Latest Japanese Reviews

生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ

1 year 4 months ago
生殖補助医療における採卵時の卵胞フラッシュ レビューの論点 不妊治療のうち生殖補助医療(ART)を受けている女性において、採卵の一環として行われる卵胞フラッシュの安全性と有効性を評価しようとした。 背景 自然に妊娠するのが困難なカップルは、妊娠するための介入(治療)を受けることを選択するかもしれない。これらの介入は、生殖補助医療(ART)と呼ばれる。ARTのひとつに体外受精(IVF)がある。体外受精では、ホルモン剤を用いて卵巣を刺激し、それぞれの卵巣にある卵胞の中で卵を複数発育させる。この卵巣刺激に続き、これらの卵を採取するために、超音波ガイド下で卵胞内に針を挿入する。卵胞内を吸うだけでその内容物を回収する吸引法の代わりに、吸引後に卵胞内をフラッシュすることで、卵の回収率があがり、その結果、妊娠・出産の可能性が高くなるのではないかという提案がなされてきた。この方法は、卵胞フラッシュと呼ばれる。 研究の特性 合計1,643人の女性が、卵胞吸引単独群または卵胞吸引後フラッシュ群に無作為に割り付けられた15件の研究を対象とした。この2 つの手法に差があるかを見るため、主要な結果として出生率 (女性1000人あたり生まれた赤ちゃんの数)および流産率 ( 女性1000人あたりの流産数) について調査した。この分野で2021年7月に利用可能なすべての関連した研究を同定するため、包括的な検索を...

慢性非特異的腰痛に対するヨガ

1 year 4 months ago
慢性非特異的腰痛に対するヨガ 主要な結果 原因不明の腰痛(慢性非特異的腰痛)が長期間持続する人において、3カ月間ヨガをした場合としなかった場合では、疼痛と腰や背中の機能改善において、改善は小さいものの、ヨガは運動をしないよりもおそらく良いと考えられる。 腰や背中の機能改善について、ヨガと腰や背中に重点を置いた他の運動との間におそらくほとんどまたは全く差はないが、疼痛の改善についてはヨガと他の運動との間の差は明らかにされていない。 腰や背中の痛みは、ヨガの試験で最もよく報告された有害性であった。有害性のリスク(危険)は、ヨガをしない場合と比べてヨガによって高くなったが、ヨガと他の運動では同程度であった。ヨガが重篤な有害性のリスクと関連しているという示唆はなかった。 慢性非特異的腰痛とは何か? 腰痛はよく起こる健康問題である。多くの場合、痛みの原因は不明で、「非特異的」腰や背中の痛みと呼ばれる。人によっては、痛みが3カ月以上持続することもあり、この時点で「慢性」と呼ばれる。 非特異的な腰痛は通常、市販の鎮痛薬と運動で治療され、手術などの侵襲的な処置は必要としない。ヨガは腰痛の治療や管理に使われることがある。 わかったこと ヨガが腰痛に関連する機能(例えば、歩行、家の周りの仕事、着替えなど)、疼痛、生活の質(Quality of Life:QOL)を改善するかどうかを検証したいと考えた...

脳卒中後の感情的傾向に対する薬物療法

1 year 4 months ago
脳卒中後の感情的傾向に対する薬物療法 レビューの論点 脳卒中後の情緒不安定な人に対する薬の利益と害を評価すること。 背景 脳卒中後は、情動不安定になることがよくある。情動不安定とは、感情的行動をコントロールすることが難しい状態を意味する。脳卒中後の患者は突然泣き出したり、稀ではあるが明らかな理由もなく笑ったりすることがある。この傾向は特定の人々や介護者を困らせる。うつ病がある人に効果がある抗うつ薬は脳卒中後の情動不安定に対する効果的な治療薬かもしれない。しかしながら、この分野でのランダム化比較試験(RCT)はほとんどなかった。(*RCTは、参加者を2つ以上の治療集団群に無作為に割り当てる研究デザインである。これは、参加者のグループが類似しており、調査員と参加者が誰がどのグループに入っているかを知らないようにするための最良の方法である。) 検索日 2022年5月26日に実施した検索により、研究を特定した。 研究の特性 情動不安定性を持つ239人が参加した7件のランダム化比較試験をレビューに含め、感情的傾向の治療に対する抗うつ薬の使用について報告した。研究対象者の人数は10人から92人であった。研究対象者の平均年齢/中央値は57.8歳から73歳であった。試験はヨーロッパ(イギリス:1件, デンマーク:1件, スコットランド:1件, スウェーデン:1件); アジア(韓国:1件, 日本:...

電子タバコは禁煙に役立つのか?また、禁煙目的で使用した場合、副作用はないのか?

1 year 4 months ago
電子タバコは禁煙に役立つのか?また、禁煙目的で使用した場合、副作用はないのか? 電子タバコとは? 電子タバコ(e-シガレット)は、携帯型のデバイスで、通常はニコチンと香料を含んだ液体を加熱することで作動する。電子タバコは、煙ではなく蒸気でニコチンを吸い込むことができる。電子タバコはタバコを燃やさないため、従来タイプのタバコを吸っている人の喫煙関連疾患の原因となるのが明らかなレベルと同じレベルの有害物質を吸い込むことはない。 電子タバコを使用することは、「ベイピング」と呼ばれている。電子タバコは、タバコを止めるために使用する人が多い。このレビューでは、主にニコチン入り電子タバコに焦点を当てている。 このコクランレビューを行った理由 禁煙することで、肺がんや心筋梗塞、その他多くの病気にかかるリスクが低くなる。多くの人が、タバコを止めるのは難しいと思っている。電子タバコの使用が禁煙の助けになるかどうか、また、電子タバコを使用している人に望ましくない影響がないかどうかを調べた。 このレビューで行ったこと 電子タバコを使った禁煙支援について調べた研究を検索した。 人々が受けた治療が無作為に決定されたランダム化比較試験を探した。このタイプの研究は通常、介入の効果について最も信頼性の高いエビデンスを与える。また、全員が電子タバコによる治療を受けた研究も探した。 以下の内容に興味を持った: - ...

耳鳴りに対するイチョウ葉のハーブサプリメント

1 year 4 months ago
耳鳴りに対するイチョウ葉のハーブサプリメント 耳鳴りとは何か? 耳鳴りは、外部からの音がないのに音が聞こえるという症状である。リンギング(訳注:振動によるノイズ音で、ジージー等の振動音)、ヒスノイズ(訳注:テープの再生時に鳴るシューとか、サーといった、高音域の音)や、ブンブン、ヒューヒューといった音で表現されることが多い。一般人口の5%から43%が罹患するといわれ、年齢とともに有病率は増加する。耳鳴りが続くと、睡眠障害(不眠症)、集中力の低下、コミュニケーションや人付き合いの難しさ、不安や抑うつを引き起こす人もいる。管理には、教育やアドバイス、リラクゼーション療法、耳鳴り再訓練療法(TRT)、認知行動療法(CBT)、音響発生器や補聴器、薬物療法が含まれる。また、ハーブのサプリメントであるイチョウ葉も使用されている。 知りたかったこと イチョウ葉が耳鳴りの程度を軽減するかどうか、また、好ましくない作用や有害な作用があるかどうかを調べたいと考えた。 実施したこと 大人と子どもの耳鳴りを対象に、イチョウ葉をプラセボ(「ダミー」治療)、無治療、教育・情報提供のみと比較した研究を探した。研究結果について比較、要約し、研究の進め方や参加人数などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 わかったこと 合計1,915人を対象とした12件の研究が見つかった。11件の研究では、イチョウ...

介護施設における肺炎予防のための口腔ケア

1 year 4 months ago
介護施設における肺炎予防のための口腔ケア 介護施設関連肺炎(NHAP)とは何か? 介護施設関連肺炎(NHAP)とは、長期療養施設や介護施設の入居者に発生する肺の細菌感染症を指す。 NHAPを防ぐ対策として、どのようなものがあるか? 口腔内(口の中)の衛生状態が悪いと、感染症にかかりやすくなる可能性がある。専門的な口腔ケアとは、歯と歯ぐきのブラッシング、義歯の清掃、洗口液の使用、そして歯科医師による訪問診療などを組み合わせたものである。これに対して日常的な口腔ケアは、自分で行うケア、または口腔衛生に関する特別な教育を受けていない介護施設の職員が行うケアである。 何を調べたかったのか? 口腔ケアによってNHAPが減少するかどうかを明らかにしたいと考えた。また、介護施設やその他の長期療養施設の入居者の死亡数(肺炎やその他の原因によるもの)が口腔ケアによって減少するかどうかについても調査を行った。 何を行ったのか? 介護施設入居者の口腔ケアに関するランダム化比較試験(RCT)について、科学文献データベースおよび登録されている研究の検索を行った。ランダム化比較試験(RCT)は、参加者が各治療群に無作為に割り振られるため、最も信頼できる科学的エビデンスが得られると考えられている。研究結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。 何が見つかった...

早産児にCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)を行う場合、鼻マスクと鼻カニューレどちらを用いる方がいいのか

1 year 4 months ago
早産児にCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)を行う場合、鼻マスクと鼻カニューレどちらを用いる方がいいのか 要点 鼻カニューレ(鼻腔に挿入する短い管)よりも鼻マスク(鼻を覆うマスク)を用いた場合の方が、CPAP療法の失敗リスクを低減し、鼻腔を傷つけるリスクを低減する可能性がある。ただ、早産による死亡リスクや合併症リスクについては、鼻マスクを用いることによる影響がほとんど、あるいは全く無い可能性がある。 CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)とは 経鼻的CPAP療法とは、呼吸補助の一つであり、人工呼吸器(新生児の気管にチューブを挿入する)に比べ体への負担が少ない方法である。経鼻的CPAP療法では、鼻に管を入れるか、鼻を覆う柔らかいマスクを着けるかのいずれかの方法で新生児に酸素を送り込む。この療法は、新生児から人工呼吸器をはずした(挿管チューブを抜き取った)後や、新生児の肺(呼吸)に問題があり補助が必要だが人工呼吸の必要はない場合に用いることができる。 知りたかったこと CPAP療法の失敗率(新生児の状態が悪くなる、または人工呼吸器が必要となる)、CPAP療法による合併症や有害事象を減少させるためには、鼻カニューレよりも鼻マスクの方が好ましいというエビデンス(科学的根拠)が存在するのかどうかを調査した。 このレビューで行ったこと 医療データベースの中から2021年10月までに行われた臨床試験を検...

湿疹や食物アレルギーを予防するためのスキンケア介入

1 year 4 months ago
湿疹や食物アレルギーを予防するためのスキンケア介入 乳児の肌の保湿は、湿疹や食物アレルギーの予防になるか? 要点 生後1年間、保湿剤を肌に塗るなどのスキンケア治療は、湿疹の発生を予防するものではない。むしろ、食物アレルギーの可能性や皮膚感染症の可能性を高めると考えられる。このレビューでは、湿疹と食物アレルギーの予防についてのみ検討している。湿疹を治すには、やはりスキンケア治療が重要である。 アレルギーとは何か? 免疫反応とは、体が有害と思われる物質を認識し、防御する仕組みのことである。アレルギーとは、通常は無害である特定の食物や物質(アレルゲン)に対して、体の免疫系が反応することである。アレルギーは体のさまざまな部位に影響を及ぼし、その影響は軽度なものから重篤なものまである。 食物アレルギーと湿疹 湿疹は、皮膚の乾燥やかゆみ、ひび割れなどを引き起こす一般的な皮膚疾患である。湿疹は子どもに多く、それも1歳の誕生日前に発症することが少なくなく、長く続くこともある。 食べ物に対するアレルギーは、口の中のかゆみ、盛り上がったかゆみのある赤い発疹、顔の腫れ、胃の症状や呼吸困難などを引き起こすことがある。通常、食べ物を食べてから2時間以内に起こる。 食物アレルギーがある人は、喘息、花粉症、湿疹など、他のアレルギー疾患も持っていることが多い。 このコクランレビューを行った理由 乳児の湿疹や食物...

スミス・レムリ・オピッツ症候群に対するスタチン療法

1 year 4 months ago
スミス・レムリ・オピッツ症候群に対するスタチン療法 レビューの論点 スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)の患者に対して、スタチンを用いた治療単独またはコレステロール療法との併用は、コレステロール療法単独と比較して、より良い結果(生存率、生活の質、神経行動異常の頻度または重症度、成長パラメータまたはバイオマーカーレベルの変化など)をもたらすか、また有害作用の発生リスクはどの程度あるのか? 背景 スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)は遺伝性の奇形症候群であり、コレステロールが体内で生成されず、7-デヒドロコレステロール(7-DHC)や8-デヒドロコレステロール(8-DHC)などの、通常であればコレステロールに変換されるいくつかの毒性分子が蓄積されることで発症する。つまり、SLOSでは正常な身体的成長が妨げられ、さまざまな程度の知的障害や発達遅延(あるいはその両方)および行動異常(例えば、興奮性、攻撃性、不安性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、衝動性、睡眠障害など)を示す可能性がある。また、SLOSはさまざまな身体的異常や障害を引き起こす可能性があることも特徴的である。現在のところSLOSの治療法はないが、SLOS患者の診療においては、コレステロールの補充療法が一般的な対処法とされている。これは、この疾患の現在の生化学的知見のみに基づくものである。しかし、実験室や独立した個...

境界性パーソナリティ障害をもつ人に対する薬物療法の利益とリスクは何か?

1 year 4 months ago
境界性パーソナリティ障害をもつ人に対する薬物療法の利益とリスクは何か? 要点 このレビューは、2010年に発表された同テーマのレビューを更新したものである。このレビューにはその後追加された18件の研究が含まれているが、結論は同じままである。境界性パーソナリティ障害(BDP)に対する薬物療法の利益とリスクはおそらくないが、そのエビデンスは不明確である。 薬物療法の効果をプラセボと比較する、より良い大規模な研究が必要である。そのような研究は、男性、青年、そして追加の精神疾患の診断を受けた人々にも焦点を当てるべきである。 BPD(境界性パーソナリティ障害)とは? BPDは、他者との関わり方や、自己の理解の仕方に影響を与える。正確な原因は不明であるが、遺伝的要因と環境要因(成長期にストレスやトラウマとなるようなライフイベントなど)が組み合わさって生じると考えられている。成人の約2%、青少年の約3%が罹患している。 BPDの症状は、4つのカテゴリーに分類される。 気分の不安定さ:BPDをもつ人は、激しい感情を経験し、それが急激に変化して、コントロールすることが困難になることがある。また、空虚で見捨てられたと感じることも多い。 認知の歪み(乱れた思考パターン):BPDをもつ人は、しばしば混乱した考えを持つことがある(例えば、自分はひどい人間だと思うかもしれない)。また、妄想的な考えやストレス...

メンタルヘルスの問題を持つ人のための共同意思決定

1 year 4 months ago
メンタルヘルスの問題を持つ人のための共同意思決定 共同意思決定と通常のケアでは、精神機能に障害を持つ人にとって効果が高いのはどちらか。 精神機能の障害とは 精神機能(メンタルヘルス)の障害や問題にはさまざまなものがある。一般に、思考、知覚、感情、行動、他者とのかかわりなど、複数の面で平均や通常の価値から外れていることを特徴とする。治療や社会的支援の提供体制が整った医療保健および福祉サービスにつなげることが重要である。 何を知りたかったのか 共同意思決定とは、当事者と専門職のコミュニケーションの取り組みであり、意思決定の過程で、両者(たとえば、患者またはその介護者、あるいはその両方と担当医)が同等に大切なそれまでの経験と専門知識を認めるというものである。この手法では、両者が協力しながら治療の推奨や実際の治療を決定する。 この手法は、行動医学の分野では、さらに幅広いリカバリー(回復)と本人中心のケアを目指す運動の一部とみなされている。専門職、介護者、同じ問題を抱える仲間たち、そして家族らの協力を得ながら、症状を理解して、症状に対処していくことを本人の責任として、リカバリーに焦点を当てることもこの手法の基本となる。 時には、動画、小冊子、オンラインツールなど「意思決定支援ツール(ディシジョンエイド)」も使いながら、治療法の説明、複数の選択肢とそれぞれの利点とリスクに関する情報を提示し、...

未成熟な蚊の生息する水環境にどのような恒久的または一時的な変化をもたらすと、マラリアの人への感染の減少に、より効果的か?

1 year 4 months ago
未成熟な蚊の生息する水環境にどのような恒久的または一時的な変化をもたらすと、マラリアの人への感染の減少に、より効果的か? なぜマラリアの人への感染を減らすことが重要なのか? マラリアは、主にアフリカやアジアに住む人々の間で、公衆衛生上、非常に大きな影響を及ぼしている。マラリアを減少させるための対策は長年にわたって研究されてきた。人を刺してマラリアに感染させることができるのはメスの蚊の成虫であるため、対策のほとんどは、未成熟な蚊(幼虫やサナギ)の数を減らして、成虫になるのを防ぐことに重点を置いている。 未成熟な蚊の生息環境の恒久的または一時的な変化とは? 未成熟な蚊が生息する水環境は、恒久的な変化(改変)や一時的な変化(処置)によって攪乱できる。恒久的な変化の例としては、排水路を設置する、整地する、側溝を埋め戻すなどが挙げられる。一時的な変化の例としては、川の流量を変える、水路の底をさらう、草を刈る、植物で水面を覆うなどが挙げられる。これらの介入は、単独で、あるいは殺虫剤の定期的な散布(幼虫駆除)など他の標準的な処理と併せて行うことができる。 何を調べたかったのか? 未成熟な蚊の生息環境にどのような恒久的または一時的変化を与えると、人のマラリア感染数の減少(臨床面の結果)と未成熟な蚊や成虫の個体数の減少(昆虫学的結果)につながるか明らかにすることを試みた。 何を行ったのか? 未成熟...

予定外の入院をしている高齢者に対する運動

1 year 4 months ago
予定外の入院をしている高齢者に対する運動 要点 予定外の入院中の高齢者向けの運動療法には利点がある場合もあるが、それは定かではない。運動による介入は、おそらく害を及ぼすことはない。高齢者が入院しているときに転倒のリスクを増加させることはなかった。 何が問題なのか? 高齢者は、予定外の入院をした後、普段の日常生活を送ることができなくなることがよくある。その理由のひとつは、入院中は健康なときに家で過ごすよりも非活動的になってしまうからである。また、入院中に活動的でないことは、混乱するリスクの増加、移動の困難、退院時の生活の質の低下など、他の問題の原因となることもある。 何を知りたかったのか? 入院中の高齢者の運動を支援することで、退院時の回復を促し、退院後普段の日常生活を送る能力が向上するか? 何を行ったのか? 運動プログラムを通常のケア(偽の介入の有無にかかわらず)と比較した研究を医療データベースで検索した。通常のケアとは、研究調査に参加していない患者に通常行われる治療である。2件の研究では、通常のケアに加えて偽の介入を行った。偽の介入は、患者の回復に影響を与えるためではなく、研究に信頼性を持たせるために実施された。 何が分かったか? 7,511人が参加した24件の研究が見つかり、参加者の58%が女性であった。研究参加者の平均年齢は73歳から88歳であった。ヨーロッパで実施された研...

脳卒中後の知覚障害に対する介入

1 year 4 months ago
脳卒中後の知覚障害に対する介入 要点 脳卒中は、聴覚、嗅覚、体性感覚(体温、位置、動きの感覚)、味覚、触覚、視覚など、五感からの情報を処理し理解する能力に影響を及ぼすことがある。これらの感覚からの情報を処理し、理解することを「知覚」という。 脳卒中に関連した知覚の問題に対する何らかの治療法が有効かどうかについては、ほとんど研究が行われていない。 脳卒中による聴覚、嗅覚、体性感覚、味覚、触覚、視覚に問題がある人は、臨床ガイドラインで推奨されているリハビリテーションに参加し続けた方が良い。医療専門家は、現在の臨床ガイドラインや推奨事項に従って、脳卒中に関連した知覚の問題に対するリハビリテーションを提供し続ける必要がある。 知覚障害とは? 脳卒中になる前、大人は聴覚、嗅覚、体性感覚、味覚、触覚、視覚などの感覚を通して情報を収集する。体性感覚とは、皮膚、筋肉、関節から生じる感覚を指し、圧力、振動、温度、位置などの知覚が含まれる。集めた情報には、目に見える物体の色、形、大きさなどが含まれるかもしれない。人は、記憶や文化的な経験とともに、表情を見れば相手の気持ちを理解することができる。また、嗅覚で匂いの違いを識別したり、触覚で感触の違いを感じたりすることもできる。脳卒中は、これらの能力に影響を与える可能性がある。 知覚障害の治療とは? 作業療法士、理学療法士、臨床心理士などの医療専門家は、さ...

避妊用インプラントや子宮内避妊具は、産後数日以内に挿入したほうがよいのか、4~6週間待ったほうがよいのか?

1 year 5 months ago
避妊用インプラントや子宮内避妊具は、産後数日以内に挿入したほうがよいのか、4~6週間待ったほうがよいのか? この要約で「人」という言葉を使うときは、現在妊娠する能力のある個人を意味する。 要点 - 避妊用インプラントや子宮内避妊具(IUD)の挿入を4~6週間待つ(遅延挿入)よりも、出産後数日以内に挿入する(即時挿入、入院中)方が、挿入される人の数が増える。 - 挿入のタイミングは、産後6か月または12か月にこれらの避妊法を使用する人の数にほとんど差をもたらさない。 - IUDの自然排出は、即時挿入した人の方が多いようである。 - インプラントやIUDの即時挿入と遅延挿入の両方における意図しない妊娠の割合については、さらなる研究が必要である。 避妊用インプラントや子宮内避妊具とは何か? 避妊用インプラント(訳者注:2022年12月現在、日本では未承認)と子宮内避妊器具(IUD)は、出産後すぐに使用できる可逆的で安全な、非常に有効な避妊方法である。インプラントは上腕部に、IUDは子宮に、医師や看護師が挿入する。これらの避妊法を行う人は、インプラントかIUDのどちらかを使用する。 妊娠と妊娠の間隔が適度に空いていることは、妊娠中の人と新生児の両方の健康にとって望ましい。通常、避妊のための処置は産後最初の健診(通常、産後6週間前後)で行われる。しかし、この受診前に性行為をしたり、受診しな...

授乳中の母親への支援

1 year 5 months ago
授乳中の母親への支援 レビューの論点 世界保健機関(WHO)は、生後6か月までは母乳のみで育て、少なくとも2歳までは母乳育児を重要な食生活の一部として継続することを推奨している。母乳育児は、乳幼児と母親の短期的・長期的な健康に良いことが分かっている。母乳で育てられた赤ちゃんは、肺や腸の感染症になりにくい。太り過ぎや糖尿病になる可能性も低くなる。また、母親は糖尿病になりにくく、乳癌や卵巣癌にもなりにくいと言われている。いくつかの問題に直面した結果、希望していたよりも早く母乳育児を止めてしまう母親は多いかもしれない。良いケアと支援は、女性が困難を乗り越え、母乳育児を続けられるように自信をつけるのに役立つかもしれない。 このレビューでは、母乳育児中の母親に対して組織的な支援を提供することが、標準的な出産ケアと比較して、母親の母乳育児の継続を助けるかどうかを検討した。助産師、看護師、医師などの医療専門家、あるいはコミュニティ・ヘルス・ワーカーやボランティアなどの訓練を受けた一般市民からの支援に関心があった。 重要性 母乳育児のためにどのような支援ができるかを知ることで、母親がどこに住んでいても、望む限り母乳育児を続けることができるよう手助けすることができる。母乳育児を早期にやめると、母親は失望し、落ち込み、長期にわたる苦痛を味わい、自分自身と乳児の健康にも問題が生じる可能性がある。支援は...

子宮内膜を傷つけることで、性交や子宮内への精子注入をするカップルの妊娠率を向上できるか

1 year 5 months ago
子宮内膜を傷つけることで、性交や子宮内への精子注入をするカップルの妊娠率を向上できるか レビューの論点 性交や精子を子宮に入れる方法(子宮内人工授精)で妊娠を希望している女性に対し、子宮内膜に意図的に小さな傷をつけたときの効果や痛みの程度を評価する。 背景 体外受精(IVF)を行う女性に対して、意図的に子宮内膜に軽微な傷をつけると、妊娠の可能性が高まると言われている。この損傷は、pipelleのような柔軟性のあるプラスチック製の小さな器具を使った子宮内膜の小さな生検によって作ることができ、一般的で安全な婦人科的処置である。しかし、日常の臨床現場では、この処置はある程度の不快感や痛みを伴うことが知られており、追加の内診が必要になる。体外受精を行っていない女性、例えば、性交や人工授精で妊娠を試みている女性やカップルに対する、この手法の有効性はまだわかっていない。 研究の特徴 計3,703人の女性を含む22件のランダム化比較試験が、このレビューの対象基準を満たした。ほとんどの女性は、「原因不明不妊」と呼ばれるタイプの不妊症で、通常の検査をすべて行ってもこれまでに妊娠しなかった理由が明らかに説明できなかった。レビューの主な評価項目は、生児出産と妊娠継続(12週を超えた妊娠)と、処置中に経験した痛みである。エビデンスは2020年5月21日までのものある。 主な結果 意図的に子宮内膜を傷つけ...

中枢性睡眠時無呼吸症候群がある人に対する非侵襲的換気法

1 year 5 months ago
中枢性睡眠時無呼吸症候群がある人に対する非侵襲的換気法 検討した内容 このレビューでは、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)がある人に対する非侵襲的換気(換気を補助する人工呼吸のこと、以下、NIV)の効果を、他の治療法や異なるタイプのNIVと比較検討した。CSAとは、睡眠中に脳が筋肉に空気を取り込むように指示を出せないため、呼吸が定期的に停止する疾患である。CSAは、男性や慢性心疾患がある人に多く発症する。CSAの人は、夜中によく目が覚め、日中はとても眠くなり、普段のように運動ができなくなる。睡眠時無呼吸症候群は、心臓発作や脳卒中など、他の疾患や死亡のリスクを高める可能性もある。 NIVでは、機械を使って呼吸を助ける。NIV療法では、フェイスマスクや鼻マスクを使用して、肺に空気を送り込み、呼吸努力の必要性を軽減させる。NIV療法にはいくつかのタイプがあり、呼吸を補助する方法が異なる。以下にいくつか例をあげる。 • CPAP(Continuous Positive Airway Pressure、シーパップ):吸気と呼気で連続的に肺に空気を送り込む。 • 二重陽圧(BiPAP、バイパップ):吸気時に呼気時よりも多く肺に空気を送り込む。 • ASV(Adaptive Servo Ventilation):主に呼吸が止まった時に肺に空気を送り込む。 非侵襲的な換気により、空気が肺に入りや...

変形性関節症に対する抗うつ薬

1 year 5 months ago
変形性関節症に対する抗うつ薬 背景 変形性関節症は、軟骨が減少し、関節の間が狭くなることを特徴とする関節の病気である。その結果、痛み、変形、障害などが生じることがある。 抗うつ薬は、中枢神経系の神経経路を調節することにより、痛みに影響を与えると考えられている。 変形性膝関節症および股関節症の痛みに対する抗うつ薬の臨床的有用性と有害性を評価することを目的とした。 研究の特徴 このレビューは2021年1月現在のものである。抗うつ薬とプラセボ(ダミー治療)および非ステロイド性抗炎症薬(痛みを和らげ、炎症を抑えるために広く使用されている)を比較した2,122人の参加者による9件の臨床試験を対象とした。参加者の多くは女性(70%)で、平均年齢は54.4歳から65.9歳であった。7件の試験は変形性膝関節症のみを検討したものである。また、2件には変形性股関節症がある人も含まれていた。すべての試験で、非ステロイド性抗炎症薬の併用または非併用で、抗うつ薬とプラセボが比較された。 主な結果 プラセボと比較して、抗うつ剤はわずかな利益をもたらす結果となった。 痛み 抗うつ剤を投与した場合、プラセボと比較して0点から10点の範囲の値を示すスケールでさらに0.59点の痛みが軽減された。 - プラセボ群では、1.73点の痛みの減少がみられた。 - 抗うつ剤投与群では、2.32点の痛みの軽減がみられた。 レス...

ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か?

1 year 5 months ago
ドライアイの治療における副腎皮質ステロイド点眼薬の有効性と有害性は何か? ドライアイとは何か? ドライアイとは、涙が目を十分に潤すことができないときに起こる、よく見られる症状である。さまざまな理由により、涙の量が不十分になったり不安定になったりする。例えば、涙の分泌量が減少したり、涙の質が悪くなったりする場合に、ドライアイになることがある。涙の量が不安定になることで、目の表面に炎症が起きたり、傷がついたりする。ドライアイの症状は不快であり、しばしばチクチクする、あるいは焼け付くような痛みを感じたり、時には視界がぼやけることもある。 ドライアイの治療方法は? ドライアイには、多くの治療法がある。涙の水層が相対的に不足しているために起こるドライアイに対しては、人工涙液、分泌刺激薬、血清点眼、涙点プラグ(涙の出口に栓をする)などの治療法がある。涙の油層の分泌が阻害されたドライアイに対する治療法としては、抗菌薬、温湿布、あるいは副腎皮質ホルモンやシクロスポリンAなどの抗炎症薬を使用する方法がある。副腎皮質ステロイドの点眼薬は、炎症を抑え、短期間に症状を緩和することを目的に使用されるが、長期的な使用により、眼圧の上昇あるいは白内障が発生することが懸念されている。 何を調査したのか? 副腎皮質ステロイド点眼薬が、単独使用、または他の薬との併用により、ドライアイの症状や、ドライアイの診断あるい...
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16 hours 23 minutes ago
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