニー形成をサポートする難消化性の糖鎖)をミルクに添加することが考えられる。 実施したこと 超早産児または超低出生体重児の壊死性腸炎のリスクに対するプレバイオティクスの効果を調べた試験を検索した。試験結果を比較・要約し、試験方法や規模などの要因に基づいて、科学的根拠(エビデンス)の確実性を評価した。 わかったこと 合計705乳児例を対象とした6試験を同定した。臨床試験はほとんどが小規模で、ほとんどにデザイン上の欠陥があり、結果にバイアスが生じている可能性がある。 主要な結果 複合解析の結果、超早産児や超低出生体重児にプレバイオティクスを投与しても、壊死性腸炎や死亡、重篤な感染症のリスクにはほとんどまたは全く差がないかもしれないが、そのエビデンスの確実性は低い。1件の試験で...

糖尿病治療の質を向上させるための戦略:成人の糖尿病の結果に及ぼす影響

10 months 2 weeks ago
糖尿病治療の質を向上させるための戦略:成人の糖尿病の結果に及ぼす影響 要点 - 品質向上プログラムは、特に複数の戦略を組み合わせた場合に、糖尿病治療を改善することができた。 - これらのプログラムで使用され、糖尿病患者の主な治療結果を最も大きく改善した戦略は、ケースマネジメント、チームの変更、患者教育、および自己管理の促進であった。 なぜ、糖尿病治療の向上が重要なのか? 糖尿病とは、体内における糖代謝の障害であり、心疾患や失明などの合併症を引き起こす可能性がある。患者が最善の治療を受けることができれば、これらやその他の合併症のリスクは低くなる。残念ながら、患者の多くは最善の治療を受けていない。 品質向上戦略とは何か? さまざまな戦略を用いた品質向上プログラムは、医療従事者の治療の向上に有用である。本レビューでは、一般的な12種類の品質向上戦略について検討を行った。 - 医療従事者に対しては、監査とフィードバック、教育、注意喚起、および金銭的な報酬の4種類の戦略が用いられた。 - 糖尿病がある人に対して以下の3種類の戦略が用いられた:教育、注意喚起、および自己管理の促進。 - 医療機関に対しては、ケースマネジメント、チームの変更、電子的患者レジストリ、臨床情報の円滑な伝達、継続的な質の向上の5種類の戦略が用いられた。 何を調べようとしたのか? 以下の項目の改善に最も効果的な戦略を明...

消化管手術を受けた正期産児にラクトフェリンを投与することの利点とリスクは何か?

10 months 3 weeks ago
消化管手術を受けた正期産児にラクトフェリンを投与することの利点とリスクは何か? 要点 消化管の手術を受けた正期産(妊娠37週以降)の赤ちゃんにラクトフェリン(牛乳に含まれるタンパク質)を与えることの影響を調査した医学的研究は見つからなかった。 ラクトフェリンとは何か? ラクトフェリンは牛乳に含まれるタンパク質で、感染症から身を守る働きがある。ラクトフェリンのサプリメントも販売されており、未熟児を対象に研究されている。ラクトフェリンが未熟児の感染症を予防するというエビデンスがいくつかある。 赤ちゃんの消化管手術のリスクにはどのようなものがあるか? 消化管の手術は感染のリスクを高める。感染症は入院期間を長くする。抗生物質(細菌感染と闘う薬)による治療や手術によるストレスは、消化管内の善玉菌を混乱させる可能性がある。 知りたかったこと 正期産児の消化管手術後にラクトフェリンを投与することで、感染症や死亡率が減少し、消化管内の善玉菌の存在が改善されるかどうかを調べたかった。 何を行ったのか? 消化管手術を受けた乳児を、ラクトフェリンまたはプラセボ(薬を含まないが、試験中の薬と見た目や味が同じ「ダミー」治療薬)に無作為に割り付けた研究を検索した。 わかったこと 消化管手術を受けた正期産児にラクトフェリンを投与してプラセボと比較した研究は見つからなかった。この疑問に答えるためには、十分にデザ...

肥満と新型コロナウイルス感染症の有害な結果

10 months 3 weeks ago
肥満と新型コロナウイルス感染症の有害な結果 肥満が新型コロナウイルス感染症の結果に与える影響は何か? 要点 ・BMIが40kg/m 2 を超える極度の(病的)肥満の場合、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率や、人工呼吸器の装着、入院、およびICUにおける治療の必要性を高めるという知見を支持する十分なエビデンスが存在する ・肥満患者の場合、多くは人工呼吸器が必要となる ・BMIが高いほど、COVID-19の重症化率が高くなる 肥満とは何か? 肥満とは、人体のさまざまな部位に異常または過剰に脂肪が蓄積した状態であり、健康上のリスクをもたらす。肥満の評価には、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った体格指数(BMI)などの指標が用いられている。WHOは、肥満を3つのクラスに分類している。この分類によると、クラスⅠの肥満は、BMI(kg/m 2 )が30以上35未満、クラスⅡは35以上40未満、クラスⅢは40以上である。 何を調べようとしたのか? 肥満が、死亡率、人工呼吸器の必要性、入院の必要性、ICUでの治療の必要性、症状の重症化、およびCOVID-19に関連した肺炎に影響を与えるかどうかについて調査を行った。 何を行ったのか? 2019年12月から2021年4月にかけて、肥満と死亡率およびその他の結果との関連を調査したエビデンスについて、医学データベースでの系統的検...

うつ病の治療薬は禁煙に有効か?

10 months 3 weeks ago
うつ病の治療薬は禁煙に有効か? 抗うつ薬とは何か? 抗うつ薬とは、うつ病の治療に用いられる薬やサプリメントである。その中には、禁煙に効果があるかどうか検証されている薬もある。ブプロピオン(ザイバンも呼ばれる)とノルトリプチリンという2つの薬が、禁煙を支援するために処方されることがある。 本コクランレビューの実施理由 喫煙の健康への悪影響は非常に大きい。喫煙者にとって、禁煙は健康増進のためにできる最善の選択である。しかし、禁煙は難しいと感じる人も多い。そこで、抗うつ薬を使うことで禁煙(6ヶ月以上)を成功させることができるか、また、これらの薬を使うことでどのような有害性があるかを調査することにした。 着目した点 - どれくらいの人が少なくとも6ヶ月禁煙できたか - どれくらいの人が好ましくない影響を受けたか 実施したこと 禁煙を支援するための抗うつ薬の使用を検討した研究を検索した。 治療が無作為に決定されるランダム化比較試験を検索した。このような研究方法(ランダム割付)は、治療効果について最も信頼性の高いエビデンスが得られるとされている。有害性についてはどのような観察期間の研究であっても対象としたが、禁煙に成功したかどうかの評価については少なくとも6ヶ月以上の観察期間の研究を採用した。 どのような研究が見つかったか? このレビューでは、禁煙のために抗うつ薬を使用した場合に、異なる抗う...

歯科矯正治療後の歯の正しい位置を保つための最適な方法は何か?

10 months 3 weeks ago
歯科矯正治療後の歯の正しい位置を保つための最適な方法は何か? 要点 - エビデンスの信頼性が低いため、歯の位置を固定(保定)するための最善の方法については、明確な結論を出すことはできない。 - より適切に計画された研究が必要である。少なくとも2年を超える期間における歯の位置の安定性、保定装置(リテーナー)の耐久性、患者の満足度、およびリテーナーによる有害事象(う蝕や歯周病など)の評価をする必要がある。 論点 歯科矯正治療後に、歯の位置が後戻りしてしまうことがある。矯正歯科医は、治療後の歯の位置を保つ(保定する)ために、さまざまな方法を用いて、後戻りを防止する。保定装置(リテーナー)は、通常、ワイヤーや透明なプラスチック等で個人に合わせて製作され、取り外しのできないもの(固定式リテーナー)または取り外しが可能なもの(可撤式リテーナー)に分類される。可撤式リテーナーは、常時または任意の時間での装着が可能である。リテーナーは、歯列全体や歯の周囲、または歯の裏側に装着される。場合により、歯と歯の間を削る処置(歯間削合)や、歯と歯肉をつなぐ線維を切断する処置(歯周靭帯の切離)などの補助的な処置が行われることもある。 何が知りたかったのか? 歯科矯正治療後の歯の位置を保つための最適な方法と、有害事象の有無について調査することを試みた。 何を行ったのか? 歯科矯正治療後に使用した異なる種類のリ...

肝移植後の成人に対する運動介入

10 months 4 weeks ago
肝移植後の成人に対する運動介入 背景 肝移植を受けた場合、身体活動レベルが低下する傾向にある。しかし、心臓や肺の病気、高血圧、2型糖尿病、認知症、非アルコール性脂肪性肝疾患(肝臓に脂肪が蓄積して起こる病気)、がん、およびその他の急速に発症し、生命を脅かす可能性のある病気の発症を防ぐための運動介入の有益性と有害性については、まだ十分に研究されていない。 何を調べようとしたのか? 肝移植後の成人における運動の有益性と有害性を明らかにしようとした 何を行ったのか? 肝移植のレシピエント(移植を受ける患者)を対象に、あらゆる種類の運動について、運動を行わなかった場合、偽の介入を行った場合、および他の種類の運動を行った場合と比較した、適切にデザインされた臨床試験について、医学データベースの検索を行った。 何が見つかったのか? 合計241人の参加者を対象とした3件のランダム化(臨床)比較試験が見つかり、試験が終了できていた参加者は199人であった。ランダム化比較試験とは、参加者を実験群と対照群に無作為に割り付ける研究である。研究は、米国、スペイン、およびトルコで実施されていた。運動の期間は、2か月、6か月、または10か月と異なっていた。すべての研究は、運動療法に基づいた介入を通常の治療と比較したものであった。すべての研究は、肝移植を受けた成人を対象としていた。3件の研究では、さまざまな運動介...

ホルモン剤による避妊をしていない人と比較した、ホルモン剤による避妊をしている人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった時に血栓を発症する確率

11 months ago
ホルモン剤による避妊をしていない人と比較した、ホルモン剤による避妊をしている人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった時に血栓を発症する確率 論点 COVID-19になった人の、心臓発作や脳卒中を含む血栓の発生やその他の重篤な結果に対するホルモン剤による避妊法の影響に関するエビデンスを検討した。エストロゲンとプロゲスチンの両方を含む避妊薬を服用している人と、ホルモン剤を使用しない避妊をしている人、プロゲスチンだけを含む避妊薬を服用している人を比較検討したいと考えた。該当する研究は5件しか見つからなかった。 背景 ホルモン剤による避妊、特にエストロゲンを含む避妊薬の使用は、足や肺に血栓ができる可能性を高めたり、脳卒中になる可能性を高めたりすることがある。また、COVID-19の発症により、足や肺に血栓ができることも確認されている。ホルモン剤による避妊をしている人がCOVID-19になった場合、血栓ができる可能性が高いかどうかはわかっていない。ホルモン剤による避妊をしている人がCOVID-19陽性になった場合、避妊薬の使用を止めるべきか、違う避妊法に切り替えるべきかを知ることができるよう、さらなる研究が必要である。 研究の特性 2022年3月までに発表された研究を対象とした。避妊をした人(特に、ホルモン配合剤のようにエストロゲンを含む避妊薬を使用した人)における、避妊...

医療従事者の職業性ストレスを軽減するための個人レベルの介入

11 months ago
医療従事者の職業性ストレスを軽減するための個人レベルの介入 要点 - ストレスの経験に注意を向ける(思考、感情、行動に注意を向けるなど)、またはストレスの経験から意識を遠ざける(運動する、リラックスするなど)個人レベルの介入は、介入後1年まで医療従事者のストレスを軽減する可能性がある。 - 個人レベルの介入を組み合わせることで、介入から2、3か月後まではストレスが軽減される可能性がある。 - 個人レベルで仕事関連の危険因子に焦点を当てた介入がストレスに効果があるかどうかはわからない。 ストレスとは何か? 現在のところ、(仕事に関連した)ストレスの明確な定義はない。このレビューは、ストレスレベルが低い医療従事者から、 うつ状態や不安につながるかもしれないが、必ずしもうつ状態や不安を生じるとは限らない、中等度の苦痛や燃え尽き症候群の医療従事者についてのものである。ストレスを抱える人は、頭痛や筋肉の緊張、痛みといった身体的症状だけでなく、集中力の低下といった精神的症状も経験する。また、行動的な問題(他人との衝突など)や情緒的な問題(情緒不安定など)を抱えることもある。 医療従事者のストレスに対して何ができるか? 医療従事者のストレスは、組織レベルだけでなく、個人レベルでも取り組むことができる。個人レベルでのストレス管理介入は、以下を目的としている: - 例えば、認知行動療法や対処技能訓...

新生児の気管内挿管にビデオ補助(ビデオ喉頭鏡)を使用することは、手技の成功と安全性を高めるか?

11 months ago
新生児の気管内挿管にビデオ補助(ビデオ喉頭鏡)を使用することは、手技の成功と安全性を高めるか? 要点 ビデオ喉頭鏡の使用は、初回の気管内挿管成功率を高め、ケア提供者が病気の新生児の気管内挿管を施行する回数をわずかに減らす結果になるかもしれないが、気管内挿管にかかる時間を短縮するわけではない。 ビデオ喉頭鏡の使用では、挿管時の新生児の気道の傷がわずかに少ないと思われる。 さまざまな診療領域で、さまざまなケア提供者が配置を行う場合のビデオ喉頭鏡の役割を理解するために、より良い研究が必要である。 何が問題なのか? 新生児の100人に1人は、呼吸が困難な場合、口か鼻に呼吸用チューブを挿入して(気管内挿管)命をつなぐ必要がある。新生児は口や気道が小さいため、直接喉頭鏡を使って(ビデオなしで)呼吸用チューブを挿入するのは難しいかもしれないし、すべてのケア提供者が経験を積んでいるわけではない。 ビデオ喉頭鏡法とは何か? ビデオで気道を見ながら気管内挿管を行うことを、ビデオ喉頭鏡法という。そうすることで、呼吸チューブの挿入がより簡単で安全になる。これはまた、トレーニングを受けている人がこの救命技術を習得する際にも役立つだろう。 何を調べようとしたのか? 生後0日から28日の乳児を対象に、直接喉頭鏡法よりもビデオ喉頭鏡法の方が、呼吸チューブの挿入の成功と安全性が高まるかどうかを調べようとした。 何...

抗うつ薬は慢性的な痛みの治療にどの程度有効であり、また有害事象を引き起こすか?

11 months 1 week ago
抗うつ薬は慢性的な痛みの治療にどの程度有効であり、また有害事象を引き起こすか? 要点 ・信頼性のある効果を示した抗うつ薬はデュロキセチンのみであった。標準的な用量(60mg)で有効性が認められ、それ以上の用量を使用することの有益性はなかった。 ・抗うつ薬の有害事象については、データが非常に不足していたため、不明であった。そのため、今後の研究によって対応していく必要がある。 ・慢性疼痛に対しては、他の抗うつ薬を投与する前に、まず標準用量のデュロキセチンを検討してもよいと思われる。 ・個人に合わせたアプローチを行うことが重要である。痛みは非常に個人的な感覚であり、エビデンスが決定的でないか、あるいは得られていない場合でも、特定の薬剤が有効である可能性がある。今後の研究では、抗うつ薬の有害事象に焦点を当て、より長期間の研究を行う必要がある。 慢性的な痛み(慢性疼痛)とは何か? 慢性疼痛とは、3か月以上続く痛みのことである。世界の3分の1以上の人口が慢性疼痛を経験している。慢性疼痛は、気分や幸福感、または仕事や日常業務の遂行能力に影響を与えることが多い。 抗うつ薬は慢性疼痛に対してどのように作用するのか? 抗うつ薬は、元来うつ病を治療するために開発された薬である。抗うつ薬の種類によって作用をもたらす仕組み(作用機序)は異なり、同様の作用機序を持つ抗うつ薬はいくつかの種類にまとめられている...

中低所得国における有害なアルコール使用削減のための介入策

11 months 1 week ago
中低所得国における有害なアルコール使用削減のための介入策 このレビューの重要性 有害なアルコールの使用は、世界的な疾病負荷の主な原因の1つである。中低所得国では、有害なアルコールの使用が増加している。しかし、有害なアルコール使用を予防・治療するサービスは限られている。利用可能なサービス不足の一因は、有害なアルコール使用を減らすにはどのような介入アプローチが効果的なのか、また、こうしたアプローチが低資源の環境で実行可能で受け入れられやすいかどうかについての情報が限られていることである。有害なアルコール使用による身体的、心理的、社会的負荷を防ぐためには、アルコールに関連した害を減らすための効果的な介入が利用できることが重要である。 本レビューの目的は何か? このレビューの目的は、低・中所得国において、心理社会的・薬理学的介入が有害なアルコール使用を減らすことができるかどうかについてのエビデンスをまとめることである。また、治療の安全性を評価し、治療が完了するまでどれだけの人が治療を継続できるかを目指す。 調査でわかったこと 有害なアルコール使用を減らすための介入の効果を評価した66件のランダム化比較試験を特定した。これらの研究のほとんどは心理社会的介入を評価したものであり(52件)、6件は薬理学的介入のみを評価し、8件は薬理学的介入と心理社会的介入を組み合わせて評価したものであった。 ...

βサラセミア患者に対する骨粗鬆症の治療

11 months 1 week ago
βサラセミア患者に対する骨粗鬆症の治療 論点 βサラセミア患者における骨粗鬆症に対するさまざまな治療法は、どの程度有効かつ安全か? 背景 骨粗鬆症は、時間とともに骨密度に影響を及ぼし、骨折のリスクを上昇させる。また、βサラセミア(ヘモグロビンの産生が低下する血液疾患)患者に発生する病気の重要な原因となっている。 βサラセミア患者における骨粗鬆症の治療には、ビスフォスフォネート(骨量減少を遅らせる薬剤)、カルシトニン、カルシウム、亜鉛の補給、ヒドロキシ尿素、ホルモン補充療法(HRT)、デノスマブ(骨吸収を抑制して骨密度(BMD)を高める薬剤)、ラネル酸ストロンチウム(骨形成を促進し、骨吸収を阻害する薬剤)などが有効と考えられている。 本レビューの目的は、βサラセミア患者における骨粗鬆症に対する最も効果的な治療法を見つけることである。腰椎、股関節、および手首(手関節)の骨密度(数値が高いほど良好)と、骨折、可動性、生活の質、および治療による有害事象を主要な評価項目とした。本レビューは、過去に発表されたコクランレビューの更新版である。 文献の検索日 本エビデンスは2022年8月4日までの文献検索に基づいている。 研究の特徴 本レビューでは、10歳から78歳の合計298人のβサラセミア患者を治療群にランダムに割り付けた6件の研究が対象となった 。 研究では、ビスフォスフォネート(アレンド...

心肺蘇生時における家族の立ち会い

11 months 1 week ago
心肺蘇生時における家族の立ち会い なぜこの問題が重要なのか? 患者とその親族が、治療の決定に積極的に関与することを望むようになっている。しかし、心肺蘇生時における家族の立ち会い(FPDR)は、立ち会った親族に心的外傷後ストレス障害(PTSD)関連症状を引き起こしたり、医療従事者の妨げとなり、救命救急処置の質を低下させる懸念がある。また、その状況に対する患者の考えや好みが語られないため、患者の守秘義務が侵害される恐れもある。患者、親族、医療従事者の行動は、互いに影響を与える三角形の関係として捉えられるため、それぞれの要求に対するバランスがとられている必要がある。 何を調べようとしたのか? 心停止、外傷、急性期医療におけるFPDRの効果に関する現在のエビデンスについて調査を行った。 本レビューの主な目的は、親族に対して、その大切な人の心停止、外傷、または急性期医療に立ち会うという選択肢を提供することが、親族のPTSD関連症状の発生に与える影響について調査することである。 第二の目的は、FPDRの提供が、親族の抑うつ、不安、および悲嘆に与える影響、診療時間や医療従事者に対して与える影響、そして、医療の質や患者の生存率に与える影響について調査することである。 何を行ったのか? 2022年3月22日に、言語による制限なく、医学データベースの検索を行った。また、参考文献を確認し、論文の著者と...
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5 hours 42 minutes ago
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